早乙女火花は、幼い頃から賢かった
暗い部屋の中で生きて
何も食べない日も何日もあり
母が口を聞いてくれないことも
父がいない環境も全て幼心に理解していた
自分は、『望まれて生まれた子ではない』ことを
早乙女火花は理解していた
母は自分に手を挙げるような度胸はなかった
自分を捨てるような勇気もなかった
だが、育てる気力もなかった
テストで良い点を取っても
運動会でいい成績を取っても
元気よく家に帰って来たとしても
母から返答を聞かされたことはなかった
母がご飯の度に外に出かけていくのに対して
自分は何日か前のご飯と水道の水
雨漏りする自分の部屋、使い古した服
泣く気力も、怒る気力もなかった
感情を表に出したら
『自分は愛されていない』と自覚してしまうから
だから唯一、学校が楽しみでたまらなかった
席に着いた瞬間に、顔を覗き込まれた
猫目に、猫のようなかわいい口元
早乙女火花の中学に入ってからの大親友
「解剖 好(かいぼう このみ)」だった
〔第21話 NOを空振った愛の中で〕
好「おっはァ〜!元気してるぅ?ヒバナ」
火花「学校来たからちょ〜元気してるよハオ!」
好「いいじゃんいいじゃん、ハオハオって感じ〜
でさでさ、新しいサマンサ・タバサの
コスメ見た?
って見れるわけないか……これ!」
好が隠し持っていた雑誌を火花の机の上に広げた
火花「わぁ〜!私、これかわいい〜!」
好「でしょ〜?ハオもそう思う〜!
今度持ってくるからヒバナを可愛くさせてよ〜!
あっ!てかさぁっ!前から思ってたんだけど
ヒバナも一人称これにして見れば?」
火花「これ?どれのこと……?ハオ?」
好「そ!自分のことを自分の名前で呼ぶんだよ!
ま〜ヒバナは色々あれかもだけど、一応?
『名前』ってのは一番自分を示すからさァ〜
だから、ハオ先生からのカワイイ講座〜!
自分のことを自分の名前で呼んでみよ〜!」
火花「わた……ヒ、ヒバナ、だよ……
これ恥ずくない!?」
好「のぅのぅ!りぴーとあふたみー!
『ヒバナだよ〜!』はいっ!!」
火花「ヒバナだよ〜……!よろしく〜……!
うぅ………ッ!」
それを聴き届けると解剖好は早乙女火花の
両頬に手をやるともみくちゃにした
好「はいカワイイ!
ヒバナチャンカワイイヤッター!」
ボスゴリラ「おいおい、最近色づいてるかと
思ったらまたいい女になったか?火花ァ〜ッ!」
好がうんざりした顔で声のした方へ向いた
坊主頭に190cm、体重105kgの大柄な男子
その鍛えた肉体から『ボスゴリラ』の異名を持つ
クラスの女子の嫌われ者が男子生徒たちを率いて
声をかけて来た
ボスゴリラ「で?いつになったら、
俺のモノになってくれるんだァ〜〜ッ!?」
火花「ハオ、行こう」
好「そうだね〜……」
ボスゴリラ「おいッ!無視すんのか?
オラァッッ!」
ボスゴリラが近くの空席を殴り上げたッ!
そのまま空の机はあり得ないくらい跳ね上がって
天井の蛍光灯を粉砕した!!
男子生徒「出た!ボスゴリラさんの
マウンテン・アッパーッッ!!」
男子生徒「ボスゴリラさんはこの技ひとつで
ヤンキーボーイ・ヤンキーガールの
幹部になったんだぜッッ!」
ボスゴリラ「俺のモノにならなかったら
仕方ねぇ、
そのカワイイお腹ちゃんにこれだぞ?」
火花が気圧された、
だがすかさず好は火花の右腕を掴んで教室の外へ
逃げ去っていった
屋上まで逃げ込んで来た2人が
そのままフェンスに寄りかかった
好「はぁ……はぁ……ここまで来れば……
ヒバナ体力あるよね〜!?」
火花「まぁ……私……ヒバナ小さい頃から
運動だけは頑張ってたから……
ところで、いつも思うけどハオ、
なんでこうやって守ってくれるの?」
好「なんで?なんでって……
うちらはズッ友じゃん?友達は友達を守るのが
当然っしょ?そ、れ、に〜〜〜ッッ!」
好「ムカつく〜〜〜あのボスゴリラ〜〜ッ!
