なお掲示板形式はありません。
あと小説版やっと手に入れました。
よしよし、あとは俺がフェードアウトすれば全部上手くいく……!
とか思ってた夕方の俺をぶん殴りたい。
お前の見通しパンケーキより甘いよ。
「じゃーん! まずは、生のトウモロコシから作ったポタージュ! そんでお次は……」
どや顔で夕食の説明をするかぐやとは対称的に、死んだ目をしている俺と酒寄。
酒寄は吹雪く懐の寒さに凍えて。
そして俺は早速フェードアウトに失敗したことに対するショックで。
今、俺と酒寄の心は一つになった。
どうしてこんなことに。
そんな俺らの表情など一切気にしないかぐやが、ポタージュをすくって酒寄の口に突っ込んだ。
「お金がないのよ……貧乏なのよ……こちとら必死に学費稼いでんのよ……」
酒寄構文の詠唱が始まった。
おおおこれ好きな台詞なんだ、まさか生で聞けるとは。
密かに感激する俺の口に、かぐやが容赦なくポタージュを突っ込んだ。
んぐっ、もぐもぐ。
「なんなのよ……美味いじゃないのよ……なんなのよあんた……久しぶりの美味しいごはんで……体が喜びに満ちていくじゃないのよ……」
「なにこれマジで美味い……」
非常に濃厚でなめらかなのに、コーンのプチプチ感は残っていて、食感だけで楽しい。
コーンの甘味がすごく強いんだけど、バターと牛乳のコク、そしてコンソメ(かな?)の旨みが甘味一辺倒になるのを防いでいて素晴らしい。
……うん。
見よう、現実。
「かぐや、酒寄の分はともかくなんで俺の分まで?」
「え? だって一緒に食べるでしょ?」
食卓を共にすることを微塵も疑っていないかぐやの眼差しに、俺は何も言えない。
お世話してる間に情が移ったというか。
そうでなくとも、将来ツクヨミで大勢を魅了する子である。
超かぐや姫大好きな俺が抗えるわけがなかった。
「酒寄、あとでお金出すから……」
「いやいいよ申し訳ない……」
ああ、背徳の味。
心は吹雪、体は歓喜。
俺と酒寄は会話も忘れて黙々と食べた。
そしてハンバーグを口に運んだ酒寄が、ぽつりと一言。
「……あくま」
「悪魔じゃないよ、かぐやだよ!」
あら、うちのかぐやちゃん可愛い。
食後、俺は酒寄家でお皿やら鍋やらを洗っていた。
食費は後で出すとはいえ、ごちそうになったからこのくらいはね?
酒寄は自分の椅子に座ってまったり休憩中。
かぐやは目を輝かせながらノートパソコンをパチパチしている。
「あのさ、マジでここでは匿えないよ?」
酒寄が困っていますという空気を前面に出している。
まあそりゃそうだ。
別に生活に困窮してなくたって大変だよな……
「面倒ごとは……」
「できた!」
何かに思いを馳せるように言葉に詰まった酒寄を意に介さず、かぐやが声をあげた。
またかぐやが何かやらかしたのかと焦る酒寄。
「何が!? まさかサイバー犯罪とかじゃないですよね???」
「携帯ゲームキット見つけたんだ〜」
「……ああ」
とりあえず大問題にはならないとわかり安心する酒寄。
しっかし前時代の遺産みたいな見た目してんなそれ……
「これで犬DOGEといつでも一緒だって〜、圭も見てこれ!」
「おー、かぐやは天才だなー」
「へへへ、でしょ〜」
俺はプログラミングできないから、素直にすごいと思う。
褒められて気を良くしたかぐやは、るんるんで酒寄に絡んだ。
「ねー明日の料理何にする? 食べたいものある?」
「一生住む気満々かよ……」
「え〜だって他に行くところもないし……そうだ、圭! 圭もかぐやがいた方がいいよね!?」
ちょうど皿洗いが終わって手を拭いていた俺に、かぐやが話を振ってきた。
「まあかぐやいたほうが賑やかで楽しいけど」
「でしょ!? ほら〜圭もこう言ってるし」
酒寄は「余計なこと言ってくれて」とジト目で俺を見た。
いや、でも追い出すなんて無理でしょうよ。
……胃袋捕まれた的な意味で。
あさってを向いてごまかす俺。
呆れた酒寄が、折れたふうに言う。
