もう……しょうがないにゃあ……
本編と違い、圭が芦花の家の近所にある実家から学校に通ってます。
あと新オリキャラが出ますが、出番は次話くらいまでなので名前とか覚えなくて大丈夫です。
机の引き出しに爆弾入ってた
雨の日は憂鬱だ。
高校2年生も6月になって、ここ東京でも梅雨入りが宣言された。
昨日の夜から降り始めた雨は朝になっても止まず、アスファルトを濡らし続けている。
「おはよー芦花」
「圭、おまたせ。行こっか」
普通に学校のある、普通の平日の朝。
いつも通り、芦花と待ち合わせをしてから学校へ向かう。
「雨、めんどくさいよね……」
「ほんとになー」
芦花が自分の髪を弄りながら、憂鬱を隠すこともなく言う。
ジメジメしてるし足元濡れるしで、俺も正直テンションは上がらない。
まああと少し我慢すれば、かぐやがやってきてついに原作が始まるからな。
耐えだ耐え……
しとしとと降る雨の中、学校に到着。
傘を畳み、靴箱で上履きに履き替えて、教室の自分の席へ。
荷物を置いてから、手癖で机の引き出しの中をまさぐると。
なんと、雨の憂鬱を吹き飛ばす爆弾が入っていた。
「……手紙?」
なんか可愛いデザインの横書きの封筒。
控えめなハートマークのシールで封がされている。
表を見れば「朝来くんへ」の文字。
……え、ラブレター?
いやいやいやいやそんなわけない。
これあれだろ、開けたら「信じちゃった? ドッキリでした!」とか書いてあるやつだろ?
人生2度目だからな、そんなものにだまされたりは……
ま、まあ本当だったら大変だし?
トイレ行って確認するか……
推定ラブレターを隠しながらトイレに向かう。
そんな挙動不審な俺を、芦花が訝しげに見ていた。
『朝来くんへ
いきなりのお手紙ごめんなさい。
同じクラスの橋本楓です。
この気持ちを伝えたくて、手紙を引き出しに入れることにしました。
朝来くんは成績も良くて運動もできて、かっこいいなといつも思っています。
いつも周りに気配りができていて、そんなとこも素敵だなと思います。
そんなかっこいい朝来くんの隣にいられたらきっと幸せだろうと思って、このお手紙を書いています。
もし良かったら、私と付き合ってくれませんか?
今日の放課後、屋上に出る扉の前でお返事聞かせてください。
待っています。
橋本楓』
丸文字だ。
ザ・女の子の文字。
差出人の名前もちゃんとある。
橋本さんか……
そんなにめっちゃ話すわけじゃない間柄なので、正直ちょっと驚き。
なんというか、図書室で夕暮れの中静かに本読んでそうなイメージの子だ。
クールで孤高の方面じゃ無くて、図書委員とかやってそうな……というか橋本さん図書委員じゃなかったっけ。
眼鏡かけてて、ボブっていうのかな、そんな髪型で、ちょっと気弱そうな。
おとなしめだけど陰キャってわけではないよ、グループワークとか普通に参加してる。
そんな子。
まあ、行くしかないよなあ。
橋本さんはこういうドッキリ仕掛けるタイプではないし。
もちろん名前を勝手に使われた可能性もあるけど、そんな悪趣味なイタズラ仕掛けるやつうちの学年にはいないと思うし……
え、橋本さんと付き合うのかって?
付き合わないよ。
橋本さんは確かに良い子っぽいし、恋人になったら穏やかで幸せな時間を共有できるんじゃないかなとは思う。
でも今は芦花と酒寄をくっつけることに精一杯でそれどころではないし。
そうでなくとも、橋本さんに限らず、自分が誰かと付き合うってのがちょっと想像できない。
こちらが好きでも無いのに、中途半端な気持ちで付き合うのは嫌だ。
……恋愛に夢を見すぎだって?
そうだよ、こちとら2度の人生で1秒たりとも恋人いたことないからな、へっ。
今日も今日とて襲い来る殺人級の睡魔との戦いに勝利し、迎えた放課後。
「圭、帰ろ」
「あーごめん、俺ちょっとやんなきゃいけないことあってさ。先帰っててくれ」
「……うん、わかった。真実、行こっか」
「おー、じゃあ圭くんまた明日〜」
「また明日なー」
2人が廊下の向こうに消えていったのを確認してから、俺も鞄を背負う。
さて、行きますか。
指定された場所に来ると、もう既に橋本さんは来ていた。
遠目からでも緊張しているのがわかる。
これをフるのかあ、申し訳ないなあ……
「ごめん、待たせた」
「きっ、きてくれてありがとう……」
「こちらこそお手紙ありがとう」
雲がどんよりと空を覆っているせいで光が入ってこないこの場所に、沈黙が降りる。
その沈黙を、橋本さんが破った。
「それで、お返事聞かせてくれますか……?」
えいやと放たれた橋本さんの一言に、俺は残酷な宣告を突きつける。
「ごめん、俺は橋本さんと付き合うことはできません」
きっと傷つけるんだろうな……と思いつつ放った一言だったが、意外にも橋本さんの表情は変わらなかった。
むしろ晴れやかにすら見える。
「うん、薄々わかってたよ。スパッとフッてくれてよかった」
眼鏡の向こう側に少しだけ涙。
ただそれを隠さんばかりのやりきったって笑みを浮かべている。
「それじゃあ綾紬さんと幸せにねっ」
「……えっ、芦花とはそういう関係では」
そう言い残して、橋本さんは向こうへ走って行った。
芦花とは別に付き合ってるとかじゃないんですけど……
ただ言い訳しようにも、フッた手前追いかけるわけにもいかず。
「はぁ……」
そうか、周りから見たら俺と芦花は付き合っているように見えるのか。
俺の「芦花と酒寄をくっつける」という目標を考えたら全く好ましく無いのだが。
……心の奥底に飛び上がりたいほど嬉しく思っている俺がいることを、全力で見ないふりをした。
それに気づいてしまえば。根本から何かが崩れる気がしたから。
というわけで、another√、はじまりはじまり〜
もしかしたら「えー?」と思う方もいらっしゃるかもだけど、まあ完結させた私自身へのご褒美ってことで一つ。
次話はおそらくあさって上がるんですが、その後は未定です。
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