人より力あるからってさぁっ!
ヒバナがカワイイからってさぁっ!
力にモノに言わせてヒバナを
自分のモノにするとか最ッ低ッ!
だからハオ、あれ本当に許せない!」
火花「ふふっ………」
好「え?なに?」
火花「『あれ』呼ばわりなのが面白くて」
好「いやあんなん、『あれ』だよ!
ただのデカい置物!」
火花「ふふっ、ふふふっ……!」
好「えぇ……よくわからないツボ……」
火花「ハオ」
火花はそう大親友の名を呟くと
優しく抱きすくめた
好「ちょいちょいちょい何!?」
火花「いつもヒバナの代わりに怒ってくれて
本当にありがとう、ハオに何かあったときは
ヒバナが守ってあげる、せめての恩返しだよ、
だってハオとヒバナは」
好「分かってる、
うちらは、
……………ズッ友だよ!!」
女子生徒「ヒバナちゃんッッ!!ハオちゃんが
ボスゴリラに
トイレに連れていかれちゃったッ!」
火花は泣きそうなクラスメイトの
その報告を聞いたとき、全身が凍りついたように
動けなかった、あの屋上で約束した日の
わずか数日後のことだった
火花「な、何階の何処……?」
女子生徒「2階の男子トイレ……ヒバナちゃん
1人で来いって……先生をいま呼びにいって……
ヒバナちゃんッッ!!」
早乙女火花はもう駆け出していた、
焦り、怒り、恐れ、悲しみ、あらゆる感情で
頭の中が鮮明になっていった
『行って』『助ける』その一心だった
火花「ハオッッッ!!」
………男子トイレの中は静まり返っていた
ただ、一番奥の個室トイレの扉が
不自然に蝶番が外れて壊れていた
火花が恐る恐る、個室の前に立った
………そして絶句した
便器に解剖 好が、親友が座らされていた
思わず咄嗟に服を改める、脱がされた跡はない
ただワイシャツの腹部分は殴られた衝撃で捩れて
自慢の金髪のセットは握られて
ぐしゃぐしゃだった
目はぎゅっと瞑られて気絶していた
火花「ハオ───。」
ボスゴリラ「思ったより早かったなぁッッ!!」
火花「ぶはっっっ!!」
火花が振り返るのが遅れて
まともに頬にボスゴリラの拳が入った!!
よろけて便器に座る好に思わず縋りかかった
ボスゴリラ「まぁいい、好か火花、
どっちから先にヤってもいいが、どっちにせよ
目の前でやってやろうかと思ってたんだ」
男子生徒「俺たちにもくれよ〜!」
男子生徒「その前にお仕置きですよね
ボスゴリラ!」
火花が、ゆっくりと立ち上がった
生まれて初めての感情が心の中に渦巻いていた
圧倒的な『殺意』
『地獄の業火』のような怒りが、
『ダイナマイト』のように爆発しそうな殺意が、
火花の心の中に灯り、否、燃え上がり始めていた
友達は守る、でも守れなかった
だから目の前の敵を、必ず殺してやると
火花が振り返ったッッ!!
火花「うあああああーーーーッッッ!!」
火花の渾身の拳は意表をつかれた
ボスゴリラの頬に刺さったッッ!
ペチ。
ボスゴリラ「ぶっははははははッッ!!
