綾瀬凛藍は夜に駆けていく   作:眠 いつか

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第15話 アンフォーギヴンとホリデイ

黒澤・デザイアの名を持つ黒人の彼女は、

『番犬』と言われるほどに

斉唱四角学園風紀委員長

黒澤・アンジェリーナ・ホースといつも共にいる

だが白人ハーフのアンジェリーナと

黒人ハーフのデザイアが

同じ苗字を持つということは

少なくとも生まれながらの姉妹ではないのは

お察しだろう

 

黒澤・デザイアは養子であった、

父は生まれた時には殺されていた

母は産んでしばらくして自分を下水道に捨てた

鼻が曲がりそうな酷い悪臭の中で、

流れてくる腐った食べ物とドブ水だけが

自分を満たしてくれた、

そしていつかそれは流れてきてしまった

 

『ナイフ』だった、恐らくは手首につける

暗器型の小型ナイフなのだろうが

機構が壊れていたためナイフだけを取り外した

世界が開けた気がした、汚らしい孤児であっても

ナイフをちらつかせばたちまち顔を青くして

金を落としていった、その金で美味しいものを

溢れるほどたくさん食べた

 

時には言うことを聞かない者もいる、そんな時は

ちょっと手や腿に傷をつけてやると涙目になって

言うことを『聞いてくれた』

貧困と犯罪の闇の中でデザイアは

少しずつ、少しずつ悪に染まっていった

 

いつしか彼女は路地裏を飛び出し、街を飛び出し

各地を放浪するようになった

たった1人で、誰にも理解もされずに

入れそうな家を見つけたら侵入して、

誰もいなかったら金目の物を根こそぎ持っていく

誰かいたらナイフを突きつけて死をちらつかせる

控えめに言って最高の日々だった

街行く働く人を馬鹿にするほどに最高だった

犯罪こそが、彼女の楽園だった

 

だが、ある時、彼女は見てしまった

入り込んだ家を物色する時に豪華なドレッサーの

引き出しから高そうなネックレスを取り出した時

 

顔を上げた『鏡』に写っていたのは、

醜い顔の少女だった

 

瞳は濁り、頰はこけ、

顔は煤だらけの醜い醜い少女だった

 

デザイア「あ、あぁ……

うあああああああッッ!」

 

鏡に突然現れた化け物にデザイアは

絶叫と共に鏡を叩き割った

散らばった破片には、大量の化け物が写っている

ナイフの刃にも化け物が写っていた

窓にもいた、宝石の中にも、水桶にも、

ドアノブにも、醜い少女の化け物が写っていた

 

ネックレスさえ投げ捨てて、

彼女は人様の家を飛び出した

街の中を彼女は悲鳴をあげながら走り逃げた

どこもかしこも化け物が写っていた

ブロンド髪に赤い瞳の少女の化け物が写っていた

 

分かってる、分かっている、これは『自分』だ

『自分』以外の何者でもない

でも、こんな醜いのが自分だと信じたくない

これならあの下水道で死んでいたほうが

まだマシだった気さえしてきた

自分の生まれはわからない、

だが唯一子供ながらに

父がドブカス以下のクソ犯罪者だったことは

朧げな母が言っていた気がする

 

街にいると化け物を直視してしまう気がして

彼女はいつしか、森に佇むようになった

時々来るキャンプやハイキング目的の者を

襲うようになった、

時にはキャンピングカーだって

忍び込み、襲うようになった

そんな……そう、『カス』のような日々の中

彼女は出会ってしまった

 

神など信じていなかったが、運命なら

いいや、あんな恐ろしいまでの偶然は

運命どころか『引力』と言ったって良い

そろそろ寒くなる秋の山の中だった

一台のキャンピングカーが止まっていたから

いつも通り、窓を叩き割って侵入した

食料は大量にあった、衣類もたくさんあった

大収穫にほくそ笑んだその時

 

「動くんじゃあねぇ」

 

頭の後ろに銃口が突きつけられた

全く感じられなかった、呼吸も気配も何も

脅しの類じゃない、頭の後ろの銃口は本気だった

下手に抵抗すれば

頭が吹き飛ばされる確信があった

 

デザイア「へぇ、ちょっとあたし失敗したかな?

