純潔騎士団は童貞神父の色に狂う 〜拗らせ処女の巣窟で女神が純潔の戒律を撤廃したらどうなるか。反動ですんごいことになった〜   作:ジョイントリーゼント

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1話

 

 

 

 

 

 

 晴れ晴れとした青空の下。

 

 いくつもの尖塔が天に伸びる白亜の大聖堂が見下ろす敷地内には、一帯でも特に清浄な空気をまとう建物がある。

 

 ――白銀聖騎士団、本部。

 

 他の都市なら主聖堂でもおかしくないその立派な教会堂に、今日も朝からたくさんの聖騎士たちが詰めている。

 

 しかも今日は――

 

 ……俺は本部内で一番広い空間、礼拝堂へと集まった騎士たちを、一番後ろから観察する。

 

「すごい人数だ。ほとんど全員? こんなに一度に集まるとこ見たの初めてかも……」

 

 騎士とはいえ、鎧ではなく修道服ベースの制服だけど。集まった百人を超える騎士一人一人が一騎当千の教会最高戦力だもんな。なんか威圧感すごい……。

 

 でもいったいなんの用で集められたんだろ?

 

 そう首を傾げてると、目の前にいた騎士の子がこっちに振り向いて。

 

「――……あの、リグレット助祭さまっ。助祭さまも呼ばれてたんですね?」

 

「ん。ええ、はい。そうなんです。といっても、とにかく全員召集だからと、歩いてた聖騎士の方に引っ張ってこられただけなんですけどね」

 

 内容も知らずに。というか、その聖騎士の人もなんの話か知らないみたいだったし。

 

「……私も、なんの話なのか聞いてないです。超重要っ……とだけ言われてるんですけど」

 

「そうなんですね? 超重要、ですか」

 

「あっ、すみません! 助祭にこんな物言いっ」

 

「いえいえ、気にされないでください。聖騎士である貴女の方が立場は上ですし、私も若い方の感性に触れられて新鮮ですから」

 

 恐縮する聖騎士の子に笑いかける。

 

 うーん。実際この子、俺より偉いんだけどね。聖騎士は全員少なくとも司祭相当だし。

 

 それに、俺より若くて体だって華奢に見えるけど……この子も師匠みたいにバカ強ゴリラ女子なんだ、きっと。恐ろしい。

 

 なんて、そんな思考をおくびにも出さず。会話に混ざりたそうにしてた他の聖騎士の子も巻き込んで、しばらく雑談交わしてたら。

 

「――――――みなさん。静粛に」

 

 凛とした声。

 

 張り上げてるわけでもないのに通るこの声は……副団長の。

 

 さっきまで俺と話してた子たちも、それ以外の騎士たちも、みんなが静かになって礼拝堂の奥を見る。

 

 一段高くなったところに、白金色の長髪を垂らす美貌の騎士――フラウゼル副団長が立っていた。

 

 副団長は全員が話を聞けるようになったことを確認すると、壇上で一度頷いて、そして口を開いた。

 

「みなさん。まずは、忙しい中集まってくれたことにお礼を。ありがとうございます」

 

 さすが副団長って感じのかっちりした動きで、軽く頭を下げる。

 

 それで、なんの話なんだろ。俺も他のみんなも……きっといま、みんな揃って気になってソワソワしてる。

 

 少なくとも、俺が聖騎士団付きの助祭になって二年、一度もこんなことなかった。聖騎士ほぼ全員が一堂に介することなんて。

 

 副団長もそんな空気を感じたんだと思う。わずかに口角を緩めると、また口を開く。

 

「ふふ。お礼はいいからさっさと早く要件を……という顔ですね、みなさん。わかってます、そう焦らずに。とある朗報をお伝えするにあたって、まず順を追ってお話しします」

 

 とある朗報? 気になる……。

 

 そうして、この場のみんなが真剣に耳を澄ませる中――――話は始まった。

 

「まず重要な背景情報がひとつ。とうとう、我々白銀聖騎士団が――対魔族戦線へ投入されることが決定しました」

 

「!!」

 

 それは、めちゃくちゃ大事な……! それこそ、俺たちの進退に直結する重要事じゃん!

