純潔騎士団は童貞神父の色に狂う 〜拗らせ処女の巣窟で女神が純潔の戒律を撤廃したらどうなるか。反動ですんごいことになった〜   作:ジョイントリーゼント

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14話

 

 そうして。

 

 血まみれになった俺の法衣を片づけてから、俺たちは揃って応接用のソファに座る。隣は副団長で、向かいにルウガウルさんとシャリーアさんだ。

 

 おや。なんかルウガウルさんたちにすごいジト目向けられてる。

 

「……副団長、助祭にくっつきすぎじゃない?」

 

「! そんなことはありませんっ。先ほど無茶なことをしたばかりなんですから、こうして助祭の体を支えるのは必要なことです!」

 

「どっちかというと副団長が支えられてますよねぇ」

 

 うん。なんかべったり寄りかかられてる。腕をぎゅっと抱き込まれて……む、胸なんかも押しつけられて。

 

 でもこれは――

 

「……副団長も、お疲れなんです。私のせいで余計な心労をたくさんかけて、誰かに寄りかかりたくもなりますよ。気にしないでください」

 

「っ! リグレット助祭ぃ……」

 

 まるで年の離れた妹みたいに、うっとりと体を擦りつけてくる。妹が年上なのおかしいけど。

 

 まあでも実際、副団長ってちょっと精神的に疲れてそうだし。これくらいで満足してくれるなら、いくらでも腕くらい貸すよ。これからまた――副団長には難しい判断をしてもらうことになるし。

 

 ということで。

 

「そろそろ、話しましょうか。――――私についてきてもらう聖騎士四人を、誰にするのか」

 

 俺がそう言うと、さっきまでのどこか緩んだ雰囲気がキュッと締まる。アナトリアの命運がかかってるんだ、俺もこればかりは真剣にいかせてもらう。

 

 手始めに。

 

「まず一人、これは私の希望なんですが。――ルウガウルさんを四人の中に入れてほしいと思っています」

 

「! わたし?」

 

 俺の申し出に、ルウガウルさんは驚いたように目を開く。

 

 これは昨日「不死の小隊」作戦を考えてた時から決めてたことだ。もちろん無理にとは言わないけど、できることならと。なぜならば――

 

「ルウガウルさんは騎士団でも唯一の獣人族。その卓越した五感と生存能力から、小隊のハブのような役割をこなしてほしいんです」

 

 ルウガウルさんの三角耳が動く。尻尾もゆらゆら揺らしてるけど、それどういう感情?

 

 しかし実際、ルウガウルさんがいるといないとじゃ全然違うと思うんだよな。

 

 戦闘力も機動力もない俺が小隊員を完全にカバーするには、小隊員の中で補佐してくれる人が必須。そしてそれは、さっき言った理由でルウガウルさんが最適なんだ。

 

 ちなみに。獣人族ってたいてい感覚派で、物事を深く考えることを苦手とする人が多いらしいんだけど、ルウガウルさんはそうじゃない。聖騎士団に入れるくらい魔術にも精通しててめっちゃ頭いい。

 

 だから、彼女にはできれば協力してほしいなと。そう、懇願の視線を向けると。

 

「――うん、いいよ。わたしはそれで」

 

「! いいんですかッ? そんなにあっさり……」

 

「べつに考えず決めたわけじゃないけど。まあ、助祭の頼みだからね」

 

「ルウガウルさん……」

 

 涼しい顔で、嬉しいこと言ってくれる……! でも本人がいいって言ってくれるなら、これほど助かることもないよ。あとは副団長さえ頷いてくれれば。

 

「ね。それでいいでしょ、副団長。アナトリアではわたしが助祭を守るから。――……四六時中、つきっきりでね」

 

「っく! ルウガウルさん……貴女は……!」

 

 え? なんで副団長そんな悔しそうにしてるの。ギリギリ歯噛みして……って痛い、俺の腕が!

