純潔騎士団は童貞神父の色に狂う 〜拗らせ処女の巣窟で女神が純潔の戒律を撤廃したらどうなるか。反動ですんごいことになった〜   作:ジョイントリーゼント

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16話

 

 狂ってるってひどいなあ。そりゃ俺も痛みは感じるし嫌なのは嫌だけど。でもほら、もう慣れてるからさ。

 

 地下牢にて両手を上げた姿勢で拘束される俺は、苦笑いじみた表情を浮かべる。周囲の男たちが慄いたのが分かった。

 

 でも実際。魔封じの枷を嵌められてるけど、これ基本体外に放出される魔力に対してしか効果ないんだよな。枷の一部が腕にぶっ刺さって多少魔力操作を阻害するけど、まあ自分に治癒魔術かける分には問題なさそう。

 

 だからバレない程度に怪我治しつつなら、いくら拷問されても痛いだけ……とそう思った時だった。この、ジメジメとした地下牢に新たな人影が――

 

「――これは、枢機卿ッ! このようなお見苦しい場所に……!」

 

「拷問はその……つつがなく行っておりますので!」

 

 地上につながる階段から姿を見せたのは、いつぞや会議室で見た偉そうな格好の初老男性、枢機卿。

 

 ふうん、やっぱりお前か。こいつらに拷問を命じてたのは。

 

「ふん。見るも無惨な姿だな、『白衣の貴公子』――クラウス・リグレットといったか?」

 

 無惨……。まあ確かに流した血や破れた服はそのままだし、はたからはそう見えるか。とりあえず様子見で、苦しんでるふりでもしとこ。

 

「――……ッハァ、ぐ……。貴方は……枢機卿……!? い、いったいなぜ私にこのような、ぅぐ、……仕打ちをッ!」

 

 我ながら迫真の演技。

 

 枢機卿は満足そうにニヤリと笑みを浮かべた。その部下たちは唖然としてるけど。

 

「……お、お前、さっきまでッ」

 

「ん? どうした」

 

「ッ枢機卿、いえ、なんでもございません……!」

 

 そうそう、お前たちは俺の拷問が順調じゃないと都合悪いんだろ? 俺ももっと状況知りたいし、ちゃんと弱ってるフリするからさ。

 

 ハハハ、そんな睨むなよなあ。俺だってほら…………――さっさとアナトリアに向かわなきゃなのに。こんなくだらないことに付き合わされて辟易してたとこだからさ――

 

「ッ? こ、こいつなんか目つきが……」

 

「――さっきからどうした、お前たち。なにか気になることでもあるのか」

 

「い、いえ枢機卿ッ、それはその……」

 

 はいはい。君たちは保身のために問題ないフリしててくれ。俺は俺でもう少し情報を探らせてもらうからさ。

 

 ということで。

 

「ッ枢機、卿! いったいなぜ、教会でも頂点に近い貴方が……! っぐ、ぅぅ……こんなことを!?」

 

 顔を歪めながらそう問いかけてやれば。完全に自分が優位な立場なら、人の口は軽くなるってもんだから。

 

「ふ……。その無様な姿に免じて教えてやろうじゃないか。お前が苦痛を与えられる原因になった、その人物を」

 

 ほら、すぐこうだ。これだから現場に出ない権力者ってのは……――ほんとに、救えない。

 

 それに、いまの言葉でもうだいたい分かった。予想はしてたけどやっぱりそうなんだ。何を勘違いしてるのか知らないけど、お前たちは俺を――

 

「リグレット助祭。お前は白銀聖騎士団――フラウゼル副団長に対する人質だよ」

 

「やっぱり、そうなんだな……ッ」

 

 くだらない、ほんとに……! この危急の時に、お前たちは自分の利益のことしか考えてない。誰かを傷つけてでも、神の教義に背いてでも。それが教会上層部のすることだって?

 

 一応その真意を確認できるまではって思ってたけど、それならもう遠慮はしないぞ。無理やり枷を破って、お前たちを傷つけてでも。ここを出て、さっさとアナトリアに向かうんだッ。

 

 そう決意した俺は。……それでも、ことを起こすのは枢機卿がここを去ってから――少しでも彼らの対応を遅らせられるタイミングでと、引き続き苦しむ演技を続ける。

 

「……ボロボロだというのに、ずいぶんと生意気な目だな。助祭」

 

 おっと、感情が目に漏れてたかな。

 

 枢機卿からはちょっと不審そうな目を、その部下たちからは変わらず化け物見るみたいな目を向けられるけど。

 

「騎士でないとはいえ、かの騎士団に所属するだけはある……か。いい、好都合だ。お前のように高潔な人物であるほど、情けなく泣きわめく姿が効果的というものだ。――私は引き続き副団長へ揺さぶりをかける。お前たちはうまく助祭の悲鳴を引き出せ」

 

「ッッは! かしこまりました……!」

 

 「頼むぞお前」みたいな感じで、枢機卿の部下たちに睨まれるけど。残念、俺は枢機卿に忖度なんかしやしない。後でお前たちが大目玉食らおうが知ったこっちゃない。

 

 さあ、枢機卿がいなくなったら覚悟しろ、と。牢を去ろうと背を向けた枢機卿を、無害なフリして見送っていた…………その時だった。

 

 突然――――ズズン、と。

 

 鈍い振動に地響きが。

 

「…………地震、か?」

 

 枢機卿は一瞬足を止めて独り言ちるも、すぐに歩みを再開する。

 

 だがしかし。

 

 またすぐ、再びの振動と音が。さっきよりも近い? いや、明らかに近づいてるッ。三度目、四度目と続くにつれて、凄い速度でこっちに……!

 

「な、なんだこれは?」

 

「枢機卿、何かがおかしいです! 危険があるかもしれません、私どものそばへ……!」

 

「あ、ああ……」

 

 そうしてる間にも……まるで何か大規模な攻撃を受けてるみたいな音はどんどん近づいて来て。次第に人の声――悲鳴まで。

 

 これ、もしかして――

 

「なんなんだいったい! なにが起こっているというのだッ。おいお前たち、誰か様子を――」

 

 枢機卿が焦ってそう口にした、次の瞬間だった。

 

 振動と音はついにここ――地下牢まで辿り着いて。地上との出入口で、扉が吹き飛ばされる轟音。

 

「なッ!!」

 

 階段の上から吹き飛んできたのはひしゃげた鋼鉄の扉。なにが恐ろしいって、扉をぶん殴ったであろう人の拳の痕がくっきり残ってることだよ。

 

 ……もう決まりだ。この大聖堂の敷地内で、こんな化け物フィジカルな芸当ができる人なんて――

 

 

 

「助けにきました! 無事ですか――――おにいちゃんッッッ!!」

 

 

 

 あっ。

 

 直後。枢機卿たちは、同時にまったく同じ疑問を口にした。

 

「おにいちゃん……――?」

 

 

 

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