たとえ転生先が鬱ゲーな上に主人公の幼なじみだとしてもTS少女は曇らせがしたい   作:ヒナまつり

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急に原作イベントが発生した時の対処法とは?

 

 クソ神モドキに貰った、たった少しの神格のお陰か俺の生気は直ぐに回復していった。ま、神格ってのは理すら変えるからね…うん、これで済んで良かったって思おう。

 

 原作開始したらそこらへんの呪いと変わんないケドっ!本当にクソぉ!

 

 というか、思考が文字に埋もれるぅ…!アヤノに洗脳されるよぉっ!

 

 抗おうとしても、俺よりも身体も力も大きいアヤノはビクともせず、楽しそうに俺の頭を撫でながら愛を文字にして送ってくる。

 

 「うぅ、このままじゃアヤノにボクの中満たされちゃうよぉ…!」

 

 「うふっ、満たしてあげる。あ、ユウお帰り。…今ハルを私色に染め上げ中、そこで見てて」

 

 アヤノは危ない顔をしながら、戻ってきたユウに見せつけるように更に俺に文字を送り込んで俺とアヤノのイチャラブな物語を作っていく。

 

 その光景を見てユウは、真っ黒な笑顔で近づいてきた。

 

 ─うわぁ、めっちゃ怒ってるぅ!でも、俺悪くないよねぇ!マシロは悪いけどさ!

 

 「…へへ、ユウねぇ?マシロちゃんと頑張ったんだぁ、死んじゃうかと思っても強くなるためにぃ。で?戻ってきたらこれぇ?アヤノちゃん…ハル、覚悟してねぇ?」

 

 「ユウ?ボク、悪くない!離れようとしても放してくれないアヤノお姉様が悪いの!」

 

 「ハルぅ、そのお姉様って何かなぁ?」

 

 「はっ!気がついたら洗脳されてたぁ!?アヤノはアヤノ!お姉様なんかじゃない…よし!」

 

 いやぁ、恐ろしい…!気がついたらアヤノの事を構ってちゃんの俺をあしらいながらも嬉しそうにしているお姉様だと思っていた…!─てか、本当に恐ろしいな!認識を勝手に変えないで!?

 

 「あぁ、洗脳解けた。ユウのせい…」

 

 「そんな悪いことをしてる方が良くないもん!ハル、幼なじみが慰めてあげるぅ」

 

 無表情で残念がるアヤノにユウは頬を膨らませて怒り俺を奪い取ると幸せそうに俺の頭を撫でた。

 

 ─うん、俺ってなんか良くないエキスでも出してるのかな?感情荒ぶらせてる自覚はあるけどこんなに愛される程ではない筈なんだけど…。あ…てか、おねーさんどこ行ったんだろう?ユウ知ってるかな。

 

 「あ、ユウ?そういえばおねーさんはどうしたの?戻ってきてないみたいだけど…」

 

 「マシロちゃん~?力尽きて今保健室にいるよぉー?先生にすっごくビシバシされてたからねぇ。でも、才能あるって褒めてたよぉ?」

 

 「…そう、あの子意外と運動苦手って言ってたのに」

 

 「へぇ、そうなの?確かに意外だな~!でも初めて力を使ったばっかなのにクウねぇの訓練についていけたんなら凄いよ!ボク、何回諦めろって言われたか覚えてないもん」

 

 和気あいあいと、俺達は放課後を過ごしていた。そんな時、突如俺達に悪寒が走った。

 

 それは、自分よりも圧倒的に強い敵を目の前にした時のような強烈なものでユウは息を吸うことすら忘れているようだった。

 

 ─なに、これ?本気のクウねぇでもここまでではないよ…!?一体何が─?

 

 だけどそんな俺達の疑問を掻き消すかのように、窓から光が伸びた。

 

 その光は、何処までも清々しい程に暑く大きく世界を照らし視線を集めた。

 

 その光の中心に立っていたのは、この学園の学園長だった。いや、正確には学園長のようなナニかだった。

 

 ─あぁ、これは…原作の初めのシーンだ。でも、早すぎる…!元々は、俺達が卒業する間近の筈だ…!

 

 どうしてこんなに早く…っ!いや、そんなこと考えてる場合じゃない!

 

 この後の未来を知ってるからこそ、俺は二人よりも直ぐに動き出せた。

 

 だから、二人の身体を無理矢理押し倒して結界を張ってからベッドをひっくり返しその影に隠れた。

 

 その瞬間、また眩い光と共にベッドに何かが強くぶつかる音が響いた。

 

 やっと目が慣れた俺達が見た景色は熔けた鉄製のベッドとボロボロになった部屋だった。

 

 「な、なに…何が起きたの?ハルぅ…」

 

 「…言葉が多い、情報が処理できない…!」

 

 アヤノもユウもまだちゃんと状況が理解できていない…!これは、俺らがまだまだ未熟な新入りだからだろう。

 

 本来なら、ユウがこの後戦いに行かないといけない。でも…今の彼女は震えることしか出来ない。

 

 だから、俺が行くしかない。そうでなきゃ世界が終わる…!