随分とんでもない男がいたじゃん」

 

「パパ?何かあったの……」

 

ガンマン「入ってくるなアンジェリーナッ!

卑しいコソ泥がいてなぁ……ッ!」

 

と、ガシャリと銃を構える音が外からも聞こえた

 

アン・ホース「『アンフォーギヴン』………ッ!

手伝おうかパパ、

その『皇帝(エンペラー)』だけじゃ

不安でしょ?」

 

デザイア「親子揃ってガンスリンガー?

飛んだところに入っちゃったな……」

 

だがそれを言った時、"パパ"とアンジェリーナが

驚嘆の声を漏らした

 

ガンマン「あんさん……この銃が見えるのか?」

 

デザイア「は?いや、その銀色の銃のことだろ?

あと、その後ろの娘も今聞こえたけど?」

 

ガンマン「アンジェリーナ………ッ!」

 

アン・ホース「『スタンド使い』……

ってこと?」

 

ガンマン「あぁ……いや、ちょっと待て……!?

 

 

ちょっと待てお前ッ!?名前はッ!?

 

あんたの名前はなんて言うんだッ!?」

 

デザイア「は?あたしはデザイア、

 

………デザイア─────」

 

ゴトン………と、銃が地面に落ちる音がした

そして、

 

ガンマン「そうか……そうかよ……

そんなこと、あるのかよ……ッ!

イッヒヒヒヒッ!

最高だぜッ!最高な日だアンジェリーナッ!

おいあんた、身寄りは?」

 

デザイア「ちっ、ないから

こんなことしてんだよ」

 

ガンマン「だよな……そうだよなぁ……

いや、でも………いやッ!何を躊躇ってやがる

男ホル・ホースッ!漢気を見せる時だぜッ!

おい、ハニーッ!」

 

クロサワ「なぁにダーリン?」

 

ガンマン「俺が金を出す、俺が手続きもするッ!

俺も責任を持って育てるッ!

この女の子を、ハニーの養子に出来ないか?」

 

デザイア「は?………はぁぁぁ!?

あんた正気!?こんなあたしみたいな

醜い孤児をッ!」

 

ガンマン「俺は、あんさんのパパを知ってる」

 

デザイア「………!?」

 

ガンマン「人間としては最悪だったが、

相棒としては最高だった

だからあいつが死んだ時、もし、子供がいたら、

そしてもし出会えたら

相棒のよしみで引き取ろう、そう思ってた」

 

クロサワ「ダーリン、前もそれ言ってたわね

でもいいわッ!アンジェリーナに妹が

出来たと思えば、可愛いものよッ!

アンジェリーナはどう?

あとは貴方が決めて良いわ」

 

アン・ホース「私に………妹?

妹ーーーーッ!?この子が!?

 

う、嬉しいーーッッ!」

 

デザイア「まだあたしが返答してないんだけど」

 

ガンマン「確かにな、どうする?

あとはあんさんが決めろ」

 

デザイアは少し悩んでいると、

目の前にアンジェリーナが

立ちはだかっていた、そして跪くと

………迷わず右手を差し出した

 

アン・ホース「私と姉妹になってくれる?」

 

デザイアは『ナイフ』を投げ捨てると

アンジェリーナの『手』を握った

 

それは、今でも鮮明にこうして思い出せる

 

あたしが『デザイア・ガイル』から

『黒澤・デザイア』になった日──────。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

デザイア「アン、あとはこいつのドタマを

ぶち抜くだけで良いか?」

 

アン・ホース「えぇ、でも何をするかわからない

デザイアのスタンドはそのまま維持して」

 

デザイア「分かってるよ、じゃああれだ

見えるかアン、

あのおもちゃ屋のブリキのロボット

その表面に映らせておくとしようッ!

 

『ホリデイ』ッッ!!」

 

スタンド名を叫ぶ、ブリキの鏡面の向こう側から

ベッタァリと両手が張り付いた、

その奥にはシルエットしか見えない女性の人影

鏡に閉じ込められた様なそのスタンドの名は

ホリデイ(何処にもいない日)の名を冠していた

 

アン・ホースがカチリと銃を倒れた

時折間の後頭部に

アンフォーギヴンを構えた、短く深呼吸をする

軽く目を閉じる、命を奪うのは初めてだった

 

 

 

 

だが時折間の耳に届いていたのは、

そんな銃の動作音ではない、

2人の少女の声ではない、聞こえてくるのは

 

「反響する蝉の声」

 

「夏の風が草を揺らす音」

 

「彼方から聞こえる潮騒」

 

そして

 

「 踏 切 の 警 告 音 」

 

カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン!!!!

