二次創作の始め時です!
一から展開を練り上げるのも当然よし、本作の設定流用も大いに歓迎。
あなたの考える最高のハッピーエンドを、あなた自身の手で作り上げるのだ!
というか私がそれ読みたいから書いて♡
(読者批判したいわけでは無くて本当に書いて欲しい、書いてくれたら私が頑張らなくて済む)
『ヤチヨは最近ドジョウすくいを練習してるんだー。すっごく面白い踊りだから紹介するね。じゃ、いくよー? あそっれ、あよいしょっ』
ツクヨミにログインした私の目に最初に入ったのは、スクリーンに流れるヤチヨの配信だった。
……でもこれはライブじゃない、再放送だ。
ヤチヨ強火オタクの私が言うんだ、間違いない。
コラボライブの時教えてもらったヤチヨの連絡先は、全てつながらなかった。
何があったのかはわからない。
でも何かあったのだろうし、きっと何か知っているはずだ。
だけど、手がかりもない中でどうすれば……
「ん?」
視界の端に何かが入った。
そう、あれは白くてもふもふの——
「待て、なんであんただけで!」
FUSHIだった。
FUSHIは私から逃げるようにちょこまかと動き、最後は袋小路に飛び込んでこちらを向いた。
「どこにいるか、教えて」
FUSHIは何も言わない。
返事をするつもりもなさそうだ。
だったら、もういい。
「自分で探すよ」
踵を返した瞬間、私の背中にFUSHIが言葉を投げた。
「ばかたれ、どこを探すって?」
「教えてくれないなら、世界中!」
即答してやった。
私は本気だ。
やると言ったら、やる。
FUSHIは小さな目を少し見開いた後、少し黙ってからこう言った。
「目を開けてみろ」
言われたとおり目を開けてみる。
すると、ARモードになった視界の中にFUSHIがいた。
「こっちだ」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
さすがにパジャマで外には出られないし、芦花にも一緒に来てもらわねば。
寝ていた芦花を起こして事情を説明して、出かける準備をしてもらう。
ヤチヨに圭のことも聞くつもりだから、芦花もその場にいたいはずだ。
とりあえず目についたからという理由で制服に着替えた。
身だしなみはまあ、芦花に面倒見てもらってて良かったなという感じ。
おしゃれさんの芦花には申し訳ないけど、スマコンと最低限の身支度だけしてもらって。
置いて行かれたかもと慌てて外に出ると、即座にFUSHIが走りだした。
FUSHIは迷いなく進んでいく。
横断歩道を渡り、電車に乗って、路地裏を駆け抜けて。
たどり着いたのは、何の変哲も無いアパートの一室。
警戒しながらドアノブを回すと、何の抵抗もなく扉は開いた。
芦花と2人、少しずつ扉を開けて中をのぞき込むと……そこには、2つの水槽があった。
小さな水槽の中には、FUSHIに見た目がそっくりなウミウシ。
大きな水槽の中には、タケノコの見た目をした何かが水に沈められていた。
タケノコからコードが複数伸びていて、いろんな機械につながっていて。
……なんというか、見てはいけない物を見たような気がした。
「ここからツクヨミに入れ」
この部屋に入った時点で、どのみち後戻りなんてできない。
ふっと一つ息を吐き、目が合った芦花に頷きかけて。
覚悟を決めて、ツクヨミに潜った。
そこは、見たことがない場所だった。
誰かの……そこで後ろを向いて座っている人の私室なんだろう。
「……かぐや?」
その後ろ姿は、かぐやに見えた。
でも、振り返ったその人は。
「ヤチヨ」
私の中で、全てがつながる感覚があった。
すごく馬鹿げた発想、でもこれで全てが説明できてしまう。
「……ヤチヨは、かぐやなの?」
ヤチヨが振り返って、目を見開いた。
ヤチヨが私を見て、それから芦花を見る。
私は、ヤチヨは突拍子も無いことを言われて困惑してるんだと思った。
「変なことを言ってるのはわかってる。でも……」
ヤチヨは薄く微笑んだ後、屏風をスクリーンにして、語りはじめた。
「今は昔——」
月に帰った後仕事をしていたかぐやの元に、私の歌が届いた。
それでもう一回地球に行こうと思ったかぐやは、仕事を全力で終わらせて、引き継ぎもしっかりやって連れ戻されないようにしてから、地球に向かった。
月のテクノロジーで時間も越えて地球に向かうかぐや。
だけど……
「途中でおっきな石に当たっちゃったの。それでたどり着いたのは、ざっと8000年前の地球」
芦花は話についてこられないのか、目を回している。
私だって、あまりに途方もないスケールの話にクラクラしてきたよ。
ヤチヨはそのまま続けた。
一緒にいた犬DOGEだけがなんとか体を得て、それを通してのみかぐやは世界と交流できた。
時は経ち、インターネットができて、これなら自分も世界と深く関われると考えて。
仮想空間ツクヨミを作り、ツクヨミの歌姫として私と再会できたのだ、と。
