本文は1日半くらい使ってる。
やっとツクヨミに入れる……
自分の家に戻りほっと一息。
あそうだ、せっかくなら芦花呼ぶか。
思いつきで電話をかけてみる。
「もしもし圭? どうしたのこんな時間に」
「今からツクヨミ行くんだけど、暇だったら芦花も一緒にどうかなって」
「! 行く!」
「そしたらまた後でー」
よーし、これで芦花とかぐやの接点確保だぜ。
満足した俺は、自分のスマコンを取り出して目につける。
俺は前世でもコンタクトしてたからスムーズにつけられるけど、かぐやはどうだろうか。
怖いもの知らずでパッとつけるのか、はたまた意外とびびるのか。
そんなことを考えながらツクヨミにログインする。
一瞬海の中に沈み込むような感覚。
次の瞬間俺の目の前には、和風だけど近未来、そんな不思議な景色が広がっていた。
いやー、いつ来てもツクヨミってテンション上がるよなあ……!
そのままテンションに任せて商店街へ駆け出そうとして、我に返った。
おっといけない、まずは酒寄たちと合流せねば。
約束を破ったなんて言われたくはない。
俺は新参者が送られる大鳥居の下へ急いだ。
俺が着いたときには、酒寄はすでに鳥居の下でかぐやを待っていた。
「間に合った?」
「うん、まだかぐや出てきてないよ」
「そりゃよかった」
それから待つこと数十秒。
かぐや(ツクヨミの姿)が鳥居から飛び出してきた!
と思った次の瞬間、そのままペチャっと転けた。
「金髪ギャルいかぐや姫……ふふっ」
何がツボに入ったのか、酒寄は笑いをこらえている。
俺? 原作通りの見た目してる感動で言葉が出ない。
ギャルかぐや姫は……良い!!!
「もしや、彩葉! そんで隣が圭!」
かぐやが酒寄と俺を指さして叫んだ。
いつまでも感動していては不審に思われてしまう。
叫び出したい心を抑えつつ平然と返す。
「さっきぶり、かぐや。良いアバターだね」
「へへへ、でしょ〜」
「それでその犬は……」
「犬DOGE! 連れてこれるんだー!」
かぐやの周りを駆け回る犬に気づいた酒寄が問いかけると、かぐやは驚いたように答えた。
かぐやも知らなかったんだ。
犬DOGEは俺や酒寄にも愛想を振りまいてくれている。
いとかわゆし。
「じゃあ行こうか」
「あ、ちょっと待って」
街の方へ向かおうとした酒寄を引き留める。
ちょうどこのタイミングで芦花が到着。
「ごめん、待たせた!」
「いやいやナイスタイミング」
俺が返事をすると芦花は戸惑ったように周りを見回した。
「あ、彩葉もいるんだ。そっちの子はもしかして……?」
「そう、かぐや」
「んー? えーっと……パンケーキくれた人!」
「そうだよー、芦花って呼んでねー」
「朝来が芦花呼んだの?」
「そう、まあちょうどいいかなって」
俺の野望(いろかぐの芦花入り)のために。
そんな俺の心中など誰も知るはずもなく、俺たちはツクヨミの街へと繰り出していった。
「一瞬二人きりかって期待したのに……」
「うお〜〜〜すっげ〜〜〜面白そうなもんが死ぬほどある〜〜〜!」
テンションぶち上げ最高潮のかぐやが、酒寄の手を引いて駆けていく。
俺と芦花は、その後ろを見失わない程度のスピードでついて行った。
わかるぞかぐや、初見のとき俺もそんなだった。
俺の場合原作通りだって感動もあったけど。
「かぐやちゃん、明るくてまぶしいね」
「な。酒寄も、今までで一番自然体な気がする」
芦花は目を細めて酒寄とかぐやを見たあと、俺に話を振ってきた。
「……圭、悔しかったりする?」
「? なんで?」
「圭はさ、彩葉のこと結構気にかけてたじゃん?」
「まあね」
「自分が笑顔にしたかったとか、そんな気持ちなんじゃないかなって」
なんか硬い雰囲気だなって芦花の方を見ると、やけに真剣な顔をしていた。
何がどうしたのかわからんが。
「いや、単純に良かったなと思ってるよ。ああいうのは常識の中にいる俺らじゃぶっ壊せないからさ」
「圭が常識の中……?」
「おいおいおい俺ほどのノーマルボーイいないやろがい」
2人で笑い合う。
気心の知れた相手とのこういう会話は心地良いよね。
でも芦花は彩葉と話したいんじゃないかな、俺に気を遣ってるとか?