 

時折間は顔を上げようとした!

いや、上げたのだ、上げたはずだった

だが見えたのは今にも殺しにかかる

アン・ホースとデザイアではない

 

 

────白い肌の少女(シンデレラ・グレイ)。

 

 

時折間「お前は………」

 

色を失ったかの様に真っ白な少女、

髪も、服も、肌も、霊のように真っ白だった

 

■■「…………ゲンくん」

 

時折間「俺を、知って、るのか……!?」

 

■■は……悲しそうに笑った、

忘れてしまったことを、噛み締める様だった

 

■■「このままだと、しんじゃう

だから、わたしのちからをつかう

……どうか、ゲンのきずを、

わすれさせてください」

 

かがみ込んだシンデレラ・グレイは

上体だけ起こす時折間の額に口付けした

 

蝉の声が強くなった。

 

─────また、あぶなくなったらたすけにくる

 

きみはともだち、だから。

 

 

 

時折間が目を開けると少女は何処かに消えていた

見えたのは、銃を構えるアン・ホース

 

時折間「ゴー・ゴー・ゴーストシップッッ!!」

 

アン・ホース「!?」

 

G.G.Gは出現しながらラッパ銃の銃口を突き上げて

アン・ホースの顎を打ち据えたッ!

 

アン・ホース「がぁっ……はっ……!?」

 

たまらず仰け反らながらアン・ホースが

顎を抑えてたたらを踏んだ

 

デザイア「………おいちょっと待て、アン

何発もこいつに打ち込んだよな?」

 

アン・ホース「えぇ……ッ!」

 

デザイア「………なんでテメェ、

どこにも『傷』がねぇんだッ!!?」

 

時折間が両手を地面に付く、そしてゆっくりと

立ち上がってきた

 

時折間「ふぎうぉぉぉああああああッッ!!」

 

そして、二本の足でしっかりと立った。

 

時折間「はぁ……はぁ……よくわかんねぇけど、

『一つ』だけ言うとしたら

まだ『決闘』は終わってないってことだ」

 

アン・ホース「盛り上がってきたじゃない」

 

アン・ホースがトリガーガードに指を入れて

くるくるとアンフォーギヴンをスピンさせている

軽く後方に放り投げると、銃は綺麗に回りながら

アン・ホースの肩を通ってから

前に落ちて来たのをキャッチした、

微かに笑いながら

アンフォーギヴンをスピンさせ続けていた

 

やがてスピンしながら、顔の横まで上げると

 

ガァンッ!!

 

狙いは正面ッ!時折間の眉間ッ!!

 

ガァンッ!!

 

狙いは左側、ブリキのロボットッ!

 

時折間「ゴー・ゴー・ゴーストシップッ!

撃てェッッ!!」

 

G.G.G『ヨーホーッッ!!』

 

ドンッッ!と、放たれたのは大砲の弾ッッ!!

 

アンフォーギヴンの弾丸は正確に

ブリキのロボットに命中し、反射面の中の

ホリデイがその軌道を120度反射させたッッ!

そして、ホリデイの姿が一瞬にして消えた……

 

時折間「(正面の砲弾は貫かれる

だが、それで減速したところを躱わす

意識すべきは明後日の方向に『跳弾』した

1発目ッッ!!)」

 

飛んでいく1発目は、反対側の商店前の

カーブミラーへと飛んでいくのが見えた

 

アン・ホース「……デザイア、ミラーに現す前に

砲弾の方が早いッ!!トスしてッ!」

 

デザイア「任せろ、ほらよッ!」

 

ティ………ン

 

デザイアがショートパンツの中から何かを

指で弾いたッ!

砲弾の前に飛ばしたのは銀色のゲームコインッ!

 

デザイア「顔が映るほどピカピカの銀貨だッ!

受け取りなァッ!ホリデイッッ!!」

 

ゲームコインに砲弾が着弾………しないッッ!

