火花がたこ焼きを、あーむと口に頬張った
思ったより大きいのと、熱いので口を手で抑えて
ぶるぶるしている
一方、名舟はたこ焼きを爪楊枝で分解しながら
細かく食べていた
綾瀬が買ったたこ焼きの舟が3人の膝に
乗っている、喧騒から離れた屋台街の裏手にある
丸太のベンチで3人は並んで座っていた
綾瀬「まずは……状況を整理しましょう」
火花「はふ………はむ………んんっ!
なんとか飲み込めた………大前提として〜
ヒバナ達は『8月11日』から明日に行けない〜
行こうとすると
今日の朝に戻っちゃうんだよね〜」
名舟「『巻き戻し』というよりかは、
『リセット』でしょうか、その日に起きることは
また再び繰り返さられる」
綾瀬「私のヒントにもなった、
火花の落とすチョコバナナとお二人のルートも
そうですね、ちなみに火花は何故毎回、
落としてしまうのです?」
火花「屋台街の金魚掬い屋さんの近くで必ず
ぶつかってくる奴がいるの〜!
それで落としちゃう」
名舟「ルートに関しては……無自覚でした
まさか、毎度同じルートを辿っているとは
繰り返さられている自覚がありながら」
綾瀬「それです」
名舟「え?」
綾瀬「何故私たちは『リセット』を
認知しているのでしょうか?
それとも言ってないだけで、
あるいはこの祭りに来ている全員が?」
火花「それはないかも〜!2回目の時にパニクって
屋台のおじさんに伝えたら
変な子扱いされたし〜」
名舟「巡回していた……韓国コスメの匂いがした
婦警さんにも尋ねたら不思議がられただけです」
綾瀬「(ソジュさんですか………)
それならば尚更、奇妙なことですね……」
名舟「『スタンド』…………
そうか、これをスタンドの攻撃だとしたら?」
火花「スタンドはスタンドでしか攻撃できない
本体も同じ、
つまり私たちが『スタンド使い』だから
私たちは『リセット』を
認知できるってこと〜?」
綾瀬「…………でしたら咲織に訊いてみますか」
火花「さおりん刑事が来てるんだ!
確かに『ハビット』のスタンド使いだもんね〜!
ちょっとヒバナが聞いてきてみる〜!」
名舟「綾瀬先生、他にも来ているかもしれない
スタンド使いに心当たりはありますか?」
綾瀬「………そうですね……
あぁ、確かお医者様達が来てましたか
スゥモアちゃん、博人君、カリメッラ君
あと院長さんが来ているはずです、
カリメッラ君は翠の主治医ですし、
話しやすいはず、お願いできますか?」
名舟「わかりました、当たってみます」
火花「りらっち先生は?」
綾瀬「久しぶりに、『あれ』をやってみようかと
私のイン・トゥ・ザ・ナイトで屋台街の
人々を片端から『聴いて』みます」
たこ焼きをちょうど食べ終わった
二人が立ち上がった
火花「そうと決まれば早速行こう〜!」
名舟「善は急げ、ですね」
綾瀬「あ………そうそう、忘れてはなりません」
二人が綾瀬に振り返った
綾瀬「『21時』です、『21時』の打ち上げ花火、
その瞬間が恐らく『その回の夏祭り』の
『タイムリミット』です、
時間は8月11日の朝に戻り、全ては遠い夢の中。
決着をつけるのなら『21時』までです」
二人が静かに頷いた、そして屋台街へと
別れて歩いて行った………
綾瀬もたこ焼きを食べ終わるその舟を潰れるほど
固く握りしめながら綾瀬は白杖を手にした……
火花「ほんとにいた〜〜!
ね、ね!さおりん刑事ッ!
訊きたいことがあるんだけど〜!?