 

 「ユウ、アヤノ…!大丈夫、ボクが終わらせるからさ!」

 

 「終わらせるってなに!?ハル、行っちゃダメ!ここに居て!死んじゃやだぁ!」

 

 子供のように泣き叫ぶユウの声に自信満々な笑顔で返して俺は外へ飛び降りた。

 

 校庭はあちこち穴が開いて外にあった備品は元々の面影もなくなっていた。

 

 それだけ、コイツは強いということだ。そして、今その化け物はもう一人の化け物に攻撃されていた。

 

 ─良かった、ここはまだ原作と同じだ。

 

 「クウねぇ、援護しに来たよ!…神降ろしするから!」

 

 「ハル…!?ダメ!コイツは、学園長は神降ろしで呑まれた!ハルもそうなるよ!今、ここの契約は破れたんだ!」

 

 学園長モドキの攻撃をかろうじて受け流しながらクウねぇは叫ぶ。でも、俺は躊躇なく神降ろしを行った。

 

 だって、俺はこの為に個人でアイツと契約を交わしておいたのだから。

 

 ま、予定より大分早いけどね…!

 

 「…ふぅ、曰く、月は何時でも人を見ている。曰く、月は対価を元に我のために力を振るうと言った。故に、我は月の神の巫女として理を保つ!」

 

 言葉を綴り終わった瞬間、身を焼くような痛みが俺を引き裂こうとする。だが、止まるわけには行かないから無理矢理身体を動かした。

 

 「ハル…!このバカ、呑まれたいの!?くそっ!」

 

 「…だいじょうぶっ、のまれないから!はぁ…クウねぇ、短期決戦…行くよ!」

 

 「あぁもう、また無茶してさ…でも分かった!本気で行くよ!」

 

 化け物を蹴り飛ばして距離を放したクウねぇは手に持ったお札に霊力を込めて武器を取り出した。

 

 それは、未来の主人公が使っていた妖刀だ。名を幽玄というらしい。

 

 ─いいなぁ、ああいうのカッコいいよね!俺も何時か俺だけの武器を見つけよ!じゃ、ぶっ潰す!

 

 そう、意識を変えた瞬間…俺の瞳には全ての予測される未来が映し出され、その中で一番勝てる可能性の高い運命を引き寄せた。

 

 化け物は予測通りに、俺に目に見えない光を飛ばした。

 

 それを、俺は避け…当たる可能性のあるものを権能で殺した。血反吐を吐きながら!あー、死にそー!つまり、生きてる!よし!

 

 「ハル…!あんたどんだけの対価をっ!あぁもう…さっさとぶっ殺す!」

 

 そんな俺を見てクウねぇは美しすぎるその刃を振るった。

 

 それは一見化け物に当たってないように見えた。だが、次の瞬間…それは刃渡り以上に化け物を切り裂き、血飛沫すら出さずに胴を落とした。

 

 死んだ。きっと誰だってこの光景を見ればそう思う。けれど、化け物は獣のような笑い声を上げながら起き上がった。

 

 「そうか…そうかぁ!貴様があの愚神のお気に入りとやらか!相変わらず陰湿な力だな!んで、お前は…生き残りかぁ!くははっ、まさに幸運というやつだなぁ!殺したくて堪らないヤツらが揃っているとは!」

 

 学園長の身体の筈なのに聞こえてきた声は学園長の声ではない。それは、陰と陽。この学園に力を与えた化け物の一人で陽を主張しているヤツだった。

 

 「生き残り…?あぁ、あぁ…やっぱり─あの日の事件はお前の仕業だったのかっ!」

 

 クウねぇは、聞いたこともない怒号を発しながら刃を構えた。その瞳には怒りが燃え、他の何も見えていない。

 

 その隙は、化け物にとって格好の的で…化け物とクウねぇの間の空に浮かんだ太陽から光が飛ばされた。

 

 クウねぇはそれに気がつかなかった。そのせいでクウねぇは原作でこの化け物に殺されたんだ。

 

 だから、俺はその運命を変えるためにクウねぇを守るためにその光を身体で受け止めた。

 

 「あぐぅ…っ~!?」

 

 不死、あるいは再生。アイツの権能にはそれもあった。だから、血が幾つも零れ地面を汚そうとも、俺の痛みに叫ぶ声が漏れようとも光は俺の身体を貫通することは出来なかった。

 

 化け物も、俺が太陽からの攻撃は見えてないと思っていたのか呆気に取られ…その瞬間にクウねぇは自らのリミッターを外し身体を壊す速度で化け物を再生出来ないように細切れにした。

 

 「死ねっ!もう二度と、現世に踏み込むな!」

 

 「ククッ、まぁいいさ。俺はもう自由だからな、クウ…そしてハル。お前らの名前も顔も覚えたさ、覚悟しておけ…?」

 

 だが、細切れになった身体は炎に包まれ何処からか偉そうな声が聞こえた。

 

 けれど、そんな声を無視してクウねぇは直ぐに振り返り俺の身体を支えた。

 

 「ハルッ…!バカバカバカっ!あんたが死んだら意味ないんだ!あの日…任されたんだ、お前の事もユウのことも…!だから、死なせない…!絶対に、絶対に…!」

 

 クウねぇはまだ再生が間に合わず血が溢れる俺の傷を必死に押さえて涙ながらに治癒の印を刻み続ける。

 

 その顔は、償いと救いを求めるような必死なもので…幸福に包まれながら俺は潮に引かれて意識を落とした─。

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