そんな、『ラビット』みてーなパンチで
俺をどうこうできると
思ってんのかあああーーッ!」
ボスゴリラが拳を繰り出した
ボスゴリラ「パンチってのはこうするんだ
クソビッチがァァァーーーーッッ!!」
だが、火花はそれを髪を散らしながら
ダッキングしてかわすと、もう一度殴った
………結果から言うと、早乙女火花の拳は
すかしてしまって届かなかった
そう、『早乙女火花』の『拳』は。
ボッギュアァァァァァッッッ!!!
ボスゴリラ「ぼぶぇ?」
ボスゴリラの頬にダイナマイトが括り付けられた
黒い拳が、のちに火花が『ラビット・ホール』と
名付ける悪霊が、代わりにパンチを入れたッ!
ボスゴリラが仰反るッッッ!
口から5.6本の歯がぶち折れて吐き出された
両耳と両鼻から激しい出血ッッ!!
首あたりがコキンと鳴った
顎がボギィッ!と嫌な音がした
頭蓋骨からミシミシッとしてはいけない音がした
両足が床から離れた、
そして
ボスゴリラ「ぶぎゃらばああああああああああああああああああああああーーーーーーーッッ!」
そのまま背後の小便器を粉砕して
トイレの壁にボスゴリラが
めり込んだッッッ!!!
男子生徒「おお、やるじゃねぇかッ!
これで完全に怒らせちまったなああーッ!」
男子生徒「へっへ、やっちまってください
ボスゴリラッッ!」
ボスゴリラ「…………………。」
男子生徒「あれ?どうしたんで?
早く立ってこいつを……」
ボスゴリラのズボンから生暖かいのが漏れて来た
男子生徒「な、何やってんだよボスゴリラ
1発目だぞッ!まだ1発目なんだぞおおおッッ!
あんたが、そんな簡単に」
早乙女火花が、個室から出て来た
目が完全に復讐の炎に燃えている、
オーラは火災を纏っているかのよう
まるで、『地獄の鬼』そのものだった
次は『2人を殺す』、そう目が言っていた
男子生徒「お助けェェェェーーーーッッ!」
男子生徒「おがぁぢゃああああああんッッ!!」
2人の男子生徒はもんどり打つようにして
トイレから逃げ出していった……
火花が肩から息をしながら好にひざまづいた
優しく声をかけると、好が目をゆっくり開いた
火花「良かった、気がついた……ハオ───」
そしてこの時、あまりの痛みと苦しみから、
早乙女火花だけでなく、
解剖好本人も今も苛み続ける答えをしてしまった
好「…………『来るのが遅いよ』」
火花「……………ッッ!!」
火花が、その場で両膝をついた───
そして火花の苦しみはまだ続いた、数日後、
早乙女家に警察がやって来た
火花の母「あの………?何かありました……?」
焔森「警察です、早乙女火花さんはいますか?
『暴行障害』により事情聴取を」
どう考えても身から出た錆のトイレの事件
だが、ボスゴリラは早乙女火花が一方的に
自分と解剖好を殴って怪我させたと先に訴え
学校も警察もその方向で検挙に動いた
警察に両脇を固められて、早乙女火花が
杜王地方裁判所の証言台についた
何か判事と検事が言っていた気がする
ほぼ無意識で名前と誕生日を答えた
乾き切った目で、判事席を見上げると
………盲目の女性判事が見えた
綾瀬「被告人は当法廷において、
答えることも答えないことも出来ます
しかし被告人の発言は不利なことも有利なことも
全て証拠となりますのでご注意ください
では、被告人。今、検察人が言ったのは
間違いありませんか?」
火花がじっと判事の綾瀬凛藍を見つめる、
両目から涙が溢れて来た、
とめどなくとめどなく流れて止まらなかった
金宮「綾瀬判事……被告が……
一度休廷しますか?」
姫乃「一度落ち着くまで待てますわよ?」
綾瀬「いえ……早乙女火花さん
当法廷は貴女の罪を断じる場所ではなく
証明する場所です、本当に貴女に罪があるかを
決める場所です、答えていただけますか?」
火花「私……は、悪くありません……」
綾瀬「わかりました、
では改めて審議を再開しましょう」
閉廷したのち、案の定母は迎えには来なかった
火花はふらふらの足取りで家の玄関を開いた
ビシャアッッ………と、花瓶の水が頭から
掛けられた
顔を上げると鬼のような形相の母がいた
火花「わ、私を怒るの……ママ……?」
火花の母「なんで迷惑かけんのママに!?
