呪術師ジュジュ呪術中   作:小河白明夫

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第11話 救世主の本性

 宮廷魔導師団の救世主問題はひとまず解決した…かと思っていたのだが、またしても宮廷魔導師がジュジュの店にやって来てしまった。

 ただし今回は団長のクラースではなく、女性の魔導師が二人。

 

「あたしは宮廷魔導師のイライザってんだ。で、こっちがうちの見習い…」

「あのっ…えっと、宮廷魔導師見習いのシアと申します」

 

 気の強そうなイライザと気弱そうなシアという、ずいぶんと対照的な二人。

 そんな二人がここに何の目的でやって来たのか。

 

「あの、もしかして、救世主さんの問題まだ続いてたりします?」

 

 やって来たのが宮廷魔導師ということでサラがそう尋ねると、イライザはずいぶんと怒りをあらわにした態度で肯定してきた。

 

「ああ、その通りだ。あの野郎、こっちが逆らえないのをいいことに好き放題しやがってぇ」

 

 そんなかなりキレている様子のイライザにジュジュは尋ねる。

 

「いったい何があったの?」

「あいつ、傀儡の呪いってので動けねえだろ」

「うん」

「だから宮廷魔導師団があいつの世話をしなきゃならないことになったんだが、あいつ自分を操って動かす世話役は女にしろとか言ってきやがったんだ。……で、あいつに目をつけられたのがこいつだ」

 

 そう、このシアという気弱そうな宮廷魔導師見習いが、動けないカイトを操って動かす役目を任されることになってしまった。

 

「それでどうなったの?」

「あいつ、風呂の世話とかまでシアにさせてくるんだぜ。気持ち悪いったらありゃしない」

「うわー…」

「それはさすがに、ちょっとどうかと思いますね」

 

 調子に乗ってあからさまなセクハラ的行為をしているカイトに、ジュジュとサラはかなり引いている。

 

「まあ不幸中の幸いっつーか、トイレに関しちゃあたしら女じゃ操れねえみてえだから、そこは男連中がやってくれてるけどさ…」

 

 傀儡の呪いで操り人形にさせられることは自分自身に出来ることのみなので、体の構造が異なる異性では、トイレのときなどは動かせないらしい。

 

「でもひでえだろ、シアは嫌がってんのによぉっ! あいつ、シアが嫌がってんのを見て楽しんでんだぜ」

 

 そんなカイトの行いを拒否することは出来ないのかと、サラはシアに尋ねた。

 

「シアさん、断ることは出来ないんですか?」

「む…無理です。あの人の命令に…従わないと、自分は偽者救世主だと…ばらすって…。そんなことになったら、わたしたち宮廷魔導師団全員…特にクラース団長は、どんな罰を受けさせられるか……」

 

 カイトはこのことで宮廷魔導師たちを脅せば、誰も自分に逆らうことは出来ないと確信し、かなり調子に乗っているようである。

 

「なあ、あいつに傀儡の呪いってのをかけたのはあんたらなんだろ。あいつの横暴をどうにかする方法、なんかないのか?」

 

 もうかなり切羽詰まった様子のイライザは、必死にジュジュとサラに訴えかける。

 しかしそんなイライザに対してジュジュとサラは、ずいぶんと軽く返事をした。

 

「そんなの、どうとでもなるけど」

「別に難しく考えることじゃないですよね、ジュジュさん」

「うん」

 

 どうやらこの事態を解決する方法はあるらしい。

 

「今度、あの人つれてくるといいよ」

 

 ジュジュが二人にそう告げると、すぐさまイライザは返事をした。

 

「わかった、今すぐ連れてくるぜ!」

「えっ、今?」

「あいつも近くに来てんだよ。あたしらはちょっと用事があるって言って、他の奴にあいつのこと任せて抜けてきたんだ」

「そう、だったらすぐに連れてくるといいよ」

「これでもう解決しちゃいますね。うふふふ…」

「そうだね、サラちゃん。ふふふふ……」

 

 そんな不敵な笑みを浮かべるジュジュとサラに見送られながら、イライザとシアはカイトのもとへと向かった。

 

 

 

 そして傀儡と化したカイトを連れて再び店に戻ってきた。

 

「ずいぶんと好き放題やってるみたいだね」

 

 店に入ってきたカイトに、早速ジュジュはそう言い放った。

 

「二人から何を聞いたか知らないけど、このオレにそんなこと言っちゃっていいわけ? あんたらだって宮廷魔導師団と同罪じゃん。オレには逆らわないほうがいいと思うけどな」

 

 そんなかなり調子に乗っている様子のカイトを見て、ジュジュとサラは思う。

 

「あれが素かな?」

「多分そうですよね。演技してる感じじゃないですし」

 

