綾瀬凛藍は夜に駆けていく   作:眠 いつか

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第7話 漫画家の家に遊びに行こう!

「君はッ!どうしてこんな簡単なことも

出来ないのかねッ!私は何度も言ったよなッ!」

 

1人の男が、オフィスの真ん中で怒られていた

中肉中背で、眼鏡はずれ落ち、髪はボサボサな

くたびれた男、彼の名は「鳥山 亮」

カメユーデパート勤務、42歳独身

お世辞にも冴えない彼は烈火の如く怒られていた

 

鳥山「すみませェん……ほんとに……」

 

「君もいい歳なんだから、困るよ……

もう今日は帰っていいよ」

 

鳥山「えっ、部長それは……」

 

「帰れ!!!もうお前は今日はいらないッッ!」

 

 

夜の公園の風は冷たかった、

疲れ果てた家に帰る前に彼は趣味のために

公園にふらふらと来ていた

 

煙草の煙が口から上る、

静かに野良猫にしゃがみ込む

 

鳥山「上手くいかないねェ〜……

おじさんの人生」

 

そして……野良猫に『灯油』を頭からかけたッ!

ニャアアアッ!と悲鳴を上げて逃げていく

その姿を見て、鳥山は穏やかに笑った

 

鳥山「テレビの中の殺人鬼なら

ここで火をつけるんだろうけど……おじさんに

そんな度胸はないねェ〜」

 

生きるのも、死ぬのも怖かった、

誰かに助ける勇気も、誰かを殺す度胸もなかった

彼はそうやって生きてきた

良いことも悪いこともしないというモットーの下

好きなこともなく、家に帰っても寝ているだけ

彼はそうやって生きてきた

 

鳥山は自虐するようにふっと笑うと立ち上がる

誰もいない公園を去ろうとした

 

「お、じ、さん♡」

 

その時だった、猫撫で声が彼に掛けられた

鳥山が暗闇の中に立っていた少女を見た

物凄い服装だったホットパンツにロングブーツ

ビキニの上からライダージャケットを纏うだけ

だがその眼、その紫の瞳は直視するのを

躊躇うほど闇を堪えた、

只者ではない雰囲気の美少女だった

 

鳥山「なんだい……?パパ活ならしないよ……」

 

少女「え?あっはっ♡違う違う!!

おじさんさ?今、猫に灯油かけてたよね?」

 

鳥山「あー、通報でもなんでもしてくれ……」

 

少女「んもー!話を聞いておじさん♡

………なんで火をつけなかったの?殺せたのに」

 

鳥山「そんな度胸はおじさんにはないよ

君には出来るのかい」

 

少女はニタァと不気味に笑うと、

後ろ手に持っていた「猫の首」を放り投げた

 

少女「このくらいなら♡」

 

鳥山は絶句した、少女は笑っている

 

少女「おじさんの人生、私が変えてあげよっか」

 

愛らしく腰から覗き込むように

少女が鳥山に近づいた

 

鳥山「ど、どうやって、だい?」

 

少女「………質問に答えてよ

変わりたい?変わりたくない?

私はおじさんが気に入ってるんだよ♡」

 

鳥山「変えてくれるのかい、おじさんの人生を

逃げるだけの人生はもう…いやだとは思ったり」

 

少女「お、じ、さん♡

………本当にこれが質問する最後、

何かで変わりたいか、

このままで変わりたくないか

はっきり言えないなら、私はこのまま帰るよ」

 

鳥山は………拳を握ったッ!

なけなしの勇気を奮ったッ!

 

鳥山「なら……なら………変わりたいッ!

 

俺の人生を変えてくれッ!」

 

ビュッ!!と少女の後ろから『矢』が

飛来したかと思うと鳥山の胸に刺さったッッ!

 

鳥山「ごっはッ!?」

 

少女「チカラを引き出してあげる

『スタンド』っていうおじさんの精神の具現を

これでもう、おじさんは無力じゃない

力を持つスタンド使いだよ、おめでとう〜!」

 

鳥山がゆっくりと立ち上がる、少女との間、

目の前にいたのは『頭部が無い六つ腕の袈裟僧』

それがゆっくりと鳥山から『矢』を引き抜くと、

右の一番上の腕に持ち直した

 

鳥山「うわぁッッ!!?」

 

少女「あ、私のが見えたね♡

これが『スタンド』、その人の精神と魂の具現

スタンドはスタンドにしか見えないし、倒せない

でも、貴方の精神の奥底を表した能力を持つ」

 

少女「うんうん!それじゃあね〜♡」

 

鳥山「待ってくれ……えと、女の子ちゃん」

 

少女「え?なぁに?」

 

鳥山「その……恩返しがしたい、今おじさんは

すっごく、頭が冴えているッ!

