呪術師ジュジュ呪術中   作:小河白明夫

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第5話 深淵の力

「我が名はレヴィル、勇者パーティーの魔導師だ」

 

 ついに勇者パーティー最後の一人まで、ジュジュの店にやって来てしまった。

 

「まだ戦士の人の問題続いているの?」

「やっぱりちゃんと制裁加えないと収まらないんですかね」

 

 ジュジュとサラは、今回もまたあの件の続きだと思っているようだ。

 だがしかし…

 

「は? うちの女どもが奴のことで何か騒いでいたみたいだが、俺はそんなことには一切興味ない」

「ああ、今回はそれじゃないんだ」

「当たり前だ、小さき呪術師よ。あんな女の胸なら何でもいいと言うような美学のない奴のことなど、いちいち気にしていられるか」

「美学、あるの?」

「それはだな……って、何言わせようとしてるんだっ!」

 

 レヴィルは語らなかったが、どうやら何か美学はあるものと思われる。

 

「まったく、余計な話を…」

 

 ジュジュはちょっと聞きたそうにしているが、レヴィルがこれ以上語る気はないようなので、この話はここまで。

 そして…

 

「では、本日のご用件は何ですか?」

 

 サラにそう問われると、レヴィルは大きく目を見開いて語りだした。

 

「そんなの決まっているだろう。俺が求めるもの、それは力、ただそれのみ!」

 

 いかにもな呪いの力を求める客っぽい雰囲気に、ジュジュとサラはちょっと嬉しそうである。

 

「いいね。こういうお客さん、待ってたよ」

「最近、変わったお客さんが続きましたからね」

 

 それは主に勇者パーティーの連中である。

 

「この店の呪いは、あのろくに戦う力も持たなかった勇者に、爆竜波という絶大な威力の技を与えたのだろう。ならばこの俺にも…」

「あれは爆竜波じゃなくて爆乳派ですけどね」

「……は?」

 

 サラから爆乳派という技名を聞いて、レヴィルは頭の中が真っ白になった。

 

「ちょっと待て、何だそのゴードンが叫びそうな技名は。何でそんなふざけた技名をアルトが口にする? 訳が分からん!」

 

 レヴィルはひどく混乱している。

 

「ええっとですね、あれは技名を叫ぶ恥ずかしさを糧に必殺技を放つ呪いなので…」

「なるほど、だからあんな技名なのか」

「はい」

「そうか……。じゃ、俺はこれで…」

 

 あんな恥ずかしい技名を叫びたくないレヴィルは、すぐさま帰り支度を始めた。

 

「ちょ…ちょっと待ってください、レヴィルさん! ジュジュさんの呪いは、まだ他にもいろいろとありますから。ねっ、ジュジュさん」

「うん。ジュジュの呪いは…ええっと……」

 

 ジュジュは指を折り曲げながら数を数えている。

 

「いっぱいある!」

 

 どうやらジュジュ本人も、付与できる呪いの正確な数は把握していない模様。

 

「というわけですので、きっとレヴィルさんの気にいる呪いの力もあるはずですから、もう少しだけお話を…」

「ふん、そこまで言うのであれば、話くらいは聞いてやろうじゃないか」

 

 そこでサラは、どんな呪いならレヴィルが納得するのかを探るために、レヴィルに質問をした。

 

「レヴィルさんは、アルトさんの必殺技のような強力な技が欲しいということなんですよね?」

「ああ。あんなふざけた技名は論外だがな」

「ということは、ご自身の魔法の威力に納得がいっていないということですか?」

「俺の魔法は十分に強力だ。だが……属性が問題だ」

「属性ですか。レヴィルさんはどの属性の魔法が使えるんですか?」

「俺が得意とするのは火と雷…」

「どちらも強力な攻撃魔法向きの属性じゃないですか。いったい何の問題が?」

「問題大ありだろうがっ!」

 

 そしてレヴィルはものすごく悔しそうに語りだした。

 