 

「あっ、すみません! つい高ぶってしまって……」

 

 なんなん? ほんとに。

 

「いえいえ、大丈夫ですから。でもこれで、アナトリアへ向かう聖騎士のひとりはルウガウルさんに決定――でいいですよね? 副団長」

 

「……………………そう、ですね……っ。たしかにリグレット助祭の選定理由は理に適っています。……っ止むを得ません」

 

「決まりだね。じゃあすぐ出立の準備もしないと。これからしばらくよろしくだね。助祭」

 

「はいッ。どうかよろしくお願いします、ルウガウルさん」

 

 よしッ。さっそく一人目が決定だ。しかも一番優先度高かったルウガウルさんが決まった。彼女にはほんと感謝しないと。

 

 なんか副団長がぐぬぬと唸ってることだけが謎だけど。

 

 じゃあ、次は。

 

「残り三人のメンバーですが。正直これは、副団長の差配次第かなと思ってます。小隊連携の要であるルウガウルさんを中心に、戦闘の得意な聖騎士だと助かります。……それこそ、上級騎士であるシャリーアさんみたいな方とか」

 

「え~あたしぃ? まあね、あたしベテランだし? 戦闘力だってそこらの聖騎士には負けないですし!」

 

 シャリーアさんこんな可愛らしい見た目なのに、騎士団内でも強者だって評判だし。実際あのリグレット親衛隊だって、シャリーアさんじゃないとまとめることはできなかったと思う。

 

 もちろん、シャリーアさんが来てくれるかどうかは彼女や副団長の判断次第だけど。

 

 あと他は誰がいたっけ。本人にも副団長にも頷いてもらえないとって考えたら、中々声を掛けられる子も限られてくるからなあ。

 

 なんて、そんなことを考えてると。シャリーアさんがぼそっと。

 

「…………それに、大聖堂(ここ)を、あの邪神のそばを離れられるなら。魔族と戦ってる方がましかもですね」

 

 ん? なんかシャリーアさん、いつもの感じとだいぶ……。

 

「――わっかりましたよぉ! ではでは、不肖シャリーア・ブラン。『白衣の貴公子』を守る盾として、アナトリアへ向かっちゃおうじゃないですかぁ!」

 

 気のせいかな? さっきの。でもとにかく、シャリーアさんも承諾してくれたなら……!

 

「副団長。そういうことなので、シャリーアさんにも来てもらっていいでしょうか?」

 

「……まあ、はい、シャリーアさんなら。大丈夫ですもんね」

 

 よし! でもその「大丈夫」ってどういう意味? 戦闘力的な? ……まあいいや。

 

 それじゃあ。

 

「今時点で決定したメンバーは、ルウガウルさんとシャリーアさんの二人。残りの二人は……」

 

「――すこし、考えさせてもらってもいいですか? リグレット助祭。もちろん時間がないことは分かっています。結論はすぐに……明日にでも出しますから」

 

「副団長……――はい、分かりました。それでは忙しいところ申し訳ないですが、お願いします。私たちはすぐ行動できるように準備だけしておきますね」

 

「はい。どうか、アナトリアで困ることにはならないよう、入念に準備してくださいね……。入用のものがあればなんでも言ってください。リグレット助祭のためなら、多少無茶をしてでも用意してみせます」

 

 「上層部の指示から始まったことですからね」と副団長は笑って見せる。俺たちがアナトリアへ向かうことが心配なのか、まだどこか力のない笑みで、きゅっと俺の腕を握ってくるけど。

 

 それでも。これでどうにかアナトリアへ向かうめどが立ったと、そう安心して。

 

 ――――俺はどこか、気を抜いてしまっていたのだろうか。

 

 

 

 その後。

 

 準備のためにと今日の業務や訓練を免除された俺たちは、副団長の執務室を出て各々の部屋へと向かった。俺もルウガウルさんシャリーアさんと別れて、今朝副団長と一緒にいた男性用宿舎に向かっていたのだが。

 

 ――事件はそのとき起きた。

 

「来たぞ! 『白衣の貴公子』クラウス・リグレットだ……!」

 

「速やかに事を済ませろよ。こいつは聖騎士団を影で支配してるとも言われているんだ。万が一聖騎士の誰かに見つかってみろ、全員血祭りにあげられると思え!」

 

 顔を隠した黒づくめの連中が突然現れたかと思うと。なにやら薬品の臭いがする布を口に当てられて。

 

 ……――意識が、遠のいて。

 

 

 

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