純潔騎士団は童貞神父の色に狂う 〜拗らせ処女の巣窟で女神が純潔の戒律を撤廃したらどうなるか。反動ですんごいことになった〜   作:ジョイントリーゼント

12 / 16
12話

 

 ルウガウルさんは部屋の中を一通り見渡して。

 

 ボソリと呟く。

 

「なんでシャリーアもいるの? すごい胡乱な目で副団長見てるし。で、副団長はニヤけてる……? ……昨日あんなだったのに?」

 

 ごめんルウガウルさん、なんかのけ者感出しちゃって。でも、昨夜は「とりあえず副団長を落ち着かせたい」って先に帰ってもらったから、今日そっちから来てくれるんじゃって思ってたんだ。

 

 もちろん来てくれなかったとしても、今からするつもりの話はそのままさせてもらうつもりだったけど。

 

 じゃあ、そういうことで。

 

「ちょうど役者も揃ったので……副団長。――ちょっと、お話が」

 

「………………お話、ですか?」

 

 勘付いたかな。副団長の目が、警戒する猫みたいに細くなった。

 

 副団長、一見今朝から調子戻ったみたいに見えるけどぜんぜんそんなことないもんな。情緒おかしいし、たまに俺のこと「おにいちゃん」とか言うし。

 

 あとは――――ずっと俺から、意識を離さない。アナトリアの情報を同じ部屋でまとめさせてるのだって、たぶん自分の視界の外に俺をやりたくないんだと思う。

 

 俺は副団長に起こった不可逆的な変化に責任を感じながら。それでもと、話を続ける。

 

「もうなんとなく、勘付いてるみたいですが。副団長には許可をもらいたいと思っています。――――私がアナトリアへ向かう許可を」

 

「っ!」

 

「でた、またそれ……! 昨日副団長と話して折れたんじゃないの? 副団長が頷くわけないじゃん。それにわたしだって」

 

「へ……? なになに、なんですか? アナトリアってどこ……?」

 

 三者三様な反応、おおむね予想通りだ。特に過敏なのはやっぱり――

 

「――ダメに! 決まってます……! 私、昨日言いましたよね? リグレット助祭だって頷いてくれましたよね……っ? アナトリアには行かないって!」

 

 よし。まだ「おにいちゃん」呼びじゃない。どうも情緒が荒ぶった時に呼ばれることが多いみたいだから、まだギリギリ危険水域は超えてない。

 

「私が昨日副団長に言ったのは、アナトリアに行かないということじゃありません。――黙ってアナトリアに行かない、と。そう言ったんです」

 

「! ……じゃあ! 許可なんて、出すわけないじゃないですか……!」

 

 ぶん、と握った両手を振る副団長。徐々に動きが、昨日みたいに子ども染みてきた。

 

 じゃあ早いとこ――勝負はこっから。

 

 そう気合を入れて、俺は告げた。

 

「条件付きです。アナトリアへは一人では向かいません。その代わり――――聖騎士を四人、お貸りしたいんです」

 

「……四人…………?」

 

 困惑したような声がこぼれる。その隙にと、俺は畳みかける。

 

「副団長もルウガウルさんも、きっとアナトリアを救おうと動くこと自体に否やがあるとは思ってません。魔族に脅かされる土地を、信徒を守ることは、聖騎士団にとっての義務だというのは共通認識ですね?」

 

「それは、そうですけど。……っでも、今はまだ――」

 

「――そう。()()()()、です。情報が少ないまま動いたら聖騎士にも危険が及ぶ。私が一人で向かったなら、なおさら命が危ないと」

 

 ここまではみんな意見があってる。「いきなりなんのこっちゃ」って感じの可哀そうなシャリーアさんは置いといて。

 

 じゃあ俺は何を言おうとしてるのか。どうやってここから副団長たちの意見を覆すのか。

 

 口の回しどころだ。

 

「私は治癒術師です。大きな大きな、死にゆく怪我を負った人にも……今一度立ちあがる力を与えられる」

 

 なにが言いたいんだという顔をするみんなに。

 

 俺は言った。

 

 

 

「聖騎士四人までなら、私が作りあげてみせます。――――けして死なない不死の小隊を」

 

 

 

「――っ!」

 

「手が飛んでも、足が飛んでも、首が飛んでも。どんな傷を負ったって、命が消える前に私が治します。下調べが足りなくたって死なせない。たった四人……されど、一騎当千の聖騎士が四人――――アナトリアを救うに足ると思っています」

 

「っそれは、でも、……………………たしかに、もしかしてそれならいけるんですか……?」

 

 よしよし、感触悪くないぞ! みんな最初はぎょっとした顔だったけど、いまの副団長の反応は脈ありだ。

 

「……でも、不死って大げさじゃない? 治癒魔術ってそんな万能じゃないでしょ。大きな怪我や病気ほど治すのに時間がかかるはず」

 

「うーん、たしかにルウガウルさんの言う通りですよねぇ。戦闘中の致命傷を死ぬ前に治すって、そんなこと可能なの? って感じー」

 

 疑わし気な目だな、ルウガウルさんにシャリーアさん。ふふ。けど、そんな突っ込み俺が想定してないと思ったか。

 

 当然のように、その疑問にも回答を持ち合わせてるぞ……!

 

「はい。ではそんな疑問にお答えするために――実演を」

 

 論より証拠、百聞は一見にしかず。疑うなら見せてあげよう!

 

「今から私が、自分自身を傷つけて治療して見せます。後は、それを見てみなさんに判断してほしいです。本当に私が不死の小隊を支えるに値するのか」

 

 そんな俺の提案に。一番初めに反応したのはやっぱり――

 

「――っだ、ダメです……! そんな、おにいちゃんが自分を傷つけるなんて……っ!」

 

「大丈夫、安心してください。いきなり大きな傷はつけないですから。みんなが心配しないように小さな傷から治して見せて、徐々に傷を深くしていきます」

 

「そんな、っでも……!」

 

「危ないと思ったらその時点で止めてくれていいです。でもそれまでは……ね? ――――兄の言うこと、聞けませんか?」

 

「!!」

 

 効果ありと見た! おにいちゃん戦法、副団長には効くな……。

 

「だからおにいちゃんってなんなのさ~」

 

「……。昨日あのあと、ほんとに何があったの?」

 

 ごめん、二人はまた後で。今は副団長の説得が先決だから。もちろんその後はまたお願いがあるけど、ひとまずは。

 

「ということで。実演、いいですよね? 副団長」

 

 じぃっと目を見つめると。副団長は徐々に頬を赤くして、視線をおろおろとさまよわせて。そして最後には言ったのだ。

 

「…………はぃ。わかった……――」

 

「ん。いい子です」

 

 

 

 ということで。さっそく。

 

「――はい。では、ちゃきちゃきいきましょうか。まず手首をバサッと」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。