「芦花はあっちに混ざらなくていいのか?」
「え? いいよ……だって」
俺と芦花の間をフッと風が通り抜けた気がした。
何かが決定的に変わりそうな、そんな予感。
「私の居場所はk
「おーーーい圭も芦花もこっち来てーーー!!!」
何か言った芦花の声をかき消すように、かぐやが俺たちを呼んだ。
「ごめん、芦花。聞き取れなかった」
「んーん、なんでもないからいいよ。さ、圭も行こ」
明らか何か言ったよなあ、めっちゃ真剣な顔だったし。
まあ芦花がいいなら無理に聞くもんでも無いけど……
気になりはしたものの、嵐のように俺らを振り回すかぐやのせいで、5分後にはすっかり忘れていた。
ツクヨミ商店街でかぐやがぬいぐるみに興味を示したり、カフェで味のしないパフェを食べてかぐやがぶーぶー言ったり。
だいたいかぐやが何かして、それを俺ら3人で見守ってる感じ。
かぐやが何をするかなんて俺も細かくは知らないから、見ていて飽きない。
こりゃ原作酒寄も虜にされますわ……
テイクアウトした無味パフェをみんなでぱくついていると、酒寄が突然声を上げた。
「あ、時間だ」
「ヤチヨのライブ? 彩葉も好きだねえ」
芦花が笑いながら言う。
月見ヤチヨ。
歌って踊れる8000歳のAIライバー。
ツクヨミの管理人で、分身もできる。
原作通ってたらその正体もわかるわけだが、まあそれは置いといて。
酒寄はヤチヨの大ファンであった。
それはもう神棚とか作って崇拝するレベルで。
精神的な支えになっている。
俺と芦花はそこまでではない。
好きか嫌いかなら好きだしライブにも誘われたら行くけど、さすがにグッズとか買い込むほどではなかった。
最初見たときはそりゃ原作最重要キャラだし興奮したけど、正体とか秘めてる想いとか知っちゃってると……ね。
お労しやヤチヨ様が先にきてしまう。
それはそれとして宝くじ感覚で握手券は申し込むんですけどね。
今回のライブ、酒寄はついにミニライブの後にある握手チケットを手に入れた。
それはもう大変な喜びようだった。
学校で優等生やってるときににやけかけてるくらいには。
俺?
俺はまだ当てたことないです。
「さ、行こう」
「どこ行くの〜?」
「着いてくればわかるから」
説明する時間も惜しいのか、先ほどとは逆にかぐやの手を引いていく酒寄。
あれはテンション上がってんなあ……
「俺らも行くか」
「そうだね。ヤチヨのライブ見るの久しぶりだな〜」
ミニライブはタダだし、出入りも自由。
結構な頻度でやってるからね。
だから俺らみたいな思いつきでもふらっと行けて良い。
それでも握手券当たらないのがヤチヨの人気を物語っている。
急かす酒寄をなだめながら、ライブ会場へイン。
「ねーねーさっきヤチヨと話した」
「あれはチュートリアル」
一瞬かぐやの発言に周りがギョッとするも、続く酒寄の返しにみんな納得する。
初ログインのキャラメイク時にヤチヨが案内してくれるのだ。
俺もキャラメイク迷ったからなあ、よく覚えている。
結局男なら強いやつだろってことで、ライオンモデルにした。
青を基調に稲妻をあしらった靴、少しだぼっとしたパーカーにたてがみをイメージしたファー、ちゃんと耳も付いている。
ちょっと子供っぽいけど、格好いいので仕方ない。
人生2回目でもセンスは育たないのだ。
誰宛でもない言い訳を脳内で並べていると、忠犬オタ公の声が響いてきた。
「キタキタキタキタ! これがないとツクヨミの夜は始まらない! 今夜のヤチヨミニライブも、完全生中継をツクヨミ各地でもお届け中でーす!」
10……9……8……7……
そしてカウントがゼロになる。
さあ、ライブが始まる。
物語が動き出す始まりのライブが。
圭視点では上手く出せなさそうなので、圭の見た目の話をば。
身長は175cmないくらい、とりあえず芦花と並んだときに映える身長差をイメージしてもらえればOK
体重は60kgくらい? 中肉中背、筋肉ほどほど。腹筋割れてるとかはない。
顔とか身だしなみをしっかりキメれば(原作キャラ以外の)彼女ができるかも、くらいのビジュアル。
ただ本人が恋愛にさしたる興味がないため宝の持ち腐れとなっている。
ちなみに圭の素材が良いことに芦花は気づいてるけど本人には言ってないらしい。
運動面は割となんでもそつなくこなす。何をやらせてもクラスで3番目くらいにできる、部活でちゃんとやってる人間には勝てないけど素人同士なら負けないって感じ。
ただ帰宅部なので体力面はあまり……持久走で彩葉に負けてショックを受けてたとか。
あとなんか知りたいデータあったら、聞いてもらえれば追記します。