さて、いよいよ決着です。勝者は…!
巨大な黒曜石のブロックで構築された要塞の最深部。体育館ほどもある広大な空間の中央で、けたたましい駆動音を響かせる巨大二足歩行ロボットが、新一たちを見下ろしていた。
両腕に備え付けられた多数のガトリングガンの砲身が、不気味な回転音を立て始めている。肩に搭載されたミサイルポッド──アレックスがレッドストーン回路で組み上げたという矢の自動射出装置──からは、殺意を帯びたカチカチという機械音が絶え間なく鳴っていた。
「来るぞ! 里美、倉森さんは下がって!」
新一が鋭く叫んだ瞬間、ロボットのガトリングガンが火を噴いた。凄まじい轟音と共に、鉛の雨が新一たちを襲う。コンクリートの床が粉々に砕け散り、土煙が舞い上がる。新一は咄嗟に横へと跳び退き、ミギーを盾のように展開して飛来する銃弾を弾き飛ばした。
「倉森さん、今のうちに田宮さんを!」
「ああ、分かっている!」
新一がロボットの火力を引きつけている隙を突き、倉森が弾幕の死角を縫うようにして壁際へと走った。そこには、複雑な電子拘束具で鋼鉄の椅子に縛り付けられている田宮良子の姿がある。
だが、アレックスがそれに気づかないはずがなかった。
「おっと、NPCが勝手な行動を取るのはルール違反だぞ」
コックピットの中でバリスティックバイザーを跳ね上げたアレックスが、操縦桿を乱暴に倒した。ロボットの肩部ディスペンサーから、エンチャントの青白い光を帯びた無数の矢が倉森へ向けて射出される。
「させない!」
倉森の前に飛び出したのは、村野里美だった。彼女は両手でしっかりと「お守り」の木の棒を構え、飛来する矢の雨に向かって渾身の力で振り抜いた。
木の棒から放たれたノックバックの魔法効果が物理的な衝撃波となり、空間を歪ませた。魔法の矢は空中で軌道を逸らされ、バラバラと無力に床に落ちていく。
「いけえっ、ミギー!」
里美が防いだ一瞬の隙を見逃さず、新一が地を蹴った。彼の右腕から伸びたミギーの触手が極限まで細く、そして鋭利な刃となって空間を切り裂く。
ミギーの刃は、田宮良子の首や手足に嵌められていた分厚い電子拘束具の隙間に正確に滑り込み、内部の基盤を寸分の狂いもなく切断した。ガシャンという重い音と共に、田宮を縛り付けていたすべての拘束が解け、床に転がり落ちた。
「田宮さん!」
倉森がすかさず駆け寄り、椅子から崩れ落ちそうになった田宮の体をしっかりと抱きとめた。田宮は驚きに目を見開き、自分を抱きかかえる倉森の顔と、前線でロボットの攻撃を凌ぐ新一と里美の姿を交互に見つめていた。
その見事な連携劇を見下ろしながら、巨大ロボットの駆動音がピタリと止まった。硝煙が晴れる中、コックピットに座るアレックスが、ゆっくりと拍手を送るように両手を叩いた。乾いた音が、静まり返ったホールに響き渡る。
「ほうほう。やるじゃないか。まさか解放するとはね」
アレックスの声には、怒りよりも純粋な感嘆が混ざっていた。彼女はモニター越しに、倉森に抱えられた田宮良子を一瞥し、そして新一へと視線を移した。
「連携で私を倒すか…これは面白い。これもまた、正しい時間軸から逸脱した『分岐イベント』か」
アレックスは、まるで目の前で起きている命懸けの戦闘を、ゲームの隠しルートを発見したかのように楽しげに評価した。
「本来ならいがみ合うはずの人間とパラサイトが手を組み、おまけにただのモブキャラであるはずの探偵がヒロインのような立ち位置にいる。バグ技じみているが、見応えのあるシナリオ改変だ」
「ふざけるな、アレックス!」
新一はミギーを構え直しながら、ロボットを見上げて怒鳴った。
「お前は他人の人生を、命をなんだと思ってるんだ! 分岐イベントだのシナリオだの、僕たちはゲームの駒じゃないんだぞ!」
