ヒーローたちの宝箱   作:よっしー/FS

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プロヒーローの1人、イオ・スパーダ。
雄英卒で相澤・マイクらと同期である彼は3年B組の担任として生徒たちと心を通わせていく……はずだ!

※教職員以外はほぼオリキャラで進んでいくと思います。今後のことは何も考えてないです。唐突に終わるかもしれない。


#3 暴れろ体育祭 前編

「雄英体育祭、スタート!!」

 

 歓声と共に戦いの幕が上がった。会場内に大きなホログラムが表示され、ざわめきが広がる。その声をかき消すように根津校長の声が響いてきた。

「それでは第一種目、早抜けクイズのスタートなのさ」

生徒からも観客からも困惑する様子が見られる。クイズと体育祭、混じり合うことのない両者が混じってしまったのだから無理もない。その様子を眺めながらイオ・スパーダはあの日の会議を思い出していた。

 

「ではこういうのはどうでしょう?クイズ要素を取り入れるんです」

似ても似つかない2つの単語に会議室内には疑念が浮かぶ。

「誰でも答えられるように問題は5教科に絞って、わかった人から早押し形式で勝ち抜いていく」

「ソレハ、ムシロ普通科ニ有利デハナイカ?」

進学や就職を前提としている普通科は他科、とりわけヒーロー科よりも座学の時間が多い。13号も当然知っているはずだ。

「だから答えの書いてある紙を会場中にばら撒くんです。その中から正しい答えを探してゴールまで持っていく、自力で解ける生徒にはそのままゴールを目指してもらう」

確かに面白そうだが何点か不安も残る。いや、こうやって失敗を恐れているから時代遅れになっていくのか……

「いいじゃないか、やるだけやってみよう」

 

 そうしてこの展開に至る。

「君たちには今から、後ろのホログラムに映される問題を解いてもらう。そしてその答えはこの会場中に用意してある。個性を使用して第二種目への切符を掴んでほしいのさ。ちなみに自力で問題が解けたならそのままゴールに向かってもらって結構だ」

戸惑いの中、有無を言わせぬ説明に頷くしかできない生徒たち。スタートは待ってくれないぞ、と言わんばかりにカウントダウンが始まる。3、2、1……0。スタートの合図と同時に上空に紙が巻き上がる。黒い文字の書かれたそれがさんざん言われた『答え』の紙だ。

ホログラムにも問題が表示され始めている。5教科×各10問で先着50人が勝ち抜きだ。しばらくの間、スパーダやマイクら5教科の担当は難易度調整に頭を悩ませていた。

だんだんと雲霞のごとき生徒たちが動き出す。とりあえず紙を拾う者、ひたすら問題と睨み合う者様々だった。

『さあ第一種目スタートだ!トップで駆け出すのは〜〜?』

ブワッ!挑戦者たちを巻き上げるように……否、紙と生徒を巻き上げるほどの突風が起こる。上空に飛び出した青い体操服は下からでもわかる程に自信のある表情。その手には何も握られていない。

『B組神田だ!文字通りトップに“飛び”出した!』

「あんまり生徒のこと舐めるんじゃねーよ!」

空を舞ってそのまま先頭を独走。あっという間にゴール付近へとたどり着く。ザッ、という音とともに着地しスパーダの前へと向かってきた。

「第7問、答えはハインリッヒ3世」

「……正解」

小さなガッツポーズを浮かべゴールのゲートをくぐっていく。授業中から思っていたがやはり能ある鷹は爪を隠す、というか見た目に依らないというか……ノリ系の見た目とは裏腹にしっかりと実力を見せつけてきている。

『そのままトップでゴーーール!他に続く者は現れるのか!?』

神田 颯鳴(かんだ そうめい)。個性 風雷。

雷をまとった風を自在に巻き起こすことができる。ちなみにB組推薦入学の1人だ!

