神様の祝福は不要です! ~こじらせ魔導師と異世界ガノタ少女のビーム魔法開発記録…のはずだが、周りの連中が勝手に二人をくっつけようとしてくる件~   作:小河白明夫

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第17話 シオンの計略

 シオンから薬を受け取ったレクスは、その薬を指に付けた。

 そして…

 

「あ…あの、レクスさん、それは……ひゃうっ!」

 

 レクスはその薬をアナの脚のやけどを負っていた場所に塗りこんでいく。

 だが実際のところ、アナの脚のやけどは魔法薬でほぼ完治しているため、これは薬などではなくただの肌荒れ防止用クリームである。

 

 すでにやけどが治っているのにレクスにこんなことをさせているのは、これを機に二人の関係をより親密なものにしよう…というシオンの計略。

 

 そしてそんなシオンはアナの表情を見てとても満足した。

 レクスの手で脚に薬を塗られることにものすごく照れて恥ずかしがっているけれど、決して嫌と思っている感じはしないその様子は、まさにシオンの期待通りの反応。

 

 だがその一方でレクスの態度は、全くシオンの期待していたものではなかった。

 レクスは一切表情を変えることなく、ただ淡々とアナの脚に薬を塗っている。

 かわいい女の子の生足に触れても全く表情を変えないレクスを見て、シオンは少々がっかりしながらも、なぜレクスがこうなのかを考えてみた。

 

 なるべく紳士らしく振舞うよう心掛けている?

 それとも、そもそもあまり性欲がない?

 もしくはその逆で、実は結構遊んでいて女慣れしている?

 などと色々考えてみたものの、シオンはどれもしっくりこないようである。

 

 実際シオンの予想は全て外れている。

 レクスの態度が全く変わらない理由は、レクスは他人を信用しない人間であるため、こういう状況下においては必ずハニートラップを警戒してしまうからである。

 

 もっとも、さすがにアナが今更そんなことを仕掛けてくるとは思っていない。

 レクスが警戒しているのは主にシオン。

 シオンがアナを利用して、何らかのハニートラップを仕掛けているのではないかと警戒しているのである。

 

 だがそんなレクスの考えなど全く知る由もないシオンは、これ以上どう手を打ったら二人の仲をさらに進展させられるのかを考えていた。

 

 そんななかアナは、ふと何かを思い出して、レクスにあることを要求してきた。

 

「あのっ、レクスさん」

「何だ? もしかして脚が痛むのか?」

「いえ、そうではなくて、そこにある紙とペンを取ってくれませんか」

「これか?」

「はい。忘れないうちに、今日見たものを記録しておかないといけないですから」

 

 今日見たものというのは、レクスがカーマとの決闘で使用した光の剣のこと。

 魔導鏡でその際の魔力の流れを目にしていたアナは、まだその記憶が十分に残っているうちに、急いでそれに関する記録を書き記したい…ということであった。

 

 ペンを手にして、今日見た魔法の記録を必死に書き記していくアナを見て、今日のところはこれ以上の進展は無理そうかも…と思ったシオンは、静かにこの部屋を去ろうとした。

 

 だが部屋から出たところである人物に遭遇したシオンは、再び部屋の中へと戻ってきた。

 本日の女子寮の夕食を手にして。

 

「アナさんは、今日はお部屋で安静にしていたほうがいいということで、寮長さんが持ってきてくださいましたわ」

 

 そしてシオンはそれをレクスに差し出した。

 

「はい」

「なぜ俺に渡す?」

「食べさせてあげてください」

「は?」

「アナさんは今手が離せないようですし、わたくしもそろそろ自分の食事に行かないといけませんの。寮での食事は時間厳守ですから」

 

 レクスもたった一月ほどとはいえ魔法学校の生徒であったため、それは理解している。

 

「ですので、これはよろしくお願いいたしますわ」

 

 そう言ってシオンはレクスにアナの夕食を押し付けると、さっさとこの部屋から出ていってしまった。

 そしてアナは相変わらず今日見た光の剣の記録を必死に書き記していて、当分は本当に手が離せそうにない。

 

「はぁ、仕方ない」

 

 そこでレクスはこの夕食をスプーンですくって、アナの口元に運んだ。

 

「ほら」

「あ…あむっ、んっ……。ありがとう…ございます」

「ん」

「あむ、んむ……」

 

 

 

 それからしばらくしてシオンがこの部屋に戻ってくると、もうすでにレクスはこの部屋にはいなかった。

 

 そして光の剣の記録を書き終えて通常のテンションに戻っていたアナは、この場に残されていた食器を見てレクスに食事を食べさせられていたことを思い出し、恥ずかしさのあまりベッドの上で悶えながら転げまわっていた。

 

「あっ、ああっ、どうして…あんなことをっ…。あっ、ううぅっ……」

 

 その光景を目にしたシオンはとても満足気である。

 

「アナさん、何かいいことでもありましたの?」

「シ…シオンさんっ! なっ…何もないですっ、何もっ!」

「あら、そうですの。うふふふふ…」

「シオンさんっ!」

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