新一の怒りに対し、アレックスは肩をすくめてみせた。そして、倉森の腕の中にいる田宮を顎でしゃくった。
「いいのか? その女は化け物だぞ? 裏切るかもしれない」
アレックスの言葉は、氷のように冷たかった。
「そいつは人間を捕食し、実験動物として扱う冷酷なパラサイトだ。今は大人しくしているかもしれないが、拘束が解けた以上、お前たちの隙を突いて首を刈り取ろうとするかもしれない。それでも助けると言うのか?」
「構わない!」
新一より先に声を張り上げたのは、田宮を抱きかかえる倉森だった。
「田宮さんがどんな存在であろうと関係ない! 私は彼女の心の中に、我が子を愛する確かな温もりを見たんだ。他人の痛みを数値でしか測れない君なんかに、田宮さんの命を弄ばせるものか!」
倉森の言葉を聞き、田宮良子の瞳が僅かに揺れた。人間である倉森が、化け物である自分を完全に肯定し、守ろうとしている。その事実は、田宮の論理回路に再び説明のつかない温かいエラーを生じさせていた。
アレックスは、倉森の決死の覚悟を見ても鼻で笑うだけだった。彼女は操縦席に深く座り直し、冷酷な光を瞳に宿して新一たちを見下ろした。
「言っただろ。"私"は寄生獣によって両親を殺された。私の目的はただひとつ」
アレックスの口から放たれたその言葉に、新一は息を呑んだ。広川が殺される直前、彼女が口にしていた「両親を殺した寄生獣」という言葉。それはパラサイトのことではなく、己の利益しか頭にない人間の暗部を指しているのだと新一は直感していた。
彼女は人間の持つ醜悪なエゴイズムによって、取り返しのつかない喪失を経験している。だからこそ、人間の枠組みを越え、世界の理すらも俯瞰する狂気を身につけたのだ。
「この世界をこの手で管理することにある。唆るだろ? 捕らえたのは、生物兵器として使えるからだ」
アレックスは、部屋の奥で黒曜石の棺に閉じ込められている広川と後藤、そして金のベビーベッドの中で眠る赤ん坊へと視線を向けた。
「圧倒的な身体能力を持つ後藤や、人間社会に溶け込む知識を持つ広川、そしてパラサイトの生態を熟知した田宮良子。こいつらを私の配下に組み込めば、私のワールドはより強固になり、誰も手出しできない絶対的な秩序が完成する。バグも荒らしも存在しない、完璧に管理された世界だ」
「そんなものは平和じゃない! ただの独裁だ!」
新一の叫びがホールに響き渡る。
「お前がやろうとしていることは、パラサイトが人間を間引くことと同じだ。力で押さえつけ、自分の都合のいいように世界を塗り替える。そんな理不尽を、僕が許すと思うか!」
新一の真正面からの否定を受け、アレックスは顔の半分を覆う影の中で、不気味なほど静かに笑った。そして、彼女の口から紡がれた言葉は、新一たちが想像していた「ゲーム狂いの少女」という枠を完全に破壊する、途方もないスケールの威圧感を放っていた。
「まさか、これが初めてだと思ったか? 君たちのような存在を相手にしたことが」
地響きを立てて、巨大ロボットが一歩前へと踏み出した。装甲が擦れ合う音が、彼女の言葉の重みを増幅させる。
「私がどれだけの敵と対峙したと思ってる? これまで、どれだけの『オーバーワールド』を制覇したか。これまで、どれだけの荒らしを殺したか」
アレックスの緑色の瞳が、底なしの深淵となって新一を捉えた。彼女の背後には、数え切れないほどの世界、数え切れないほどの戦い、そして数え切れないほどの死の記憶が幻影となって立ち昇っているかのようだった。
エンダードラゴンやウィザーといった規格外の怪物たち、あるいは別の次元のプレイヤーたち。彼女はそれらすべてを己の力で粉砕し、資源を奪い、世界を自らの色に染め上げてきた絶対的な征服者なのだ。
「そんな私を倒せると、本気で思っているのか?」