さおりん刑事は今って………
『何度目の夏祭り』?」
焔森「ん?あぁ火花ちゃんか………
今は……今は?待って、なんでそれを……
いやッ!まさかッ!?」
ソジュ「私は初めて夏祭りに来た」
らむ「プライベートでも来なかったもんね
私は毎年来てるけどね!」
焔森「いいえ、いいえ……ッ!違うのよ、
毎朝、綾瀬先生から電話が来るから私だけかと
思っていたけど、火花ちゃんまで………
ということはッ!」
火花「そうなんだよ、ヒバナもすいすいも
りらっち先生も同じく、『8月11日』に
閉じ込められてるの、そしてヒバナたちはこれを
『スタンドの攻撃』だと思ってるんだ〜
だからさ、なーんか変な人、見てない?」
焔森「いや、不審人物は見てないわ
と、いうより………もしスタンドだとしたら
目的が意味不明すぎるんじゃないかしら
何度も祭りの日を繰り返す?何のために?」
名舟「今、先生方は
『何度目の夏祭り』ですか?」
カリメッラ「名舟君?いきなり何を………」
博人「ほら見たまえ!
やはり我らの感覚が正しい!
夏祭りの日を繰り返しているのだよ!」
スゥモア「気のせいじゃなかったんですね〜……
あぁ、えっと……『4回目』?です〜」
と、三種三様な医師達の後ろから
ほ、ほ、ほと年季の入った笑い声が聞こえた
明負「若人らよ、何か新しいげぇむの話かね?」
黒い帽子にオレンジのマフラーを夏の風に翻す
杖をついた大老の紳士が笑っていた
名舟「は、初めまして僕は……」
「カリメッラの患者だろう?
名は……名舟 翠 16歳
当院の患者ならば皆、覚えている……
TG大学病院の老いぼれ、明負 悟だ……」
スゥモア「もう!老いぼれだなんて
ご謙遜です〜!
こちらは当院の院長、明負先生ですよ〜!
それで、翠ちゃんも同じく
夏祭りをリセットしてるのです?」
名舟「僕と、綾瀬先生、早乙女火花もです
そしてスゥモア先生と
博人先生もということは……」
カラメッラ「私たちスタディ
メンバーは全員ということだな」
名舟「確か、スタンドの研究をしている学会とか
(あれ?なら何でカラメッラ先生も?
………いや、今はよそう)」
スゥモア「むむむ………
『スタンド』の攻撃……?
どう思いますです?博人先生?」
博人「不可解、実に不可解極まりないッ!
何故ならこのスタンド……
マスターに何のメリットがある?」
カリメッラ「楽しい夏祭りを
何度も繰り返せるな」
スゥモア「う〜ん繰り返しすぎでは?
それに………これは感覚に近いですが………
こんな能力、『人智』を超えていますです
街中を欺いて『その日をリセットする能力』
もしスタンドと精神力が釣り合うというのなら
相当歪んでいるか、
それともそもそも本体など………?」
綾瀬は、ベンチに座ったままの姿勢で
そっと白杖の先を耳につけた
軽く足元を爪先で突くと、水溜りに触れたような
感覚ともに足元の『自分の影』が波打った
綾瀬「イン・トゥ・ザ・ナイト」
影の紳士が目の前に現れた
綾瀬「(始めましょうか、屋台街の影
それを利用して雑踏中の人々の心情を読み取る
少しでもヒントがあれば良いのですが……)」
綾瀬が、光のない目を閉じた────
今更ではあるが綾瀬は生まれた時から視力がない
そして人間というのは不思議なことに
五感のどこかが消失すると、
別の五感がそれを補うために発達する
耳が聞こえない代わりにあらゆる物を嗅ぎ分ける
指先の感覚はないが舌が鋭く敏感になる
果たして綾瀬凛藍は、失われた視力の代わりに
『聴力』が異常なまでに発達していた
そこにイン・トゥ・ザ・ナイトの能力の一つ
