転生オリ主は綾紬芦花を幸せにしたい   作:天戸 蒼香

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作者は田舎私立高なので、都立高校が土曜に授業してるのか知らなくてですね。
2030年の都立高校では土曜は隔週で休みということにします。
ここでは私が神なので。

圭視点に戻ります〜


はんぶんこの傘、手が届く距離

金曜日。

昨日の快晴ほどではないけど、今日も雨は降っていない。

今日を乗り切れば今週土曜は休み。

学校は嫌いではないけど、明日は休みという言葉の響きで半分くらい元気になれる。

 

「圭、おはよ」

「おはよう芦花」

 

そんな俺に、残り半分の元気をくれる存在がやってきた。

そう、綾紬芦花さんである。

 

「圭はいつもちゃんと起きれて偉いねぇ」

「……それを言ったら芦花もでは?」

「あはは、そだね。じゃあ二人とも偉いってことで」

 

なんかまた始まったな……

これも真実の策略なんだろうか?

というか策略だったとして、何がゴールなんだろうか?

 

だがしかし、芦花に褒められるのはとても嬉しい。

お世辞とか言う間柄じゃないから、乾いた地面に水が染みこむみたいに俺の心に入ってくる。

まあ芦花は女神様ってことですね。

今度の配信までに貢ぎ物を用意しておきます。

そんなバカなことを考えていると、芦花は腕をこちらに伸ばしてきた。

 

「そんな圭には花丸付けたげるー」

 

そう言って、くるくるっと俺のおでこに向かって花丸を描く芦花。

 

「なんか久々にもらったな、花丸」

「私も久々だなって今やって思った」

「じゃあ俺もお返しの花丸あげちゃおう」

「ふふ、ありがと」

 

花丸をお互いに交換し合って、二人で笑い合う。

とても幸せな時間であった。

 

 

 

「このまま成績を維持できれば、東大も夢じゃないと思うよ」

 

放課後、担任の教師はそう言いながら俺に東大のパンフレットと進路希望調査票を渡した。

酒寄も似たようなこと言われるんだろうなあ。

けど原作のあのイベントってかぐやが来た後だから、7月中旬だよな?

なんで俺には6月のこのタイミングで渡してるんだ?

 

「進路すか……ちょっと早くないです?」

「まあ、一ヶ月くらい早いんだけどね」

 

担任は、少し笑いながら続けた。

 

「朝来くんはこれまでも進路希望が定まっていないというか、これまで二回やった進路希望調査票は『適当に埋めました』って感じだったから。早めに渡して、こうやって時間をとっているわけだ」

「そりゃご迷惑をおかけしてます」

 

まあねえ……正直、芦花が彩葉とくっつくなら高校生の間だと思うし、それが「成った」後の自分の人生にあんま興味がもてないというか、考える気にならなくてなあ……

 

「朝来は、将来の夢とかないのか?」

「全然ないっすねー」

「うーん、憧れとかでもいいんだが。朝来なら大抵のものにはなれると思うが」

「過分な評価ありがたいっすけど、本当に何もなくて」

 

強いて言えば百合を眺める観葉植物になりたい。

 

「そうか……じゃあ先生としてはやはり東大目指すことをおすすめするかな。あそこは二年生までの成績次第で進路を選べるから。その気になって成績が伴っていれば、文転理転もできる」

 

担任がパンフレットを開いて説明してくれる。

いやまあ有名だから知ってるけどもさ。

ただなあ、大学入った後、ハッピーエンドの先で頑張れる気はしない。

そうなれば留年まっしぐら。

 

「あまり気乗りしないか? 朝来は勉強教えるのが上手いと聞いているし、教師を目指すという手もあると思う」

 

俺の反応があまり芳しくないのを見てか、担任は別の選択肢を提示してきた。

 

「朝来は周りをよく見ているし、綾紬や諌山、酒寄のことを上手くフォローしてる印象で、個人的には教師は向いていると思うよ」

 

思ったより担任は俺のこと見てるんだな。

どこか他人事でそう思った。

ただ、やっぱり自分が大人として働いているビジョンが見えなくて。

 

「あー、考えておきます」

 

そう答えることしか出来なかった。

 

 

 

帰りが遅くなってしまった。

担任の話があんなに長くなるとは思ってなかった。

いや、担任は悪くないし、むしろこんなやつのために親身に提案してくれて感謝はしている。

ただ俺がやる気なし男なだけで。

 

みんなもう帰ってるかもしれないな。

というか全然帰っててくれていい、待たせてたら申し訳なさが勝る。

そう思いながら教室の扉を開けると。

 

「圭、遅かったね。先生と何話してたの?」

 

芦花が待ってくれていた。

俺が来るまで勉強していたのだろう、机にはノートとシャープペンシル。

 

