もうすぐ夕暮れとなり、
陽が傾き始めようかという15時
綾瀬屋敷はいつもの賑やかさはなく
むしろ静かに、何かを書く音と、
機器の触れ合う音だけが響き合っていた
綾瀬の瞼を、主治眼科医のモモ・スゥモアが
そっと開かせる、ライトを当てて
その綺麗な金色の瞳を覗き込んでいた
今日は定期検診の日、スゥモアは前回とは違い
今回はいつも通り綾瀬の屋敷に
訪問診察に来ていた
スゥモア「なるほど〜
ここ最近怪我が多いと思ったら
そんなことがあったんですね〜?
確かに街中で色々と騒ぎがあったのを耳にします
どこかの工事現場が崩落したとか〜
アイオーンモールで防火設備の
誤作動があったとか〜」
綾瀬「すみません、なるべく一般市民は
巻き込まないよう私が務めても、
………向こうはそうはいかないようで」
スゥモア「そういえば、それに即して新谷先生が
スタンドを研究してみようと
スタディ=マジックという学会を
今提唱していましてね〜、私とカラメッラにも
声がかかりましたし、
もしかしたらお手伝いしてもらうことが
あるかもしれません〜」
綾瀬「カラメッラ……って
翠の主治医の精神科医の?
スタンド使いなのですか?」
スゥモア「さぁ〜?
誘ったのは新谷先生なので〜?
精神科医だからかもしれないです〜」
スゥモアが椅子に飛び乗るように座り直した
そして、机の上の書類に経過を書いていた
スゥモア「ところで名舟さんと早乙女さんは〜?
今日は2人がいないので驚くほどに静かですね〜」
綾瀬「あぁ、2人なら………」
カフェ・ドゥ・マ・ゴのテラス席
そこには名舟 翠と……
両手を頬にやって頬杖をつく
満面の笑みの広瀬 一花が向かいに座っていた
一花「誘い乗ってくださって
ありがとうございます先輩、約束通り、
話しましょうか、私と貴女のスタンドについて
……………ね?」
名舟「あ、あぁ……(目に光が無い……?
いや、この子に関してはいつものことか………)
じゃあ、どこから話そうか?」
一花がずいっと、顔を近づけた
一花「先輩から!教えてください!
きっと先輩なら
素敵なスタンドなんだろうなと思っています」
名舟「いいよ、じゃあ僕のはね─────」
こちらはイタリアンレストラン
「トラサルディー」
店主のイタリア人が満足そうに
厨房に入って行った
テーブルに椅子を5脚用意して
2年3組の火花、紗良、亜丹、陽菜と、
2年4組の芹香が並べられたイタリア料理を
囲んでいた、紗良と陽菜は料理と自分と互いを
バシャバシャと撮り亜丹は静かに食べていた
芹香「せっかくなら梨紗も
呼べばよかったのにぃ」
火花「りさぴーね〜、なんか最近忙しいみたい」
陽菜「りさぴーとまりなっちが率いる
デッカウなんか最近活動滞ってるよね、
他の軽音部バンドとかで
たまにあるけど解散しちゃうのかな」
芹香「デッカウ……ってなんだっけぇ?
あ、梨沙と麻里奈が率いる軽音バンドなのは
知ってる」
亜丹「『DEAD COUNT』、梨沙と麻里奈を含めて4人で活動してる軽音部のメタルバンド。80年代のスラッシュメタルに影響されたサウンドで、ディストーションをめちゃくちゃ聴かせてるイメージ、しかも梨沙はカッティング奏法の名手で」
陽菜「ヤバ!急に早口になるじゃん!
ウケる、撮っとこ」
火花「バレー部か軽音部か、
あーにゃは最後まで悩んでたからね〜」
────と言った感じのことをしているだろうと
綾瀬がスゥモアに伝えると、子供の見た目通りに
けらけらと笑った
スゥモア「若いって良いですね〜
私ももう27歳ですからねぇ〜」
どう見ても9歳くらいにしか見えない
幼女医師が上品に笑ってみせた
綾瀬は見えないが声の割には大人ですよね……
くらいに思っていた
その時、コン、コンと扉が叩く音が聞こえた
スゥモア「あら、どなたかお客さんですか?」
綾瀬「今日は特に予定はありませんが……
最近、お客さんも多いですからね、出ますよ」
スゥモア「いえいえ!
