「い、いいいろっぴ〜……」から記憶が無くて、気づいたらrayのMV流れてたけどなにか?
前回のあらすじ!
ゲーミング電柱から赤ちゃんが登場!
酒寄さんちの一人娘になった!
そんで結局俺も酒寄の家で一緒に赤ちゃんの面倒を見ることになった!
以上!
元々酒寄のフォローをするために3連休は丸々開けてあったから、昼間酒寄の家にいる分にはいいんだけど。
芦花がカフェに誘ってくれてたのに断って本当にごめん、夏休みに埋め合わせします。
「それで、この子に名前とかつけたの?」
「いや……まだというかそんな発想無かったよ」
たぶん名前まだだろうなと思いながら聞いてみれば、案の定まだとのこと。
原作で誤魔化してたのも「かぐやに振り回される彩葉」でとてもいいけど、俺が名付けの瞬間を見たいので今設定を決めてもらおう。
……なんか俺最近欲望に任せて動いてる気がするな。
「名前……名前かあ」
「酒寄は何か案ないの?」
「言い出しっぺの朝来が案出すもんじゃないの?」
「えー……じゃあ
「むぅ〜」
「真面目に考えて」
俺の名前が採用されては困るのでふざけたらマジトーンで叱られた。
赤ちゃんも不服そうです。
そらそうだ。
「俺は名付けセンスないから」
「うーん………………じゃあ、かぐや」
長い沈黙の末に酒寄がぽつりとつぶやいた。
感動に叫び出したい衝動を抑えて、平然と返す。
「かぐやか……いいね、すごくそれっぽい」
「きゃっきゃっ!」
「赤ちゃん改めかぐやもよう喜んどる」
「朝来に反対意見無いなら、この子はかぐやね」
「異議なーし、今日からお前は酒寄かぐやだぞー!」
「なんで朝来がそんな嬉しそうなの……ふふっ」
嬉しそうに笑うかぐやとかぐやを抱っこしてぐるぐる回る俺。
それをみてあきれたように、でも楽しさも隠しきれずに笑う酒寄。
原作とは違う、でもとても暖かくて絵になる光景だった。
それから2日間、俺と酒寄で交代で面倒を見た。
酒寄がバイトの時は俺の部屋でかぐやと遊ぶ。
「ほーれぐるぐる〜」
「きゃっきゃっ」
「もう一回かー? それ〜……うっぷ気持ち悪い」
酒寄が勉強してるときは酒寄の部屋でかぐやと戯れる。
「朝来は勉強しなくていいの?」
「まあなんとかなるよ、俺って天才なので。現国以外」
「納得いかない……」
「まあ前世というズルをしてるだけだけど」
「ん? なんか言った?」
「いやー、彩葉ママは頑張り屋さんですねーって」
「誰がママだ」
かぐやが寝てる時は、二人でツクヨミでゲームしたりも。
「はー酒寄やっぱ上手いわ」
「朝来はほんと苦手だよね、KASSEN」
「戦うのは性に合わないんだ」
そんなこんなで3連休が終わる日の真夜中。
明日の学校に備え寝ていた俺は、着信音に起こされた。
なに……だれ……酒寄?
……あっ、そういえばロリかぐや爆誕するの今日の夜中だったっけ。
「はいもしもーし」
「真夜中にほんっとーにごめん! 私の部屋来られる?」
「3分待ってもらえれば〜」
「ごめん、お願いします」
というわけで俺が酒寄の部屋にログイン。
まあまあでっかくなったかぐやが、酒寄と向かい合うように座っていた。
「おおー大きくなったなかぐやー、おじさんのことわかるかー?」
「いやその反応はおかしい」
開幕早々ボケに走ってしまった。
てへ。
「それで、俺なんで呼ばれたの?」
「見ての通りかぐやがおっきくなって、私一人じゃどうしていいかわからなくて……」
「なるほどねー」
ここまでこちらを窺っていたかぐやが、我慢できないとばかりにしゃべりだす。
「ねー彩葉ー、この人だれ?」
「おう俺は朝来圭、あなたのパパです」
「違う! この人は私と一緒にかぐやの面倒見てくれてたの。てゆかなんで私の名前?」
「ふーん……」
「まあ朝来でも圭でも好きに呼んでくれ」
「わかった! 圭!」
おお、かぐやがまぶしい。
「かぐやは月から来たとか言ってるんだけど」
「月から? へー」
「反応薄いね……それで何しに来たのって聞いたらあんま覚えてないんだよね〜って」
「なるほど」
かぐやは腹が減っていたらしく、オムライスをもりもり食べている。
あっ酒寄の分まで奪った。
うーん、俺も腹減ってきたしあとでカップ麺でも食べるかな……
寝起きで反応の薄い俺にあきれたのか、酒寄はかぐやに向き直った。
「かぐや、この話知ってる?」
「なあにこれ」
「竹取物語」
「どんな話?」
「おじいさんが竹の中からかぐや姫を見つける話」
「ふーん……じゃあこのおじいさんが彩葉なの?」
「80年後の姿でも見えちゃってんのかなぁ……!」
酒寄すごい顔してて面白い。
そりゃ華の女子高生がおじいさん呼ばわりされたらキレるに決まっている。
だから笑っちゃいけない、こらえろ俺。
かぐやはそんな酒寄を気にも留めずタブレットに映された竹取物語をスクロールしている。
そして最後のページまで行き着いたのだが、まだ続きがあると思っていたのか何度かスクロールを試みていた。
かぐやが拍子抜けしたようにつぶやく。
「え、これで終わり?」
「そう。お迎えが来て、引き渡すまいと抵抗するもむなしく、姫は羽衣を着せられて地球のことは忘れる……で月に帰る。めでたしめでたし」
「えーーーーー絶対かぐや姫不幸じゃん!!!」
「まあそれは俺もそう思う」
近所迷惑な声量で騒ぎ出すかぐや。
ハピエン厨なので乗っかる俺。
頭を抱える酒寄。
「バッドエンドやだ〜〜〜ハッピーなのがいい〜〜〜!」
やーっだやっだやーだ。
どこか聞き覚えのあるリズムで駄々をこねるかぐやに、酒寄が言った。
「どうしようもないじゃん暴れたって歌ったって。決まってることが変わるわけがないし……受け入れて覚悟するしか、ない」
展開を知っている俺ですら声が出せなくなるような、初めて見る酒寄の表情だった。
運命を受け入れる覚悟をしているようで、それでいてどこか救いを求めている。
そんな顔が、なんだか悲しいくらい綺麗に見えて。
俺は気づいたら目から涙が流れていた。
「えっちょっ、なんで朝来が泣いてんの?」
「いや、ごめん、ちょっと……」
「うわー彩葉が泣かせたー」
「うん、まじでごめん、急に泣き出してしまい」
「いや……こっちこそなんかごめん」
「んんん、決めた! 自分でハッピーエンドにする! そんで彩葉と圭も連れてく! 一緒に!」
謝罪合戦を繰り広げていた俺たちを尻目に、かぐやが高らかに宣言した。
「ハッピーエンドいらない。普通のエンドで結構です」
「うそうそうそ、そんなわけないっしょ……」
ためいきをつきながら返事をする酒寄。
そんな酒寄にすがりつくかぐや。
それを横目に見ながら。
俺は未だに動揺を隠せなかった。
さっきの酒寄の顔が、俺の脳裏から離れてくれなかった。
さっき感じていた空腹感など、どこかへ消え去っていた。