な、なんでも出来そうだ、

本当に変わりそうだから

その前にお礼がしたい……な、と」

 

少女「(あれ?『洗脳しろ』とは指示して……

あぁ……もしかして、このおじさん

『素質』があるんだ)」

 

少々「いいの?私がヤバい女の子ってのは

わかってるでしょ?私から頼むとしたらそれは」

 

鳥山「『殺し』でしょ?おじさんね、

憧れていたんだ、殺し屋ってのにィ〜」

 

少女はニタァと笑った

 

少女「ふぅ〜ん?……じゃあ、頼もっかな♡

この2人をお願ぁい♡」

 

少女がスマホで画像を見せた

 

鳥山「やってみるよ」

 

少女「おじさんはシロウトだからね〜

必死こいてやって欲しいけど、

万が一の時は失敗してもいいよ♡」

 

鳥山「『失敗してもいい?』

それはなんとも……」

 

少女「あ、でもでも〜、これで私と貴方は

力を与えた女の子と困ってたおじさんじゃなくて

殺し屋と依頼主になっちゃった、意味わかる?」

 

少女が笑顔を見せた、だが目が笑っていない

 

少女「『私』のことを『言った』時は

………惨たらしく殺すからね♡」

 

鳥山「肝に銘じておくよ、おじさん頑張るゥ〜」

 

鳥山が立ち去った

 

 

 

少女「……………また会いたいな、

ばいばい、殺人鬼の『素質』があるおじさん♡」

 

 

 

〔第7話 漫画家の家に訪ねにいこう!〕

 

杜王町郊外の街角を綾瀬、名舟、火花の3人が

和気藹々と話しながら歩いていた、

目的地は高級住宅街の中にある屋敷だった

 

火花「ところで岸部露伴さんって……誰ぇ?」

 

名舟「そうか、露伴先生とのお仕事があったのは

火花が来る前か……

『ピンク・ダークの少年』って

漫画、知ってる?」

 

火花「う〜ん、ヒバナはあまり漫画は

読まないかも」

 

名舟「そっ……か……まぁともかく

人気の漫画家さん

前に作中に裁判関係の話を書きたいと言って

『弁護士事務所』だとか、

『検事官に協力』だとか、

そんなものではなく、なんとわざわざ判事である

綾瀬先生を呼んだんだ」

 

綾瀬「『漫画を描くために君の話を聞きたい』

……でしたか、ふふっ……判事の私にですよ?

今まで会ったことのない面白い方でしてね

それから交友を結んでは

時折お茶に誘っているのです

中々の変わり者ですが、今回も連絡したら

二つ返事で了承を得ました」

 

綾瀬達は白塗りの綺麗な家の前に着くと

2人を伴って玄関の前に立った

火花の顔が固まっていた

 

名舟「緊張してるのか火花、大丈夫だよ

そんなに変わり者じゃないから」

 

火花「だ、だといいんだけどぉ〜」

 

綾瀬がドアノッカーを叩いた

 

綾瀬「露伴君、綾瀬です。いますか?」

 

ドアがゆっくりと開く、顔を出したのは

白を基調としたへそだしルックの服に

緑色の髪を流した若々しい青年、

杜王町に今も住む

名漫画家「岸部露伴」その人だった

 

露伴「やぁ凛藍君、時間通りだ

『10分前』でも、『5分遅れ』でもなく

約束の時間通り、信頼出来る」

 

綾瀬「変わらないようで何よりですよ露伴君

後ろは私の助手達です」

 

露伴「あぁ、名舟翠と……?」

 

火花「早乙女 火花です!斉唱四角学園2年の」

 

露伴「『ヘブンズ・ドアー』ッッ!!」

 

火花「きゃあああッ!?」

 

と、それはいきなりだったッ!

岸部露伴は空中にスタンドを描くと

スタンドで火花の顔に触れて本のページのように

開いて昏倒させたッ!