私が代わりに出ますです〜!
ちょっと待っていてくださ〜い」
スゥモアは椅子から飛び降りると、
とてとてと玄関のドアを押し開けた、
扉の向こうにはYシャツに、
パーカーを腰に巻き付けた
金髪ボブの少女が立っていた
「あれ?家間違えたかな……?
ここ、綾瀬判事の家じゃ」
スゥモア「そうです〜!
綾瀬判事に何か御用ですか?」
「その……ここでひば……いや、早乙女火花が
働いてるって聞いたんですが……今いますか?」
〔第12話 エレキなギターガール その①〕
「斉唱四角学園2年1組、
岩沢 麻里奈(いわさわ まりな)って言います
すみません、上げていただいた上に
お茶まで……」
岩沢がふと、スゥモアを見た
スゥモアは視線に気づいて軽くウインクで返した
岩沢「………在宅検診中でしたか?」
スゥモア「もう終わったから大丈夫ですよ〜!
私も帰るところでした〜!」
綾瀬「おかまいなく、
それで火花に伝えたいこととは?」
岩沢「えっと……火花、最近、いや前からかな?
不思議な力で守ってくれることがあって
でもオカルト研究部の芹香と喧嘩したとも聞いて
芹香はとてもそんな
暴力的な喧嘩をする奴ではないので」
綾瀬がスゥモアに「例の『矢』を打たれて
操られて火花に襲いかかってきたと見ている」と
耳打ちした
岩沢「それで、心当たりがあったんです」
岩沢が懐から机の上にライブのポスターを広げた
4人の少女がひび割れたコンクリート壁に
寄りかかっているのが写っている
スゥモア「『DEAD COUNT』………?」
岩沢「私、軽音部でバンド組んでまして
私がリードギターなんですけど
あ、この子がベース、この子がドラムで……
それで火花に相談したかったのは」
岩沢が中央で紫メッシュの黒髪ショートを
手で櫛上げるDEAD COUNTのバンドTシャツに
ダメージパンツを
身につけたボーイッシュな少女を指差した
岩沢「この子なんです」
綾瀬「すみませんスゥモアちゃん
実況を頂いても?」
スゥモア「あ、もちろんです〜!
この子がリーダーなのですか〜?」
岩沢「はい、名前は
『音石 梨沙(おといし りさ)』18歳、
私たちDEAD COUNTのリーダーにして
ボーカル&ギター……私の幼馴染でもあります」
スゥモア「かっこいいですね〜!
こういうスタイルも大好きです〜!
それでこの子が?」
岩沢「………最近、なんと言いましょうか
付き合いが悪いんです」
綾瀬「はぐらかしましたね、
もっと火花に相談するほどの何かが
あるのでしょう?」
岩沢「流石、裁判官さんですね……
はっきり言いましょう
急に関係を断ち切ったんです、
そしてこないだたまたま会った時には
『綾瀬、名舟、早乙女はどこだ』と……
確かに荒っぽくて、でも曲がったことは
大嫌いな信念ある奴なんです、
なのにあんな梨沙初めてで……………怖くて。」
綾瀬「私も、ですか……それは………」
スゥモア「麻里奈ちゃん、これ見えるです?」
と、スゥモアが自分の前に
ベビィ・メタルを出すと居合の構えを取らせた
だが岩沢は目も合わせずにきょろきょろしていた
岩沢「え、どれのことですか?」
スゥモア「あ、ごめん、気のせいでしたです〜
綾瀬さん、これは………」
綾瀬「スタンドの発現か、洗脳……岩沢さん
先ほど火花に不思議な力があると
知っていましたね、その音石梨沙さんには?」
岩沢「いや……3歳の頃から一緒に遊んでますし
なんならお泊まりもお風呂もした仲ですが
そんなのは一切……」
だが、岩沢は何かを思い出したかのように
天井を見た
岩沢「『音』…………」
スゥモア「音?」
岩沢「はい、彼女、ラモーンズとかに憧れて
チェーンやら
ネックレスをつけていていて、いつも街中で
待ち合わせる時も特有の音が近づいてくるから
わかりやすいのですが……」
岩沢「こないだその街中で会ったとき、
その『音』がしなかったんです、
いつも通り付けていたのに」
スゥモア「なるほど………?綾瀬先生、
もしその梨沙ちゃんがスタンドに
目覚めていたとしたら」
綾瀬「『音』のスタンド………でしょうか」
岩沢「『スタンド』ですか……?