ロボットの両腕のガトリングガンが、再びキュィィィンと回転を始めた。アレックスの放つプレッシャーは、これまでに新一が対峙してきたどんなパラサイトよりも重く、息が詰まるほどの絶望感を含んでいた。ミギーですら、沈黙を保ったまま触手の硬度を限界まで引き上げている。
「私はアレックスだぞ! 『カノン・イベント』を無視し続ける異常分子が、この私に勝とうとは…片腹痛いわ!」
アレックスが両腕を広げ、勝利を確信した暴君のように吼えた。
カノン・イベント。物語において「絶対に起こらなければならない正史」。泉信子が死に、新一が絶望に沈み、数多の血が流れるはずだった凄惨な未来。
新一たち家族が、そして倉森が、彼女の用意したその「シナリオ」を破壊し、本来あるべきでない結末へと無理やり路線を変更させようとしている。それが、世界の管理者たるアレックスの絶対的なプライドを激しく逆撫でしていた。
巨大な二足歩行ロボットの両腕に備え付けられたガトリングガンが、回転音と共に火を噴いた。凄まじい轟音が黒曜石のホールに反響し、無数の鉛弾が嵐となって新一たちを襲う。コンクリートの床が次々と抉り取られ、粉塵が視界を白く染め上げた。
「くっ…!」
新一はミギーの細胞を極限まで硬質化させ、巨大な盾として展開した。激しい金属音が連続して鳴り響き、弾丸がひしゃげて床に落ちる。ミギーの防御力をもってしても、巨体から放たれる圧倒的な火力を完全に防ぎ切るのは至難の業だった。
さらに、ロボットの肩部からはエンチャントの青白い光を帯びた矢がミサイルのように連続で射出される。
「泉くん、危ない!」
横から飛び出した里美が、アレックスの付与魔法が宿った木の棒をフルスイングで振り抜いた。ノックバックの魔法効果が物理的な衝撃波を生み出し、飛来する矢の雨を空中で弾き飛ばす。
その激戦の混乱の中、倉森に抱えられていた田宮良子が動いた。彼女は驚くべき身のこなしで弾幕の死角を駆け抜け、部屋の中央に置かれていた豪華なベビーベッドへと身を躍らせた。そして、泣き叫ぶ自分の赤ん坊をしっかりと腕の中に抱きかかえる。
田宮の行動はそれだけでは終わらなかった。彼女は赤ん坊を抱いたまま、壁際に縦置きにされていた二つの黒曜石の棺へと向かったのだ。コックピットからその様子を見ていたアレックスが、顔を険しくして怒鳴り声を上げた。
「田宮! ヒロインらしく、大人しくジッとしてればよいものを!」
アレックスはガトリングの銃口を田宮に向けようとしたが、新一がそれを許さなかった。
「よそ見してる暇があるのか!」
新一が地を蹴り、ミギーの触手を鞭のようにしならせてロボットの脚部関節に強烈な斬撃を見舞う。火花が散り、ロボットの巨体が大きくバランスを崩した。
その一瞬の隙を突き、田宮は里美が弾き飛ばした魔法の矢の残骸を拾い上げ、棺を拘束していた特殊な電子ロックの隙間に正確に突き立てた。バチバチと火花が散り、ロックがショートして機能を停止する。重厚な黒曜石の蓋が、内側からの凄まじい圧力によって吹き飛んだ。
棺の中から、土と石のブロックを粉砕して現れたのは、最強の集合体である後藤の巨体であった。
麻痺から回復し、再び五つの細胞を完全に統率した彼からは、かつてないほどの濃密な殺意が立ち昇っていた。しかし、その殺意が向けられたのは、広川を撃ち、同胞を狩った新一に対してではなかった。
後藤は、自らを棺に閉じ込め、屈辱を与えた巨大ロボット──アレックスを真っ直ぐに睨みつけたのだ。
「後藤! お前は人類を喰い殺す役割のはず! 何故そちら側に立っている!?」
アレックスが驚愕の声を上げた。彼女の想定する「シナリオ」において、後藤は人類の敵であり、新一たちの最大の障壁となるべきラスボスである。それが今、あろうことか新一たちと同じ陣営に立ち、彼女のロボットを敵と見定めて立ちはだかったのだ。