砲弾はコインに当たった瞬間に、

時折間目掛けて帰ってきたッッ!!

 

時折間「なにィィィ!?ぐぅおおおっっ!!」

 

時折間がギリギリで躱わすも偏差で落ち込んだ

砲弾は脇腹にクリーンヒットしたッッ!

思わず、地面にゴロゴロと転がる時折間ッ!

咄嗟に先ほどのカーブミラーを見ると

既にカーブミラーの中から両手が張り付いていた

 

ガァインッッ!

 

アンフォーギヴンの弾丸が反射して軌道を変え、

転がった時折間の顔に迫ってくるッ!

 

時折間「ぬおおおおッッ!!」

 

なんとか転がって掠めた弾丸は

地面に突き刺さった

その転がった勢いのまま時折間が立ち上がる

肩で息をしていた

 

時折間「(分かってんだ、分かってんだよ

デザイアがトスしたコインの中にホリデイを

移動させて俺の砲撃を反射した……ってこたァ

だがそれをされたらヤベェ……ッ!)」

 

時折間「(アン・ホースさえ倒せば、

反射させるスタンドなんて大したことじゃあない

そう思っていた、だが、違うッ!

むしろ俺のスタンドには

デザイアも天敵だッ!)」

 

ガァンッ!!ガァンッ!!ガァンッ!!

 

時折間「来た、来た来た来た来たァァァァッ!

ゴー!ゴー!ゴーストシップッッ!!」

 

2発が正面、1発が右側に放たれた

対してG.G.Gも2発続けて撃つッッ!

 

「花束」!ハズレッッ!花びらが散ったッ!

「しゃれこうべ」!ハズレッッ!粉砕されたッ!

だがわずかな減速で、

時折間は2発を掠めるに留めた

3発目を目で追う、標識の柱に反射して

向かって来ていたッ!

 

時折間「う、お、おおおおおッ!」

 

脇腹をギリギリで掠めさせてなんとか躱わすッ!

 

ティ………ン

 

……コイントスの音がした、

時折間か見ると、まだ撃ってもいないのに

何故かデザイアがゲームコインを

こちらへ放って来ていた

 

時折間「なんだ────?」

 

ガァンッ!!

 

アンフォーギヴンの弾丸は空中を舞う

コインに命中したッ!コインに映ったホリデイが

空中で弾丸を反射させたッ!

 

ドジュウゥッッ!!

 

時折間「ぐわァァァッ!!しまった……

コインの中に……ッッ!!」

 

悶える時折間を尻目に、アン・ホースが

アンフォーギヴンをリロードしている

 

アン・ホース「オッケー、今日も絶好調

埒が開かない、

そう転げ回られたら決着がつかない」

 

デザイア「だからこれでぶっ殺すってよ

行くぞアンッッ!」

 

アン・ホース「お願いデザイアッッ!」

 

デザイアがショートパンツから

取り出したコインを両手に握ると、

それを空中にばら撒いたッ!

およそ枚数は15枚ッッ!

 

アン・ホース「アンフォーギヴンッッ!」

 

アンがアンフォーギヴンを構えたッ!

 

デザイア「ホリデイッッ!!」

 

時折間に15枚のコインが降りかかる、

ちょうど前に落ちて来た一枚のコインを見たッ!

ホリデイが中に映っている

 

時折間「まさか、オイオイオイオイまさかッ!?

そんな、とんでもないことをしようってん

じゃあないだろうなァッッ!」

 

アン・ホース「反射までのロスは

遥かに短いわッ!

今度はお行儀良く逃げられると良いわねッッ!

ふふふ……発砲(ショット)ッッ!!」

 

ガァンッ!!

 

アンフォーギヴンの弾丸は、時折間の顔を掠め

反対のコインに当たり、反射して来たッ!

それをなんとか躱わすが落ちる寸前の足元の

コインから弾丸が反射して来たッ!

 

次に頭の後方、体の右側、左肩の先ッッ!

時折間の周辺に落下していく

コインに弾丸が当たるたびに、

何度も反射して襲いかかってくるッ!

 

ドジュウゥッッ!!

 

弾丸がついに時折間の右股を撃ち抜いたッッ!

思わず地面にうつ伏せに倒れ込むッッ!