ベン・E・キング?」
綾瀬「こちらの話です、ところで麻里奈君?
ひとつ訊いていいですか?」
岩沢「答えられることなら何でも」
綾瀬「ありがとうございます、ではひとつだけ
ここには『1人』で来ました?」
岩沢「え………?はい」
岩沢の影をイン・トゥ・ザ・ナイトが掴んでいた
影の紳士は首を縦に振って「嘘偽り無し」と
告げていた、綾瀬の顔色が曇った
そして次に取った行動はッ!
綾瀬「スゥモアちゃんッ!その子を床に
伏せさせてくださいッッ!!」
スゥモアが優しく岩沢を抑えると
床に庇い込んだ!
綾瀬もソファーから滑り落ちると
頭を抑えて身を隠した!
ピッシィッ
ガッシャアアアアアアアァァァァンッッッ!!!
リビングホールの窓とという窓、
小窓から天窓まで
ありとあらゆる外を見れる『窓』が『全て』ッ!
粉々に砕け弾けたッッ!!
岩沢「何ですか!?」
スゥモア「きゃああああッ!?」
パラパラと割れ残ったガラスが
窓枠から落ちていく
スゥモア「こ、攻撃!?綾瀬さん!?
なぜ分かったのです!?」
綾瀬「……玄関の影を踏まれた反応が、
ありましたから」
綾瀬「(けど、『音』が全くしなかった、
足音はおろか、『息遣い』すら、
イン・トゥ・ザ・ナイトの影感知が
なければ間違いなく不意を
……ッ!)」
そして、ドアがドガァンッ!と
蹴り開けられたッッ!!
スゥモアが見たのは、足を大きく開いて
ギターを構えるシルエット、岩沢も窓の方を見た
綾瀬もその音に習ってドアに顔を向けた
「Oh………Yes…………」
スゥモア「なんか来たです〜!?」
岩沢「あれは………!?」
綾瀬「!?……………見えるのですか……!?」
シルエットが、いや、スタンドが姿を現したッ!
白く光る半円形の両目に、黒炎が燃える頭部
凹凸のない身体を持つシルエットのような
スタンド、その手にはエレキギターを携えた
漆黒のスタンドが
上体を逸らすようにギターを構えていた
スゥモア「岩沢ちゃん、何か見えるです〜!?」
岩沢「い、いえ……黒いもやもやしか……!」
綾瀬「では何にそんな驚きの声を?」
岩沢「ギ、ギターです!黒いもやが持っている
あのエレキギター!
間違いない『マリオネット』ッッ!
ボディはアルダー製、ネックはメイプル製、
フィンガーボードはエボニー製ッ!綾瀬先生ッ!
スゥモア先生ッ!『梨沙のギター』ですッッ!」
スゥモア「梨沙ちゃんの!?でも、失礼ながら
ギターでわかるのですか〜?」
岩沢「はい、梨沙のパパは
ギターミュージシャンであり
ギター職人なんです
だから梨沙のギター、愛称『マリオネット』も
世界に一本しかないッッ!」
ギタリストのスタンド『おいおい……?