『触れた影の持ち主の心中を読み取る』を
行使すれば
『次どこ行く〜?』『わッ!ごめんなさい』『わたあめ食べたァい!』『これ本当に当たりあるのかァ〜?』『花火ってどこが見やすいかなァ』『安いよ安いよ〜隣よりなァ〜ッ!』『せんぱい……?せんぱいはどこに……?』『パパもう一回ッ!』『金魚欲しい〜〜ッ!』『私のとわけっこしよう』『めっちゃいいじゃん浴衣!』
綾瀬「(……………違う、これも違う、
この人の声も関係ない、この人も……ん?)」
『スタンドの攻撃だと思ってんだ〜』
『むむむ……スタンドの攻撃……?』
綾瀬「(いや……『スタンド』というワードが
気になりましたがこの声は恐らく
ヒバナと、スゥモアちゃんですね)」
綾瀬「(これは自分の『感覚』を信じていいのか
信じていいッ!というのなら、おかしい……
『見つからなすぎる』……遠隔操作
あるいは)」
その瞬間、綾瀬の脳裏に浮かんだのは、
親友、岸部露伴とのいつかの思い出話だった
強かった、ではなく厄介なスタンド……
だとしたら『ハイウェイ・スター』だろうな……
奴のふざけたところは、その強さの代償に
『近くにスタンドマスターがいない』ことだ
あとで承太郎さんに訊いたら珍しいがいたらしい
『強力さ』ゆえに、『スタンドが本体』という
遠距離自動操縦型のスタンドが──────
綾瀬「マスターが近くにいないスタンド………
もし、だとしたら、どうやって探せば……
…………いや、そうか、行けるッ!」
綾瀬が携帯を取り出した、
そして、巡回中だろう
焔森沙織に通話を繋げたッ!
焔森『綾瀬先生?』
綾瀬「事情は翠から聞いていますね?
ハビットを出してくださいッ!」
焔森『それは、えぇ、
ですがなんの『習性』を?』
綾瀬「私が屋台街の気配と声を聞き続けます
『習性』は、ハビットが感知できるのに
『足音がない者』、今回のスタンド、恐らくは
遠距離からの自動操縦型の可能性が高いッ!」
焔森『私のハビットと、
綾瀬先生のイン・トゥ・ザ・ナイトに『ズレ』が
生まれたら、そこにいるのに、そこにいない
つまり普通の人には見えないスタンド、なるほど
やってみましょう、ハビットッ!ゴーッッ!』
焔森が通話を切った
間髪入れず名舟翠に通話した
名舟『やはり、綾瀬先生からの通話でしたか
やりたいことは把握しました』
綾瀬「流石です、ではヒバナと合流して
お二人は見つけ次第直接追跡してください」
名舟『わかりました、お任せを』
綾瀬がまた、『聴き取り』に戻った
今度は気配と足音、提灯に照らされた屋台の影を
雑踏が踏み抜いていく
凄まじいまでの集中力を以て
綾瀬は夏祭りに来ている1000人を超える客たちを
一人一人感知していった
屋台街の中では焔森が、
ハビットを雑踏の間を走らせて
綾瀬からの指示を待っている、
その両側には名舟翠と早乙女火花が
いつでも駆け出せるように構えていた
その時だった、綾瀬が杜王神社のお社の
石段を降っている気配に気づいて、
他と同じように調べに入った
…………『足音』が『無かった』
綾瀬「…………ッ!?沙織ッ!
いま、お社への石段を下る人物に
ハビットをッ!」
ハビットが屋台街の屋根を颯爽と駆けていく
火花「すいすいッ!」 名舟「行こう」
ハビットを追って二人が駆け出したッ!
人を掻き分けて石段の下に二人が立ち止まると
既にハビットは、吠えかけながら
アナウンスをしていた
ハビット「記録スル、『石段ヲ歩イテクル者』
足音ガナイ、『習性』アリ
……目標ヲ、発見。」
名舟「じゃあ……あれが……!
