自分だけのオリジナル男子生徒を作って、他と差をつけよう! 作:レイトウカイトウ
トリニティ校舎内
リタ『はぁ……』
ナギサ『どうかされましたか?』
リタ『ナギサ様、聞いてください』
リタ『今日限定のドーナッツが売り切れていて買えなかったんですよ』
リタ『楽しみにしてたのに……』
ナギサ『それで落ち込んでいるのですね』
リタ『はい。ですから、今のオレには不用意に近づかない方が良いです』
ナギサ『そこまで?』
リタ『不機嫌なオレは、何をするのかわからないんで』
ナギサ『……』
ナギサ『確かに、ドーナッツのやけ食いをしていますね。ざっと十個ですか』
ナギサ『……って十個!?』
リタ『もう一回買ってきます』
ナギサ『待ちなさい!』
ナギサ『流石に食べすぎです! もっと自分の体を大切にしてください!』
リタ『ははは、オレの体はほとんどドーナッツでできているんで、大丈夫ですよ』
リタ『それに、自分の体は信じてあげないと』
ナギサ『歪んだ信頼ですね……』
リタ『今からクーデターを起こす如しに、ドーナッツ屋に抗議してきます』
ナギサ『悪化してますね』
リタ『止めないでください、ナギサ様』
ナギサ『流石に止めます。健康に悪いので』
リタ『クソ、ドーナッツニウムが足りない……』
ナギサ『勝手に物質を作らないでください』
リタ『うぅ……』
ミカ『何してるの?』
リタ『ドーナッツ屋にクーデターを起こそうと』
ミカ『何を言っているの?』
ナギサ『良い所に来ましたね、ミカさん。リタさんを止めるのを手伝ってください』
ミカ『よくわからないけど、わかった』
リタ『なぜ!? オレは限定ドーナッツが欲しかっただけなのに!』
ミカ『あー、あれ、美味しかったよ』
リタ『あ?』
ナギサ『ミカさん!?』
ミカ『なんかごめん』
リタ『オレのドーナッツを食べやがって……!』
ミカ『私が買ったんだけど!?』
ナギサ『あーあ、もう知りません。ミカさんのせいです』
ナギサ『私は何も悪くありませんから』
ミカ『ちょっと!?』
リタ『ミカ様、覚悟しろ』
ミカ『え、ちょ、待っ――』
◇◇◇◇◇
ティーパーティーの部屋
ナギサ「……」
リタ「あれ、ナギサ様だ」
ナギサ「……リタさん」
ナギサ「また、ドーナッツですか?」
リタ「そうですね。限定ドーナッツを買えたんで」
リタ「コーヒーと一緒にゆっくり食べようって」
ナギサ「コーヒー……」
ナギサ「なぜ紅茶を飲まないのか教えてもらっても?」
リタ「あんまり好きではないからですけど」
リタ「ブラックコーヒーに牛乳を入れて飲むのが好きで」
ナギサ「そうですか」
リタ「ふぅ、いただきます」
リタが、幸せそうにドーナッツを頬張った。
リタ「んん、美味しい」
ナギサ「……限定ドーナッツと言えば、あなたがミカさんに本気で怒った日がありましたね」
リタ「その話は忘れると約束したはずですけど」
ナギサ「あの衝撃は忘れられません。リタさんの、最初で最後のクーデターでしたから」
ナギサ「被害に遭われたのはミカさんでしたけど」
リタ「あの後、本当に気を張ってたんですよ」
リタ「ガチ目の危機でした」
ナギサ「そうでしたね」
ナギサ「ミカさんが許さないという選択肢を取っていたら、あなたはここにはいない」
リタ「はは、言えてるや」
リタ「人生で一番生きた心地がしなかった日でもありますし」
ナギサ「あの後、ミカさんはしばらくドーナッツを怖がっていましたね」
リタ「そうですね。オレもドーナッツ禁止令を出されたんですけど」
ナギサ「あまりにも調子に乗っていたので」
リタ「否定できない……」
ナギサ「……ミカさんは、何をしているのでしょう」
リタ「さぁ?」
ナギサ「ミカさんですから、きっと大丈夫だと思いますが」
リタ「……」
ナギサ「裏切者がいる中で、どうやら私は人の事を信じられなくなっているようです」
ナギサ「先生が言っていました」
リタ「はあ……」
ナギサ「ですが、ミカさんの事は信頼しています」
リタ「……」
リタ「盲目になるのは良いですけど、しっかりと事実を見極めないとダメですよ」
ナギサ「何ですか?」
リタ「オレはドーナッツの事になると、自分の体に歪んだ信頼を置いてしまう」
リタ「ドーナッツの穴を覗く時、ドーナッツを重ね過ぎて前が見えにくくなってしまいます」
リタ「……ナギサ様が何気なく言った言葉ですけど、その言葉を今、そのままお返ししますね」
ナギサ「あなたは、ミカさんが裏切者だと?」
リタ「うーん……」
リタ「いや、オレだと思いますよ?」
ナギサ「……セイアさんを守れなかったあなたが?」
リタ「痛い所を突きますね」
ナギサ「あれは想定外の襲撃でした。誰にも読めなかった……セイアさんは未来予知で見えていたのかわかりません」
ナギサ「……そんな中で、次は私かもしれないと思うのは、おかしいですか?」
リタ「まあ、一つおかしい所があるとするのなら」
リタ「オレかミカ様を護衛に配置しない点ですかね」
ナギサ「っ……」
リタ「オレは信じられなくて良いですが」
リタ「ナギサ様は、本当はミカ様を――」
ナギサ「それ以上は許しませんよ!」
ナギサ「もし一言でも発するようなら、ロールケーキを口にぶち込みます!」
リタ「冗談ですよ」
リタ「ナギサ様のミカ様に対する信頼は、本物ですからね」
ナギサ「……」
リタ「ふぅ、ドーナッツも食い終わったし、オレは帰りますね」
リタ「それじゃ」
ナギサ「……」
ナギサ「……あなたが裏切った場合、私とミカさんは終わりです」
ナギサ「ですから、裏切らないでくださいね、セイアさんのお気に入りであるリタさん」
リタ「わかってますよ」
信頼している、それが歪むとどうなるのだろうか