 

時折間「(む、無敵だ……ッ!

このスタンド使い達は無敵だ……ッ!

例えるならクリント・イーストウッドと組んだ

リー・ヴァン・グリーフ……ッ!

互いのスタンドが互いのスタンドを

強化しているッ!勝てねぇッ!強すぎるッ!)」

 

ガァンッ!!ガァンッ!!ガァンッ!!

 

正面、右側、左側、時間差を付けて放たれた

銃撃は右も左も丁寧に反射されて三方向から

弾丸が飛んでくるッッ!

 

時折間「(さっき、シンデレラ・グレイに

傷を忘れさせてもらったのに(?)

さっきと同じ状況ッ!

恐らく今度はもう油断しない

生きてると見るや、あの距離からトドメを差す

そうなったら俺の負けだ、俺は死ぬッ!!)」

 

時折間「(だが、どうせ食らうのなら

意表を突く……行けるか、そんな恐ろしいこと

俺に出来るのか……ッ!?

いや、やってやる、やってやるぞ、俺はやるぞ

俺はァァァァァァァッッッ!!)」

 

時折間が立ち上がった、そしてなんとッ!

両腕を広げて、3発の弾丸を『受け入れた』ッッ!

 

アン・ホース デザイア「「ッッッ!!?」」

 

開いた胸元からも、高そうなスーツからも

血が流れ出る、だが時折間はそれを手で撫でると

そのまま天然パーマの髪をかきあげた

 

時折間「『オールバック』だ。」

 

時折間の後ろにゴー・ゴー・ゴーストシップが

立ち現れた、笑っているような気がした

ラッパ銃を構えるッ!

 

ここに来て、

31歳のダンディネス(自称)な時折間と、

17歳の戦い慣れしていない少女の差が出たッ!

油断していた、仕留めることは出来ないが

戦闘不能くらいには出来るだろうと

思ってしまっていたッ!

 

まだ、『アンフォーギヴン』は

『リロード中』だったッ!

 

アン・ホース「(あと3発……あと2発……ッ!

まずいッ!まずいわッ!)」

 

デザイア「(おい!?

アン、攻撃が来るぞッ!)」

 

G.G.G「ヨーホーーーッッッッ!!」

 

ドォォオンッッッ!!

 

ラッパ銃が吐き出したのは『火薬樽』ッ!

触れれば爆発が巻き起こる、赤色のタルッッ!

 

デザイアがポケットからゲームコインを出した

そして飛んでくる火薬樽に狙いをつける

 

デザイア「あたしがやるしかねぇッ!

『ホリデイ』ッッ!銀貨に『移動』しろッッ!」

 

しかし、先ほどの時折間の予想外の行動は

『動揺』を生んでいたッ!弾こうとしていた

デザイアの指はゲームコインを弾き損ねたッ!

コインが地面に落ちていった……

 

デザイア「(やっちまったッッ!

アン……ッ!)」

 

火薬樽がヒュルルル……

と、アンに飛んでくるのが見えた

まだ『リロード』は終わっていない

しかもアン・ホースは、今気づいた、

その距離はもう回避が間に合わないッ!

 

 

 

…………生まれた時から、一度だって『手』を

握られたことなんてなかった。

穢らわしい、汚れた、臭いもきつい『手』だから

あの月夜にあんただけが迷いもなく握ったんだ

 

あたしの『誕生日』なんてわからねぇが

あたしは、あの月夜の日を誕生日にした

 

アン、あたし、あんたのためならなんでもやるよ

殺せって言われたら殺してやる

死ねって言われたら死んでやる

 

あのな、あたしは好きな人に

会うために、歩いて来ただけだ

でもそれも許されないのなら

どうぞ、めちゃくちゃにしてくれよ。

 

 

 

デザイアが、アンを突き飛ばしたッッ!!