 

綾瀬「ろ、露伴君ッ!?」

 

名舟「いや、何してるんですか露伴先生ッ!?」

 

唖然とする2人を尻目に、気を失って倒れている

火花に近づきながら口を開いた

 

露伴「忘れさせたが凛藍君と翠にもやっているよ

僕は昔、家が燃えた時に建築家を呼んだら

大変な目に遭ってね、それ以来、来客が来ると

『ヘブンズ・ドアー』で読むことにしてるんだよ

まッ!趣味も兼ねているけど、どれどれ……」

 

露伴「早乙女 火花、2000年生まれ

斉唱四角学園2年3組、趣味はコスメチェックと

スイーツ巡り、スタンドは発火する拳で

叩きのめす『ラビット・ホール』、

「りらっち先生のお友達の家だー

緊張するぞー」……ふぅん……どうやらマジで

凛藍君の助手のようだね」

 

綾瀬「………納得いただけたのなら何よりです

火花を戻してあげてください」

 

ヘブンズドアーの効力が消え、

火花の顔のページが閉じていく、

そして元のかわいらしい顔に戻ると

むくりと起き上がった

 

露伴「まぁ、3人とも入りたまえ」

 

火花「いやいやいやいやちょっと待ってッ!?

りらっち先生ッ!なんなのこの人!?

ヒバナぶん殴りたいです〜ッ!」

 

綾瀬「………認めてはくれたみたいなので

許してあげてください火花」

 

何が起こったか分からずにきょろきょろする名舟

少し頭を抱えている綾瀬

自分の顔をコンパクトで見ている火花を伴い

岸部露伴は家に入って行った

 

 

岸辺邸 1F応接リビング

 

綾瀬とまだぶーぶー言っている火花が

カウチに座り、その向かいに露伴が座った

キッチンを借りていた名舟がトレイを持って

出てくると3人にお茶を配り、自分の分を置いて

綾瀬のもう隣に座った

 

綾瀬「漫画の進捗は最近いかがですか?」

 

露伴「いつも通りだよ、今回もいい仕上がりだ

点字版を楽しみにして欲しい」

 

火花「りらっち先生、漫画とか読むの〜?」

 

綾瀬「いえ、ピンク・ダークの少年が初めてです

私が読めるのもノベル版ですし、貴方の絵柄が

見れないのが残念です」

 

露伴「君の盲目は生まれつきだからね

僕のヘブンズ・ドアーで書き換えても

治らなかったほどには」

 

綾瀬「理不尽ではありますが、

不便ではありません

慣れてしまえばこういうものか、くらいです」

 

露伴はそれを聞くと近くから手帳を取り出した

 

露伴「興味深いな、他には?

盲目故に備わったものとか何かあるかい?」

 

綾瀬「おや、作家魂の琴線に触れましたか?

そうですね……やはり聴覚の異常発達でしょうか

白杖がないと危なくて歩けませんが、そもそも

私達が感じとっているのは杖先の感触ではなく、

叩いた時の音です。点字ブロックが叩くと

甲高い音が響くのはそのためですね」

 

綾瀬「私は特に耳がよくて、足音や歩幅から

大まかな人物像が割り出せます

例え砂漠の真ん中で襲われても私なら遥か彼方の

人間達を捉えることができるでしょう

……やったことはありませんが」

 

露伴はそれを書き留めると綾瀬の光のない瞳孔と

目を合わせた、瞬きはしているが

こちらは見ていない、そんな目線と交差した

 

露伴「まぁ……いい、それよりも君達が

訊きに来たこととはなんだい?」

 

綾瀬「あぁ、それでは本題に入りましょうか

露伴君なら気づいているかもしれませんが

最近のこの街についてです、具体的に言えば

『スタンド使い』の増加です」

 

露伴「確かに、不可解な死に方や失踪が

増えてきたと聞いている」

 

綾瀬「実際、法務局も警戒していましてね

……18年前の吉良吉影48人殺し、その再来だと

露伴君は実際に対峙した1人と聞いています

そこで何か意見が欲しいのですが……」

 

露伴「まず間違いなく、

『矢』が再び現れたんだろう」

 

綾瀬「…………………『矢』?」

 

露伴「凛藍君、あと……火花だったか

2人はどうやってスタンドを発現させた?」

 

凛藍「私は……幼い頃に夜に突然」

 

火花「ヒバナもそんな感じ〜」

 

露伴「そうか、持っていない名舟翠にも

わかりやすく言うと、スタンドとは

精神の具現化だ、黄金の精神、漆黒の意思、

何にせよ無意識の才能が

精神に追いついた時ビジョンとなって現れる

だが………」

 

名舟「……今の話からするとその、

精神の発露である『スタンド』というもの

それを強引に引き出すのがその『矢』とやら

ということですか?」

 

露伴「君、凄いな……?スタンド使いでは

ないんだろう?」

 

名舟「ここ数日の出来事、

それに火花や綾瀬先生と出かけてると

何かトラブルがあるといつも不思議な力で

助けてくれるので僕が知らない『何か』を

感じてはいました」

 

露伴「むしろ君にもスタンドがないのは

少し不思議なんだがね」

 

