Fate/electronic wizard 作:skyfish
住宅街の中。その電柱の上に居座るのは飄々とした態度の青い槍兵。だいたい1週間と少しぶりの再会になった。かつてのバゼットのサーヴァント・ランサーである。その目線の先にいるのは栗色の髪の少女。だが、その雰囲気は先ほどと変わっている。女の子らしさが消え、姿形は変わらないのにどこか男らしさのようなものを纏っている。彼女の手にはランサーの紅い槍より1mほど長い。
「バーサーカーの時のもんとは違うな。てめぇ一体何者だ」
「細かいことを気にするのだなケルトの大英雄殿。そんなに儂の、いや、この娘のことが知りたいか?」
「うるせえ。糞マスターに素性の調査も含まれてんだよ。けど益々分からねぇ。不確定要素は早々に消えてもらうってのが糞の方針だ。悪く思うな」
「フッ。マスターを糞呼ばわりか。相当嫌っているようだな」
「当たりめーだろ。全てのサーヴァントと戦え、止めを刺さずに撤退しろ。なんて命令する腰抜け糞野郎だ。逆らわねえがうっぷん溜まってんだ」
「同情はしよう。だが、ストレス発散紛いで貴殿の腕が雑にならなければよいが」
「言ったな。ランサーもどき風情が」
「ふん。事実を言ったまでだ、クー・フーリン」
2人の目線が混じり合うのは一瞬。最初に動いたのは彼女だった。ふっと風が通り過ぎたように姿が消え
「せえええええええええええええいいいいっ!!」
ランサーの真横に現れた彼女はその槍を縦に振り落とす。ランサーはそれを受け止める体制に入る。刃がゲイボルグに触れ
「!?」
伝わる感触の違和感に咄嗟に後ろへ飛んだ。槍はそのまま電柱へ奔り、裂けた。コンクリートと鉄がぶつかる音は一切なく、あるのはヒュンといった空気を裂いた音のみ。堅いコンクリートが柔らかいチーズみたいに裂かれた。そして、槍に刃毀れはない。避けられたことに別段彼女・ウィザートの目立った動揺はない。変わりに口元が吊り上がっていた。それは戦士のみが出す表情。強敵と戦うことに対する喜び。その感情が滲み出ていた。避けた電柱を足場にタンッとランサーの後を追う。その方角少し先にあるのは小学校。戦うのに適した場所へ引くと同時に有利な場所へと誘うランサー。得物が槍である以上住宅街のような狭い場所ではなく広い場所が好ましい。それは同じく槍を使う彼女も同じ。 裂けた電柱を足場にもう一度蹴りランサーのあとを追った。
「今回は見逃します。次会った時は覚悟してください」
「あ、おい!」
バゼットは士郎に手短に言ってウィザードの後を追う。一人取り残された士郎は後を追うかと思ったが下手に手を出すのはまずいと思い家に戻ることにした。途中キスされたことを思い出し唇に触れたがブンブンと頭を振りそのことを必死に忘れようと努めた。
ジュニアスクールの塀を飛び越え敷地内に入る。そこは既に戦場と化していた。校庭の真ん中に佇むのはウィザード。槍を構え微動だにしない。それを中心に所々で土煙が上がる。
「でええええええい!!!」
フェイントを入れたランサーの攻撃。それをウィザードは槍で受け流す。
「オラオラオラオラオラオラオラオラ―――!!!」
「ぬううううううううううううううう―――!!!」
ランサーとウィザードの槍の攻防が続く。2人の攻防を見ていると違いが見えてくる。ランサーが攻撃すると地面は抉れヒビが入る。一つ一つが重い一撃で爆音が鳴り響く。それに対しウィザードの槍はそんなことは一切ない。だが、地面を斬るとき何の抵抗もなく斬れる。文字通り全てを斬り裂く一撃。ランサーが力に重きを置いたものならウィザードのは速さに重きを置いた一撃。両者違う槍技を駆使する。薙ぎ、払い、打ち、突く。双方使う武器は同じだがわずかにウィザードの槍のほうが長い。基本リーチがある武器が闘いを有利に進められる。だが、その程度ランサーの枷にはならない。素早く懐に入り込み一撃を加えようとする。ウィザードもそれを許さまいとランサーの顔めがけ槍を突き出す。それをランサーは上へ受け流す。
「どじったな間抜け」
今のは払うなりして動きを止めるか阻害するのが最適だった。槍は長ければその分懐に入られたとき対処が出来ない。そのまま突っ込む。ウィザードは手首を曲げ槍に力を加える。柄が曲がり、受け流された切先がランサーの頭に修正される。ウィザードの槍は思っていたより柔らかい。おそらく木製。それに対しランサーの槍は鯨の骨から作られたものだ。強度ではランサーの槍が、柔軟性はウィザードの槍が上だ。
「ちっ!」
ゲイボルグを使い上へ確実に払い上げる。一撃を入れるチャンスを逃したがスピードは緩めない。何も槍だけが武器じゃない。勢いはそのまま。回転も加えて、その華奢な体に強烈な回し蹴りをくらわせる!
