Fate/electronic wizard 作:skyfish
それに、独自の設定(私の思い込みみたいなもの)を加えています。
東京都 観布子市 伽藍の堂
「では、さようなら」
ギィと扉が閉まる。1週間前に訪れた魔術師 バゼット・フラガ・マクレミッツが伽藍の堂を後にした。一仕事終えたことに加え、最大の敵でもある彼女がいなくなったのを見て橙子は煙草を取りだし火をつけた。普段から彼女の喫煙姿を見ている幹也は、彼女の表情が本当に煙草を楽しんでいる顔に戻ったのを確認した。この一週間の間吸ってはいたが一度もあの顔をしなかったし、メガネもかけなかった。それほど、封印指定執行者である彼女を警戒していたのだ。
「所長お疲れ様です」
「ありがとう。黒桐くん」
一週間ぶりとなるメガネ姿の橙子はコーヒーを受け取る。一口すすって満面の笑顔になる。
「そういえば、白野ちゃんいませんでしたね」
「サーヴァントをちゃん呼ばわりする黒桐君が驚きだけど、彼女は一足先に冬木市に入っているそうよ」
彼女には単独行動スキルがあるからね、と付け加えながらコーヒーをすする。
「それより橙子さん。その設計図のようなもの、なんですか?」
幹也は机に置いてある紙の束を指差す。よく分からないが、配電盤のようなものも見受けられる。パソコンの内部部品を描かれているようにも見えなくもない。
「ああ。これは彼女のサーヴァント……岸波さんが義手の報酬で渡してくれたものだよ。簡単に説明するなら、魔力を通すだけで魔術を起動させる機械の設計図だそうよ。まったく、トンデモナイ物を渡してくれたわ」
「魔力を通すだけで? ということはそれがあれば鮮花にも魔術ができるということですか?」
「ええ。限定的に、だけどね。プログラムを組めばより高速に、より大きな魔術が発動できる。今の魔術師にとって厄介なものだよ。ただ、問題があって“今”は造ることが出来ないわ。早くても10年後かも」
「なんだ。使えないものだったんですね。なんでそれで了承したんです?」
「だって、おもしろそうだと思ったから」
「またそんな理由ですか……今回は料金かかってないからいいものの、無計画な散財は止めてくださいよ」
はー、とため息をつく社員を余所にメガネを外す。
「ま、その問題が重要なんだがな……」
名前はなくただ『端末』とだけなずけられているこれの問題。それは文明側の問題、つまり、技術的にこれを制作するのが“今の時代”では無理なのだ。簡単に言うなら素材が出来ていない。文明側の発展によりこの『端末』と呼ばれるものが完成する。言わば、科学と魔術の融合である。もしこれが世に出れば、魔術師世界の常識が覆かねないマジックアイテムだ。
「ところでそれ、もし橙子さんが作ったとして、名称はどうするんですか?」
「名前? う~んそうね……」
再びメガネをかけ直した橙子は数秒考えて言った。
「Casting Assistant Device――――術式補助演算機……かしらね」
ふ~っと、紫煙をゆっくりと吐き出した。
冬木市
「到着……っと」
JR冬木駅のホームにウィザードはいた。もちろん東京からここまで公共の交通機関を利用したわけではない。バゼットから教わったルーン魔術(知覚阻害)と緑色のマントの能力を合わせて見えなくし、銀の具足で夜の高速道路を走って移動してきたのだ(休憩によった街でひどい目にあったが)。あれは平面移動において最小の力で滑るように移動できるため重宝している。といっても、それを使用できるに至るまでが非常に大変だったのだが。いろいろ思案しているとぐ~っとお腹が鳴った。
「………まずはご飯にしよ」
夜ずっと走る&休憩返上の戦闘のせいでお腹が空いていた彼女はマスターから受け取っていた千円札を片手に昼食することにした。
そして、出会った。出会ってしまった。『紅洲宴歳館・泰山』そのお店に入る。店内から漂ってくる“懐かしい”香りに連れられて。
「いらっしゃいアルー。ご注文何にするアルカ?」
「特製激辛麻婆豆腐のごはんセットでお願いします」
「本気アルカ?」
「無論。もとよりそのつもり」