ゴール者が出たことで種目の勝手がわかったのか、続々と個性の色が大きくなってくる。空も地面もバコンだのドカンだのと響かせながら競技は続いていった。

『解説のイレイザー!今回の見どころは!?』

『答えを取るかゴールを取るか、答えを取るなら自分で探すのか誰かから奪うのか。やはり一番は判断力だな』

その声をかき消すように1人の生徒が爆風とともに突っ込んできた。前々から思っていたが、機動力と引き換えに後ろが惨事になるのが玉に瑕である。

夏目は咥えていた紙を見ながら理科担当のボルサリオンに答えを告げた。

「4問目、螺旋状に動く」

「正解!やるなあ」

ボルサリオンはきっと心からそう思ったのだろうが、夏目はずっと準優勝だから当然だとでも言いたげな顔でゴールゲートへと向かっていった。

ちなみに何でわざわざ教科ごとに教員が正誤判定をしているかというと。想定解以外の解答が生まれる可能性も否めないのと、“万が一”のとき近くにいた方が対処しやすいからである。

敵の侵入はもとより競技の性質上、生徒同士で揉めることもないとは言い切れない。そんなときのために4人もステージにいるのだ。

『フィニィィィッシュ!ただ今の通過者をもって第一種目は終了だ!』

そんな懸念もなかったかのように無事に50問を終え、ヒーロー科39名と普通科、サポート科の数名が第ニ種目へと駒を進めた。

ステージの片付けも含めて数十分のインターバルの時間となった。ちなみに数学の問題を自力で解いてくる生徒がいなかったのかエクトプラズムは「授業ノ質ヲ上ゲネバ……」とぼやいていた。

 

 椅子に座って生配信を見ながら水鏡 潜里(みかがみ せんり)は考えた。邪念はいらない、何度もそう思ったがどうしても振り切れなかった。

「悪いな、大イベントだってのに」

「いえ。これが仕事ですから。でも私より適任がいたはずでは?」

金色のグラデーションが入った赤髪の男が彼女のもとに寄ってくる。暗闇で見たら腰が抜けそうな威圧感。慣れているのか水鏡は動じなかった。

「連絡はしたんだがすぐには来れないらしくてな。あっちも色々あるんだ」

「そりゃあ北海道ですものね」

そう、水鏡はいま雄英高校を飛び出して北海道に来ているのだ。理由は単純でこの男に呼ばれたから。なぜ呼ばれたのかも聞かされている。

「そろそろ会議始まるから戻ってこいよ」

「はい」

リュックだけ掴むと椅子をしまって水鏡は部屋を出た。

 

 ステージの転換が終わり第ニ種目の準備が整った。と、言っても10本の旗が立てられただけ。

「第二種目はフラッグバトル。チームを組んで自陣の旗を守る、至ってシンプルなゲームなのさ」

1チーム5人で10チーム、そのための10本の旗。誰と組むかどんな戦略を取るかが鍵となるのは間違いない。

「もちろん守ってばかりでは勝てない。積極的に相手チームの旗を取ってほしい。最終的に持っている旗の数が多かった上位3チームを勝ち抜きとする。それじゃあ今から10分でチームを決めてほしいのさ」

3年生ともなれば自分と相性のいい個性が誰かわかってくる。それを踏まえて組むのが定石だ。

さてさて生徒たちの様子は……やはり空間に大きく作用する個性を誰が取るかで話し合われている。限られた時間でどうチームアップするかもヒーローに必要な能力だ。

「旗を隠す、個性で中にしまうなど見えない状態にする以外は何をしてもOKだ。制限時間は20分。それでは健闘を祈る」

スタートの合図が鳴り響く。まずは相手の出方を窺うチームが多いが……合図と同時に駆け出すチームもゼロではなかった。

「変身!」

1つは甲斐のチームだ。“装甲”の個性によって赤と銀のアーマーが彼の身を包む。そのままスピードを上げ、敵陣へと突っ込んでいった。だが相手もヒーロー科。そうやすやすと勝利は奪わせてくれない。

「真正面から突っ込むなってずっと言われてたでしょ!」

紺色の髪をした女子生徒のセリフが言い終わるや否や甲斐の横をトランプカードが掠めた。肩上くらいまでの短い髪は中性的な印象を与える。

鋼野 真礼(こうの まあや)。個性 カード。

トランプやトレカなど、いわゆる“カード”を硬化させることができる。カードは消耗品のため定期的に通販で箱買いしてるらしい!出費!