 

アン・ホース「デザイア……ッ!?」

 

デザイア「間に合っ………」

 

デザイアに飛来して来た火薬樽が直撃した

爆音と共に、デザイアは爆風に吹き飛ばされた

 

だがアン・ホースは、吹っ飛んだ親友に

妹のようだと慕うデザイアが倒れた姿に

ちらりとも見ずに『リロード』が完了した

アンフォーギヴンを時折間へ構えた

 

時折間「おいおい、意外と無情………」

 

大粒の涙が、『光のない』両目から溢れていた

 

アン・ホース「…………ッ!」

 

時折間「………!!」

 

時折間「(綾瀬さんが言ってた通りだ、

洗脳されてやがる、それも今はっきりとわかった

このスタンドの洗脳能力は、

『自我』を残させているッ!)」

 

時折間は心臓が焼けつくような怒りを覚えた

 

時折間「こんなことが許されるかよ……ッ!

何も知らない子供をッ!何を企んでるにせよ

テメェの勝手で『兵士』にするなんざッ!

許さねぇ……俺の一番嫌いなやり方だッッ!!」

 

と、その時だった、夕闇をつんざくように

17時を告げる、『イエスタデイ』が

夕暮れの商店街に響き渡った

 

それを聞いて

アン・ホースはアンフォーギヴンを

腰のホルスターにしまうと

グリップに手を翳して半身で構えた

碧眼が時折間の視線と交差した

 

時折間「『早撃ち』の構え……」

 

時折間はゴー・ゴー・ゴーストシップの

ラッパ銃を地面に突き立てると

グリップに手を翳させた

 

アン・ホースの涙は止まっていた。

200年前ならきっと名を馳せるような

勇ましく、凛としたガンガールの姿が

そこにはあった

 

アン・ホース「………試してみる?

この17時のチャイムが鳴り終わったら───」

 

時折間「理解している………

 

『決闘』を始めよう」

 

イエスタデイはまだ終わらない。

 

夕暮れの商店街に風が吹き抜ける、

どこからともなくチラシが宙を待っていた

アンの背中から、逆光の夕陽が沈みつつあった

 

イエスタデイはまだ終わらない。

 

時折間が軽く深呼吸した、ブリキの海賊と

手を軽く握って開いた、瞬間的にラッパ銃を

掴み上げられるように

 

イエスタデイの、音色が

 

……途切れた

 

2人が同時にグリップを握ったッ!!!

2つの射撃音が殆ど同時に鳴り響いたッッ!

こうなったらもうものを言わすのは

『しっかりと狙いをつけたか?』であるッ!

 

アン・ホースの狙いは完璧だったッ!

腰撃ちで放たれた弾丸は真っ直ぐッ!

時折間の眉間へ発射されたッ!!

 

だが、時折間はラッパ銃の長さ故に

構えるのが精一杯だったッ!

しかも吐き出されたのは『鉄球』ッ!

砲弾ではなく鉄球ッ!それはハズレではないが

アタリでもない、ただのラッパ銃の弾丸ッ!

普通ならともかく、アンフォーギヴンの弾丸には

敵うはずがないッ!!

 

二つの弾丸がぶつかる、だがアンフォーギヴンの

貫通弾の先端に受け流されるように、

ゴー・ゴー・ゴーストシップの鉄球弾は

軌道を逸らされ、あらぬ方向に飛んでいったッ!

 

時折間「まずいッッ!!………ぐぅっっ!!」

 

かわしきれないッ!時折間は防御のために

身体を捻り、右肩に弾丸を直撃させたッッ!

 

アン・ホース「勝ったァッ!!

終わりよッッ!

この2発目で決めてあげるッッ!

『アンフォーギヴン(許されざる者)』ッッ!」

 

ドジュウゥゥゥッッッッ!!

 

 

 

アン・ホース「あ…………ふぁっ………!?」

 

……アン・ホースが背中側から、銃撃された。

 

コロン、コロンとその凶弾が足元に広がる

それはゴー・ゴー・ゴーストシップの

鉄球弾だった

アン・ホースがゆっくりと飛んできた方を見た

近くの『街灯の柱』に、

『弾丸』が『弾かれた』跡がついていた

 

アン・ホース「『跳弾』…ですっ……てぇ…ッ?

まさか、狙って……ぇっ……ッッ!」

 

時折間「いや、俺にそんな器用な真似出来ねぇ

強いて言うのなら、

いっちばん最初に言っただろ?

