視点コロコロで申し訳ないんだけれども、私が書きやすいから許してください、なんでもしますから!
ちなみに今話が過去一長い。
俺が告白を断った次の日。
梅雨にしては珍しく晴れ渡る空の下、俺は今日も芦花と待ち合わせして学校へ向かう。
「お、おはようっ」
「おはよー芦花。今日は俺の方が遅くなった、ごめん」
「ううん、私も今来たとこだからっ」
なんか今日の芦花めっちゃ緊張してる?
生まれる前から芦花のこと知ってるからね、すぐに気づくよ、どやぁ。
……いや、こんなこと言っといてなんだが、正直たぶん誰でも気づくと思う。
手がめっちゃそわそわとスカートの裾弄ってるし、目も泳いでるし。
今日何かあったっけ。
「今日は良い天気だね」
「ん、そうだなー」
「ま、まるで圭の笑顔みたいな爽快さだねっ」
「…………?」
はい???
急にどうした?????
呆気に取られて芦花の方を見ると、芦花は顔を真っ赤にしてうつむいていた。
さすがに変なことを言った自覚はあるらしい。
何か、何かとりあえず返事しなきゃ芦花が煙噴きそう。
「まあ、そう思ってもらえて嬉しいです、はい」
「忘れて……」
気の利いた返事ができなくてごめんね。
でも顔真っ赤な芦花が可愛かったので忘れませーん。
俺の脳内にある「芦花可愛いアルバム」に保管しておきまーす。
その後は自爆こそしなかったものの、芦花は終始不自然な挙動を繰り返していた。
本当にどうしたんだろうか……?
「おはよー芦花、圭くん」
「おはよう」
「お、おはよう……」
教室に着くと、真実は既に来ていた。
荷物を置いて一息つくと、真実にちょいちょいっと手招きされた。
「ねね、今日の朝の芦花どうだった〜?」
「すごい挙動不審だった」
俺の返事を聞いて、あちゃーと頭を抱える真実。
なにその反応。
「もしや真実の差し金?」
「あ、いやいやそんなわけないじゃ〜ん」
「そんなわけしかないだろ、その反応は」
一体芦花に何をふきこんだんだ。
というか何か吹き込まれたってあんなことになるか?
「芦花があんなになった理由、知ってるなら教えて欲しいんだけど?」
「まーまー、圭くんにとっても悪い話じゃないからさ〜」
「…………はぁ」
のらりくらりとはぐらかす真実。
こういうときの真実は押しても引いても無駄だ。
俺たち三人の中で、一番マイペースで自分を貫くタイプだから。
真実が俺や芦花に害になることはしないだろうという信頼もあるし。
企みに付き合ってやるか……
「本当に変なことになったら止めろよ?」
「それはもちろん……じゃなくて、私何も知らないよ〜?」
……誤魔化す気あるのか?
退屈な退屈な午前中の授業が終わった。
俺は高校生活二度目なわけで、うろ覚えの箇所はあれど基本覚えてるし。
嫌いな科目は嫌いなので、覚えていなくても退屈だし。
真面目には受けるんだけどさ、それはそれ、これはこれ。
勉強そのものは嫌いじゃないんだけど、テストのために勉強するのは好きじゃないんだよな……
せめてもうちょい聞く気になる授業を……って言いたいけど、勉強系ライバーやってる身としては難しいのもよくわかるし……
おっと、長くなった。
そんなことより、ご飯の時間である。
真実ほどでは無いけど、俺も食べるのは好きだ。
さて、今日のお昼を…………あ。
そうだった。
今日はお弁当無い日だから登校ついでにコンビニで買うつもりだったのに、芦花の挙動不審さに気を取られてすっかり忘れていた。
恨むぞ真実。
芦花はこの世に舞い降りた女神様なので何も悪くないです。
なんか変なこと吹き込んだ真実が悪い。
「圭、どうしたの?」
「圭くんこっち来なよ〜」
鞄を漁る姿勢のまま固まった俺を見て、芦花が心配そうに声をかけてきた。
その隣の真実はなんか声にニヤニヤが乗っかっている。
真実の横には、首を小さくかしげる酒寄もいる。
「あー、実は弁当無くて、買うのも忘れたから……」
三人の方へ向かいながら俺は言った。
どうせ今から購買行ったってろくに残ってない。
飯抜きはきついが、なんとか耐えるしかない。
食べ盛りには辛い……
「じゃ、じゃあっ」
三人と一緒にいたら飯テロ状態になる。
というわけで退散しようとした俺を、芦花が引き留めた。
「私、実は圭の分のお弁当作ってきたんだ。ほら、木曜日って圭いつもお弁当ないでしょ? だから……」
「……マジ?」
マジ?