「なーんて、これじゃあ手放しでめでたしめでたしとは、いかないか〜やっぱ〜☆」
ヤチヨは額を打ち、おどけて見せた。
いつもの、いつも通りすぎるヤチヨの笑みだった。
私の人生を救ってくれた、ツクヨミの歌姫。
我が家でワガママに暴れ回っていた、愛おしい同居人。
なんで気づかなかったんだろう。
ヤチヨの歌があんなに私に染みこんだのも、RememberがReplyと同じメロディだったのも、ヤチヨが運命を知っているかのように静かに笑っていたのも。
全部、全部……
……話を聞いて、2つ大きな疑問があった。
本当は順番に聞くべきなんだろうけど、私にそんな心の余裕は無かった。
「私といたかぐやは? 圭の話が全然出てこなかったのは、なんで?」
「まずかぐやだけど、今もまた同じ輪廻を巡ってる……かもしれない」
なぜかヤチヨの歯切れは悪かった。
「ヤチヨもわからないの?」
「うん……2つ目の質問に答えるけど、そもそも『ヤチヨがかぐやだった時、朝来圭なんて人はいなかった』んだよ」
「っっっ」
隣で芦花が息をのむ音が聞こえた。
私より動揺している。
無理もない。
悔しいけれど、芦花は誰よりも長く、すぐ隣で圭を想い続けてきたんだ。
そんな大切な存在が、実は存在しないかもしれないなんて。
私も、気を張っていなければ崩れそうだ。
無意識だろうか、芦花が現実世界で私の手を握ってきた。
強く握り返してあげる。
私はここにいるよ、と。
でもわけがわからない、何もかも。
いや、わかりたくなかった。
ヤチヨは8000年旅をしてきたかぐやで、そもそも圭はそこにはいなくて。
だが同時に、激しい怒りが胸に湧き上がった。
目の前で笑うヤチヨも、連れ去られたかぐやも、その輪廻とやらに囚われて。
ヤチヨには、8000年も1人で歩かせてしまった。
今度のかぐやには、同じ孤独を味わわせたくない。
「かぐやの卒業ライブで圭が一緒に月に行った件、ヤチヨは何か知らない?」
聞き方こそ疑問形だが、ほぼ確信を持って聞いた。
ヤチヨは何か知っている。
ヤチヨは、さっき圭のことをフルネームで呼んだけど、それはおかしいのだ。
本当に圭のことを知らないなら、朝来なんて名字を知る術はないはず。
「圭の正体は、私からは言えない。それは圭が話すべきことだから」
…………。
芦花の方をちらっと見るも、うつむいていて表情はわからない。
「圭は今、間違いなく月に行ってる。この輪廻から抜け出すために。かぐやを連れ戻すために」
ヤチヨの態度にも、自分の最推しがかぐやだったという事実にも、理解は全然追いついていない。
納得なんて、何一つしていなかった。
だけど、いや、だからこそ、ここに突っ立っている理由なんてない。
かぐやがどれだけ過酷な旅をしてきたかも、圭が何者なのかも、全部終わらせて、ハッピーエンドのその先で聞けばいい。
「ヤチヨ。私たちも月に行く方法、ないのかな」
「…………」
ヤチヨは押し黙った。
何かに迷うかのように。
「……彩葉、芦花。全てを失うリスクがあっても、それでも月に行きたい?」
「うん」
「当然」
私も芦花も、即答した。
もしかしたら芦花の方が早かったかもしれない。
気持ちは同じ。
かぐやや圭のいない物語に意味など無い。
全てつかみに行く。
「そっか……2人とも、強くなったんだね」
ヤチヨは、これまでとは違う笑みを浮かべた。
さっきよりよほどかぐやっぽい笑顔だった。
そして、さっき見せた迷いを振り払うように口を開く。
「次の満月の日に、圭の存在を目印にして、月へのゲートを開くよ」
「それで月に乗り込んで、2人を連れて帰ってくれば良いのね」
なるほど話は早い。
全部ぶっとばす……!
「気をつけて欲しいことがあって、1つは時間制限付きかつ1回きりのチャンスってこと。ゲートを開くにはすっごくたくさんのエネルギーが必要だし、次開くときは対策されるかもだから」
「なるほど」
もとより失敗する気などないし、月に長居などしたくない。
だから何も問題はない。
「そしてもう1つは……向こうで万が一があって帰って来れなかったら……そのときはこっちでも脳死状態になる」
それは想像以上に大きなリスクだった。
それでもヤチヨを説得して……と思ったのだが。
ヤチヨは私たちを止めようとはしなかった。
「だから絶対ちゃんと帰ってきてね、2人とも」
ヤチヨは、信じる者の目をしていた。
彩葉にとっては、ヤチヨの正体も圭の奪還も同じくらい大切です。
そこのバランスにすごく苦心しましたし、書き上げてなお伝わるのかイマイチ自信ないです。
ただ今の彩葉は超人なので、混乱しながらも優先順位を付けた(かぐやの8000年は後でも聞けるが、圭は早く奪還しないと手遅れになるかもしれない)ということです。
芦花が空気なのは、芦花自身が話に置いていかれ気味+語り手である彩葉にも余裕がなく描写が少なくなっているからです。