呪術師ジュジュ呪術中   作:小河白明夫

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第10話 ブレブレ救世主

 先日、異世界召喚の件で呪術師ジュジュの呪術屋にやって来ていた宮廷魔導師団の団長クラースが、再び店へとやって来た。

 

「先日の件は本当に助かった。おかげで我々宮廷魔導師団の首はつながった」

「それはよかったね。ところで…」

「そちらの方はどなたでしょうか?」

 

 本日店にやって来たのはクラース一人ではない。

 クラースはもう一人客を連れてきていた。

 

「彼は救世主のカイトだ」

「どうも初めまして、救世主のカイトといいます」

 

 異世界の救世主など召喚できないということだったのに、突然現れた救世主を名乗る存在にジュジュとサラは困惑している。

 

「ああ、紛らわしいことを言ってしまってすまない。彼は救世主役のカイトだ」

「そうだぜ、オレが救世主役のカイトさ」

「どういうこと?」

 

 ジュジュにそう尋ねられて、クラースはこれまでの経緯を語る。

 

「あの呪いのおかげで召喚の儀式をごまかすことには成功したのだが、その後陛下が救世主のことを何度も何度もしつこく我々に尋ねてきてな…。そこで吟遊詩人の詩のイメージに近い、黒髪黒目で平凡っぽい見た目の若者である彼を、救世主役としてスカウトした」

「つまりはそういうことですね。理解していただけましたか?」

 

 なぜこのカイトという若者が救世主役をやっているのかは分かった。

 だがそれとは別によく分からないことがあったため、サラはそのことをクラースに尋ねた。

 

「あの、さっきからカイトさんの言動に一貫性がない気がするんですが…」

 

 彼のキャラはブレブレである。

 

「カイトは今、どんなキャラが救世主にふさわしいかを模索している最中なのでな、キャラが固まるまでは目をつぶってほしい」

「これが救世主たる者の定め」

「そ…そうですか」

 

 ちょっと対応が面倒だな…と思うサラであった。

 

「というわけで、ここからが本題だ」

 

 クラースは本日ここに来た理由を語る。

 

「彼は見た目的には、吟遊詩人の詩に出てくる救世主として申し分ない。だが能力的にはあくまでただの一般人。ゆえにもし陛下から、救世主としての能力を見せてくれ…などと言われたら、一発で偽者であることがばれてしまう」

「つまり、呪いで救世主っぽい力を与えてほしいってこと?」

 

 そのジュジュの言葉にクラースはうなずく。

 

「ああ。嘘に嘘を重ねることになるが、今の状況ではそれ以外に手はないのだ」

 

 というわけで、カイトに与える救世主っぽい力をどうするかということなのだが、まずはサラから一つ提案が。

 

「アルトさんに与えたあの呪いはどうですか?」

「さすがに山は吹き飛ばせないけど、かなり強力な技は出せたしね」

 

 そこでクラースは、それがどんな呪いなのかをジュジュに尋ねた。

 

「それはいったいどのような…」

「技名を叫ぶときの恥ずかしさを糧に必殺技を放つ呪いだよ。勇者の人は爆乳派って名前の技を使ってるけど、一番強力だったのは巨乳大好きボンバーだね」

「きょ…巨乳?」

「さすがにそれはないわよん。どんなに強力でもぉ、救世主のイメージ的にそんなのはあり得ないわ」

 

 いくらキャラ模索中でも、オネエキャラこそ救世主としてあり得ないのでは?…と思うジュジュとサラであった。

 

「ま…まあ、勇者と能力が被るというのも救世主としてはどうかと思うしな。何か他ので頼む」

 

 そうクラースから要望が出たため、とりあえずこの呪いはなしとして、何か別のものを考えることに。

 そこでジュジュが思いついたものは…

 

「見た目だけ救世主っぽければいいのなら、演出強化の呪いバージョンⅢはどうかな。バージョンⅠは杖、バージョンⅡは魔法陣が光ったけど、バージョンⅢは本人が光る」

「確かにそれは神々しくって救世主っぽいですよね」

 

 サラもこのジュジュの案はなかなかいいと思ったようだ。

 しかし…

 

「彼の能力はあくまでただの一般人なので、魔力量も魔法を使えるレベルに達していない」

「そうっす。おれ、魔法なんて一切使えないっす」

 

 どうやらこの呪いは全くもって無意味…かと思われていたのだが、この呪いの力を使う方法をサラが思いつく。

 

「ジュジュさん、傀儡の呪いとかどうでしょうか?」

 

 傀儡の呪いとは、呪いの力を付与した人形を自在に操れるというものである。

 ただし…

 

「傀儡にさせられることは、操る人自身が出来ることだけだよね」

 

 要するに、ただの一般人であるカイトが人形を操っても、人形にすごい動きをさせることなど不可能ということである。

 