「言われなくても知ってるよ、鋼野!」

それでも構わずに突進してくる。正面からは防げないと思ったのか、横から蠍の尻尾が伸びてきた。甲斐は反応こそしたが、その柔軟な動きを完全に避けることができず捉えられてしまった。

『天宮!搦手で甲斐を抑え込んだ!体躯を感じさせないスピード!』

「これが特訓の成果というやつよ。単騎で来るとは感心できんな」

「ごめん、三騎なんだ!」

上空から声がする。マイクの実況か?いいや、違うのは瞭然。顔を上げると背中に翼を生やした生徒が急降下してきた。すかさず鋼野が背中を狙ってカードを投げるも、空中で翼を分離させ上手く躱す。その翼は影を纏った鷲の姿を取って独立して飛び回っている。

着地した彼は、鋼野へと肉弾戦を仕掛ける。体格こそたいして差はない(むしろ鋼野の方が背が高い)ものの純粋な筋力の違い、そして近接戦闘における個性の汎用性から徐々に押されていた。

獅子王の牙(レグルスファング)!」

右手から生み出された黒いライオンは真っ直ぐに鋼野へと向かっていく。何十枚ものカードを広げて扇形の盾にするも踏みとどまるのが精一杯になってしまう。

その隙をついてさっき離した鷲が見事にフラッグを回収していた。

『おおっとこれはナイスプレー!見事な奪取!』

「ありがとう、鷲さん」

転流 創真(てんりゅう そうま)。個性 動物創造。

影をまとった動物を生成、使役する!動物は意思を持ち、ダメージを受けると消える!

「後ろ!避けろ!!」

それが自分に向けられた声であると判断するのに時間はいらなかった。声の主が視界に入るか否かのところでとにかく横へと転がる。上がる土煙の中を見ると、さっきまで転流がいたところには天宮の尻尾でグルグル巻きにされた甲斐が打ちつけられていた。

「簡単に渡すと思うなよ!」

遠距離に長けた鋼野に近距離向きの天宮、対してどちらかというと遠距離の転流としばらくは解放されなさそうな甲斐。

マイクが他所のプレーに盛り上がっているのだけはよく聞こえた。

それよりも目的の旗は得たため甲斐を捨てて早急に撤退するべき状況である。距離を取りつつ何体か生成する準備は抜かりない。

「2対1か……」

「ここからは4対1(よんいち)にしてやるよ!」

第一種目のときと同じ突風が周囲を乱す。顔を見ずとも声だけでわかる。もう1つスタート直後に動いていたB組の神田(カミサマ)の御成だった。

その手には2本のフラッグが収められており、実力から考えて普通科とサポート科がやられたことは容易にわかった。もっとも神田の横に立っていたのはその普通科だったが。

「フラッグさえ返してくれれば甲斐くんは離してあげる」

「申し出はありがたいけど今はフラッグ(こっち)の方が大事でね」

転流がフラッグを揺らすと残像も見えないようなスピードでその姿が消える。

『B組転流、奪取の次はダッシュか!?』

獅子身中の虫だったにもかかわらず一瞬で脱出、自陣へと帰還した。

「ナイスタイミング。助かったよ、早瀬さん」

「どーってことないって。あんた軽いし」

早瀬 飛狩(はやせ ひかり)。個性 光速移動。

光のような速さで直線運動ができる!スピード勝負では負けなし!

ガラガラガラと大量のフラッグが置かれる音がする。1、2、3……8本。神田チームが取ったもの以外は全てここにある。

「わあ……!飛狩ちゃんすごい取って来たんやな」

「やっぱり速攻よ。じゃあ、防衛戦いきますか!」

集められたフラッグを獲物にたくさんのライバルが彼女たちを狙っていた。

『狙われた3人!さあ勝負の行方は!?あれ?これ4人1組だよな?』

「おい天宮!そろそろ離せ!!」

 

体育祭編後編に続く。

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