なんで麻里奈がここにいやがる?』
ギタリストのスタンドが声を出した
ハスキーボイスな少女の声だった
麻里奈が絶句しているのを見るに
恐らく梨沙の声なのだということは
間違いなかった
岩沢「ど、ど、どういうこと!?
その姿は何!?」
ギタリストのスタンド『あー話せば長くなるんだ
まずは綾瀬とスゥモアを始末してからで
良いか?』
岩沢が両手を広げて立ち塞がった
岩沢「何を言ってるの!?し、始末って!
パパが聞いたら悲しむんじゃない!?」
ギタリストのスタンド『………どけよ』
岩沢「やだ!!!」
ギタリストのスタンドが
ため息をついたように見えた
ギタリストのスタンド『そうか、じゃあ悪いな』
スタンドが一歩踏み出す、だが床板を踏んだ
そのスタンドはまるでゲームのバグでも
起きているかのように、足音も床音もなかった
スゥモア「ベビィ・メタルッ!です〜!」
スゥモアの後ろから飛び出した狐の剣士が
鋭い居合を放った!
だが、ギタリストのスタンドは
物凄い速さで反応するとベビィ・メタルの斬撃を
ギターで受け流したッ!
綾瀬「イン・トゥ・ザ・ナイト……ッ!」
綾瀬が家の中の影から柱を何本か突き出させたが
ギタリストのスタンドは
それをまたしても片方はギターで
片方はなんと素手で止めたッ!
綾瀬「なんというスタンドパワー……ッ!?」
ギタリストのスタンド「『ガキン』『ドス』
『パシッ』……三音か、牽制には十分だな?」
ギタリストのスタンドが『マリオネット』に
手をかける!2人より前に、
スタンドが見えていないはずの岩沢が
即座に勘だけで叫んだ!
岩沢「あっ……弾くみたいですよッ!」
スゥモアが近くの階段下に岩沢を引き摺り込む
綾瀬がソファの後ろに飛び込んだッ!
ギタリストのスタンド『ROCK YOU!!!!!!』
ギャアアアァァァアンッッッ!!!!
その瞬間ッ!リビング全体に音の衝撃波が
そのスタンドから放たれたッ!ソファの皮は捲れ
床板は割れ上がり、
破損した破片が散弾のように飛び散ったッッ!
綾瀬 スゥモア 岩沢
「「「わああああああ!?」」」
3人が声を揃えてその恐ろしい光景に叫んだ
酷い有様のリビングの中に、
音もなくスタンドは歩き進めていく
綾瀬が顔を顰めながら片耳を押さえてつぶやいた
綾瀬「音というのは……一定の大きさを超えると
音圧というものが発生します……
そして更に超えるとソニックブームと言って……
音の衝撃波が生じます」
岩沢「戦闘機の航空ショーで下の街の建物の
ガラスがぶち割れるあれですか?」
綾瀬「それです……ッ!あのギターを持つ、
梨沙君のスタンドは今の攻撃は
恐らくそのソニックブーム
私の屋敷がこのままでは半壊します……ッ!」
スゥモア「でもそれなら予備動作が
長すぎです〜!いきなり2発目を放てば………」
と、岩沢が思い出したかのようにスゥモアを見た
岩沢「足音………三音……もしかして………
放たなかったのではなく、放てなかった……?」
ギタリストのスタンド『流石すぎるぜ麻里奈ァ!
スタンド使いでもないのに、
オレの能力をそんなに
すらすらと当てちまうなんてなァッ!』
ギタリストのスタンド『あらゆる音の
『吸収(チャージ)』と『放出(リリース)』!
それがオレの能力だ
音を出さずに生きてる奴なんているわけねぇ、
そして『音』とは最も身近な
見えない武器だッ!
時に人の感情を激しく揺さぶり
時にやりすぎればあらゆるものを破壊するッ!
それがオレのスタンド────
『ガールズ・デッド・モンスター』ッッ!!』
岩沢「かっこいい名前じゃん……ッ!」
G.D.Mがゆっくりとまた歩き始めた、
ギターに手はかけたまま、足音も立てずに
スゥモア「なら……ッ!ベビィ・メタルッッ!
