杜王町には高校が『3つ』ある、
一つはかつてジョースケという
伝説のヤンキーがいた「私立ぶどうヶ丘高校」
一つは毎日どこかしらの窓ガラスが割れる
血気盛んな「市立支倉高校」
そしてもう一つは、杜王町唯一の女子高校
その活気と華々しさから人呼んで
アオハル高校こと「私立斉唱四角学園」
その屋上、入道雲が見える青々とした空の下、
飛び降り防止のフェンスに寄りかかりながら
3人の女子高生が持ち寄った弁当を食べていた
火花「それ美味しそうじゃ〜ん、あーにゃ
どこで買ってきたの〜?」
裁判所の騒動から数日後、平日の学校の昼休みを
満喫する早乙女 火花が隣に座る不機嫌そうな顔の
金髪の同級生、尼丸 亜丹(にまる あに)に
話しかけた
亜丹「オーソンが新しく出したスイーツだって、
コンビニのクレープっていうから
期待してなかったけど、まぁいいんじゃない」
と、火花が横から断りもなく亜丹の手に持つ
クレープの先を咥えた
亜丹「は?ちょっ……」
火花「ん〜?うん……美味しいじゃーん!」
紗良「いや、ひばちゃんに隙与えちゃだめじゃん
こいつは油断も隙もないからさぁ〜」
その火花を反対側から金髪を団子にした
切れ目の少女、満田 紗良(まんだ さら)が
にやにやと笑っていた
亜丹「なんかちょうだい、ひば
じゃなかったらあんたの弁当から一つ奪う」
火花「わぁ〜?ヒバナこわ〜い!
バランあげるね」
紗良「あはっ!それ食べられなくね?」
火花「うそうそ!唐揚げあげるね」
亜丹「許した」
と、火花がそんなやり取りをしていた中
唐突にグイッと紗良に顔を寄せた
紗良「わっ!な、何?」
火花「ねーぇ、さりー?
………なんか『隠して』ない?」
紗良「は、え?な、なんの話マジで?
あーし、なんも……」
火花「じゃあ、訊き方変えるね?なんか、
ヒバナに『訊きたいこと』あるんじゃない?」
紗良「ちなみになんで?」
火花「んー?いつもよりもさりーのトーンと
テンションが低いし〜、なのにヒバナのこと
ずっと見てるから〜?」
紗良が、サンドイッチを置いた
紗良「ひばちゃんってさ、『法律』詳しい?」
火花「あやっち先生のところで働いてるから
ちょっとってとこかな?なんでぇ?」
紗良「ひばちゃん、あーにゃ、
あ、あーしさ……最近……
『ストーカー』されてんだよね」
亜丹「ん?」
火花「…………………………は?」
〔第三話 ラビット・ホール〕
亜丹「もうなんかされたのか?」
紗良「まぁ、そんなところ」
火花「どこで接点が〜とか、なんというか
あれがきっかけだろうなみたいなのあるぅ?」
紗良「たぶん、バイト先かな?」
亜丹「サンジェルマンか、私もよく行くし
あんたが働いてるところにも行ったことあるが」
紗良「そこにさ一人、気になってるおっさんが
いるんだよね、いつもキッショいTシャツに
ジャージズボンのギったおっさんがいてさ
なんつーか……」
紗良「敢えてあーしのレジに来たり、
釣り渡す時にあーしの手を握ってきたり、
なんかキショいんだよなー、
くっさいからか蝿の羽音もするし」
亜丹「そいつじゃね、私、通報しようか?」
火花「う〜ん、ストーカーってさ?