了解アル~と言いながら店長は厨房に戻って行った。トントントンと材料を切る音が響く。出来上がるまでお冷を飲んでいると、人席空いた隣に人が座った。
「おお、キレイ久々アルネ。いつもので言いアルネ?」
「ああ。よろしく頼む」
「毎度ね~」
調理の音以外なんの音もしない。最初に口を開いたのは言峰だった。
「ところで、何故君がここにいるのか、聞いてもいいかね?」
「ここで食事しちゃいけないとルールにあったかな?」
「いや、食事をとるサーヴァントなど今までなくてね。正直興味を抱いただけだ。ところで、マスターは元気かね?」
「御心配なく。もうすぐ復帰できます」
「そうか、それは楽しみだ」
「ええ。とっても」
『はっはっはっは』『うふふふふふ』と笑う二人。だが、目線を合わせず、表情もまったく笑っていないため不気味以外の何物でもない。他に客がいないことが唯一の救いだろうか。
「はーい。お待たせ。麻婆豆腐お待たせアル―」
ゴトン。と二人の前に麻婆豆腐がおかれた。偶然にも、二つとも激辛麻婆豆腐のごはんセットだった。
「「………………」」
このとき、初めて2人は目線を合わせた。バチバチっと火花が散った、ように見えた。
「「いただきます」」
レンゲを取り、麻婆豆腐をかきこむ。二人だけの闘いが始まった。
そうして十数分後。ごちそうさま、と2人は麻婆豆腐を完食した。カチャンとレンゲが置かれる。
「おー見事に完食したアルネ。これを食べきれたのキレイ以外で初めて見たアル。おかわりするアルカ?」
「お会計で」
「私はおかわりをお願いする。次はご飯無しで」
「はいはーい」
店長にお金を渡す。店長はレジで離れた間に言峰が話しかけた。
「また、ここに来るかね?」
「生きている間は」
「そうか」
言峰に沈黙で答え、ウィザードは店を後にした。
泰山を後にし、冬木市を見て回ることにした。バゼットと合流するのは安全を考慮して隣町の廃墟と事前に決めてある。隣町は新都側に位置しているため、新都はあとで見て回ることにした。とりあえずあの学園を見に行く。
そこで二つの異常を見つけた。
1つは結界だ。学校の敷地をすっぽり覆うように結界が張られている。一度、ここに逃げ込んだ時はなにもなかったからこそ分かる。自分では発動したらどうなるか、そこまで把握できる力はない。ただ、あまりにも禍々しいものだということは感じ取れた。問題はこの異常を感知させない術が一切ほどこされていないのだ。術を意図的にかけていないのかそれとも持っていないのか。これではまだ蒼崎橙子の結界の方が優れている。負の性質を持つ結界はそれを受ける人に如実に現れる。だからそれを感知させないために感知阻害魔術なりなんなり付け加えるのが普通だ。だが、これにはそれがない。おそらく半人前の魔術師でも察知できてしまうだろう。
もう一つは、遠目で学校内部を見て確認した。結界内の禍々しい魔力の流れを上書きするほどの濃い、清らかな魔力の流れ。例えるなら黒一色の中に異様に目立つ白点。その白点が校舎を歩いている。間違いない、あれはサーヴァントだ。自分は事情があるため人のことを言えないが、まさか昼間から堂々と実体化して、尚且つ校舎を見て回るサーヴァントがいる。呆れつつも、とりあえずは良しとしよう。クラスは分からないが、顔が見れただけでも儲けものである。
(これはあまり長居しない方がいいわね……)
サーヴァントが昼間から動いていると分かった以上ここを離れたほうがいい。町を望める柳胴寺に行く予定だったが、止めて新都に戻ることにした。少し早めに町を出たほうがいいのかもしれない。
(だけど、あそこだけは)
新都のほうに足を向けた。
新都の真ん中に存在する広い公園。市民の憩いの場であるはずのその場所は、何もかもが死んでいた。荒れ放題で、公園を覆うようになっている林は、まるでここを見ないように作られて結界のようにも見える。この場所こそ、前回の戦争の決戦地。彼女は知らない。前回の戦争の傷跡。その慰霊碑の前にウィザードはいた。
「………ソウェル」