峰打ちで………ッ!」
ベビィ・メタルが抜刀すると刀を返し、
斬るのではなくギターに峰を当てるッ!
そのまま弾き飛ばすように
峰で突き飛ばすとG.D.Mを後退りさせたッ!
その勢いのまま、
外へ外へと何度も打ち合わせると
二つのスタンドは互いの『得物』を
かちあわせたまま
やがて、屋敷前の広場で睨み合ったまま静止した
スゥモアがG.D.Mが見える位置に行こうと
玄関から飛び出す、岩沢はその背中を不安そうに見つめた
綾瀬「麻里奈君……ッ!
貴女は、梨沙君をどうしたいですかッ!?」
背後から飛んできた声に
岩沢がはっと顔を上げる、
苦虫を噛み潰したような顔を
一瞬浮かべた後に大きく息を吸ったッ!
岩沢「返して欲しいですッ!元の梨沙をッ!」
スゥモア「この影(スタンド)は、
必ず本体が操るのです
つまり梨沙ちゃんは健在ッ!
……音石 梨沙ちゃんを探せますか?」
岩沢「ど、どこにいるかは見当はつきませんが
やってみますッ!探してみますッ!」
綾瀬「………良く言いました、さぁ行ってッ!」
岩沢が、屋敷の外に飛び出した
ガールズ・デッド・モンスターが顔を上げる
だが、一瞬見ただけでスタンドは顎を振って
街の方を示した、
まるで「行け」と言っているかのように、
その仕草で、岩沢は涙が出そうなほど
全てを察した
岩沢「梨沙の意思じゃあないんだね……分かった
私が必ず、音石 梨沙を助けてあげる……ッ!」
岩沢が街の方へと姿を消した………
綾瀬がイン・トゥ・ザ・ナイトを引き連れて
壁や手すりに手をかけながら
白杖を片手にゆっくりと階段を降りてきた
綾瀬「スゥモアちゃん、
此処からは私たち大人の役目ですよ」
ベビィ・メタルは距離を取ると、
正眼に刀を構えて
ガールズ・デッド・モンスターに向き合った
スゥモア「受けて立つです」
G.D.M『行くぜェッ!!』
ギュゥウウウウンッッ!!
マリオネットの泣きが屋敷前の竹林に鳴り響く
先に飛び出したのはベビィ・メタルッッ!
刀を振り下ろすと
あえてマリオネットがそれを受けた
ガァンッ!と『音』が響いた
G.D.M『一音目、だ。』
スゥモア「くぅっ!!」
ベビィ・メタルが切り返す、今度は胴体狙い!
だがそれもギターで防がれた、またも切り返すが
凄まじいまでの反応速度でギターで受けられる
防がれる度に素材に刀が当たる『音』が響く
キュイィィーーーーィンッ!
弦に指をスライドさせてチューニング音が
突如鳴った!
綾瀬「ッ!!スゥモアちゃん!距離を取って!!
イン・トゥ・ザ………」
G.D.M『もうおせぇよッッ!ぶっとべェッッ!!
ROCK!YOU!!』
ギャアアアアアアアアアンッッッッッ!!!!
スゥモア「うああああああっっっっ!!!」
まともに食らったスゥモアが
後方に吹き飛ばされるッ!
綾瀬もその音圧に家の中に吹き飛ばされた!!
綾瀬は家の床にごろごろと転がった
だが、スゥモアは綾瀬屋敷の壁に背中から
叩きつけられ、うずくまって咳き込んでいた
G.D.M『Thanks you………!』
スゥモア「げほっ、げっほ……このスタンド……
とんでもなさすぎま……がっはっ………!!」
綾瀬「スゥモアちゃん………!」
綾瀬がスゥモアの元に行こうとする
だが手を伸ばした
白杖は真っ二つに折れてしまっていた
地面を這いながら、スゥモアのところへと向かう
G.D.M『あと1人だなァッ!綾瀬センセ!