 

「まだ、具体的な日取りや場所までは決まっていません。ただし、我々が神のご威光を以って悪しき魔族との戦いに身を投じる……これはもう覆らない事実として、枢機卿会議でも採決されました。――えぇ、えぇ……動揺する者がいるのも分かります。気にすることはありません」

 

 副団長の言葉に、礼拝堂内にどよめきが広がっていく。さっきまで話してた子たちも。

 

 もともと、いつかはそうなるってみんな薄々分かってた。魔神の加護を得た魔族の軍勢が人類の生存権を強力に脅かしてる以上、魔神の力に特攻を持つ聖十字教会の、その最高戦力たる白銀聖騎士団が必要なのは、誰の目にも明らかだった。

 

 でもやっぱり、そのいつかがこうしてやってくるとね。

 

 人類はずっと劣勢に置かれてる。きっとこの場の何人も命を落とすことにだってなる。それこそ、俺だってどうなるか。まだ年若い少女もたくさんいる聖騎士たちが動揺するのも分かるよ。

 

 ……でも気になるのは、さっき副団長が言ってた朗報って言葉。人類のために早く貢献したいって子もいるだろうからそういう子にとっては朗報だろうけど、そうじゃない子には……。

 

 とても有能で部下に対する配慮もある副団長の言葉選びにしては、どこか違和感が残る。

 

 そう、思っていたその時。

 

「――みなさん。そろそろ……いいですか? 今の件に関しては、質問も異論も歓迎も、たくさんの意見があることと思いますが。今日はそれを受けることがこの場の趣旨ではありません。この後に続く朗報――みなさんにはまずそれを聞いてから、色々なことを判断してほしいと思っています」

 

 ! そうだよな、さっき「まずは背景から」って言ってたし。じゃあ本題はこれからだ。

 

 そうして、さっきまでざわざわしてた礼拝堂内がひとしきり静かになってから。副団長は大きく頷いて言った。

 

「今回、極めて危険な戦線で矢面に立つであろう騎士団に対して。我々の奉じる神であられる慈愛深き白神さまから、寛大なことに……――とっても素敵なご褒美があったんです」

 

 白神さまからご褒美!? そんなの始めて聞いたんだけど……! 

 

 周囲でも、いったん落ち着いたはずのどよめきが再び……。

 

 そ、それで……ご褒美の内容は……?

 

「きっとみんなとっても喜ぶと思います。白神さまは私たち聖騎士の日々の祈りから、もっとも適した願いを選んでくれました」

 

 まるで一言ずつ噛みしめるみたいに、副団長は万感の思いを込めて言葉を紡ぐ。

 

「それは、古くから続いた伝統の革新。過去の偉人による足跡の更新。……そして、私たち『純潔の乙女』の大願」

 

 ん、いま言葉を切った副団長と、一瞬目が合った気が……。

 

 気のせいかと思いなおした直後。副団長はすぅ……と緊張をほぐすように大きく深呼吸して。

 

 そして次の瞬間…………――告げたのだ。

 

 

 

「――――――白銀聖騎士団から……『純潔の戒律』が撤廃されました」

 

 

 

 時間が止まる。

 

 さっきまでたくさんの息遣いに溢れていた礼拝堂内が、完全なる無音の空間になる。

 

 そんな中で――ただ俺一人だけが首を傾げる。

 

 純潔の戒律の撤廃って。…………いやまあ、それは……っす、好きな人と甘い時間を過ごしたいみたいなのは、女の子の憧れなのかもだけど……。

 

 でもそんな、大願とか、ちょっと大げさじゃ? なんて。そんな考えが甘い……ほんとに甘すぎるものだったんだって、俺はすぐに思い知ることになる。

 

 周りが静かすぎるのと、副団長の言葉がよく分からないものだったから、完全に自分の世界に入って考え込んでたけど。…………ふと、周囲の反応を見てみたその瞬間。

 

「――ッッッ!?!?!?」

 

 俺を見る、あまりにもたくさんの視線。強大な魔力がこもってぎらついた目、目、目……。

 

 ――――な、なんでみんな血走った目で俺のこと見て……ッ!? ッッこわ!

 

 

 

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