「誰のシナリオだか知らないが、勝手に決めつけるな!」
新一は後藤との間に奇妙な共闘関係が成立した事実に戸惑いながらも、今は目の前の狂った管理者を止めることが先決だと割り切った。
アレックスの顔が、怒りと苛立ちで真っ赤に染まった。
「ハッ! パラサイトはパラサイトらしく、人間を喰ってればいいんだよ!」
ロボットの火器が、今度は後藤に向けて乱射される。しかし、後藤は逃げも隠れもせず、全身の細胞を鋼鉄以上の硬度に変化させて弾幕を正面から受け止めた。火花が飛び散るが、彼には傷一つ付かない。
「食べられた被害者はすべて、私が用意した! すべては、正しいタイムラインに軌道修正するためにな!」
アレックスの口から放たれたその言葉に、新一は足の動きを止めた。
「…なんだって?」
「分からないか!? この世界で発生した凄惨な事件、ミンチになった肉塊、お前たちを絶望させるための舞台装置! それらはすべて、私がクラフトして配置した『NPC』だったんだよ!」
新一の背筋に、氷のような悪寒が走った。これまでパラサイトに殺され、無惨な姿で発見された人間たち。それが、彼女が「シナリオを進行させるため」だけに生み出した、実体のない命だったというのか。
「お前…命を、人間の存在をなんだと思ってるんだ…!」
新一の喉から、怒りに震える声が絞り出された。これまでパラサイトに殺され、無惨な姿で発見された人間たち。それが、彼女がシナリオを進行させるためだけに生み出した、実体のない命だったというのか。必死に守り抜こうとしてきた人々の血と涙を、彼女は安全な高みからゲームのスコアのように眺めていたのだ。
新一の切実な問いかけに対し、コックピットに座る美少女アレックスは、悪びれる様子もなく、無邪気で残酷な笑みを浮かべた。
「人間の命だって? 簡単にスポーンエッグとしてクラフト出来る存在に決まってるだろ! アイアンゴーレムトラップに転用される、村人と同レベルさ!」
その言葉は、新一の理解を完全に拒絶する異次元の価値観であった。人間を卵から生み出し、ただ鉄の塊を生産するための装置に組み込んで消費する。彼女にとって人間とは、感情を持つ生き物ではなく、世界を効率的に稼働させるためのただのリソース、単なるブロックの一部に過ぎないのだ。
新一の隣で、里美が青白いオーラを纏った木の棒を強く握りしめ、アレックスを鋭く睨みつけた。彼女の目にも、アレックスの底知れない傲慢さに対する強い拒絶の光が宿っている。
アレックスの顔が、突如として怒りと苛立ちで真っ赤に染まった。彼女の目論んでいた完璧な箱庭は、目の前にいる人間とパラサイトたちによって次々と破壊されている。それが、絶対的な管理者としての彼女のプライドを許容不可能なまでに傷つけていた。
「なのに新一は闇落ちしない! なのに里美は人間卒業しようとしている! ことごとく分岐イベントを引き起こしやがって! カノン・イベント通りに行動しろよ!」
アレックスの叫びは、もはや思い通りに動かないゲームのキャラクターに対する駄々っ子のようであった。自分の描いた悲劇のストーリーを演じない新一や、ヒロインの枠を逸脱して物理的に立ち向かってくる里美の存在が、彼女には許せなかったのだ。
だが、彼女の持つ圧倒的な火力が、その身勝手な不満を恐ろしい暴力へと変換している。ロボットの出力が跳ね上がり、両腕のガトリングガンの回転数が限界を超えた。キュィィィンという甲高い金属音がホール全体に響き渡り、空気がビリビリと震える。
「異常分子の分際で! 時間の枷に縛られている分際で!」