ちょ〜っと面倒でね?大体、実害がないと
警察も動けないんだよ〜」
紗良「はぁ!?あーしが、実際に
被害に遭わないとってこと?」
火花「落ち着いて〜?他になんかある?」
紗良「あとは、帰宅するときに
その……後ろから息遣いと足音がするっていうか
たぶん、うちの家知ってるんだよね……」
亜丹「気持ち悪ぃな、でもそいつかどうかは
わからないんだろ?」
紗良「そうなんだよね〜……」
火花「……一応、放課後に警察に行ってみる?」
紗良「ひばちゃんならもしかしたらってこと?」
火花「そう、あやっち先生の助手でもある
ヒバナがいるからもしかしたら、
監視を増やすくらいはしてくれるかもよ〜?」
と、予鈴が鳴っているのが聞こえてきた
亜丹「とりあえず教室に帰るか」
紗良「じゃあ、放課後……吹部の練習終わったら
校門でいいカンジ?」
亜丹「わかった、バレー終わり次第行く」
火花「じゃあヒバナは図書館で
時間潰してるね〜?」
3人はそう打ち合わせると立ち上がって
屋上から出て行った
放課後、杜王警察署、生活安全課室
「えーとっ、はい〜っ、生活安全課のっ、
初替(はつかえ)ですっ、本日はっ、
なんのご用でっ」
紗良「あっ、えっと…‥最近、あーし
『ストーカー』っぽいの、受けてるっつーか……」
軽くため息をつきながら、
太々しく軽やかに男性警官が答えた
初替「ではですねっ、手紙やっ、
はいっ、傷など実害はありますかっ」
紗良「えっ……いや、そんなのはないっすけど……」
初替「なら警察は動けないだろうがァーーーッ!
舐めてんのかお前ーーッ!」
火花「ちょっとちょっと〜!
そんなに声を荒げないで〜?
ヒバナ達一般市民だよ〜」
初替「本官は忙しいんだァーーッ!」
亜丹「うっさ……」
紗良「チッ‥…じゃあいい、あーし帰る」
初替「帰れーーーーッ!実害を受けたら、
俺のところに来るんだッ!いいなーーーッ!」
亜丹「最低だ、あんた」
初替「おい、貴様ァ〜!、本官に」
火花「ね、ね?それ以上言ったら〜!
………刑事課の焔森 咲織さんを連れて
来てもらおうかな〜?」
と、その言葉に黙った拍子に
3人は部屋を出て行った
外を練り歩きながら紗良が呟いた
紗良「あーしさ、今日バイトなんだよね……」
亜丹「休めよ」
紗良「いや、遅番足りんくてさ、だからさ
あーしに何かあったら、2人は助けてくれる?」
火花「もちろんだよ〜!……すぐに呼んでね?」
亜尼「家に帰ったら私のボルテッカーも
手入れしておく、すぐに駆けつけられるように」
紗良「うん……じゃ、あーし、帰るね……」
紗良は肩を落としてバイトの準備に帰って行った
火花「21時だっけ〜?その時間まで
ヒバナ起きてよーとっ!」
亜丹「ねぇ、もしなんなら泊まる準備しない?
万が一の時は、紗良んちで
パジャマパーティでもしよう」
火花「いいね〜!じゃあコンビニいこっか〜!」
その日の夜、サンジェルマンのレジに
紗良は立っていた
心の中で来ないように祈りながら
他のお客様にそれを悟られないように祈っていた
紗良「次の方どうぞ〜!」
プゥ〜ンンンン…………
「サンジェルマンのサンドイッチは
さ、ささ最高だよね、ね、ね
紗良ちゃん♡」
紗良は一瞬悲鳴を上げかけた、
長らく風呂に入っていないような匂い
自堕落故に垂れ下がった頰と腹、不健康さ故に
右腕を掻きむしりながら下品な言葉が書かれた
Tシャツの男だった
男の名は「後振 央(ごぶり おう)」
紗良に品物を出していた
後振「あ、えっと、さりーって『校門』で
言われていたね…ぼぼぼ僕もそう呼んでいい?」
紗良「こ、困り、ます〜!お客様〜!
お会計340円になります〜!」
サンドイッチをマニュアル通りに包んで
紙袋に入れて後振に渡すと、500円玉を受け取り
160円を返した、その手をッ!後振が掴んだッ!
後振「ふーっ!これが、ぼぼ僕のメルアドと
連絡先だからさりーのも教えて………」
紗良の中の何かが限界に達した、
手を振り払った!
