純潔騎士団は童貞神父の色に狂う 〜拗らせ処女の巣窟で女神が純潔の戒律を撤廃したらどうなるか。反動ですんごいことになった〜 作:ジョイントリーゼント
え、ちょっと待って。……なんかみんな、ちょっとずつこっち近づいてきてない?
「――ねえ。純潔の戒律がなくなるってつまり……――恋愛が自由になるってことだよね?」
「うん、そういうことだよねこれ……! 誰かを好きになることも、想いを告げることも、恋人になることも。……その、先まで進むことも……っ!」
ひそひそと聖騎士間で交わされる言葉が聞こえる。それに、その声にこもった熱も感じる。
そ、その様子見てるとみんなよっぽど恋愛したかったんだな。でも、そのことと、いまこうやって俺ににじり寄ってくる聖騎士の壁にどういう関係が……。
なんて考えてたけど、俺はもう薄々察してた。
だって、え、そういうことだよね? 恋愛禁止撤廃と、騎士団関係者で唯一の男である俺を貫く無数の視線。これ絶対そうじゃん。
――――みんな、俺っていう身近で手軽な男を、ひとまずの獲物に設定したんじゃん……。
「り、リグレット助祭。あの、さっきわたしたち、楽しくお喋りしてましたよね……? いつも、優しく笑いかけてくれるし……。……――そういうこと、ですよね?」
「そ、そういうこと? どういうことかな……」
ああ、副団長の話が始まる前に言葉を交わしてた子が。大人しくって可愛らしい、まさに敬虔な聖十字教徒って感じの子が、他の子に混じって獣の目を……。
「わたしに、気があるんですよね――?」
え!? なんでッ? そんなこと一言も言ってな――じょ、女子こわぁ……!
「――ちょっとあんた、なに言ってんの? 助祭があんたを好きって、ほんっと、拗らせた処女じゃあるまいし……! 助祭は優しいから誰にでもそうなの、勘違いしないで! いい? 助祭がほんとに好きなのはね、……こ、このあたし――」
「いや、拗らせた処女ってこの場の全員に刺さるんですけど」
「でもたぶん、助祭は私のことが……」
「いやいや私を……!」
おお……。百を超える乙女たちが、なにやら俺のことで言い争いを。やっぱり怖い……。
「あの、みなさん。恋愛解禁で浮かれる気持ちも分かりますが……今一度冷静になってよく考えた方がいいですよ。私みたいな粗忽者、穢れなき敬虔な神のしもべであるみなさんには相応しくないですから」
「……っていうのが表向きの話ね! きっと後で助祭から気になっている聖騎士……私に、個別に話が!」
「あなたなわけないでしょ! 話が来るのは私――」
「まどろっこしいわ。後でなんて言わずに、もういまここで口づけでも交わして見せつければ――!」
あああ。なんかどんどんヒートアップしてきた。俺だれのとこにも行く気ないよ……。あっ誰だいま「押し倒せ!」とか言ったの! 怖いって……!
副団長の話を聞いたときには、純潔の戒律をなくすことにそんな大きな意味があるのか分からなかったけど。今の彼女たちの様子を見るに、ずいぶんと男に飢えてる……。
誰でもいいから近くの男を、ってなるくらいだもんな。みんなもっと自分の体を大事にしなって……。
詰め寄ってくる聖騎士たちに必死に呼びかけるけど、誰も聞く耳もたない。まるで興奮した雌豹の群れみたいな。
そして、とうとう。
「――り、リグレット助祭……! ……わぁ、助祭の腕カチカチで、おっきぃ……。男らしいんですね……――」
「ちょ、っ……!」
この子、礼拝堂に来て最初に話した子。大人しそうだったのになんか言ってること妖しいし、目がとろんとして…………って、痛い痛い! 力強い! ちょっと体光ってるけど、魔力で強化してない!?
「ちょっとぉ、抜け駆けもおさわりも禁止でしょ! ……え、もしかして触っていいの?」
「……いいんじゃない? だってもう戒律もないし」
その言葉に一瞬場が静まり返って、直後。
――――礼拝堂に満ちるのは、幾人もの聖騎士の、清浄なる魔力の光。
「――どいてどいて! 私が、いちばんに……!」
「あ、誰いま殴ったの! どれだけ助祭の体が欲しいの? この不埒者っ! …………あっ、私も行く!」
「きゃあっ、助祭の体かたい! 筋肉……! ……はぁはぁ!」
ひいい、や、やめっ。……あ、そこはさすがにダメ、触っちゃダメだって!
もはや視界を埋め尽くす聖騎士の群れにもみくちゃにされてる。むせかえるような女の子の甘い香りで、なんかちょっと気分悪くなってきた。
あぁ……これまでのみんなはすごく礼儀正しくて、教会における高嶺の花っていう評判通りだったのに。ほんとに師匠の言う通りだったんだ。元聖騎士だった師匠と同じ、一騎当千のゴリゴリ女子の巣窟だって。
思い出したらめまいしてきた。あの地獄の修行の日々。足腰立たなくなってからが本番だって、毎日のように血と涙と汗が枯れるまでしごかれたな……。
そんな、苦しかった思い出が走馬灯のように脳裏に流れ。俺もこれまでか、もうなるようになれと、もみくちゃされるに任せようとして……。
その時だった。
「――――みなさんっ! リグレット助祭を放しなさい……!」