え、やはり女神か。
「よかったね圭く〜ん」
今日の真実死ぬほどうざいな。
「今日の真実死ぬほどうざいな」
「ひっど〜い」
「声に出てたわ、ごめん」
「あはは……」
半分わざと口に出すと、真実もわざとらしく唇をとがらせた。
そのやりとりを聞いて苦笑いの酒寄。
でもうざいものはうざいので……
「じゃあありがたくいただこっかな」
推定真実の企みに乗るのは癪だが、芦花の作ったお弁当の魅力の方が勝る。
というわけで、三人の近くの椅子を引き寄せて座ると。
「あ、あ〜ん……」
「………………」
芦花がお箸で卵焼きを持ち上げて、俺の方に差し出してきた。
あ、あーんですと?
衝撃的な出来事に固まっていると、芦花が少しづつ赤くなっている。
意図はわからないが、朝みたいに芦花に恥をかかせるわけにはいかない。
一瞬のためらいを振り払うように、差し出された卵焼きを食べる。
「うまっ」
素で声が漏れた。
いや、本当に美味い。
卵焼きって家庭によって味付けが様々だから、結構合う合わないがあるんだが。
これはたぶんうちと一緒でシンプルに白だしだけで作ってありますね。
それでちゃんとふわふわだし、噛むと優しい味がしみ出してきていて、
「これ毎日食べたいわ」
「っっっ!」
「おぉ……」
「やるね朝来……」
俺が思ったことを深く考えず口に出すと、芦花の肩が大きく跳ねた。
そして真実と酒寄は「見直した」みたいな目線を向けてくる。
な、なんですかその反応は……?
「……圭が良ければ、毎日作るよ……?」
「ありがたいけど、それは将来の恋人さんに申し訳ないからさ」
将来の恋人っていうかそこにいる酒寄彩葉さんですけど。
俺がそう言った瞬間、芦花は机に沈んでしまった。
真実と酒寄も心の底から呆れたような目を向けてくる。
不服だ……
「真実も酒寄もその『こいつさあ』みたいな目線はなに?」
「そのまんまだけど」
「圭くんさあ……」
結局お昼休みが終わるまで、真実と酒寄の刺さるような視線を感じて非常に居心地が悪かった。
芦花のお弁当は本当に美味しかったです。
午後の授業中もずっと芦花のことを考えていたら、あっという間に放課後になった。
そういえば今日は殺人級の睡魔に襲われずにすんだな。
今度から午後は芦花のこと考えてやり過ごすか。
授業内容なんて別に後で教科書読めば良いし、最悪酒寄に聞けばいいからね。
今日家帰ったら何やろっかな、配信用の問題作りでもやるかなあ……
などと考えていると、真実に声をかけられた。
「圭くん今日暇〜?」
「ああ、暇だけど……」
「じゃあちょっと美味しいお店知ってるから行こ〜?」
「いいけど……彼氏には話を通したのか?」
誤解で刺されるとかごめんだぞ。
「だいじょぶ、うちの彼氏圭くんのこと信用してるから」
「ならいいけど……ちゃんと連絡はしとけよ、円満な関係維持のために」
「わかった。でも圭くんに恋愛絡みで正論言われるのなんか嫌だな〜……」
なんでや、こちとら人生二周目やぞ。
たくさん恋愛小説も読んだし痴情のもつれが動機の推理小説も読んどるんじゃい。
え、関係ないだろって?