紗良「気持ち悪いんだよ……おっさん……ッ!
あーしに、触るんじゃあない、これ以上やったら
マジ警察に行くからね……ッ!」
紗良がお釣りをバン!と置いた、
後振は不思議そうに首を傾げると
サンジェルマンを出て行った………
その後、紗良が店内に一人残って
店じまいをしていた、紗良は少し気にしていた
言い過ぎたことと諦めてくれただろうかと
軽くため息をつきながら、紗良が閉めた扉の札を
「Open」を「close」に裏返そうと近寄った
ビッタァァ……………!!!
後振「さりーちゃーん♡夜遅くまでお疲れ
迎えに来たよー(´・ω・)」
後振が、扉の窓にその顔を押し付けていた
紗良「ぁ……………っ!!!!!!」
恐怖のあまり腰を抜かし、声すらも出なかった
ポケットにしまったスマホを弄ると叫んだ!
紗良「ひばちゃん!ひばちゃんたすけて!!
あいつがーーッ!あーしの店の入り口にいるッ!
たすけてぇ………ッ!」
『今、ちょうど近くにいたよ〜!
あーにゃのボルテッカーが向かってるから
乗っ………』
と、その時だった何故か紗良が電話を切ったッ!
そして、まるで引き寄せられるようにッ!
扉の鍵に手を伸ばしたッ!
紗良「は!?なっ……やめっ……なんでっ……!
たすけて……ッ!ひばちゃあああんっ!
あーにゃぁぁぁぁぁっ!!」
だが、バイクのエンジン音が近づいてくると
紗良の手が止まった
そして、男はいつの間にか姿を消しているのを
確認すると紗良はタイムカードを切って
店裏から走り出た!すかさずバイクのメットが
投げられ、ヘッドライトが照らされた
亜丹「乗って、紗良」
イエローとブラックカラーの
カワサキのニンジャ250、『ボルテッカー』と
亜丹が名付けたバイクが待っていた
紗良は焦りながらバイクのメットを頭に被ると
飛び乗るように後ろに跨ってその場を離れた
紗良「ひばちゃんは!?」
亜丹「サンジェルマンの周りをうろついてから、
紗良の家に来るから安心して………何の音だ?」
プゥ〜ンンンン………
亜丹「(蝿………?この『速度』に……?
いや、離れていくな……)」
キイッ………と、紗良の家にバイクが到着した
そこに走って火花も合流した
紗良が火花に抱きついた
火花「わわっ!さりー?」
紗良「怖かったぁ……ッ!
ありがとうひばちゃん、あーにゃ……!」
亜丹「久しぶりにあんな速度出した、
でもその甲斐はあったみたい………ん?」
亜丹が満田家のポストを見た、
手紙が刺さっている
紗良が、それに気づき手を伸ばすが
その前に火花が奪うように手に取ると
便箋を開いた
火花「う〜ん?………………うわ。」
紗良「なになに?」
火花「あっ、見ちゃだめ………ッ!」
[さっきはごめんね、さりーを驚かせちゃったね
怒らせちゃってごめんね、
そんなつもりはなかったんだよ?
嫌がることをなんてそんなことするはずがないよ
だって、僕は君を愛してる。
誰かに傷つけられたら言って欲しいな
そこへ僕が颯爽と現れて
両の腕で彼女をそっと抱きしめるんだ
君は何も悪くないよ悪くないよ
悪くないからって]
紗良が腰を抜かした、涙が溢れてきた
紗良「あーしが……!
あーしが何したっていうんだよ……ッ!
ねぇッ!ねぇぇぇッ!」
亜丹「紗良、良かったらお泊まりセット持って
来たんだ、泊まってもいいか?」
火花がビリビリに便箋を破り捨てながら
リュックを掲げた
火花「じゃーん!ヒバナもだよ〜!
だからさ〜!……もう今日のことは忘れよう?」
………
紗良の可愛らしい部屋には、
もう既にパジャマ姿の3人がお菓子を広げていた
紗良の母「それにしてもお泊まり会なんて
若くて羨ましいわ〜!亜丹ちゃん、お母さんには
私から連絡しておいたからね〜!
