みんなも爆音で流しながら読もう。
次の日は俺も酒寄もバイトが入っていた。
相変わらずはちゃめちゃに忙しくて目が回りそうだ。
なぜか酒寄は癒やされたみたいな表情をしていたが。
……酒寄って実はドMなのかな。
酒寄ドM疑惑はさておき。
バイトという戦場をくぐり抜けた帰り道を、いつものごとく酒寄と2人で歩く。
「明日から夏休みだな」
「勉強にバイトに、頑張らなきゃ」
「ほどほどにな」
明日からの計画表もバッチリ、と鼻息の荒い酒寄。
それを横目で見ながら、俺は葛藤に苦しんでいた。
多少俺らが気を遣ったところで、このまま行けば酒寄は倒れてしまう。
人間としてそれを見過ごしていいのか。
でもかぐやの看病エピソードは原作中でも重要エピソード。
これがないと酒寄が甘えるという行為に出られないし、そうなれば、芦花が入り込むべき酒寄の心の隙間も生まれない。
……そこまで考えて気がついた。
俺は芦花の幸せのために生きている。
何を悩む必要がある、鬼にも悪魔にもなるしかないのだ。
まあ死んだり後遺症残ったりってわけではないし、なんとかするだろう。
未来の俺が。
「朝来? 聞いてる?」
「……ごめん、聞いてませんでした」
「大丈夫? なんか上の空だったけど」
酒寄が俺の顔を下からのぞき込んでくる。
うわ近い、顔が良い。
上目遣いやめてくださいおかしくなりそうです。
「大丈夫大丈夫、そんで何の話だっけ」
適当に誤魔化しつつ話を誘導する。
あぶない、俺がかぐやっほーしてしまうところだった。
「かぐやがさ、ライバーになるって言って早速配信したらしくてさ」
「さすが、行動の早さが尋常じゃないな」
「それがもう酷いのなんのって」
酒寄は俺にかぐやの初配信を見せてくる。
不協和音のジングルもどきに、最後はインカメで即顔バレ。
「こーれは酷い」
「でしょ? 『おねが〜い☆』とか言われて断り切れなくて、私が即興でジングル作ってあげてさ」
困った子だよと言いながら、酒寄の顔はとても楽しそうだった。
順当にかぐやにほだされてきている。
ちょろはだね。
帰ったらかぐやが配信用とか言って物増やしてて、早速酒寄がキレてる。
そんな仲良し2人組を余所に、用意された料理の配膳を始める俺。
うん、俺も夜ご飯2人と一緒に食べてるんだ。
かぐやが当たり前のように俺の分も作るから。
美味しすぎて断れなかった。
食費はちゃんと出してる、なんならちょっと多めに。
そのときの会話を思い出す。
「俺多めに出すからね」
「いやっそういうわけにはいかないよ」
「でも作ってもらって場所も提供してもらってるわけだから」
「そんなの関係ないよ、半分ずつなのは譲れない」
「……んんんんんじゃんけんターーーイム!」
「えっ急になに」
「なんか楽しそうなことしてる! かぐやもやる!」
「いいね! じゃあ俺かかぐやが勝ったら俺7割な!」
「えっあのっ」
「はいじゃーーーんけーーーん」
さすがに2vs1で運勝負に勝てるほど酒寄もスーパーではなかった。
そしてかぐやが勝ったので、俺の負担7割を勝ち取って今に至る。
我ながらスマートな説得だったと思う。
「「「いただきます」」」
今日もかぐやのご飯が美味しい。
食事は定額制との酒寄のお達しを忠実に守っているかぐやだが、料理のクオリティは日に日に上がっている。
あー胃袋つかまれて辛いよー……
「圭、圭」
「かぐや? どうした?」
「圭もコラボしよ!」
ちゃぶ台から身を乗り出すようにかぐやが誘ってきた。
「残念だけどそれは無理かな〜」
「え〜なんで〜!」
断られたかぐやはぶーぶー言っている。
いやでもさ。
「冷静に考えて? 俺やってるの勉強系チャンネルだよ? コラボって何すんの」
「むむむ……」
そう、俺はライバーの端くれとはいえ、やってる内容が内容である。
破天荒でバラエティに強いかぐやとは毛色が違いすぎる。
「彩葉〜、一緒に何か考えて?」
「私に振らないでよ……」
「でもかぐやいろPチャンネルだよ? 2人で1つだよ」
「そう言われても……」
まあそもそも俺はあくまで男で、コラボしたらアンチ増えそうだよねってのもある。
しかもネットリテラシー皆無なかぐやなので、絶対なんかやらかす。
俺のアンチはともかく、かぐやにアンチがついてヤチヨカップの結果が変わったら切腹ものだ。
さすがに酒寄もわかってるよな……?