医者さまはもう動けそうにないしなァッ!』
G.D.M『わーってんだよ、綾瀬センセ、
アンタは目が見えていねぇ、オレのこのスタンド
ガールズ・デッド・モンスターは己から出る音も
吸収する、だから足音もねぇ、
そしてこの15時の屋敷前はまだ陽が差し込んでる
つまり、落ちる影もねぇッッ!』
G.D.M『音が無けりゃ、オレの居場所は掴めねぇ
オレの影も掴めねぇッ!しかもここは陽の下ッ!
だからイン・トゥ・ザ・ナイトは
探知できねぇッッ!カンペキじゃあねぇかッ!』
スゥモア「そんな……だから
綾瀬さんはさっきから……ッ!」
だが、スゥモアが綾瀬を見ると
驚愕に目を開いていた
綾瀬「何故………私のスタンドの名前も能力も
そんなに正確に知っているのですか……?
私はそんなに多くの方には
話していないというのに……!?」
スゥモア「確かにです〜!?」
G.D.M『さぁなぁ?お天道サマにでも
見られてたんじゃあねぇか?
最もお天道サマの下では
夜にも駆けられねぇかッ!
ガールズ・デッド・モンスターッッ!!』
『マリオネット』がギュインギュインと
鳴り始めた
G.D.M『次はアンタだ綾瀬センセ!
かかってこい、ぶっ飛ばしてやらぁな!!』
綾瀬が、家具を支えにゆっくりと立ち上がる
暗い部屋の中にイン・トゥ・ザ・ナイトが
佇んでいる
綾瀬「やってみなさい……ッ!私のスタンドは
夜の支配者、あともう少しすれば陽が傾く
そうすれば………『私の時間』です……ッ!」
G.D.M『確かになァ、
じゃあ早く片付けなきゃあな
こっちから行くぜッ!』
ガールズ・デッド・モンスターが
激しくギターを鳴らしながら歩いてくる
綾瀬「(竹林に爆音が反響して、音の発生点が
掴みにくい……ッ!一瞬でも位置が分かればいい
そうしたらそこに派遣できるッ!)」
ここでスゥモアがそれを察した、
スゥモアは綾瀬の手にタッチしたかと思うと
ベビィ・メタルではなく
自分自身がガールズ・デッド・モンスターへと
駆け出していった
G.D.M『なんだァ?
そんなに死にてぇのかァッ!?
ならまずはアンタから……』
スゥモア「フゥゥーーー………
私はここです〜〜〜〜〜ッッッ!」
G.D.M『あん?』
綾瀬「イン・トゥ・ザ・ナイトッッ!」
全てを理解した、全てを察した、
綾瀬がスタンドを飛ばしたかと思うと
スゥモアの影を優しく掴んで
『イン・トゥ・ザ・ナイト』が現れた
スゥモア「大股3歩くらいッ!ですぅぅぅッッ!」
G.D.M『バカ…………ッッ!!