あれが……?」
火花「スタンド………だよね?」
石段を一歩ずつ、一歩ずつ降りてくる人影は
独特のオーラと浮遊感があり
早乙女火花も名舟翠もハビット越しに焔森咲織もスタンドだと感じ取った
だが、その『スタンド』のビジョンを見て
困惑していた
その姿はあまりにも『人間』だった
背丈は12歳くらいの少女、
金魚柄の水色の浴衣から素足が見えている
顔はひょっとこのお面で見えない
手には左手に水風船を
右手に神楽鈴を持っていた
火花「この子が『スタンド』………?」
名舟「………ヨルシカ」
ヨルシカ『はい、マスター。間違いなく、
マスター達をこの日に閉じ込めた
『夏祭りのスタンド』とヨルシカは推察します』
二人とハビットに気づいた
『夏祭りのスタンド』がぴょんこぴょんこと
跳ねて喜ぶ、そして
二人の間を通って
夏祭りの雑踏へと駆け出したッ!
火花「あッ!逃げたーーッ!?」
名舟「追いかけようッ!綾瀬先生ッ!
もしもし聞こえますかッ!?」
綾瀬『はい、もしもし、見つけました?』
名舟「見つけましたッ!夏祭りの具現化みたいな
少女型スタンドですッ!人混みに逃げましたッ!
イン・トゥ・ザ・ナイトで
感知してくれますかッ!?」
綾瀬『お任せを………スタンドの気配を感知
匂いで伝えてすみません、
たこ焼き屋さんの前です』
ハビット『コノ距離カラ推察、黒穴ヶ丘商工会ノ
『たこ焼き屋』ダト提示』
火花「まだすぐそこだ〜〜〜ッッ!!」
名舟「ヨルシカッッ!!!」
名舟が重力に反して跳躍した、重量を抑えて
屋台街の屋根を全力で疾走するッッ!
火花「ごめん〜!あぁごめん通して〜!
待って〜〜ッッ!!」
夏祭りのスタンドの背中を火花が捉えた
だが生身の人間と、幽体のようなスタンドでは
人混みの中のスピードが違いすぎる
もうすぐ打ち上げ花火の時間、祭りの屋台街は
人でごった返していた
名舟「ヒバナッ!見つけたッッ!
ここから追いつくッ!」
綾瀬『もしもし、
金魚掬い屋さんの前を通ります』
火花「オッケイッッ!!ラビット・ホールッッ!
『逆噴射』だぁッッ!」
ラビット・ホール『ブラァッ!!』
ラビット・ホールが目の前の地面を殴る
巻き起こる爆炎が火花の身体を
斜め前方に打ち上げたッッ!
着地地点には夏祭りのスタンドが………
身を翻してかわしたッ!
火花「ふぎゃっ!!」
着地し損ねて火花が尻から床についた
火花「いたぁぁぁいぃ……」
夏祭りのスタンド『くふふっ』
火花「(笑った………?)」
そして、また夏祭りのスタンドが加速したッ!
綾瀬『そちらに行きます、入り口の大鳥居で
よろしいですね?』
名舟「はいッ!僕がまだ捉えています、
あとハビットもッ!」
名舟が屋台の庇をトランポリンのように
反動をつけて夏祭りの上空へと跳んだッッ!
ヨルシカが上手くエネルギーを減衰させて
姿勢を制御し
夏祭りのスタンドの前に着地したッ!
が、スタンドの小柄さゆえに、
わずかにすり抜けて走り去られたッッ!!
名舟「すばしっこい……ッ!いやッ!
そもそもスタンドのビジョンそのものが
小さすぎてヨルシカのお日様の光が
狙いつけにくいッ!綾瀬先生ッッ!」
人混みを抜けた、大鳥居の下
静かに白杖を支えに立つ
綾瀬凛藍が見えた……
綾瀬「イン・トゥ・ザ・ナイトッッ!!」
辺り一面の人々の影から一斉に杭が飛び出し
挟み込むように一瞬にして
夏祭りのスタンドを拘束したッ!