なんでこんな面倒なことしたのよ!!ねぇッ!」
火花「だ、だって……私、は……」
火花の母「はァァァ〜〜〜ッ!
……お前なんて、
『生まれてこなければ良かったのに』」
その日から、火花はもう何もかもを諦めた
判決の日が来ても心の中は真っ白だった
手錠に繋がれても、証言台に立ってもなお
火花は心は虚無そのものだった
綾瀬「では被告人は前に出てください。
被告人早乙女火花、
『水谷太世に対する暴行障害事件について』
次のとおり判決を言い渡します」
火花「はい。」
綾瀬「主文───被告人は、『無罪』」
火花「はい。
…………えっ?」
綾瀬「判決文を読み上げます、
当案件は正当防衛が成り立つと立証され………」
火花「待って、待ってくださいッ!
私、無罪……ですか?」
綾瀬「はい、では被告人の再応答により
もう一度主文から読み上げさせていただきます
主文────」
ボスゴリラ「ざっけんなよッッ!」
ボスゴリラこと水谷太世が傍聴席で
前の席を蹴ったッッ!前の席にいた名舟翠が
迷惑そうに飛び退いた
綾瀬「傍聴席、静粛に願います」
ボスゴリラ「なんでだよ俺はこんな目に
遭わされてるんだぞォォォーーーッッ!」
綾瀬「時折間警備員、退廷させてください」
時折間「へい」
その後は半ば呆然と、
綾瀬判事の判決文を聞いていた
言葉が難しくて何もわからなかったが
ただ、なんとなく初めて
「自分は悪くなかった」と
納得させることが出来た
お礼を言いたい、どうしても直接言いたい
だって凄くかっこよかった、
今まで見たどんな女性よりも壇上の判事は
『綾瀬凛藍』はかっこよかった
もしかしたら有罪の人間かもしれないのに
泣いてしまった自分にも優しかった
怯えることしかできなかったあのボスゴリラの
怒号に対して一歩も引かなかった
どうせ母は迎えには来ない、
だから迷惑と知りつつも火花は裁判所の裏で
綾瀬判事が出てくるのを待っていた
綾瀬「ん?どなたがいますか翠?」
名舟「今日の公判にいた、早乙女さんかと」
早乙女火花は、こんな時のお礼の仕方を知らない
だからもう精一杯だった、
両膝をついて額を地面につけた
火花「ありがとうございます、綾瀬先生」
綾瀬「ふふ、罪が無かったのは貴女の方ですよ
………お腹、空いていませんか?
今からこの助手と少し遅めのランチタイムでして
早乙女君も一緒に来ませんか?」
火花「で、でも私、お金なんて……」
綾瀬「何を言いますか、お金を出すのは私です
大人ですから、子供の心配事ではありません
だからご心配なく、来ますか?」
火花「行きます!でも、あの、何処に……?」
名舟が扉を開いた、綾瀬とその後ろから
おどおどしながら火花が
レストラン「トラサルディー」へ入った
トニオ「いらっしゃいまセ!
おお、アヤセさん!今日は3人ですカ?」
綾瀬「えぇ、この子に、
とびっきりのイタリアンを振る舞ってください」
火花「あ、あの、メニューは……?」
トニオ「『メニュー』?『献立表(リスタ)』の
ことですか?そんなものウチにはないよ……」
火花「ない?じゃあ、どうやって……」
トニオ「ワタシが、アナタに会った料理を
振る舞いまス、チョット待ってテ」
そういうとトニオ・トラサルディーが
厨房に入っていった
名舟「ここの料理は最高だよ、僕も好きだよ
だから安心して、あ、僕は名舟翠(なふな すい)
綾瀬さんの助手をしているんだ」
火花「翠(すい)………」
トニオ「お待たせしましタ!
