神様の祝福は不要です! ~こじらせ魔導師と異世界ガノタ少女のビーム魔法開発記録…のはずだが、周りの連中が勝手に二人をくっつけようとしてくる件~   作:小河白明夫

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第21話 光の剣

 冒険者ギルドでクエストを受けたレクスが魔物の討伐に向かおうとすると、ちょうどそこにアナがやって来た。

 

「レクスさん、ついに完成しましたよ!」

「なにっ、本当か!」

「はい、光の剣の術式がついに完成しました!」

 

 そう言ってアナは完成した術式をレクスに見せてきたが、その術式は閃光の魔法のときと比べて倍近くに長く複雑な術式であった。

 

「またかなり長くなっちゃいましたけど、大丈夫…ですか?」

「まあ、このくらいなら全然問題ないだろ」

「本当ですか?よかったです。こんなに長い術式使えるの、他の属性の魔導師さんでも片手で数えられるくらいしかいないって言われてたので…」

「冗談だろ、そんなの。ただちょっと長いだけだぞ」

 

 冗談ではなくてレクスの常識のほうがおかしい。

 

「あっ、そういえばレクスさん、シオンさんの魔法薬料理のために素材手に入れてきてくれたんですよね」

「まあ」

「あの料理のおかげでわたしもがんばれました。本当にありがとうございます。素材集めのために、凶暴な魔物のひしめく秘境にまで行ってくれただなんて、感激です」

「いったい何の話だ」

 

 あの後シオンはさらに話を盛っていた。

 

「秘境ではどんな魔物と戦ったんですか? 閃光の魔法は有効でしたか?」

「だから何の話だ」

 

 普通に考えたら作り話だと分かりそうなものなのだが、アナはシオンのことを信じ切っているうえにレクスならそれくらい普通に出来ると思っているので、その盛られた話を一切疑っていない模様。

 

「そんなことより、これから討伐クエストに向かうから、早速これを試させてもらうぞ」

「はい」

 

 こうしてレクスは光の剣の術式が書かれた紙を受け取ったわけだが、その後アナがものすごく何かに期待しているまなざしでレクスの目を見つめてきた。

 

「な…何だ?」

「わたしもついていっていいですか?」

 

 やはりアナは、レクスがこの術式で光の剣を使って戦うところを見たいようである。

 

「まあ、来るのは構わんが…」

「ありがとうございます」

「だが今回の獲物はオークだぞ」

「オー…ク?」

 

 豚の獣人系魔物、オーク。

 オークのオスは人間の女性に対してとても強い執着を見せるため、どんなに強い実力者であったとしても、女性冒険者は絶対にオークの討伐クエストは受けないという。

 

「見つかったら俺そっちのけで狙われると思うが、大丈夫か?」

「だ…大丈夫…です。レクスさんの後ろに隠れてますから」

「あまり引っ付かれると戦いづらいんだが」

 

 ある程度強い敵と戦うときのレクスは、基本的に敵をかく乱しながらの奇襲戦法であるため、誰かを守りながら戦うのには向いていない。

 

 つまりアナは、もしオークに見つかってしまったら最優先で狙われるが、動き回りながら戦うレクスに守ってもらうことも難しく、このクエストについていくにはかなり危険が伴うと思われる。

 だがそれでも…

 

「だ…大丈夫です、絶対に見つからないようにしますから」

 

 やはり光の剣をこの目で見たいと言いうアナの思いは止められなかった。

 

 

 

 そしてアナを連れてクエストへと出向いたレクスは、南の街道の脇にある林で討伐対象のオークを発見した…が、どうにもオークの様子がおかしい。

 まだレクスたちはオークの視界に入っていないのにもかかわらず、すでにオークは興奮状態である。

 

 そしてそのオークは突然、視界の外にいたはずのレクスのほうへと向けて走り出した…かに見えたが、実はそうではなかった。

 最初はレクスに向けて一直線に突っ込んでくるように見えたものの、オークはその目でレクスをとらえると、明らかにレクスを避けて迂回するような動きを見せたのである。

 

「ブゴゴゴゴォォォッ!」

「何なんだ?あいつ。……はっ、まさかっ!」

 

 レクスは気づいた。

 オークに狙われていたのは自分ではなく、自分よりずっと後ろで物陰に隠れていたアナであると。

 

 そう、オークは嗅覚が鋭いうえに、若い人間の女性の匂いには特に敏感であるため、全く視界に入っていないアナの存在にも気づいてしまっていたのである。

 

 オーク討伐の報酬額は金貨二枚で、ゴブリンロードの三分の二。

 ならばゴブリンロードをあっさり倒したレクスなら、オークも同様に簡単に倒せるのか?

 それは否。

 

 魔物の討伐報酬として設定されている金額は、あくまで魔物の総合的な脅威度をもとに設定されているもの。

 ゴブリンロード討伐の報酬額は、他のゴブリンたちを従える知能の高さや統率力によるところが大きいため、単体での強さでオークのほうが劣っているというわけではない。

 

 特に打たれ強さに関しては、体が大きく分厚い脂肪に覆われているオークのほうが明らかに上。

 そしてそれは、レクスのような者にとってはかなりやりづらい相手ということである。

 

 並の腕力で普通に斬りつけただけでは、大してダメージは与えられない。

 確実に仕留めるためには、よほど正確に急所を貫くほかないが、全速力で猛進する魔物に対してそれを行うのは困難。

 

 つまりこれまでのレクスならば、オークがアナのもとにたどり着いてしまう前に止めることは、ほぼ不可能だったといえる。

 そう、これまでのレクスであれば。

 

「どうやら、ぶっつけ本番で試すしかなさそうだな」

 

 レクスは上級魔法の倍近くはある長い術式をほんの一秒足らずで構築し、手にしている短い杖から光の刃を出現させた。

 どうやらアナが作り出した術式に問題はなかったようである。

 そして…

 

「ブゴッ!」

「終わりだ」

「…ゴハァッ!」

 

 レクスはアナに向かって突進するオークの腹を、光の剣の一太刀で真っ二つに切り裂いた。

 

「オークの肉がこうも簡単に切り裂けるとは、これはいい剣だ」

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