ランサーの回し蹴り。助走も加えたそれをまともに喰らえば致命傷になるだろう。脇腹を狙ったそれは、躱された。ウィザードは体を大きくエビぞりさせ躱していた。それだけで終わらない。躱したランサーの脚を掴む。その勢いに乗るように足を広げ、回転する。右足を軸に回し蹴りのベクトルを変える。攻撃を躱すのでも受け止めるでもなく勢いも利用する。ランサーが浮いた。さらに回転して速度を上げていく。
「お、おおお!?」
「どうるあああ!!!」
そして、投げた。ランサーは槍を地面に刺し止めようとするがその勢いは収まらず一階の教室に突っ込んだ。ガラスと壁が砕ける音が響く。結界を張ってあるから音が漏れることも人が集まることはない。ガシャンと音が鳴る。ランサーが首をゴキゴキ鳴らしながら出てきた。体中汚れているが傷は一つもついていない。
「わりぃ。てめぇの言う通りだった」
出てきて早々に言った言葉は謝罪だった。
「あーあ。こんなザマ師匠に見られたら蹴られちまうぜ」
ランサーの言葉を気にも留めずウィザードは槍の構えを解かない。警戒するのは当たり前だ。慢心なんて最初からない。何故ならランサーは本気になっていないことなんて分かり切っていたから。バゼットはあることに気が付いた。ランサーの槍・ゲイボルグが傷だらけになっているのだ。よく見ると刃も少し刃毀れしている。おそらくはウィザードが持つあの槍。あれは想像以上に斬れ味が鋭いのだ。
「このゲイボルグに傷をつけるなんてよ。一体どんなカラクリだ?」
『カラクリ? そんな小細工などなし。ただ全てを“斬る”その信念のもと打たれた正真殿の傑作』
「なるほどな感謝するぜ。今ので頭が冴えてきた。こっからは―――」
ランサーの姿が消え、ウィザードの後ろに現れる。
「仕切り直しと行こうぜ」
放たれる一撃をウィザードは感で何とか躱した。だが、そこにランサーは蹴りを加える。
「ぬう!!」
後ろに飛び衝撃を抑える。気持ち最悪だが槍を手放さない。もう既に次が来る!
「そらあ! ぼさっとしてる暇はねえぞ!」
上空から聞こえる声。咄嗟に槍を振り一撃を躱す。そこからは一方的な戦いだった。ウィザードは何とか急所狙いの攻撃を防ぐ。だが、明らかにスピードが上がっているランサーが有利に進めている。動きを封じようと手や足にも攻撃する。その度服が破れ白い肌が見えるが、刃が肌に触れた途端すっとすり抜けたかのように。そのあともランサーの独壇場が続いてもウィザードは傷一つ着かない。奇妙な現象は宝具だと早々に気づく。そして、そう時間が経たないうちにその正体を見切ったランサーは後ろに飛び距離を取った。ウィザードの両手両足の服は無残にも破けたがそこに傷はない。まるで最初から当たってなかったかのよう。
「てめぇ……これと同じだな?」
「ほう。これをすぐ見破るとはさすがだな。お主の槍が因果逆転の呪いならば、儂の体は因果逆転の加護。どのような攻撃も戦闘中ならば必ず回避する。これが儂の宝具だ」
「だがまあ、躱せても敵に追いつけなければ話にもならん。
「いいぜ。かかってきな。てめぇの本気を見せてみろ」
低く構え、ランサーへ疾走する。それをランサーは迎え撃つ体制に入る。槍を持っていない左手を口にくわえ
「来い―――相棒!」
フィイイイイイイイイイイイイイイイ!!!
甲高い口笛が鳴る。どんな手に出るか期待するランサー。
眼前に刃が迫っていた。
「なに!?」
咄嗟に槍を斬り払う。その隣を夜よりも暗い塊が通り過ぎた。さっきよりもスピードが上がっている。振り返るとそこには先ほどと衣装が違うウィザードがいた。
漆黒の鎧を纏い、大数珠を肩に巻き、巨大な特徴的な角はトナカイを思わせる。彼女は漆黒の馬に跨っていた。黒い毛並は街灯の灯りを映し、つやのある毛が輝く。そして、最後に変わったのが槍。長さがさらに伸びている。ランサーのゲイボルグの2倍。6m前後はあるだろう。
その姿はまさしく、サムライ。
「さて、名乗りを上げよう。 儂は 徳川四天王が一人、本多平八郎忠勝である! さあ仕切り直しと参ろうではないか!」
戦国最強の武人がケルトの大英雄に挑む。
久しぶり過ぎて書けねえ。一応このイメージはとっくの昔に出来てたんだけど文章に出来なかった。それと1話完結のはずが長引いた。どうしてこうなった。
大変お待たせいたしました