「先帰ってくれててよかったのに」

「ううん、圭と一緒に帰りたかったから」

 

嬉しいことを言ってくれますね。

申し訳なさもあるけど。

 

「それに圭たぶん傘持ってないだろうなって」

 

言われて外を見てみると、まあまあな強さで雨が降っていた。

嘘だろ、職員室向かう前は降ってなかったのに。

天気予報でも雨は夜遅くからって言ってたのに、だまされた。

俺が()()()とうなだれると、芦花はいたずらっぽい表情で言った。

 

「圭が傘持ってないなら入れてあげるけど。どうする?」

「……しょうがないから入ってあげよう」

「はーい、入ってもらいましょう〜」

 

なんとなくふざけて偉そうにしてみたら、芦花も乗ってくれた。

こういうくだらないやりとりが結局一番楽しい。

こんな時間が永遠に続けば良いのに。

ずっと芦花と一緒に

 

「私も折りたたみ傘だから狭いけど、許してね」

「いいよ、入れてくれるだけでありがたいし」

「まあ、私は……狭い分圭とくっつけて嬉しいけどね」

 

………………。

 

「なんか今日の芦花は……」

 

すごい慈愛に満ちあふれているというか。

まっすぐに好意を伝えてくるというか。

……好意?

誰が、誰に?

芦花が、俺に?

そんなことあるわけがないだろう、これだから勘違い転生オタクは。

 

「んー?」

「……いや、なんでもない」

「変な圭」

 

変なことを考えてしまった自分を頭から追い出して、芦花の傘を持った。

 

「傘は俺が持つよ、俺の方が身長高くてバランス良いから」

「ありがと、花丸あげちゃうー」

「今日は花丸大盤振る舞いだな」

「ちゃんと伝えるって決めたからね〜」

 

「何を?」とは聞けなかった。

なんで聞けないのか自分でもよくわからない。

踏み込んだら、何かが大きく変わるような気がして怖かった。

 

そのまま校舎から出て、芦花と二人雨の中の帰り道を歩く。

折りたたみ傘は思った以上に小さく、自然と二人の肩がぶつかり合う距離になる。

あんまり早歩きにならないように気をつけて、傘はちょっと芦花側に傾けることで芦花の肩が濡れないようにしておく。

こうするのがいいと前世の名作ラブコメで学んだ。

 

「ねえ圭、傘、そっちに寄ってない? 左肩濡れてるじゃん」

「気のせい気のせい。風のせいとかじゃない?」

「私はそんなんで誤魔化されませーん。ほら、もっとこっち寄って」

 

芦花が俺の制服の袖をきゅっと引っ張った。

傘を持つ俺の右手が芦花の体と触れて、ほのかに体温を感じる。

高校生になってからここまで物理的距離が近くなったことなんて無くて、なんとなく意識してしまって、無言になってしまった。

 

「そういえば圭は先生とどんな話してたの?」

 

息が詰まりそうな沈黙を、なんてことなく芦花が破る。

俺はこれ幸いとそれに乗った。

 

「進路の話。成績的には東大も狙えるとか、将来教師になるのはどうかとか。ほら、進路にも影響するからさ」

「やっぱ圭は優秀だね。東大行ってすごい研究者にもなれるし、教師になってもきっと良い先生になりそう」

「いや、たまたま成績出てるだけで、別にただのモブなんだけどな……」

 

二回目の人生なら誰でもこのくらいは出来る。

自嘲気味に笑う俺のセリフを芦花は食い気味に否定した。

 

「そんなことない。圭は頭いいし、教えるのも上手だし……何より、すっごく優しいのを私は知ってる」

 

芦花が少し立ち止まり、傘の下から俺を見上げてくる。

 

「私にとって圭はモブなんかじゃ無い、ちゃんと大切な人だよ」

 

まっすぐで、一切の曇りもない視線。

それを真正面から受け止める勇気がなくて、俺は情けなくも顔を逸らしてしまった。

俺は人生二周目のアドバンテージでここまで出来てるだけで、個人としては何の取り柄もない。

 

そんな俺の内心を知ってか知らずか、芦花はそれ以上追及せず、優しい笑顔を浮かべてころりと話題を変えた。

 

「そうだ圭、明日暇?」

「明日はバイトもないし時間はあるぞ」

「じゃあさ」

 

芦花は一拍溜めてから、上目遣いで俺をのぞき込んで、言った。

 

「デート、行かない?」




歌詞の引用かって言われると微妙なんですが、何の取り柄もないのとこはハッピーシンセサイザを露骨に意識して書いたのは事実なのでコードを置いておきます。
メルトはもうサブタイトルががっつりメルトなので乗せてなきゃ規約違反だ。

初めて超かぐや姫!を映画館で見たときの、あのメルトの衝撃ですよ。
やばかったよね(物書きにあるまじき語彙力のNASA)
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