火花「すごーーーいッッ!?」
名舟「さすが綾瀬先生の
イン・トゥ・ザ・ナイト……」
綾瀬「さぁ、止まりなさい……
私たちは『明日』に
行かねばならないのですから」
夏祭りのスタンド『むむむ………』
夏祭りのスタンドがもがいている、
抜け出そうとしている、だが14本もの杭が
がっちりと全身を挟み込んでいた
その時だった
ドォォォォンッッッッ!!
わぁっ、と通りから歓声が上がる
パラパラと夜空が弾ける
打ち上げ花火が空に消えていった
まるで夏の夜の夢、遠い夢の中のような
幻想的な花火が咲き乱れる
綾瀬には見えないが、光が網膜を照らしている
そんな気がした
火花「……………しまった……ッ!!」
名舟が慌てて時計を見る、時刻は『21時』
『打ち上げ花火』の時間だった
周りからは人混みがどっと湧いている
若い男女、老いた男、学生達に親子連れが皆
空を見上げている
綾瀬は仕事も忘れてその暖かい祭りの空気を吸い
そして、誰かが呟いた
「ずっと今日だったらいいな……」
綾瀬「だめですッ!!………!?」
若い男女「ずっと今日だったらいいな……」
老いた男「ずっと今日だったらいいな……」
学生達「ずっと今日だったらいいな……」
親子連れ「ずっと今日だったらいいな……」
綾瀬が感じ取った、14本の拘束の外に
いやッ!14本の拘束を強行突破で抜け出した
夏祭りのスタンドが目の前にいると
感じ取ったッ!
綾瀬「ヒバナッ!翠ッッ!!やむを得ません
夏祭りのスタンドを抑えてくださいッ!」
「 ず っ と
今 日 だ っ た ら
い い な 」
二人が必死にスタンドと共に駆け出す
夏祭りのスタンドは大鳥居の階段から
背中から飛び降りた
満開の花火の海へと身を投げた
掲げた右腕には『神楽鈴』ッッ!!
『しゃあん』と
神楽鈴の音が聞こえた気がした───
ボーンボーンと綾瀬の部屋の時計が鳴った
綾瀬はゆっくりと光のない目を開いた、
そしてゆっくりと上体を起こした
屋敷の中は物音ひとつせず、誰の気配もなかった
綾瀬「……………」
綾瀬が枕元の時計を触る、
感触は『8時』を示していた、
そして電話が鳴っている、
着信音は名舟翠からだと示していた
綾瀬「もしもし、翠ですね……今日は……」
名舟『…………『8月11日』です』
綾瀬「そうですか…………もうどうしたら……」
名舟『実はさっき、ヒバナとも話したんですが
ヒバナが着地に失敗した時、
あの夏祭りのスタンドは笑っていたそうです、
まるで子供のように、楽しく、悪意もなく』
綾瀬「楽しく……悪意もなく………」
名舟『もしかしたら、あのスタンドの目的は
そんなに悪いものではないかもしれません、
例えば…………』
6回目の夏祭り
綾瀬凛藍、名舟翠、早乙女火花は
夏祭りの屋台街の中にいなかった
もう十分楽しんだことと、
この夏祭りを『終わらせるため』に
喧騒から遠く離れた石段の上、
杜王神社に来ていた
少し寂れかけたお社の賽銭箱の上に
『夏祭りのスタンド』が座っていた
綾瀬「ここにいましたか」
夏祭りのスタンド『ッッ!!』
火花「確かにね〜、ずっとスタンドの攻撃だから
屋台街の中でマスターを探しすぎて、
神社の方を探しに来てなかった〜」
夏祭りのスタンドが、綾瀬を見た、
どうしてここが?そう言いたげだった
綾瀬「発動のタイミングです、
もしあなたが悪意を持ったスタンドなら
ヒバナと翠が追ってきた時点で今日の朝に
戻せばよかった、なのにあなたが発動させたのは
花火が打ち上がった瞬間………」
綾瀬「ここで一つの仮説は、
『ずっと今日だったらいい』という
願いのエネルギーを『薪』として
時間を戻していると考えます、
すると今度はもう一つ疑問が出てきます
なら、『花火』がよく見える『大鳥居』の下で
最初から待っていればいい………翠、ヒバナ……
私の言いたいことがわかりますね?」
名舟「なるほど確かにそう挙げていくと
『悪意』を感じられませんね……」
火花「じゃあなに〜?ずっと、本当に『善意』で
『みんなの願い』のためにってこと〜?」
綾瀬「いいえ、
もっと、もっと『純粋』な………」
夏祭りのスタンドが
パッと賽銭箱から立ち上がった
綾瀬「『もっと遊びたかった』?」
ひょっとこのお面で顔は見えないが、
にっこりと笑ったように見えた
火花「な…………ッ……なぁ〜んだぁ〜〜ッッ!