そんな俺の希望は無残にも打ち砕かれた。
「あ、そうだ。かぐやプログラミング得意だし、圭のチャンネルに出張講義しに行けば?」
「そ! れ! だ!」
「酒寄さん?????」
何普通に提案してるんですか???
「圭〜これならいいでしょ〜? かぐやとコラボして?」
「いやいや、俺は男だからさあ……」
「? なんか関係あるの?」
ええい、これだから生後1週間の宇宙人は!
酒寄さんなら俺の言いたいことわかりますよね!?
「なに?」
酒寄ぃ……!
お前もかぁ……!
「圭……おねがぁい」
「………………」
結局コラボすることになった。
そこからのかぐやの快進撃は凄まじかった。
原作を知ってる俺ですら驚愕する伸びなのだから、異常と言っていいと思う。
やりたいことは全てやる、思いついたら即実行。
メントスコーラやら食レポやらお悩み相談やら、被りも流行も一切気にしない。
積極性とカリスマ、配信者として必要なものを持ってるよなあ……
俺がそれとなく誘導したからか、芦花や真実からも積極的にレクチャーを受けているようだ。
芦花はメイクのやり方とか自撮りのコツとか教えてた。
元々顔面国宝の2人がそんなことをするんだから、もう攻撃力やばかった。
真実とはなんかタピオカラーメン食べに行ってたな。
動画見て美味しそうだなって思ったから、後日1人で食べに行ったよ。
あとはかぐ芦花真実の3人でKASSENやったりもしていた。
2人曰く、かぐやは筋が良いらしい。
ペットボトルロケットの回なんかは普通に俺も参加した。
理科実験として教材になるからね。
裏方のつもりが初っぱなに名前出されて焦ったが。
そういえば、俺とかぐやのプログラミングコラボは意外なほど平穏に終わった。
俺のツクヨミネームは「
講師が天才肌のかぐやなので、なぜか俺が生徒兼アシスタントになっていたが……
まあ評判は上々といったところ。
半分くらいの視聴者は俺が振り回されてるのを面白がってたな、あれは。
かぐやは誰とでもあんな距離感だから、特に炎上もしなかった。
……正直楽しかったので、誘われたらまたやりたい。
かぐやが知ったら調子に乗るので、内緒な。
まあそんなこんなで、酒寄7割俺3割くらいで巻き込まれつつ、かぐやは順調にランキングを駆け上がっていった。
酒寄は予定が狂うと嘆いていたが、それでも自然な笑顔でいる時間が増えてきたように思う。
いやー、よかったねえ……
とか思ってたら、かぐやが「かぐや争奪KASSEN選手権」なる企画を勝手に立てたせいで、酒寄が般若のごとき形相になってしまい頭を抱えた。
いろPが全部蹴散らしていたが。
俺はゲームでは役立たずなので……ごめんね。
かぐやの快進撃の副次効果で改善したのが、酒寄家の資金繰りである。
ライバー活動による収益がたんまりらしい。
もう既に、真面目にバイトしてるのが馬鹿らしくなる位には稼いでいるようだ。
酒寄は急に家計に余裕が出たとて急にお金使おうとはならないみたいだけど。
この前もかぐやに釘を刺しにいっていた。
「あのね、こんなんあぶく銭、水物なんだよ」
「でも〜、合法でございましょ?」
たまたま俺も部屋にいたから、酒寄と2人で顔を見合わせた。
心は同じ。
かぐや、うぜぇ〜〜〜。
今日(4/15)の夜から明日にかけて、はるばる九州のどこぞから富士市にスタンプラリーしに行きます。
4/17更新分は用意してありますので、心置きなく楽しめる……!