 

俺は今日、『ツイてるんだ』」

 

アン・ホースが膝をついた

 

アン・ホース「ツイてた……ツイてた……

あは……なるほど、

 

じゃあ、今日は私にとっては、

 

サイアクの日……ってこと……ね………

 

 

あぅ……っ……ぅ………」

 

アン・ホースが、前のめりに倒れ込んだ

手から転がったアンフォーギヴンが、

静かに消えていった

時折間はそれを見届けていくと、

タバコを吸うために一本取り出そうとして

 

時折間「やべ!救急車ッ!

本当に命を取る気はねぇんだッ!

あー……?

なんて説明すりゃいいんだこれ……?」

 

 

 

杜王町の森の中の廃ホテル

 

アノネノネ「ん…………?」

 

イヴ「どうしたのアノネノネ、

早く2Pとやらに……」

 

アノネノネ「………チィッ……

『ゴミゲー』かよ」

 

ノース「………なんて?」

 

アノネノネ「こっちも『ゲームオーバー』だッ!

ふざけやがって、承太郎だっけ?

と、戦ったスタンド使いの子供たちとかいう

圧倒的ステータスなんだよッ!

それがこんなザコキャラに

勝てないのかよ……ッ!」

 

アノネノネ「それとも、コンビの場合は

両方にヤッた方がいいのか……?」

 

イヴ「アノネノネ、自分の世界に入っちゃった。

じゃあ、しょうがないね♡

ノース、あの双子に命じてくれる?」

 

ノース「わかったわ。」

 

 

ボヨヨン岬の綾瀬とスゥモアは

ガールズ・デッド・モンスターとの

戦いの余韻はまだ冷めず、夕闇へと5羽の鳩が

消えていくところだった

気絶した音石梨紗は、岩沢麻里奈におぶられて

何度も頭を下げながら市街地へと降りていった

 

綾瀬「はー………」

 

バァンッッ!!と突如、凄まじい光量の

サーチライトが暗くなり始めた岬に

差し込んだッ!

 

スゥモア「なんです〜!?」

 

パイロット『綾瀬凛藍様ッ!

モモ・スゥモア様ですねッ!お待たせしました

スピードワゴン財団ですッ!

エージェントをお連れしましたッ!』

 

綾瀬「おや、ちょうど良いところに

良かった……」

 

スゥモア「どーこーにー降ーりーまーすー!?」

 

パイロット『ご心配なくッ!調査済みですッ!

近くの草原に降り立つ予定ですッ!

少しお待ちをッ!!』

 

 

ヘリコプターがゆっくりと動き出した

着陸体制に入ろうと、

海の上から崖に飛来し始めた

 

『ヘリコプター』は突然、見えない膜に

遮られたかのように

機首を上げて海側に跳ね返ったッッ!!

 

綾瀬「このローター音……何かありました!?

大丈夫ですかッッ!?」

 

パイロット『う、おおおッ!?なんだこれはッ!

何かに遮られた……いや、引っ張られたッ!』

 

と、今度は『ヘリコプター』が逆に岸壁へと

引き寄せられるように急降下し始めたッ!

 

パイロット『メィー────』

 

だがその短い信号ですら叫ぶまもなく

スピードワゴン財団のヘリコプターは

岸壁に激突した………

 

ドグォォォォォンッッッ…………!!!

 

爆発音と爆炎が綾瀬とスゥモアの前に広がった

 

 

 

綾瀬「そん……な………ッッ!?」

 

スゥモア「ひどい……………」

 

だが、医療従事者のスゥモアはすぐに頭を振ると

電話をかけ始めた、どう見ても手遅れだが

レスキューと救急車を要請しているのが聞こえた

 

綾瀬「(これは……ッ!

明らかなスタンド攻撃……

何があったのか、何を見たのか……

後でスゥモアちゃんに訊かなくては

 

それにしても………)」

 

綾瀬が燃焼音が止まない方向を見つめた

 

綾瀬「(スタンド使いを増やし、

そのスタンドで邪魔者を排除、調査すらも拒む

この街に……一体どんな

『悪』がいるというのですか………)」

 

飛んできた火の粉が、

綾瀬の顔に時々降りかかって弾けていた……

 

 

 

ここは、近くの送電鉄塔

すっかり陽が落ちた、ボヨヨン岬の方から

火が立ち上るや否や

 

『サーッサッサッサッ!!!!』

『ムーフッフッフッフッ!!!』

 