それならそうと言ってくれれば
よかったのにィ〜!」
名舟「夏祭りのスタンドさん、
というよりマスターさん、
聞こえているのでしょう?
良かったら僕達と祭りを回りませんか?」
だが、マスターからの意思表示はなかった
代わりにひょこひょこと名舟のヨルシカと
火花のラビット・ホールの
片手を取って何度もジャンプした
まるで、感謝を込めているように
もう満足して帰る子供のように
そして、綾瀬に大きく手を振った
名舟「綾瀬先生、手を振ってくれています」
綾瀬がそれを聞いて子供にするように
小さく手を振ると
『夏祭りのスタンド』は、
煙のように消えていった─────
綾瀬「あ、そうそう、来年からは
あまり戻しすぎないでくださいね?
わかりました?」
応答はない、だがなんとなく大丈夫な気がした
綾瀬「…………さて、では改めて
『今年最後』の『夏祭り』を楽しむとしますか
スゥモアちゃんと、
咲織にも伝えなければですし」
火花「う〜ん!
やっぱりここ3人がいつメンだよね〜!
りらっち先生!美味しいリンゴ飴屋さんを
教えてあげる〜!」
名舟「そうだ、あっちのくじで家電が
当たるそうです、ちょうど屋敷にももう1台くらい
扇風機が欲しかったのでどうです?」
火花「え!ずるい!じゃあ私も!綾瀬屋敷に
金魚を買おうよ!金魚!」
名舟「お祭りの金魚って長生きしないぞ
たくさん捕まえたら1匹くらいならだけど」
火花「じゃあ、生き残ったらその子の名前は
サバイバーにしよ〜、それよりちょ〜かわい〜
ワッフルもあったよ!」
名舟「で、ではくじの次は射的に……ッ!」
綾瀬「わかりましたわかりました……
全部行きましょう、案内をお願いしても?
お金は私が出してあげますから
思い切り楽しみましょうね」
二人が年相応にはしゃいだ、
そして綾瀬の手を軽く引きながら
神社を後にしていった…………
ギリィッ………!
「せんぱい、
こんなところにいたと思ったら………
やっぱりヒバナ先輩と…………」
神社を囲む森の中、茂みの中から広瀬 一花が
姿を現した、あまりにも噛みしめすぎて
奥歯が軋み鳴った
見つめたスマホの画面には
「先約が入っちゃったからまた来年、
祭りを回ろう」という
名舟からのメッセージが入っており、
それを画面に穴が開きそうなほど
目を見開いて凝視していた
一花「先約っていうから、あの綾瀬さんかと
思った、またはこないだの刑事さんかと思った
でもあのヒバナ先輩だなんて、しかも何度も?
こんなに何度も夏祭りを繰り返してなお
私じゃなくてヒバナ先輩と………」
一花「泥棒猫………」
「おいおいおいッ!