アレックスの絶叫と共に、肩部のミサイルポッドから全弾が射出され、ガトリングガンが火を噴いた。圧倒的な弾幕が全方位を覆い尽くし、黒曜石の床が粉々に砕け散って土煙が舞い上がる。
その豪雨のような攻撃の中、最強の集合体である後藤が巨大な盾となって前進した。彼の全身の細胞は極限まで硬質化しており、無数の鉛弾と魔法の矢を正面から受け止め、激しい火花を散らしている。新一と里美は、その後藤の巨大な背中の後方へと滑り込み、反撃の機会を息を潜めて窺っていた。
「マインクラフターこそがすべてにおいて頂点に君臨する!」
アレックスが最後の一撃を放とうと、操縦桿を強く押し込んだ。ロボットの全火器が最大出力に達し、すべてを更地に変える破壊の一撃が放たれようとした、まさにその瞬間だった。
「なっ、広川!? どうやってコックピットに!?」
アレックスの驚愕の声が響いた。ロボットの死角、無骨な装甲の隙間をよじ登り、いつの間にかコックピットのハッチに手をかけていた男がいた。田宮良子によってもう一つの棺から解放されていた、広川剛志であった。
新一は目を見張った。彼は後藤の巨体が引きつけたヘイトと、新一たちの攻撃が生み出した死角を完璧に利用し、生身の体で巨大ロボットに取り付いていたのだ。
広川は息を荒らげながらも、アレックスの顔を真っ直ぐに見据えた。
「時間の枷に縛られているからこそ、抗う意志があるのだ。お前のような傍観者には分かるまい」
広川は自身のスーツの袖を破り捨てながら、コックピットの外部に露出していた動力ケーブルの束──アレックスがレッドストーン回路で構築した動力源──を、素手で力任せに引きちぎった。
バチバチッ! という激しい放電と共に、青白い火花が飛び散り、ロボットの駆動音が急激にトーンダウンした。火器の照準が大きくブレ、ガトリングの凶悪な回転が停止する。
「今だよ泉くん!」
里美の叫びと共に、青白いオーラを最大まで纏った木の棒が、ロボットの太い膝関節に叩き込まれる。パァァァンッという乾いた破裂音と共に、凄まじいノックバックの衝撃が巨体のバランスを完全に崩した。ロボットが大きく傾き、姿勢制御を失う。
そこへ、後藤が野獣のように跳躍した。彼の右腕から伸びた巨大な刃が、空を切り裂き、ロボットの胴体の装甲を紙のように切り裂く。分厚い黒曜石のブロックが真っ二つに割れ、内部の機構が露出した。
「いっけえええええっ!!」
最後は新一だ。彼は地を蹴り、ミギーの細胞を極限まで肥大化させ、巨大なドリルと化した右腕を正面に突き出した。螺旋状に回転するミギーの刃が、無防備になったロボットの胸部装甲に真っ直ぐに突き刺さった。
ドゴォォォォォォンッ!!!
レッドストーン回路の崩壊と、黒曜石の装甲が砕け散る物理的な破壊音が混ざり合い、大爆発が巻き起こった。凄まじい衝撃波がホールを吹き抜け、熱風が新一の顔を撫でる。巨大な二足歩行ロボットは原型を留めないほどに粉砕され、無数の正方形のブロックとなってホールにバラバラに散らばっていく。
爆煙が渦巻く中、破壊されたコックピットから放り出されたアレックスの体が、放物線を描いて床に転がり落ちた。全身煤だらけになり、自慢のタクティカルギアもボロボロになった彼女は、仰向けのままゆっくりと息を吐き出した。
土煙が晴れると、新一、里美、そして後藤と広川、田宮良子の姿が浮かび上がった。彼らは、倒れ伏したアレックスを取り囲むようにして立っていた。誰もが傷だらけであり、息を切らしていたが、その瞳には自らの手で運命を切り拓き、理不尽なシナリオを打ち砕いた確かな強さが宿っている。
アレックスは、煤で汚れた顔のまま、ぐるりと自分を取り囲む彼らの顔を見回した。そして、高い天井を見上げて、静かに笑い声を漏らした。
「ハハッ、なるほど…私の負けか」
原作時間軸さん「よし勝った!」
分岐時間軸さん「ば、馬鹿な!」