神様の祝福は不要です! ~こじらせ魔導師と異世界ガノタ少女のビーム魔法開発記録…のはずだが、周りの連中が勝手に二人をくっつけようとしてくる件~ 作:小河白明夫
「目がっ、目がっ、目があぁぁぁっ!」
閃光の魔法で目をやられたことにより、大騒ぎしてのたうち回るカーマ。
そして視力が戻ってくると、とてつもない怒りをあらわにして拳を振りかざしてきた。
「こいつ、ぶっ殺す!」
「ま…まずいっすよ、カーマ先輩! 校内での暴力沙汰は進路に影響がっ…」
「くっ……」
だが後輩から進路に影響すると告げられて、仕方なく拳を下すカーマ。
「いいかレクス、貴様はいずれ必ずぶっ殺してやるから覚えておけよ!」
そして最後にそう捨て台詞を吐き、カーマは後輩と共にこの場から去っていくのであった。
「ああ、うざかった……」
レクスはやっと面倒なのが去ってくれたとほっと一息。
その後、先ほどから自分の腕にしがみついている者のほうへと視線を向けた。
「……………」
「うっ…うぅっ……」
どうやらカーマから盛大にののしられていたとき、直接ののしられたレクスよりも、その隣にいたアナのほうがひどくおびえていた模様。
「もうあれは消えたが」
「えっ? ほ…ほんとです、もういませんね。ふぅっ…」
……と、そこでやっとアナは自分がレクスの腕にしがみついていたことに気づく。
「あわっ…わわわっ! す…すみませんっ、レクスさん!」
顔を真っ赤にしながら慌てて手を離したアナは、ものすごくぎこちない足取りで歩きだした。
「レ…レレ…レクスさん、魔法研究…科の、研究室…は、こっち…ですよ。さ…さあ、行きま…しょう」
言葉もとぎれとぎれでものすごくぎこちない。
そして二人はやっと魔法研究科の研究室にたどり着く。
その部屋の中では魔法研究科の生徒たちが、それぞれ個別に研究を行っていた。
ある者は既存の魔法の改良を、ある者は魔導具の開発を、そしてある者は魔法薬の調合を…と、その内容は様々である。
「レクスさんも入って大丈夫ですよ。他にも外部の人はいますし」
魔法研究科の生徒は魔導師でない者も多いため、そういった者たちが魔法の開発や改良を行う場合、どうしても魔導師の協力者が必要となる。
そこでここにはレクスと同じような外部の協力者や魔導師科の生徒もちらほらいたりする。
その後アナは自分の席に着くと、そこであるものを取り出してレクスに差し出した。
「レクスさん、これ使ってください」
「あの白いのが持ってたものに似ているが、作ったのか?」
「はい。魔法研究科では一年生の内はいろんな分野をまんべんなく学ぶので、わたしでも一応これくらいは作れます」
魔導師が使う魔法の精度を高めるためのアイテム、魔法の杖。
今回アナが作ったこれは、ずいぶんと長さが短めな魔法の杖である。
「白いゴーレムも小さな杖から光を放っていたので、やっぱり同じような杖があったほうがいいですよね」
「あれは杖というより、ほぼ剣の柄って感じだったがな。だがまあせっかくだし、早速これで試してみるか」
レクスはそう言うと手にした杖に魔力を込めた。
すると杖の先端に取り付けられている魔鉱石が光の魔力によって輝きだす。
そしてその魔鉱石から放たれている光をレクスは力業によって制御し、細長い一本の光へと束ねていく。
「す…すごいです、レクスさん! こんなにも簡単に光の剣を?」
「いや、これはただ光の方向を変えて形を似せただけ。こんなんじゃ何の役にも立たん」
そう言いながらレクスは、その光の剣っぽいもので目の前の机を斬りつけて見せる…が、当然ただ光を束ねただけのものでは何かを斬ることなどできない。
「やはりこれじゃ斬れん」
「この光の剣で斬るためには、光の性質を変える必要があるってことですよね。異界の書の絵だと焼き切っていたように見えたので、太陽光みたいに熱を与える感じでしょうか」
「だろうな」
「ちなみにレクスさん、光の性質の変化って…」
「出来るわけないだろ。そんなこと出来てたら、とっくに何か新しい魔法を作っている」
「ですよね。じゃあまずは、その光の性質を変える方法を探ってみましょう」
するとアナは魔力の流れを視認するための魔導具、魔導鏡をかけて、レクスが手にしている杖から放たれる光を観察しだした。
「レクスさん、もうしばらくそれの維持、大丈夫ですか?」
「いや、かなりしんどい。力業でこの状態を維持すると、魔力消費がかなりえぐい」
「あ…あと少しで記録が終わりますから、もう少しだけお願いします」
アナは大急ぎで、魔導鏡で見た魔力の流れを自分なりの解釈で紙に書き写していく。
「……はい、完了です」
「ふぅっ、やっと終わったか」
それからアナは先ほど記録したものをもとに、この形だけの光の剣の術式を作り始めた。
「これ、かなり時間かかりそうか?」
「いえ、これならこの前作った術式の応用で作れるので、そんなに時間はかからないと思います。最適化までは出来ないので、またこの前みたいにすごく長い術式になっちゃいますけど」
「それは別に構わん」
それから数十分ほどで術式は完成し、早速レクスがそれを試すと、先ほどと全く同じ光の剣っぽいものを作り出すことに成功した。
「おお、魔力消費が大幅に軽減されている。これなら楽に出せるな」
「そ…そうですか。それはよかったです」
術式が上級魔法並みに長くなっているため、これはこれで結構な量の魔力を消費しているはずなのだが、元々の魔力量が高いレクスはそれをものともしない模様。
「それではレクスさん、これからいよいよ光の性質の変化を試していきたいと思います」
「どうやるんだ?」
「方法は二種類あります。まず一つ目は、魔導師であるレクスさんがその光に何らかの変化を加えて、それをもとにわたしが術式を作るというやり方」
「だが俺は性質の変化のさせ方なんて、さっぱりわからんぞ」
「はい。なので今回はもう一つの方法でいきます。わたしが先ほどの術式に少しずつ手を加えてみるので、その術式をレクスさんに試してもらう…というやり方です」
こうしてアナは先ほどの術式にいくらか手を加えたものをいくつも書き出して、それをレクスに試してもらった。
だがその結果はというと……
「だめだ、これも発動しない」
「そう…ですか……」
何度も色々手を加えた術式を試したものの、その九割近くは何の魔法も発動せず、残りの一割も剣の形が変になる…くらいの変化で、光の性質に関しては何の変化も見られなかった。
「こんなんじゃ、いつまでたっても完成しそうにないんだが…」
「何を言ってるんですか、レクスさん。未知の新しいものの開発ってこういうものですよ。だから何百でも何千でも何万でも試していきましょう!」
「万はさすがにしんどすぎるんだが」
「大丈夫です、わたしたちならやれます!」
……と、まだまだ結果が出ないながらも、二人が研究を進めていると、そんな二人の周りに何人かの女子生徒たちが集まってきていた。