『アクアコッタ』ッッ!栄養満点だよ
冷めないうちに召し上がってくださイ!」
火花の目の前に湯気が立った、
パンが浸された野菜満載のスープが運ばれて来た
火花はそれをぼーっと眺めていたが
ゆっくりと、スプーンで一口運んだ
トニオ「アッ!熱いから気をつけテ……」
火花「温かい………くっ………ううっ……」
火花が二口目を運んだ
火花「温かい、温かい、温かい温かい温かいッ!
スープが凄く優しい、優しい味がする
うぅっ、うあああっ………ひぐっ、
ひっぐっ
うあああああああああああああああああん!!」
そして、両目から決壊した滝のような涙を流した
気づけば叫ぶように号泣していた
綾瀬がトニオに耳打ちする
綾瀬「(目の治療を?)」
トニオ「(イイエ、このスープにはまだ
『パール・ジャム』はいれてまセン
あの涙は、『本物』ですヨ)」
綾瀬「そう、ですか………」
トニオ「アヤセさん、今日の代金は頂きません
ダカラ、好きなだけ振る舞ってもいいですカ?」
綾瀬「そんな、申し訳ないですよシェフ」
トニオ「イイエ、いいんですヨ、
………もう、最高の代金を頂きましたカラ」
トニオはそういうとまた厨房に入って行った
今度はちらりと皿の先にパール・ジャムが見えた
トニオ「『フィレンツェ風ビーフステーキ』ッ!
デザートが欲しい時は言ってくださいネ
料理はまだ続きますよ」
早乙女火花は運ばれてくる料理を一心不乱に
食べ続けた、涙が止まらない、
どれだけ食べても、どれだけ拭っても
涙が止まらない、ふと顔を上げると
『綾瀬凛藍』が頬杖をついて
ニコニコも笑っていた
目は見えていないはずなのに、瞳に光はないのに
早乙女火花はその顔を見た時、胸が高鳴った
その顔はあまりにも美しかった
あぁ、そうか──
この人こそが、私の『導き』なんだ
私は、ずっとこんな人に出会って、
憧れたいと思いたかったんだ。
……
…………
………………………
火花がスリープ・トーク・メトロポリスの
夢の中で食卓の椅子を蹴って立ち上がったッ!
火花の母「ヒ、ヒバナちゃん?」
火花「ごめんけど、やっぱり………
不味いかなこの『料理』〜ッ!」
火花「あの日食べたイタリアンに比べたら
こんなの食材に失礼だよ〜、
何が言いたいかっていうと〜わかるママ〜!?」
火花の母「わ、わからないわ
ヒバナちゃん……?」
火花「『消えろ』って言ってんだよ〜?
ヒバナ、こんな夢さっさと目覚めて、
りらっち先生を助けに行かなきゃ
行けないからさ〜」
火花の母「な、なんで?
ママのことどう思ってるの?」
火花「最悪のカス親、あ、でもでも?
一つだけ感謝しなきゃいけないかな〜?」
火花「私のことを産んでくれてありがとう
ヒバナは夢から覚めるね、さよなら
………ママ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
シャロン「かっはっ…………ッッ!?」
シャロンの白い首が、目覚めた火花の両手に
ガッチリと掴まれていた
火花「おはようシャロン〜、
早速だけど死んでもらおうかな〜?」
シャロン「どう、いう、こと……!?