発火のルーンで線香に火をつける。手を合わせ死者を弔う。ここに訪れたのはちゃんとした理由があった。マスターには言っていないが、この場所が彼女の、いや、彼女の元となった人がかつていた場所。蒼崎橙子を探していた際にマスターに内緒で探した。オリジナルがどんな人なのか知りたかった彼女は調べ上げ、ここに辿り着いた。淡い期待を寄せていたが、結局は無駄だった。
「ふーっ……」
人形師が愛好するタバコを二つ受け取っていた彼女は1つ取り出し火をつける。ゆっくりと紫煙を吸い込み吐き出した。
「……まっず」
あまりの不味さに呟く。向こうにいた頃、いろいろ吸っていたがあれ以上の不味いものがあるとは思わなかった。それを味わいながら気持ちを整える。自分の目的は終えた。やることがなくなったので、ウィザードは冬木の町をでることにした。
のだが、その道中で異常を察知した。路地裏の奥。魔力の乱れを感じる。遠見の魔術をしようする。路地裏にいるのは2人。先頭を走る影はたまに止まり、でもすぐに走り出すを繰り返す。その後ろから来る影はゆっくりと歩いている。
追う方は獲物をゆっくりと追い詰める獣のようで
追われる方は転びながらも必死に逃げる子羊のようで
そして、問題が魔術の隠ぺいが出来ていないこと。それに魔力の質が似ている。
(………はぁ。変わらないな、私は)
溜め息にも似た呟きを残し、路地裏に入った。
美綴綾子は恐怖に支配されていた。学校からの帰り道、薄暗い空の下歩いていると背筋に悪寒が奔った。自分より20m先。そこに見慣れぬ女性が立っている。ジーンズにセーターのみの服装で寒そうであるが、そんなことはどうでもいい。その女性から言い表せない何かを感じ取った彼女は逃げる様に横の道には行った。後ろを振り向く。あの女がこちらをじっと見ていた。しかも、先ほどよりも近づいている。
――追いつかれたら終わりだ
本能が何かを叫ぶ。そして、彼女は長身の女から逃げる様に走った。町を知り尽くしている彼女は攪乱する様に逃げる。だが、そんなことなど意味がないと主張するかのごとく女性は距離を詰めてきた。10mまで近づかれたときに見てしまった。見た目は黒いボンテージで、紫色の眼隠しをしている。服装が変わったことに驚きはしたが、それ以上に恐ろしく思ったのはその顔だった。笑顔で私を追ってくる。それを見た彼女は後ろを振り向くのを止めた。立ち止まったら殺される。直感が体中に駆け巡り、さらなる恐怖がのしかかる。石につまづき、壁にぶつかりを繰り返して逃げた先は非情だった。
「―――あっ しまった!」
行き止まり。普段の彼女ならあり得なかったが、恐怖に怯え正確な判断が出来なくなったことによるミスだった。マズイと後ろを振り向くが、車にぶつかったような衝撃を受け壁に叩きつけられた。
「が―――」
「随分と逃げ回りましたが、鬼ごっこは終わりです」
壁に押さえつけた女が言ってくる。
「マスターの命令です。その血、私の糧になってください」
女の口が開く。暖かい息が伝わってくる。恐怖で目を瞑る。背筋が凍り、自分は殺されるのだと実感して
「頭上注意よサーヴァント」
ガキィィィン!!と音がなる。そして、拘束されていた痛みがなくなった。何があったと思い目を開ける。
「何者ですか? アナタ……」
「素直に答えるわけないでしょ」
目の前にいたのは茶髪の女の後姿。黄色いコートに赤いスカートを穿いていて顔は見えない。鎖の突いた杭を構えるあの女に二丁のクラシックな銃を向けていた。
休憩で起こった戦闘については後の話で触れます。といっても深く書かないつもりです。
エクストラの端末がスマホっぽい
↓
劣等生のCADのもとになった(と考えたら面白いなー)
みたいな感じでなりました。
この白野は習得できる魔術はなんでも吸収する考えを持っています。&彼女自身もできる魔術はコードキャスト以外持っています。それも後日
綾子を助ける話は最初ありませんでした。でも、ユーフォ―の綾子が式にそっくりすぎて。空の境界が一番好きな私としてみると、どうしても無視できなくなってしまい。というか怒り?のようなものが湧き上がって。
なんかすいません