その悲惨な光景にはとても似つかわない

不気味な嘲笑が鉄塔の上から響き渡り

闇の中で二つの影が鉄骨の上で笑い転げていた

 

1人は、デフォルメされたカートゥーンのような

満面の笑みを浮かべた太陽のどでかい頭に

極端に小さい赤と白のピエロ衣装が

仰向けになって足をばたつかせて

サッサッサッ!と笑い転げていた

 

1人は、デフォルメされたカートゥーンのような

嘲りの笑みを浮かべた満月のどでかい頭に

極端に小さい青と白のピエロ衣装が

腹を抱えてうずくまり

フッフッフッ!と笑い転げていた

 

そのピエロ達を従える

互いに互いの腰に腕を回す双子の少女達

ピンク髪のショートツインテールに

チューブトップとレザースカートを身につけ

冬用のアウトドアジャンパーを袖だけ通していた

若いというより幼さすらある双子の少女

 

だが、ただ者ではなかった、全身はこの歳で

鋼のように鍛え抜かれ、腹筋は6つに割れており

可憐な姿に武骨な体付きをしていた

 

黒いチューブトップが姉・ドルチェ(13)

青いチューブトップが妹・ガッバーナ(13)

イヴ・サン=ヴィトンの仲間たちの中で

この2人の役割は邪魔者の排除を担当している

武闘派のスタンド使いだった

 

ガッバーナ「聞いた!?姉ちゃんッ!?

あのパイロット、

メィディっていう間もなかったッ!

一瞬でドカァーーンッッ!きゃはははッッ!」

 

ドルチェ「ここからでは顔が見れないのが残念

本当に残念ッ!悲鳴すら聞けないなんてッ!

きゃっははははッッ!

……あれ?ノースさんから電話、なにー?」

 

ノース『任務、終わった?』

 

と、ドルチェの持つスマホにガッバーナも

顔を近づけた

 

ガッバーナ「終わったよ!

今、『花火』見てるー!」

 

ドルチェ「そろそろそっちに帰るよ」

 

ノース『お疲れ様、イヴが、帰りにおもちゃでも

手に入れて来ていいって』

 

双子が顔を合わせて笑った、そして電話を切ると

2人が鉄骨の上に立ち上がった

そして、2人は硬くしっかりと腕を組むと

 

………そのまま、鉄骨から2人で歩幅を合わせて

飛び降りたッッ!

 

ドルチェ「始まったわね、あぁ始まったわね

この街をメチャクチャにしましょうかッ!」

 

ガッバーナ「きゃっはぁっ!楽しみ〜!

逆らうやつ皆グチャグチャにしちゃおうよッ!」

 

頭を下に落下していく双子に

太陽と満月のピエロたちが追いついた……ッ!

闇夜の落下の中、双子は鼻が付きそうなほど

顔を見合わせて笑った

 

ドルチェ・ガッバーナ「「私たちの………」」

 

 

ドルチェ・ガッバーナ

「「『ワールズエンド・ダンスホール』で!」」

 

双子が笑い声を上げた、

ワールズエンド・ダンスホールたちも

また笑い始めた、

けたたましい爆笑は落ちていき、

夜の闇に消えていった………

 

To be continued………

 




[ホリデイ]
【破壊力-E/スピード-A/射程距離-B/
持続力-C/精密動作性-E/成長性-E】

ぼやけた女性のシルエットという
逆にジョジョのスタンドらしくない
不気味なビジョン
ただし何故か両手だけははっきりと写っており
ガラスやメッキなどの反射物の中に現れて
両手を反射物の中からべったりとつけており
まるで鏡の中に閉じ込められているかのよう
彼女が中にいる反射物は鏡が太陽光を反射し、
窓に翳した光が屈折するように、
それに当たったものを跳ね返させる
しかも当たる時にスタンドの解像度を
変えれば飛んできた飛翔物の反射角度すら
変えられる、
ただし一度反射させるとその反射物は
必ず割れてしまうため、必ず次は別の場所に
移動させる必要がある

元ネタはグリーン・デイの楽曲から
ちなみにメタリカとグリーン・デイは
無償で代打を務め合うなど
メンバー同士が仲の良いバンドとして有名である
二人の名はホール&オーツのアンジェリーナと
J・ガイルズ・バンドのデザイアから
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