それじゃあ、ごゆっくり〜!」
紗良の母が扉を閉めて、
鼻歌混じりで階段を降りて行った
亜丹「紗良、もしかしてお母さんには
話してないのか?」
紗良「うん……ママ、あんな感じで明るいから
心配させたくなくて……それより、
ひばちゃんは家に連絡しなくていいの?」
火花「大丈夫だよ〜!もう連絡した〜!」
火花「(『あっそ』で切られたけどね〜)」
火花「そ、れ、よ、り〜!明日からなんだけど
もうさ、ぶっ飛ばさない?」
紗良「え?」
亜丹「マジか、ひば」
火花「警察はもう動かない、ストーカーってのは
現行犯じゃないと捕まえられないの
手紙渡して警察がやる対処は『接近禁止命令』
でも、自分が悪いと思ってないヒトが、
『近づくな』で近づかないと思う〜?」
紗良「じゃあ、被害を喰らえば……ッ!」
火花「それをやったら殺されるよ、さりー
あぁいうのはね、好きな人が振り向かないのは
相手のせいと決めつけるの、次第に相手に対して
ムカついてきて最後は……」
紗良「ひっ………」
亜丹「ひば、あんたは行けるのか?
あいつを倒せるのか?」
火花「うん、そこは大丈夫。そんなことよりさ、
『蝿の羽音』がしたって本当?」
紗良「あいつ、いつもその音がするの
蝿がたかってるとかキモすぎ」
亜丹「しかも70kmで走る私のボルテッカーに
追いついたんだぞ蝿が」
火花「スタンド………?」
紗良 亜丹「「ん?」」
火花「なんでもなーい!とこらでさ、
もしあいつをやっつけるとしたら
2人にも手伝ってもらうんだけどいいかな?
あ、さりーは無理にとは」
紗良「ううん、やるよひばちゃん
あーし、ひばちゃんを信じる」
亜丹「私は最初から手伝う気だ」
火花「オッケー?
じゃあ、ちょっと作戦会議しよう
せっかくお菓子はたくさんあるから!」
次の日、朝の登校時間、
斉唱四角学園へと続く通りを、満田紗良は
『一人』で、歩いていた
火花が昨日言っていたことを思い出した
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
火花「『身体』を操られた感じがしたって
言ってたよね〜?だったら……
さりーを囮にしよう」
亜丹「ひば?」
火花「さりー、何か身体がおかしいと思ったら
ヒバナの名前を叫んで〜?
隠れながらヒバナとあーにゃは登校に着いてく
………どう、『信じれる』?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
紗良「『信じれるよ』、ヒバナ、あーにゃ
あーしにとって2人は親友だから……ッ!」
紗良の胸が、鼓動が高鳴る、
いつ来るかもわからない不安と孤独
照りつける太陽の中、
紗良はバッグを片手で持って
登校していた、紗良が第2、第3ボタンを外した
紗良「………………え?」
紗良が驚愕した、確かにいつもうざったいから
第1ボタンは外してリボンは緩めている
ファッションだが、こんなに外したことはない
というよりもッ!
紗良「ひっ………ひばちゃーーーんッッ!」
これは間違いなくッ!
サンジェルマンの閉店の時の謎の現象と同じッ!
第4ボタンに手が伸びていたッ!
そこにッ!
火花「スゥゥゥーーーー………
『ラビット・ホール』ッッッ!!!!!」
火花が街角から飛び出してきたッ!
そして早乙女火花の後ろに
黒いスマートなボディと
兎耳のような飾りとダイナマイトのアームを持つ
人型ビジョンが姿を現したッ!
ラビット・ホール「ブラァッッ!!」
ラビット・ホールが拳を紗良の足元に叩きつける
たちまち、摩擦による炎が立ち上るッ!