 するとそんな風にこそこそと話している二人のことが気に障ったのか、さっそくカイトは二人を脅しにかかってきた。

 

「そういう態度やめてくんないかな。でないとオレ、偽者の救世主だってばらしちゃうよ。そうなったらどうなるか…」

「ばらせば?」

「えっ?」

 

 あまりにもあっさりとばらしていいと言ったジュジュの態度に、カイトはかなり驚いている。

 

「ほ…ほんとにいいのかっ? それをばらしたら、あんたらも宮廷魔導師団もおしまいだぜ!」

「いいよ。ばらす相手がいれば…の話だけど」

「……えっ? ええっ?」

 

 カイトはジュジュの態度にかなり焦っているようだが、その言葉が何を意味するのかまでは理解していないようなので、これがどういうことなのかをサラが説明した。

 

「カイトさんは今、自分では動くことが出来ないですよね。つまり誰も人が来ない所に放置されちゃったりしたら、いったい誰にばらすんですかね」

「うわあっ!」

 

 これで立場は完全に逆転である。

 

「そうか、こいつを誰も来ない所に置いときゃいいのか。これで安心だな、シア」

「はい」

 

 だがカイトもまだあきらめてはいなかった。

 

「いや、ばらす相手ならいるぞ!」

「ほう、どこの誰だ?」

 

 そう言いながらにらみつけてくるイライザに対して、カイトはずいぶんと勝ち誇った態度で答える。

 

「王様だよ。オレが救世主役である以上、時々は王様の前にオレを連れていかなきゃならない。そのときに王様にばらされちまってもいいのかな?」

 

 だがそんなカイトの目論見は、ジュジュの言葉によって実にあっけなく瓦解する。

 

「そのときだけなら口の動きを操って、余計なことをしゃべらせないようにすればいいだけだよ」

 

 実に簡単なことだった。

 

「うっ…うわぁぁぁぁぁっ!」

 

 もはや相手に一切逆らえないのは自分のほうだと知ってしまったカイトは、ひどく錯乱した。

 そしてそんな錯乱状態の中であることを思い出したカイトは、藁にもすがる思いでサラに泣きついてきた。

 

「た…頼むっ! この呪いを解いてくれ! オレが動けないのはそっちのミスなんだから、タダで解いてくれるんだろ?」

「確かにあのときはそう言いましたけど、カイトさんはこのままでいいって言ったじゃないですか」

「お…おい、まさかっ…」

「ですから、呪いを解いてほしいのであれば、ちゃんと規定通りの代金を払ってください」

 

 一瞬解いてもらえないのかと焦ったが、金さえ払えば解いてもらえると知って、カイトは少しだけほっとした。

 

「い…いくらだ?」

「金貨百枚からですけど…」

「ひゃ…百枚もっ?」

「でもこの百枚というのは最低金額で、うちの解呪料金は、お客様の身分、懐事情、解く呪いの種類…などによって変動するんですよね。まあ、一般の方なら大抵金貨百枚で受けてるんですけど…」

「オレは一般人だし金もそんなに持ってないから、それ以上はないよな?」

「でもカイトさんは王様に認められた救世主じゃないですか」

「いや、それはただの役で…」

「ある意味貴族以上の身分ともいえる方を、一般人と同じ扱いにするのはむしろ失礼に当たりますよね」

「お…おい…」

「ですので、解呪料金は金貨五千枚です。うちは後払いは不可ですので、解いてほしければ耳をそろえて用意してきてくださいね」

「そ…そんなっ……」

 

 カイト、撃沈。

 そして…

 

「まあ、金が足りないのなら、うちで働いて稼げばいい。操り人形としてな」

「う…あっ……」

「いつ金貨五千たまるかは知らんけど」

 

 

 

 

 こうしてイライザの手によって宮廷魔導師団のもとへと連れ帰られたカイトが、その後どうなったかというと……。

 

「カイト、君は世話役に女性を希望していたが、やはりそれはあまりよくないという話になってな。そこで私のほうで折衷案を考えてみた」

 

 カイトにそう告げたクラースは、ある人物をカイトの前に連れてきた。

 

「彼はアンドリュー、今日から君の世話役となる魔導師だ」

「もう、団長ったら、そんな前で呼ばないでって言ってるじゃない。アタシはアンよ。ねえ、坊や」

 

 自称アンの筋肉ムキムキなオネエの魔導師はカイトにウインクした。

 

「ちょ…ちょっとおっさん、これどういうことだ! 何でこんなのが折衷案なんだ!」

「女性を君の世話役にすることは出来ないので、代わりに心が女性のアンドリューにやってもらうことにしたのだ」

「またそんな呼び方してぇ、団長のいけず。……というわけでよろしくね、救世主の坊や。アタシが存分にかわいがってあげるから。んちゅう…」

「ぎゃあぁぁぁぁぁっ!」

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