うん……土日秒で終わったけどね……
なぜ芦花と彩葉がここに……?
なんて疑問は、飛びついてきた2人によって強制的に中断された。
「圭! ちゃんといる……!」
「よかった、ほんとよかった……」
月だと相変わらず抱きしめられてる感覚が薄い……
そんなことお構いなしの2人は、くっついたまま離れない。
えーっと。
「2人とも書き置き見ました……?」
「見たよ。それで迎えに来たんじゃん」
「俺『待っててね』って書いてなかった?」
「それでおとなしく待てるわけないでしょ!?」
彩葉が食い気味で言う。
これは……思ったより心配かけたやつですね?
「あー……その、心配かけてごめん」
「ほんとだよ、圭のバカ……!」
俺を罵倒しながら更にキツく抱きしめてくる彩葉。
そして無言で俺の背中のひっつき虫となっている芦花。
なんというか、俺は俺が思っている以上に大切に想ってもらえてるみたいで。
「それで……2人はどうやって来てこれから何すんの?」
「そうだった。ごめんけど時間なくて、まずはかぐやのとこ案内してくれる?」
「おっけ」
まあかぐやも彩葉に早く会いたかろう。
というわけで、警備兵月人たちに彩葉と芦花のことを軽く説明してから、かぐやの元へ向かった。
じゃないと、この前の俺みたいに追いかけ回されるからね。
あと芦花さん、歩きにくいのでそろそろ背中から離れてもらっていいっすか。
彩葉に急かされて、ダッシュで移動。
芦花も途中から自力で走ってくれています。
なぜか2人とも俺と手を繋いでいますが。
走りにくいんだけど、心配かけた手前あんま言えない……
「かぐやー、お客さんだぞー」
特に妨害もなくかぐやの仕事部屋に着いた。
さすがに2人とも落ち着いている。
ノック……は両手が塞がってできないので、声を掛ける。
するとくぐもった返事が聞こえてきて、勢いよくふすまが開いた。
「圭! ちょうどいいとこに来た! 今やること全部終わったとこ……って彩葉!?」
「かぐや!」
俺のときと同じように、彩葉はかぐやに抱きついた。
かぐやは驚いた表情を浮かべた後、彩葉を優しく抱きしめ返す。
そのまましばし固く抱きしめ合う2人。
いやーいいもん見せてもらっております。
芦花も俺の隣で2人を優しく見守っている。
……ん?
なんか芦花の彩葉を見る目がなんかこう、温度がちょっと変わってないか?
なんかあった……?
いや、思い返せば芦花彩葉の2人で出かけた後くらいから少し違和感はあったけど。
ふーむ……全然わからん……芦花道は深い……
「さて、時間もないから現状の擦り合わせをしよっか」
しばらくして、彩葉がかぐやから離れてそう言った。
若干目頭が赤く見えるけど、触れないでおこう。
「俺らは、かぐやの仕事関連が全部終わり次第地球に向かう予定だったんだけど」
「どうやって帰るつもりだったの?」
「最初にかぐやがやったみたいに、元光る竹を使うつもりだった」
「ヤチヨが言ってた船……あれ時間超えられるって聞いたけど、じゃあすぐに帰ってこられるの?」
あー、ヤチヨからそこまで聞いたのか。
じゃあヤチヨはちゃんと彩葉に全部話したんだな。
「それがな……実は、2030年に戻ろうとすると隕石を回避できなくて……」
そうなのだ。
隕石は2030年の地球の周辺にある。
だから船の航路的に、どうしても時を超えた後にぶつかる形になって、回避しようがないのだ。
俺はなるべく明るく聞こえるように続ける。
「だから先に帰ってもらって、1年くらい地球で待っててもらえれば、晴れてハッピーエンドだ」
たった1年待てば、大団円だ。
8000年の輪廻に囚われるのと比べたら、十分ハッピーエンドだろう。
……だから、このくらいの妥協は許して欲しい。
「……いやだ」
それまで黙って話を聞いていた芦花が、ぽつりと呟いた。
あまり大きな声ではなかったのに、やけに響いた気がした。
「いやだよ、圭。私もう1秒だって圭と離れたくない!」
「そう言われても……」
芦花が半泣きで俺にすがりついてくる。
……そりゃ俺だってすぐにでも地球に帰りたい。
いつか必要がなくなるまでは、芦花の側にいたい。
でも仕方がないじゃないか、かぐやもろとも輪廻の渦に巻き込まれるわけにはいかないんだ。
それに、きっとちょうどいいタイミングなんだ。
俺も芦花離れするべきだし、芦花にとっても俺という番犬がいなくなれば、良い相手を見つけるチャンスも増えるだろう。
「だから、芦花も俺にかまわず自分の幸せを——」
探して欲しい。
そう続けようとした俺の視界に、涙をボロボロとこぼしながら、だけど今まで見たこともないくらいに強い覚悟を宿した芦花の顔が飛び込んできた。
次の瞬間、俺の口は……芦花の口で塞がれていた。
匂いもしない、触覚もほぼない。
そのはずなのに、小さい頃から慣れ親しんだ芦花の匂いを嗅いだ気がした。
知らないはずの芦花の唇の柔らかさを感じた気がした。
芦花のあふれ出る気持ちが、俺の中に流れ込んでくるようだった。
一瞬にも永遠にも感じられた後、芦花は俺から少しだけ離れて、言った。
「私は、圭が好き。圭には一生私の隣にいて欲しいの」
頭が真っ白だった。
芦花が、俺を?