紗良「わぁっ!何!?いきなり火がッッ!?」
だが有無を言わさずラビット・ホールが
ボタンを外そうとする紗良の腕を押さえた
火花「さりー、暑いの平気?」
紗良「え、え?えっと、あーし、
すぐ汗かくくらいあんまり!」
火花「だよねぇ!?どう、暑い?」
紗良「いや暑いよ!?」
火花「暑いってぇ!あーにゃーー!!」
紗良「ま、ちょっ、その前に助けて……ッ!
こんなところであーしッ!アメスクのJKみたいな
派手ファッションになっちゃう……ッ!」
ところがその姿をじっくりと見ている者がいた
後振「あと少し……ッ!あと少しなのに
あの女が邪魔で見えない……ッ!」
後振はそう呟きながら、『汗』を『拭った』
亜丹「おい。」
後振「へ?」
亜丹が股間に腿で蹴り上げたッ!!
後振が悶絶したッ!
後振「ぶひーーーーっ!?」
亜丹「間違ったら謝るからさ、一回潰れとけ
今日の気温20度、湿度25℃の季節外れの
涼しさなんだ、なのに、なんでそんなにあんた
汗かいてるんだ、まるであそこにいる
私の友達みたいにさ」
後振「超能力使いか!?」
亜丹「超能力?よくわかんないけど
ひばの作戦だよ、合図された後に汗かいてる
太ったおっさんがいたら知らせろってな
その反応、正解みたいだ」
後振が焦ったッ!路地裏から逃げ出してきた
ズァッ………
火花「どう?さりー、この人?」
火花が立ちはだかった
紗良がブンブンと首を縦に振った
火花「ふーーーーーーーーーん?
おじさん、死ぬ覚悟はいいかな〜?」
後振「な、な、なんだお前ーーーッ!?」
火花「この子の友達、それ以上に理由いる〜?」
プゥ〜ンンンンン………
火花とラビット・ホールが構えたッ!
火花「これか………」
後振「ぼぼぼぼ僕の恋路の邪魔をするなァッ!
こうなったらさりーが僕の彼女である
ということを証明してやるぞォッ!
『ブラウスを脱げ』ッッ!」
紗良がボタンに手をかけたッ!
紗良「!!?ひばちゃんたすけて!!!」
亜丹「ひばァッ!!」
火花「(恐らく『さりー』にスタンドが付いてる
暑さが『共有』されたということは
体内じゃないッ!でも見えるところにはいない、
前を脱がせてもスタンドは見えないッ!
『スカートの中』かッ!
『さりーの背中』ッッ!)」
ラビット・ホールが拳を構えた
火花「(間違えたら、さりーへのダメージが
大きすぎる……ヒバナ、考えて……
チャンスは『一度』、スタンドがいるのは
『二つ』に『一つ』ッッ!)」
紗良「ひばちゃああああああんっっっ!!」
その時だった紗良が何を思ったのか、
それともたまたまだったのか、
素肌を見せたくなくて前面を庇ったのか
身を捩って背中を向けたッ!
火花「…………『信じて』くれたよね
だから、ヒバナも『信じる』ッッ!!
ラビット・ホールッ!!!」
ラビット・ホールが紗良の背中を殴ったッ!
紗良「う………ッ!」
そして
後振「ごべぇっっ!!」
後振が血反吐を吐いたッ!!
同時に紗良のブラウスの背中から透け出るように
パンパンに肥大化した腹に赤い宝石が埋まり
人の手のひら大の蝿に触手のようなものが
無数に垂れ下がったグロテスクな姿のスタンドが
姿を現した
火花「うげー………」
後振「まさか、こんな女がいるとは、なぁぁぁ」
紗良「なんか、軽くなった……?」
火花「……さりー、とりあえずなんとか
なったからもうブラウス直していいよ」
紗良が後振を睨みながら、制服を直し始めた
亜丹が紗良を隠すように駆け寄っていった
後振「も、も、もう許さない、
僕は君を許さないぃい、ひばとか言われてたな
ぼ、僕の超能力は……見えないんだ、ぞぉぉぉ」
火花「え?」
後振「作戦、変更ぉぉぉお、
まずは君からだァッ!」
後振は火花を指差すと
蝿が一直線に飛んできたッ!