がッッ!!!!!』
綾瀬「飛んだ誤算でしたね梨沙君、
私だけなら完封出来たものの
スゥモアちゃんがいた、影がない人間はいない、
スゥモアちゃんの影を中継して、
正確な位置さえわかれば、
イン・トゥ・ザ・ナイトは
………必ず貴女の影を捕まえます」
G.D.Mの影は背後からガッチリと
両手で首を捕まえられていた、
さしものガールズ・デッド・モンスターも
背中にぴったりと付かれては音圧でも
どうしようもない
必死に振り解こうとするしかなかった
だが、ギリギリと首にかかる力が強くなっていく
ここで先に梨沙が限界と見たのだろう
ガールズ・デッド・モンスター
突然、霧散するように消失した
スゥモア「倒したです!?」
綾瀬「いえ、まだ締め落とすほどに
力は込めてません
恐らくはスタンドを引っ込めたのでしょう……」
すると、綾瀬が懐から携帯電話を出した、
電話はすでに着信を知らせるために震えており
しかも、画面には不在着信が4件も入っていた
綾瀬「………スゥモアちゃん、
誰だと映ってます?」
スゥモア「………電話番号しか……?」
綾瀬「ふむ………もしもし、
こちら綾瀬凛藍です」
………
『5度目でやっとつながりましたね
岸部露伴様より依頼を受けて
ご連絡差し上げました
スピードワゴン財団事務の者です、
初めまして綾瀬様』
綾瀬「あぁ、これはこれはご丁寧に、すみません
スタンドに襲われていまして、
それでご用件は……」
『それはお忙しいな失礼しました、
まずは此度の杜王町での再びのスタンドの増加、
事件の増加、それに伴い当財団の杜王町育ちの
エージェント曰く、やはり『矢』で間違いないと
結論づけました』
『つきましては、財団より何名かの財団調査員を
杜王町へと向かわせました。
白に赤線のヘリコプターです、
ボヨヨン岬と呼ばれる場所辺りに向かいますので
合流を願えますか?』
綾瀬「分かりました、ところでこの通話は
大丈夫なのですか?」
『ご安心ください、
当財団最高レベルのセキュリティが
かかっておりますので
傍聴されることはまずございません』
………
………
………
………
少女「だってさ♡」
杜王町近くの山の中、
城のような外見をした廃ホテル
かろうじて無事な最上階は無駄に豪華に飾られ
まるで玉座の間だった、その一番奥に座るのは
マキシマム・ザ・ホルモンのマスター・鳥山に
力を与え、スノビズムに矢を渡した
ホットパンツにロングブーツ、
ビキニの上からライダージャケットを
纏うだけの服装をした"紫の闇の瞳"の少女だった、
目の前にいるあのコードネーム:オンディーヌは
自分のデコられたパソコンから伸びる
ヘッドホンで熱心に何かを聞いていた
少女「どう?オンディーヌ♡」
オンディーヌ「ちょいちょいウチらの仲じゃん、
からかわないで名前で呼んでよ、ねぇ────?
『イヴ・サン=ヴィトン』」
イヴ「あっは♡そんな、パパとママからもらった
あたしの素敵な名前呼ばないで
嬉しくなっちゃう〜♡でも、そうする♡
調子はどう?アノネノネ」
オンディーヌ、本名アノネノネが、ヘッドホンを
外してニタリと笑みを浮かべた
アノネノネ「ま、今聞かせた通りっしょ?
で?どうする?
間違いなくウチらの計画の邪魔になるけど」
「行かせようか……
私の『クーネル・エンゲイザー』を」
風に寄りかかっていたロシアのウシャンカ帽に
ロシアンコートの長身の少女が手を振った
イヴ「あはっ♡ノース・フェイス
貴女のスタンドは空中戦は苦手でしょ?
だから今回は大丈夫♡」
ノース「ん。」
イヴ「アノネノネ、リサ・オトイシに
追加コマンドして♡
彼女のガールズ・デッド・モンスターなら
ヘリコプターも撃ち落とせるでしょ♡」
アノネノネ「最高〜そうしよっか〜
シークレットコマンド・トゥ・
ビカミング・ハッピー……来てくれる?」
バイザーに入った脳みそのエイリアンのような
スタンドがアノネノネの前に現れた
アノネノネ「リサ・オトイシの意識に繋いで、
『追加コマンド』を入力────
………
………
………
………
突然!綾瀬、スゥモアの前に先ほど消えたはずの
ガールズ・デッド・モンスターが現れた
G.D.M『命令を確認、お安いご用だな任せろ』
唖然とする2人の前から
ガールズ・デッド・モンスターは
あっという間に街の方へと去っていった
スゥモア「なんだったんです〜?」
綾瀬「まさか………今の電話を……!?
スゥモアちゃんッ!」
スゥモア「は、はいッ!?」
綾瀬「車を出してくださいッ!
至急ボヨヨン岬へッ!
ガールズ・デッド・モンスターは、
大それたことをするつもりですッッ!!」
To be continued………