黙ったままの俺をどう捉えたのか、芦花は耳元でささやくように続ける。
「中学の時さ、しつこい先輩が私につきまとってたの追い払ってくれたとき、圭言ってくれたよね。『人生賭けて芦花幸せにする』って。私は、圭に幸せにして欲しい。圭のことも、私が幸せにしたい」
確かに言ったけど……聞かれてたのか。
回らない頭で、辛うじてそれだけは思った。
「でもね、私だけじゃダメなの」
「……ダメというと?」
急展開。
全く話についていけない。
どういうことだ?
「彩葉も、かぐやも、ヤチヨだって、一緒に。5人で幸せになりたい。それには1秒だって誰1人欠けたらダメなの」
「……5人で?」
「そう。彩葉に言われたの。それが一番幸せじゃないかって」
芦花が彩葉の方を見た。
芦花に釣られて視線を向けると、彩葉は少しだけ照れくさそうに、だけど確かに頷いてみせてきた。
その後ろでは、かぐやが「そーだそーだ!」と言いたげに、満面の笑みで両手の親指を立てている。
「一緒に帰ろう、ね?」
芦花が俺を誘う。
すごく魅力的な誘いだった。
5人で幸せになる。
確かに、完全無欠のハッピーエンドかもしれない。
「……でも、どうやって」
隕石を回避しつついますぐ帰る方法が無いかなんて俺だって探した。
でも俺には良い方法思いつかなかったよ。
ぽつりと呟いた俺に反応したのは、それまで静かに俺と芦花を見守っていた彩葉だった。
「……かぐや。その元光る竹に、かぐやと圭の体だけを入れて後から送るっていうのはできる?」
「んー、できると思うよ? 元光る竹って情報の塊みたいなものだし、隕石みたいな邪魔がなきゃ勝手に地球に落とせるはずだよー」
「じゃあさ、一旦かぐやも圭もツクヨミに帰ってきて、後で月から体送ってもらえばいいんじゃない?」
……そんな無茶な。
そんなことができるなら確かに一緒にはいられるけど。
「そんなのできるのか?」
いぶかしむ俺に対し、かぐやはあっけらかんと答えた。
「月人のみんなにお願いする必要はあるけど、たぶんいける!」
マジで?
それじゃあ、本当に地球に帰れる……?
「これで決まりだね、圭。一緒に幸せになろう?」
……ああ、顔が良いってずるいよなあ。
芦花に、前世からの推しに、人生捧げた相手にそんなこと言われて。
断れるわけ、ないじゃんか。
芦花の隣は彩葉の席だからってずっと思ってきたけど。
芦花ほどの良い人にはもっとふさわしいパートナーがいると思って我慢してたけど。
——きっと俺は、生まれる前から芦花のことが好きだったんだ。
各キャラの感情のデカさを数値化しようの回(圭、芦花ver)
最大が10、あくまでイメージ
圭→芦花 10
そら芦花のために転生までするレベルの人だからね
圭→彩葉、かぐや、ヤチヨ 9
圭は当然原作のファンでもあるから、元から相当入れ込んでいる
ただし芦花よりはちょっと下がる
9.5でもいいかも
芦花→圭 10
説明不要、こんがりと脳を焼かれている
芦花→彩葉 9
元は親友だったけど、告白やらなんやらでだいぶ恋愛的にも意識してきてる
芦花→かぐや 8
可愛い妹みたいなイメージ、家族愛成分が強い
芦花→ヤチヨ 6
まだ絡みが薄いので低い
でもかぐやのあり得た未来の姿だと知ったので、これから一緒にいる時間が増えるにつれ上がっていくよ
次回更新も予定は未定です……