火花「………あはっ、なるほど?」
ラビット・ホール「ブラァッ!!」
ラビット・ホールが蝿の顎を殴りあげたッ!
後振「ごぶぇっ!?」
火花「あのねぇ?基本的なことを教えてあげる〜
これの名前は『スタンド』、
側に並び立つ(Stand by me)からね〜
でねでね、スタンド使いにはスタンドが見えるの
だから、おじさんの蝿もヒバナには凄く見える
おじさんも、ヒバナのラビット・ホールが
見えるでしょう?」
ラビット・ホールが足を揃えて曲げ、
両腕を顔の横に上げてポーズをキメて見せた
後振「じゃ、じゃあぁぁぁぁあ………!
これは見えてなかったのかァァァ〜〜?」
火花「え?」
ドギュウッッッ!!
火花「か………はっ………!?」
火花の背中に蝿が触手を突き立てながら
取り憑いた、大きくのけぞりながら
火花が空中に突き上げられた
紗良「ひばちゃん!」
亜丹「ひば!!!」
火花「あ、ぅ……しま、あっ……!!」
後振「元々さぁぁぁ、もうさりーは
殺そうと思ってたんだよぉぉぉ、
僕の愛を受け入れない悪い女だからさァァァ!
だけどやめるよ」
後振が、火花に近寄ると包丁を持たせた
後振「さりーを『殺すのは』、
君だぁぁぁあ!!」
火花「…………っ!……!!」
後振「親友の手で悪い女が殺されるッ!
心の底から最高のラストだぜぇぇっ!
さぁ『殺すんだ』ひばちゃぁぁあん!
ダミープラグを入れられたようによぉぉぉッ!
『今日の日はさよならだ』ァァァァァ!!
ぶひゃひゃひゃあああああッッ!
ぼげぇっっ!?」
後振が、吹き飛んだ。
回り込んだラビット・ホールが、
火花の背中を殴っていた
後振「な、なんじぇぇええええッ!?」
火花「あのねぇ、もう一つ教えてあげる
スタンドはね、本体とは違う動きができるの」
火花が包丁をラビット・ホールに
後ろ向きで投げる、それを地面に殴り砕いた
後振「ひっ………わ、分かったよぉっっ!!
も、もうしない、ね?ひばちゃん?
み、見て?僕もう顔ぐちゃぐちゃだよ?
これ以上やったら大怪我だよォォ?」
火花「ひばちゃん?」
後振「な、なんて呼べばいいのォォォ〜〜?」
火花「呼ばないで〜?目の前から失せることと、
二度と斉唱四角学園生に手を出さないこと〜
わかった〜?」
後振「わ、分かった………」
火花が背を向けた
後振「なんてなァァァッ!
まだそこの女がいるッ!
今度は背中を見せない、
僕の盾にしてや、るゥゥゥッ!」
高速でッ!蝿がッ!尼丸 亜丹に向かったッ!
だがその飛翔速度よりも早くッ!
ラビット・ホールが蝿を殴り抜いたッッ!
後振「ぼべぇっっ!?」
火花「おじさん……いい加減にしなよ?」
後振「ひっ、じょ、冗談だよぉぉぉぉ
ひばちゃぁぁあんッ!
まさか、本当にやると思った!?ジョークッ!
ジョーキングッ!スタンドジョークだよォッ!」
火花「一応、言うとね、
ヒバナは許すつもりはなかったの
何がなんでもここでぶっ飛ばしてやろうかと
思ってたからさ〜?」
紗良は、普段はちっちゃくてかわいい
早乙女火花の頼もしい後ろ姿を見ながら
昨日のパーティで言っていたことを
思い出していた
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
紗良「ひばちゃんはさ、
判事さんのバイトしてるんじゃん?
その、大丈夫なの?暴行罪とか………」
きっと紗良も亜丹も、忘れられないだろう、
火花はそう言った紗良に惚れそうなほどに
キラキラした笑みを向けた
火花「うんッ!それにね……あやっち先生なら
そんなこと言わないと思うけどね〜?