「俺が求めるのは深淵の力…。そう、闇と氷だ。なのになぜ俺にはその適性がない? 何で俺の使える魔法は火とか雷とか、熱血キャラみたいな属性なんだぁぁっ!」

 

 確かに属性だけでいえば熱血キャラっぽいかもしれないが、戦士系前衛職ではなく魔導師な時点で、熱血キャラっぽさなんてほとんどないのでは?…と思うサラとジュジュであった。

 

「要するにレヴィルさんが欲しいのって強力な技じゃなくて、自分の好みに合うかっこよさってことですよね」

「まあ、そうだろうね」

「でもそういうのって呪いでなんとかなったりするものなんですか?ジュジュさん」

「うーん、どうだろう。さすがに魔法の属性を変える呪いはないけど……あっ、あれなら使えるかも」

 

 どうやらジュジュは何かいい案を思いついたようだ。

 

「魔法の杖貸して」

「杖? これか…」

 

 そしてレヴィルが差し出した杖を、ジュジュは自分の杖でコンコン…と叩き、呪いの力を付与させた。

 

「はい、これで完了だよ」

「いったい何をした?」

「その杖に、魔法発動時の演出を強化する呪いを付与したよ」

「何だと?」

「その杖で魔法を発動させると、杖がなんかいい感じにピカピカと光って、なんかすごそうな魔法が発動しそうに見えるんだよ」

「俺はそんな無駄に光るものなど求めていないんだが」

 

 どうやらこういった演出はレヴィルの求めるかっこよさとは違ったようである。

 だがしかし、ジュジュはこの呪いの効果にかなり自信がある様子。

 

「まあまあ、いいからちょっと試してよ」

「しかし…」

「ほら、早く」

「くっ、仕方ない」

 

 そして三人は店の外へと出て、この呪いの効果を試すこととなる。

 

 

 外へと出たレヴィルは、早速魔法を放つために杖に魔力を込めた。

 すると杖の先端が少しだけキラキラと輝きだす。

 

「なんだか思ったより地味な光り方じゃないですか、ジュジュさん」

「たぶん放とうとしているのが初級魔法とかだからじゃないかな。あの呪いは、放つ魔法のランクに応じて演出の規模が変わるんだ」

 

 そしてレヴィルはその初級魔法を放つ。

 

「ファイアボール!」

 

 するとその杖から火の玉が放たれるわけだが、その火の玉は……黒かった。

 

「なにぃっ! 漆黒の火球だとぉっ?」

「この呪いは光の演出の代償として、放つ魔法から色が奪われるんだよ。でも闇属性好きなら、この代償も悪くないんじゃないかと思って」

「くっ…くくくくっ……」

 

 ジュジュの説明を聞いたレヴィルは、不敵な笑みを浮かべている。

 

「あれ喜んでいるんですかね?ジュジュさん」

「多分そうなんじゃない」

 

 そしてレヴィルは再び杖に魔力を込めた。

 すると今度は、先ほどよりもかなり派手に杖が輝きだした。

 

「舞い踊れ漆黒の炎よ! ブラック・フレアトルネード!」

 

 レヴィルは魔法名を唱える前に口上を語り、さらに魔法名にもブラックを付け足した。

 そして放たれる真っ黒で巨大な炎の渦。

 

「ふははははははっ!」

「あれは相当喜んでるね」

「ですね。漆黒とか言ってますし」

 

 そして次は雷の魔法。

 

「穿て混沌の雷鳴! カオス・サンダーボルト!」

 

 天から黒い雷が降り注ぐ…が、これはあくまでただ色が奪われただけの雷魔法なため、勝手に名前にカオスとかつけてても、そういった感じの特別な効果などは一切ない。

 

「ふははっ、これこそ俺が求めた魔法! 今より俺は黒の魔導師だ! ふははははははっ!」

 

 だがレヴィルはこの呪いに相当喜んでいるようなので、ひとまずこれで万事解決ということである。

 ただ……

 

「なんか思ってたのと違ったね」

「そうですね」

 

 結局今回も、二人が期待していた客からはかなりずれていた模様。

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