神様の祝福は不要です! ~こじらせ魔導師と異世界ガノタ少女のビーム魔法開発記録…のはずだが、周りの連中が勝手に二人をくっつけようとしてくる件~ 作:小河白明夫
ゴブリンたちとの戦いを終えてクエストを完了したレクスは、ぐったりとしている少女を抱えて冒険者ギルドに帰還する。
「あのー、レクスさん、その子…」
「ゴブリンの死体を見て気絶した」
「あー、レクスさんについていっちゃってたのね。この子、光属性の魔導師を探していた子なんだけど…」
「そんなことよりクエストの報告だ」
「そんなことって……」
レクスは基本的に他人に全く興味がない。
ゆえに気絶しているアナを床に下すと、すぐさま討伐クエスト達成の証拠であるゴブリンたちの角を受付カウンターに出す。
「ゴブリン六体、ホブゴブリン二体、ゴブリンロード一体だ」
「ゴ…ゴブリンロードまでいたんですか?」
「ああ。早く報酬を頼む」
「すぐに用意しますからせかさないでください。えっと、その数だと報酬は…」
「金貨四枚と銀貨六枚だ」
「わかってますからっ!」
ゴブリン一体につき銀貨一枚、ホブゴブリンは銀貨五枚、ゴブリンロードは金貨三枚、そして銀貨十枚で金貨一枚という計算である。
「はい、今回のクエスト報酬、金貨四枚と銀貨六枚です」
「ああ」
「それでレクスさん、この子は…」
「じゃあ俺の用は済んだから、あとのことは任せた」
「ええっ? ちょ…ちょっとレクスさーん!」
レクスは面倒ごとには関わりたくないとでも言わんばかりに、気を失っているアナのことは受付嬢に任せ、さっさとこの場から去って行ってしまった。
それからしばらくしてアナが目を覚ますと……。
「……? ここ、どこですか? わたし、いったい何を…?」
「ここは冒険者ギルドよ」
「あっ、受付のおねえさん」
「気絶したあなたをレクスさんが運んできてくれたの」
「あの光属性の魔導師さん…ですか?」
「ええ」
「あの人が…。ふふっ……」
嬉しそうにほほ笑むアナの表情を見て、受付嬢ベル・ファウストは何かを察した。
そう、これはきっと恋心的なときめきに違いないと。
「あ…あのっ、おねえさん、あの人は…」
「レクスさんならもう帰っちゃったけど…」
「そうですか…。お忙しい方なんですね」
「忙しいというか…その……」
どう見ても面倒ごとに関わりたくないから逃げるように帰っていったのだが、せっかくのアナのときめきをぶち壊さないためにも、ベルはこれ以上の余計なことは言わないことにした。
「おねえさん、あの…そのっ、レクスさんはまた明日も来ますか?」
そう尋ねてきたアナの目があまりにもキラキラとまぶしかったことで、ベルは確信した。
この子の思いは本物に違いない…と。
「レクスさんは大体二~三日に一度は顔を出すから、次に来るのは明後日か明々後日くらいだと思うけど、急ぐのなら明日無理やりにでもひっぱってこようか?」
「い…いえ、さすがにそれは迷惑だと思うので、いい…です…」
「そ…そう……」
さすがにこれはちょっとおせっかいが過ぎたな…と、ベルも反省。
「では、また明後日来ます。色々とありがとうございました、おねえさん」
こうしてアナはベルに対して頭を下げながらお礼を言うと、今から明後日が待ち遠しいと言わんばかりの笑みを浮かべながら帰っていった。
そしてその姿を見てベルは思った。
これは押せる。何としてもあの子の思いを成就させなければ…と。
だがベルには一つ大きな不安があった。
それは、あの子の相手があのレクスだということである。
光属性の魔導師、レクス・ヴァンダム。
彼は神のことをなんか胡散臭い存在と思っている信仰心ゼロの人間であるため、神からの祝福が一切与えらず、神の力を借りる神聖魔法が全く使えない。
そして光魔法のほとんどは神聖魔法に属する魔法であるため、レクスが使える魔法は、敵の目をくらます閃光の魔法のみである。
そんなたった一つの魔法しか使えず、剣術や身体能力も並程度であるレクスだが、閃光の魔法で敵の目をくらませてから急所を突くというその戦い方は、魔物と戦ううえで実に効率がよく、冒険者としては結構大きな成果を上げていた。
だがそんなレクスの戦い方は、他の冒険者たちからはあまりよくは思われていなかった。
冒険者は実力こそ全てという考えの者が多いため、格上の実力者たちには敬意を払うものの、実力を認められていないのに次々と成果を上げてくる者に対しては強い嫉妬の念を向けてくる。
故にレクスは剣士など前衛職の者たちからは、卑怯な戦い方で点数稼いでるせこい奴とさげすまれ、魔導師たちからはしょぼい魔法しか使えない無能と馬鹿にされていた。
こうして周りからの誹謗中傷を浴びせられ続けて誕生したのが、他人を全く信用しない拗らせた冒険者、レクス・ヴァンダムである。
「ああ、あの子大丈夫かな。うまくいくといいんだけど……」
受付嬢ベルの不安は尽きない。