親友を護ったことを法で咎めるような
バイトなんてすぐに辞めてあげるよ、
もし法に反したとしても、
ヒバナは『親友を護る』から」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後振が跪いた、手をかざして歩いてくる火花を
静止しようとしていた
後振「ま、待って!本当に待って!
分かったッ!このスタンド?だっけ、を
平和と正義のために使おーうッ!
もしなんだったら、おじさんが
君たちを護っちゃったり、し、したりィィ〜〜?
そう!君の『親友を護る』ッッ!」
火花がため息をついた
火花「もういいよ、おじさん、何も言わないで。
死ぬまでピュアピュアやってなよ。
『ラビット・ホール』ッッッッッッ!!」
後振「待ってェェェェェェアアアアアッッ!」
ラビット・ホールが両拳を構えたッ!
ラビット・ホール「ラァ〜〜〜〜ッ!
ブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラッッッッ!!!!」
凄まじい速度のラッシュが後振 央を襲った!
一撃一撃の拳が発火していく!
瞬く間に全身を焼いていく!
火花の怒りと殺意が丁寧に込められた拳がッ!
ストーカー男の身体中を破壊していくッッッ!
後振「ば、べ、でぇえぇえぇえぇっっっ!!!」
ラビット・ホール「ブラブラブラブラブッッ!
ラブ・イズ・オーバーッッ!!
(ウンザリよッッッ!!)」
ゴグォォンッッ!!!
後振「ぶびゃああああああああああっっっ!!」
ラビット・ホールの最後の一撃で
火だるまとなっていた後振は15mほど
遥か後方にかっ飛ぶとそのボロボロの身体を
ビクビクとさせて………意識を失った
火花「はぁっ……はぁっ………!」
火花が恐る恐る後ろを振り返った
明らかにやりすぎた、
あまりにも暴力的すぎたかもしれない
そう思って親友達を振り返った
と、目に飛び込んできたのは飛びかかるように
抱きついてきた紗良だった
紗良「ひばちゃん‥…ありがとう、
ありがどぅ……」
亜丹も優しく紗良ごと火花を抱きしめた
亜丹「よくわかんないけどやるじゃん、ひば
かっこよかったよ」
火花「良かったぁ〜……!
じゃ、これでもうルンルンで
学校に行けるね〜!」
火花が泣きじゃくる紗良を立たせる、
亜丹もやれやれと立ち上がると
3人は斉唱四角学園へと向かって行った
スタンドマスター:後振 央
スタンド名:メイ・フライ(五月の蝿)
全身骨折、並びに女の子に対して
トラウマを抱えて[再起不能(リタイア)]
To be continued………
[メイ・フライ(五月の蝿)]
【破壊力-E/スピード-A/射程距離-B/持続力-B/
精密動作性-C/成長性-D】
パンパンに肥大化した腹に赤い宝石が埋まり
人の手のひら大の蝿に触手のようなものが
無数に垂れ下がるグロテスクな姿の
遠距離スタンド、対象を発見次第、
耳元を掠めるように飛び回り始め
背中にべったりと取り付いて触手を這わせて
全身の神経をジャック意識を残したまま、
体の自由だけ奪うというマスターの後振 央が
女子高生専門ストーカーだからこそ発現した
スタンド、しかもスタンド使いなら
普通に見えるところ彼が狙いをつける少女は
悉く一般人のためこの能力に対し抵抗できない
元ネタはラッド・ウィンプスの楽曲から
[ラビット・ホール]
【破壊力-A/スピード-B/射程距離-E/持続力-D/
精密動作性-C/成長性-B】
ダイナマイトと発煙筒の腕に赤い導火線が全身に
巻きついた兎耳のスマートなデザインの
スタイリッシュな人型スタンド
殴った拳の摩擦で発火する能力を持っており
焼き潰す彼女の燃えるような
愛と力の精神そのもの
元ネタはDECO*27のボーカロイド楽曲