「それ意味あるの?サラちゃん」

「もちろんあります。だって、カイトさんが人形を操るんじゃなくって、カイトさん自身に操り人形になってもらうんですから」

「なるほど、そういうことか」

 

 ジュジュは今のでサラの意図を理解したようだが、クラースとカイトはまだ分かっていないようなので、この呪いを使うことにどんな意味があるのかをサラは語った。

 

「つまりですね、魔法を使える方に傀儡と化したカイトさんを操ってもらうんです。それなら操っている人は自分の魔法をカイトさんに使わせられますし、そのうえで演出強化の呪いと組み合わせれば、カイトさんは神々しく輝きながら魔法を使えます」

「なるほど。確かにそれならば、救世主っぽく見せることは可能か。だが…」

 

 クラースはカイトのほうに目を向けた。

 これはカイト自身に呪いをかけ傀儡と化すものなため、さすがにカイトの了承もなしに試すことは出来ないからである。

 だが…

 

「俺ならば構わん。好きにするがいい」

 

 これはカイト自身の言葉なのか、それともそういうキャラを演じていたがためについ出てしまった言葉なのかは分からぬが、とりあえずカイトの了承は得られた。

 そんなわけで、早速四人は外に出てこの呪いの効果を試すことに。

 

 

「はい」

 

 ジュジュはクラースに手袋を渡した。

 

「これは?」

「呪いの力が付与された、傀儡を操るための手袋だよ。呪いの代償は、傀儡を操って何かさせた場合に、魔力も体力も自分自身が動くときの倍消費するってことだから、気を付けてね」

「わかった」

 

 そして今度は傀儡として操る対象のカイトに呪いの力を付与する。

 

「いい?」

「ばっちこーい!」

「じゃあ…」

 

 ジュジュはカイトの頭を杖で軽く四度き、これで呪いの付与は完了。

 

「うっ…」

「うん、問題なし。傀儡の呪いと演出強化の呪い、どっちも付与されたよ」

 

 そしてそれを確認すると、クラースはすぐさま傀儡操作の手袋をはめ、カイトを操った。

 

「うっ…うわあっ! て…手足が勝手に動く!」

「ほう、こういう力か」

「あわわわっ…うわぁぁぁっ!」

 

 カイトは自分の手足が勝手に動かされることに驚いて、キャラづくりを忘れているようにも見える…が、実際にどうなのかは定かではない。

 

「では次はいよいよ魔法だ。いくぞ!」

「ふっ、来るがいい!」

 

 クラースは魔法を発動させるために、傀儡として操っているカイトに魔力を送り込む。

 すると演出強化の呪いバージョンⅢによってカイトの体が光り輝くのだが…

 

「ジュジュさん、カイトさんちょっと光りすぎじゃないですか?」

「うーん、傀儡の代償で消費魔力が倍になってるから、その影響かな」

「ああ、それで輝きも二倍になってるんですね」

 

 そしてやたらと輝きまくったカイトに、クラースは魔法を発動させる。

 

「ストーンウォール!」

 

 クラースが周りへの被害を考慮して選んだ防御魔法。

 その魔法がカイトの手によって、黒い壁を作り出す魔法として発動された。

 その発動の瞬間に、めちゃくちゃ体を光り輝かせながら。

 

「まあ、ちょっとまぶしすぎて邪魔だけど、一応救世主っぽい感じにはなったかな?」

「そうですね。まぶしすぎて鬱陶しいですけど、神々しくはありますよね」

 

 とりあえずジュジュとサラの感想はこんな感じであるが、最終的な判断を下すのは客であるクラースとカイト。

 果たして二人の判断は…

 

「これだけ輝いているところを見せれば、陛下も多分納得はするだろう。とりあえずこれでいこうと思う」

 

 だがそう言ったクラースが傀儡を操るのをやめたとたん、カイトがその場で倒れこんだ。

 

「うっ…」

「どうした?カイト!」

「体が…動か…ない…」

「なにぃ!」

 

 呪いの効果によって傀儡にされたカイトは、どうやら自分自身の意志では体を動かすことが出来なくなってしまったようである。

 

「ジュジュさん、これはさすがにまずいですよね」

「うん。一刻も早く解呪したほうがいい」

「ですね。というわけで今回はこちらの不手際ですので、即キャンセルなら解呪のお代はいただきませんから、すぐに解呪を…」

 

 だがそう言ってサラがカイトに付与されている呪いを消し去ろうとすると、カイトはそれを拒否した。

 

「いや、解呪なんかいらない」

「どうしてですか?」

「このままなら、救世主であるオレの体は宮廷魔導師たちに操ってもらえる。つまり、自分で一切は体を動かさずに楽できるということだ!」

 

 そんなカイトの発想に大いにあきれ返るジュジュとサラ。

 そしてクラースは、この先ずっとこれの面倒を見ることになるのか?…と、落胆していた。

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