なんで、ワタシの夢か、ら……ッ!?」
火花「言ったよね〜、『起きたい』と
願えば『いつでも起きれる』って
本当にサイアクの悪夢だったから、
お別れして来ちゃった〜」
シャロン「スリープ・トー………ッ!」
火花「遅い。」
ラビット・ホール「ブラァッッ!!」
シャロン「ぎゃっっっ!!!」
S.T.Mの蝶の群れの中の輪郭の顎に
ラビット・ホールのアッパーが炸裂した
シャロンが口から血を吹き出してのけぞり倒れた
シャロン「待ってッ!
ヒバーナだけでどうするつもりなの?
他3人は夢の中です!!」
綾瀬「イン・トゥ・ザ・ナイト」
と、シャロンの胴体に四方から伸びて来た
影の触手が何本も巻き付いたッッ!
綾瀬「ヒバナ、信じていました
やはり君が一番早く目覚めるだろうと
おはようございます、ヒバナ」
火花「おはよう〜!りらっち先生〜!
でも、先生はどうして?」
シャロン「そ、そうッ!わからないッ!
どうして、アヤセ起きてる!?」
綾瀬「………私には『幸せな夢』などありません
父と母の声が聞こえましたが、あの2人がもし
生きていたら、私はこの街で判事はしていない
父と母の死で、私は『前進』したのですッ!
幸せはこれから私の手で掴みますッ!
掴んで見せるッッ!」
シャロン「でもまだ2人は………ッ!」
火花「シャロン、もう無理だよ……
操られているとはいえ、わかってるでしょ?
この能力の弱点にして、最高の利点を」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
名舟「…………そろそろかな」
名舟の父「ん?翠、どうかしたか?」
名舟が静かに、食器を置いた
名舟「父さん……今の僕の服装どう?
これが似合う自慢の娘になった?」
名舟の父は……にっこりと笑った
名舟の父「あぁ、何処に出しても恥ずかしくない
自慢の俺の娘だ」
名舟「そっか、僕、もう行くよ、
だから一つだけ返してくれる?」
名舟「行って来ます、父さん」
名舟の父「あぁッ!どーんと行ってこいッ!
がっはっはっはっはっ─────」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
時折間「レイ、名前はどうせ
目覚めたら忘れちまうんだろうが
これだけは言わせてくれ」
レイ「なぁに?」
時折間「俺は………ぐずっ………
俺はァッ!
お前を守れなかったし!
お前を死なせたし!お前に何も言えなかったし!
お前をこんな目に合わせちまったァッ!
最低最悪の腰抜け野郎だ!!
大馬鹿野郎だ!!大間抜けの時折間玄だ!!
だけどなァッッ!!!」
時折間「今でもずっと、お前を愛している」
レイ「…………わたしもだよ、ゲンくん」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
名舟翠と時折間玄が目覚めた
シャロン「!!?!?」
綾瀬「……『幸せな夢』を見せるスタンド
しかし、その弱点を言うのなら
貴女の『幸せな夢』は『完成度』が高すぎる
迷うものには、答えを
悔いるものには、やり直しを
望むものには、続きを
求めぬものには、安らぎを
『夢』として与えてしまう」
火花「シャロンらしいね〜、誰よりも優しい
攻撃に悪用するスタンドじゃないよそれ〜?」
綾瀬「だから、今度は貴女が眠る番です
優しい君に、目覚め直しなさい………火花」
火花がずいっと前に出た
シャロン「まだ、まだッ!もう一度眠らせるッ!
まだ負けてないッッ!
スリープ・トーク・メトロポリスッッ!!!」
シャロンの背後から無数の蝶たちが
火花へと襲いかかったッッ!
シャロン「一羽でも触れたらおやすみなさいッ!
貴女のま……け………」
火花が、シャロンの足元にいた
シャロン「!?」
火花「何度眠っても、起きればいいんだよ〜
だって私、『現実』の方が楽しいしッッ!!
ラビット・ホールッッッ!!!」
ラビット・ホール「ラァ〜〜〜ッッ!!
ブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブッッ!!
………ラブ・イズ・オーバー(ウンザリよ)。」
ドギャアァァンッッ!!