「迎えが来るまででいいのね」
「いいの!?」
瞬間パアっと顔を輝かせるかぐや。
しかしその輝きも一瞬のことだった。
「目立たない」
「うっ」
「許可無く外出ない」
「うぐ」
「私の邪魔しない」
「ひえ〜……」
「これ守れるなら家いていいよ」
次々と突きつけられる条件にしおれていくかぐや。
目の前で見せられるとめちゃめちゃ面白い。
「じゃあかぐやはどこにも行けず、楽しみもなく、ずっとこのままってこと……?」
「自分でハッピーエンドにするんでしょ、巻き込まないで」
「ぷっぷくぷ〜」
かぐやはIQ3みたいな駄々のコネ方をしている。
「じゃあこの話はなかったことに……」
「やっぱ3人でハッピーエンドに行こ? おねがぁい」
「ひゅ〜ひゅ〜♪」
慌ててすがりつくかぐや。
そしてはぐらかす酒寄は口笛が上手い。
完璧スーパー女子高生は口笛まで天才とな。
「朝来も笑ってないでさ!」
やべ、矛先がこちらに向いた。
そのとき、焦った俺を救うかのように、酒寄のスマホが鳴る。
「あ! この時間までに予習終わらせるつもりだったのに!」
「何!? どこ行くの? またかぐやを置いていくの?」
置いていかれると勘違いしたかぐや、この世の終わりみたいな顔してる……
「この映えないつまんない部屋でかぐやは一人ぃ……」
「ぶふっ」
いかん、さすがに面白すぎて笑いが抑えられなかった。
こんなボロアパートに映えとか求められても困るんだけどもさ。
酒寄も「悪かったな映えなくて……」と顔に書いてある。
その顔が余計に面白いんだけどな……!
「マジで迎えが来るまでだからね! あと食事は定額制!」
「増えた!」
「あーはっはっはっ、ひー!」
「朝来!!!」
「じゃあ、そろそろおいとまします」
二人のやりとりが面白すぎて長居してしまったが、そもそも俺を挟まず二人で仲良くなって欲しいんだ。
え、フェードアウト諦めてなかったのかって?
諦めるわけないだろう、ハッピーエンドのために不純物は取り除くべき。
「え、圭どっかいっちゃうの? やだやだ!」
とっとと退散しようとしてた俺を引き留めたのはかぐやだった。
「酒寄はともかく俺はいいでしょうよ」
「えー圭も一緒がいい!」
かぐやが俺にすがりついてくる。
「そもそもこの時間に俺がここにいるのはよろしくなくて……」
「なんで?」
「えっ、なんでって……酒寄さん解説お願いします」
「いや私に振らないでよ」
とにかく俺がこの部屋にとどまるのはまずい。
何がまずいって、原作云々以前にシンプルに俺も男なのでまずい。
仕方ない、ここは次善策に切り替えるか。
「どうせ酒寄もかぐやも後でツクヨミ行くだろ? スマコンあるんだし」
「まあそうだね……ん? かぐやのスマコン買わされたこと朝来に言ったっけ」
あっやべっ。
俺がかぐやスマコン購入事件知ってるのはおかしいんだった。
ごまかせごまかせ。
……いや酒寄をごまかせる案とか出てくるわけねえ!
「とにかく! そっちで会えるから! な!」
「……かぐや、あんま朝来を困らせないの」
仕方ないので、パワーで押し切りにかかる。
酒寄はまだいぶかしげな視線を向けていたが、一旦考えるのをやめたようだ。
俺の援護に回ってくれた。
「またツクヨミでな」
「……うん、わかった!」
「朝来もまた後で」
また意志を砕かれてしまったけど、かぐやがこんなにっこり笑顔になってくるならいいか……
そんなことを考えてしまうあたり、俺はだいぶかぐやの魅力にやられてんな。
思わず笑ってしまった俺を、かぐやが不思議そうに見ていた。
そういえば二話くらい前の芦花誕短編のタイトル、全然意識してなかったんですけど、メルトの歌詞とかかってそうな雰囲気出てていいですね(自画自賛)
あとお気に入り500件超えに総合評価1,000pt超えに誤字報告に感想に、ほんと読者の皆様には頭が上がりません。
今後もクソボケ主人公を、よろしく!