今度はいいんじゃあねぇかってやつかァ?」
「何度も、夏祭りを繰り返した甲斐があったわ
まるでリセマラね」
「リセマラ、へへ、わかんねぇけど
エロい響きじゃ、じゃ、じゃァァァ〜〜ン?」
神社の鳥居に入ってきた招かれざる客は7人
一人境内に佇む広瀬一花に一直線だった
一花「…………だれ?」
「兄貴をしらねぇのか?」
「言葉に気をつけてくれよぉ、兄貴は怖いぜ?」
「逆らっちゃやーよ!!」
「ぐひ、ぐひひひっ!」
「オレは吾列(あがれつ)ってもんだ、
『スノビズム』の幹部候補ってやつだな
スタンド使いスカウト兼ッ!
お仕置きチームってやつだ」
吾列「まッ!スタンド使いってのは
超能力者みたいなもんさ、あんたはかわいいし
しかも才能があると見たッ!(しらねぇけど)
だから、カンユーってやつだなッ!」
一花「なら、他をあたって、
私はすでにもうそのスタンド使いだから、
いま私、すっっっっごく機嫌が悪いの、
わかったら早く『失せて』くれないかしら」
どよめきが上がった、一斉に吾列に視線が向く
吾列「う、せ、て、だとォォォ〜〜〜?
はい、オマエ、お仕置きケッテー
オレに逆らったのと、馬鹿にした罪でェ……
ん〜死刑ッッッ!!!!」
7人が戦闘体制の陣形を取った
広瀬一花が軽くため息をついた
吾列「言っとくけどオレたちはスノビズムの
スカウトチームッ!つまり、
全員が『スタンド使い』ってやつだッッ!!
どうする?ビビったか、ビビっちゃったかァッ!
今だったらまだ」
一花「…………早くして、来ないの?」
「『トラバサミのスタンド』ッ!」
「『針を放つスタンド』ッ!」
「『殺人虫を操るスタンド』ッ!」
「『水滴を司るスタンド』ッ!」
「『スコップを持ったスタンド』ッ!」
「『人形を戦闘させるスタンド』ッ!」
吾列「そしてオレがァッ!クレーンを連結した
スタンドッ!その名もッッッ!!!!」
ドォンッッッッッッ!!!!!
………一瞬、まるで時が止まったように
スノビズム幹部候補、"雑魚狩り"の吾列は
何が起こったか理解できなかった
やっと我に帰った彼が見たのは
『空中』を吹き飛ぶ、仲間の6人
ドサドサドサドサドサドサァァァッッ!!
吾列「あれ?」
広瀬一花は無傷、対する吾烈は
いつのまにかたった一人になっていた
吾列「えっ」
思考が鈍りまくる、今の状況が意味不明すぎる
判断があまりに遅れを取り、頭が働かない
そして"雑魚狩り"が次に行ったのは
吾列「じょっ……冗談ですやぁんッッ!
ま、まさか、本気で……やる、なんて……
ひ、酷いじゃ、ないですか?あは、あはは……」
無意味すぎる命乞い、だが今度は何かに掴まれて
吾列の身体が中空へと持ち上げられたッ!
吾列「なッ!なんなんだァァァッ!!
ス、スタンドのビジョンが
見えねェェーーッッ!!オッ、オレは今ッ!
『何』に
『何を』されてるんだァァーーーッ!?」
一花「言い遺すことは?」
吾列「ひぃっ……いや、違くて……
ほんと、冗談ってやつでッ!
み、みみ、見逃してくれたら、スノビズムの他の
奴らにも言わないっていうか、な?ほら?」
一花「言い、遺す、ことは?」
吾列「ゆ、許してく」
その高さから境内の石畳に叩きつけられたッ!
そしてもう一度持ち上げられた
一花「言い遺すことは?」
吾列「ごべんなざ」
その高さからもう一度石畳に叩きつけられたッ!
そしてもう一度持ち上げられた
一花「………言い遺すことは?」
吾列「………………が、ぶぇ」
一花がスタンド能力を解いた、
中空からボロ雑巾のように意識を失った吾列が
境内に落下した
アノネノネ「ヤッバぁ……あんた…………」
一花「またなんか来た……」
アノネノネ「いや、うちは違うからね?
たまたま通りかかっただけで」
アノネノネ「(うちがキングから預かってた
スカウトチームが一瞬でゲームオーバー……?