シャロン「キャアアアアアアッッッッ!!!」
シャロンが吹き飛んだ、そしてその先で
綾瀬が影で作った両手でキャッチしてあげた
シャロンの瞳に碧眼らしい綺麗な光が
灯ったかと思うと、そのまま失神した………
名舟「………?玄さん、泣いてるんですか?」
時折間「泣いてねぇッッ!!なんかでも
涙が出るんだよッ!
悲しい夢を見てたのかなァ〜〜ッ!?」
火花「玄おぢ、ハンカチいる?」
時折間「だから俺はまだ25だァァ〜〜」
綾瀬「あはは………それより火花、翠
流石に着替えましょうか、私も着替えます
玄君はほら、リビングでシャルロット君を
観ててあげてください」
綾瀬はそういうと優しく、シャロンを
ソファーへと寝かせてあげてから
名舟、火花と共に二階へと上がって行った
数分後、3人がリビングに降りて来た
綾瀬凛藍は黒いドレスのような部屋着
名舟翠は父からもらったベストとスーツパンツ
早乙女火花は胸下でシャツを結び、
パーカーを袖だけ通したラフな格好になっていた
綾瀬「異常はありませんか?」
時折間「へぇ、何も」
名舟「もうすぐ夜明けですね………」
火花「まぁ寝れたからいっか〜!」
名舟「寝れた判定でいいのかあれ………?」
ピンポーン♪
インターホンが鳴った
綾瀬「こんな時間に?はい〜!」
ピンポーン♪
綾瀬「起きてますよ入ってください」
ピンポーンピンポーン
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピン
火花「なになになに!?怖いよ〜!?」
「あはっ……やっぱり………
ここにいたんだ火花先輩」
火花「え?ヒバナ?すいすい、誰だろ……
どうしたの顔真っ青だよ?」
名舟「なんで、この時間帯に君がここに居る?」
綾瀬「それはどういう……」
その時だった
『緑銀の糸』が十本、百本!
千本ッ!玄関ドアの縦横の隙間から
這い伸びて来たかと思うと瞬く間に
玄関ドア周りの壁に張り巡らされたッ!
次にドアそのものにも
無数の緑銀の糸が巻き付いた
時折間「おいおい気持ち悪いな!?
なんだこのスタンド!?糸か!?糸操作か!?」
火花「待ってこれ………
『髪の毛』?」
バゴォッッッ!!といとも容易く、
まるで古びたボロ雑巾のように蝶番ごとドアが
引きちぎられたッッ!!
名舟「………このスタンドの名は、
『ウィンド・イン・ハー・ヘア』
その使い手は………」
ボロボロの木片となったドアの残骸の向こうは
ちょうど夜明けだった、夏の朝の風に吹かれて
緑銀の長髪をなびかせた少女が
太陽を背に、立っていた。
一花「あっはっ!おはようございます!
先輩に付く悪い虫どもを私が駆除にしきました!
せ・ん・ぱ・い?」
名舟「広瀬……一花…………ッッッ!!」
To be continued……
[スリープ・トーク・メトロポリス]
【破壊力-E/スピード-E/射程距離-E/持続力-A/
精密動作性-E/成長性-E】
持続力以外がEという振り切ったステータスを持つ
北欧の夏至祭のような薄汚れた麻布のドレスを
身に纏う少女型のスタンド、
だがその頭部は顔が見えないほど夥しい数の
青い蝶々が舞っており
美しくも得体の知れない気味の悪さを感じさせる
攻撃の回避、物陰へ隠れるなど独立思考を持つ
無数の青い蝶に1匹でも止まられると
強制的に眠らされて夢の中に落とされ
『その人が望む幸せな夢』を見させられる
しかも夢を見させられながらも「これは夢」と
はっきりと自覚こそする
実は、本人が起きようと望めばいつでも
起きられるものの、夢の中で味わされるのは
『叶わなかった幸せ』そのものであり
夢だとわかっていながらも中々起きられない
元ネタはMiliの楽曲から