それはそう。
真実に連れられてきたのは、隠れ家的なカフェであった。
BAMBOOcafeよりも秘密基地感が強い。
「ここはコーヒーとガトーショコラが美味しいんだよ〜」
「ならそれにしよう」
グルメインフルエンサーまみまみの舌は確かだ。
俺も昔は撮影の手伝いで一緒に食べたりしたし、こういう面は信頼している。
店員さんを呼んで注文をして、しばらく雑談。
テストが難しいとか進路決めたかとか次の配信どうしようとか、そういう話。
意外に待つことなく、店員さんが注文したものを運んできた。
「お待たせしました」
コーヒーのこの、良い香りが漂ってくるのがたまんないね。
ガトーショコラも、もう見た目から私美味しいですと言ってる。
「ささ、まずは一口」
真実に促されて、ガトーショコラを一口食べる。
「美味い、さすが真実」
「でしょ〜?」
で、美味しいケーキに舌鼓を打つのも良いんだが。
「今日は何か話したいことあるからここに連れてきたんでしょ? そろそろ本題入ってもいいんじゃない」
「うん、そだね」
真実は一つあたりを見回してから、切り出した。
「あのさ、圭くんって好きな人いるの?」
「え、いないけど」
「即答かぁ……」
したかった話って恋バナ……?
まあいいけど。
自分が恋愛するの、やっぱ想像できないからなあ……
そう答えると、真実はすごく言いにくそうに疑問を口に出す。
「……あのさ、聞きにくいことを聞くんだけど」
「うん」
「圭くんって同性愛者?」
「違うが?」
多様性の時代ではあるけど、俺は違います。
「そのわりに圭くんあんま女の子に興味なさそうだよね〜」
「そう見えるか」
「うん」
まあ確かに、二度目の人生で深い交流があるのって芦花と真実くらいだなあ。
え、俺友達少なすぎ……?
そんな俺の内心など全く知らず、真実はさらに踏み込んでくる。
「芦花とかどうなの〜?」
「芦花はもっと良い人がいるだろ」
酒寄彩葉さんとか。
「圭くんだって十分だと思うけどな〜」
「そりゃどうも」
「じゃあさじゃあさ、芦花が圭くんのこと好きって言ったらどうするの?」
「そんなのありえないけど」
「もしもの話〜」
もしも、もしもかぁ……
「まあ、芦花が本気なら付き合うんじゃないかな」
「……おお」
かなり悩んでから出した答えに、真実は感嘆の声を上げた。
「芦花をフッたら芦花が悲しむから。俺は芦花を幸せにするためにいるので」
「圭くん重〜い」
何とでも言え。
俺は芦花のために転生までした男だ、そんなの今更。
「……芦花を自分で幸せにしたいとは思わないの?」
真実の質問に、俺は一瞬言葉につまった。
そんなのできるなら俺が幸せにしたいに決まって
「俺みたいなモブには無理だよ。幸せにできる人にバトンパスするのが精一杯。酒寄とか芦花の相手に良いと思うんだけどなー」
チクリとした胸の痛みには気づかないふりをした。
なるべく明るく言ったつもりだったのだが、真実は顔を歪ませている。
やめてくれ、そんな顔させたって知られたら真実の彼氏に殺されてしまうから。
「う〜ん……まあ、だいたいわかったよ。いい話が聞けたし」
「これも企みの一環か?」
「ないしょ〜」
今日そればっか……まあ、真実が本気で悪いことはしないと思うけど。
これ朝も言ったな。
なんか定期更新みたいになってますけど、不定期ですからね。
たまたま書き上げられてるから上がってるだけで。
勘違いしないでよねっ。