マジ?しかも………)」
一花はなんの気にも止めずに、
アノネノネを見ている、打ち上がった花火の光に
照らされながら、美しい髪が風になびいている
アノネノネ「(この際スタンドビジョンが
見えないのはもういい、
そんなのはたまに見る……じゃなくて
『同時に』、そう『順番に』じゃなくて
『同時に』6人が吹き飛んだ、
それがヤバいッ!)」
アノネノネ「(つまり同時に6発分の打撃ッ!
それも寸分の狂いのない一撃必殺ッ!
なんだこいつ……ッ!
なんのスタンドなんだ……ッ!?)」
一花「今のは観なかったことに」
アノネノネ「(こいつは……使えるッッ!)
せんぱい、ねぇ……
その力があれば奪えるんじゃ?」
一花「ふざけたこと言わないで、
そんなことしたら………せんぱいが悲しむ」
アノネノネ「ふぅ〜ん?
ねぇ、うちが力を貸してあげようか?
あんたの願いが叶えられるように、
その『スタンド』の使い方をッッ!!」
一花「スタンド………?なんでその名前を……
はっ!?」
と、一花の頭にあの脳のUFOがッ!
触手を取り付かせたッッ!!
アノネノネ「一手ッ!遅れたねッッ!
もう遅いッ!シークレット・コマンド・トゥ
ビカミング・ハッピーッッ!
これであんたはうちのものだッ!
幸せにしてあげるッ!」
広瀬一花が膝をついた、必死に引き剥がそうと
こめかみに両手をやるが離れないッ!
一花「あぁぁッ!あああああッッ!!
いやぁああああああああああッッッ!!!!」
一花「(せんぱい、せんぱい……ッ!
せん、ぱ………い…………ッッ!)」
アノネノネ「安心しな、安心しなよ………
これであんたは、このアノネノネの
こんな、
使わなかったらゲーマーの名が廃るッ!」
一花「翠………せん………ぱい………」
一花の瞳から、光が消えた────
大鳥居の下では、
やっと安心して見れるようになった
綾瀬凛藍、名舟翠、早乙女火花の3人が
打ち上げ花火を見ていた
と、名舟がブルっと身を震わせた
綾瀬「ん?寒いですか?翠」
名舟「いえ、なんか悪寒が、それよりも綺麗です
綾瀬先生が観れないのが残念です」
綾瀬「音でわかります、さぞ綺麗なのだと
………あの夏祭りのスタンドのマスターも
楽しんでいるでしょうか」
火花「誘ったのに消えちゃうんだもん〜!
どんな人だったのかな、
遠距離から操作してたって話でしょ〜?」
綾瀬「夏祭りに来れなかったか、
あるいはずっと来たかったか、
それか案外どこかで観ているのかも
知れませんよ?」
名舟「だといいですね………!」
その日の深夜、屋台街も片付けられ
人っ子一人消えた杜王神社、
その暗くなった社の賽銭箱に
『夏祭りのスタンド』が一人で座っていた、
満足そうに夜空を見上げると
スゥゥッ………と消えていき、
ほんのわずかに開いていた本殿の扉が、
ピシャリと閉じた。
To be continued………
[ジッタリン・ジン]
【破壊力-/スピード-/射程距離-/持続力-/
精密動作性-/成長性-】
顔をひょっとこのお面で隠し、
金魚模様の水色の浴衣を纏い、
片手に水風船を持ち、もう片手に神楽鈴を持つ
12歳くらいの少女姿の杜王神社夏祭りに
現れた正体不明のスタンド
大勢の人々の絶大な願いのエネルギーを
薪として、神楽鈴の音色と共に
本当にそれを引き起こす
今回は「ずっと夏祭りの日でいて欲しい」
という祭りの人々の願いを叶え続けた
結局最後までマスターは不明のままである
神社にいたということから、あるいは……?
由来は日本のロックバンド、
モチーフはその名曲「夏祭り」から