名舟「僕は……戦う意志も特技もないので

ただ、人より少し眠りがちな子供ですよ」

 

露伴はそれを聞くと少し考え込んだ

綾瀬は小声で「矢、ですか……」と呟いていた

静かになった火花は暇そうにお茶を飲んでいる

 

名舟「でもそのスタンドとやら、

少し僕は気になります、露伴先生、もしこの話が

終わったらもう少し教えてくれませんか」

 

露伴「あぁ、構わないとも。というよりもう話は

ほぼ終わったようなものだ、

凛藍君、他に聞きたいことは?」

 

綾瀬「あぁではいくつか……これからの方針は

大まかに決まりました、『その矢を回収する』

『広めている犯人を拘束する』

『スタンドで悪事をするものは制圧する』

ですがやることは多く、手がかりも少ない……

なので、よろしければその『矢』の図解などが

あれば嬉しいです」

 

露伴「あとで書いてあげよう、

それとスピードワゴン財団を紹介しておくよ」

 

綾瀬「スピードワゴン財団……石油会社ですか?

なにゆえに?」

 

露伴「それは『表』の話だよ、

『裏』は矢とスタンドの研究をしている

何か力になってくれるだろう」

 

綾瀬「ありがとうございます露伴先生

私が訊きたいのは以上です………翠」

 

名舟「方針が決まった以上、

そのスタンドとやらの

戦いが始まる予感がします、

綾瀬先生の助手として火花の友達として、

少しでも力になりたいんです」

 

露伴「ふん、いいだろう、その熱意を見込んで

僕が知っている限りのスタンドについてを

教えてやろう」

 

名舟が胸元のポケットからメモとペンを

取り出したその時だった

 

リンゴォ……ン

 

綾瀬「ご来客ですか?」

 

露伴「予定にはないが、さてはまた編集部が

来たのかも知れないな……」

 

火花「あ、じゃあじゃあ、ヒバナが出ようか〜?

露伴先生はすいすいと話してて〜?」

 

露伴「おや、助かるよ。礼儀はなってないが

気は利くな君は、編集部だったらなんとかして

帰ってもらうかどうしてもの時は通してくれ

それ以外なら追い返して構わないよ」

 

火花がパッと可愛らしく両足で立ちあがった

そして露伴に会釈すると応接リビングを

出て行った

 

綾瀬「火花は少し……自由過ぎる子でしてね……」

 

露伴「あぁ、彼女の親の様子も書いてあったが

『早乙女 火花』は悪い子ではないのは

理解している、もっと態度の悪いガキを

見たことあるから気にしていないとも、

それよりだ、翠君、何から話そうか────」

 

 

リビングを出た火花はエントランスを

軽い足取りで歩きながらインターホンが

鳴り続ける玄関へと向かっていった

 

火花「はいはーい、代理だけど今、出るよ〜」

 

火花がドアノブを右手で握ると

インターホンが止み、同時に火花も扉を開いた

……そこには誰もおらず、入ってきたと同じような

閑静な住宅街が広がっていた

 

火花「あれれ?ついさっきまで

鳴ってたのにな〜」

 

そう言いつつ、ドアの後ろには

ラビット・ホールをもう待機させて

反撃の体制に入っていた

火花が玄関からゆっくり顔を出す、右、左、

そして右、だが誰もいなかった

 

火花「(ピンポンダッシュってやつ〜?

この平成の時代に〜?)」

 

誰もいなかった、いたずらかも知れない

そう伝えるために火花は玄関のドアを閉めた

 

火花「…………ん?」

 

火花はその場から動けなかった、

『ドアノブ』を握った『右手』がドアノブから

離れなかったッ!

 

火花「なッ!?なに……これ……ッ!」

 

ガチャガチャと必死にドアノブを回した

だが指先は離れるのに、

ちょうど鍵穴を隠すように握っている

手のひら部分がドアノブに

接着されているかのように離れなかったッ!

 

火花「ラビッ……!(いや、ヒバナ落ち着いて

何を燃やすの!ドアノブ!?

ヒバナの右手!?)」

 

火花「ラビット・ホールッ!

ヒバナを後ろに引っ張ってッ!」

 

ラビット・ホールが火花の腰を掴むと

後ろにぐぐぐと引きずり始めた、ゆっくりと

火花の右手がドアノブから離れていく

痛みはない、ドアノブも壊れない……だが

 

ドアノブから火花の右手へ、

強い粘度の『真っ黒な液体』がネトォ……ッと

伸びていた

 

火花「うわッ!きっしょ……ッ!

何これ……!?」

 

見た目の絶望的な汚さと怖さ

次に強烈な刺激臭が火花の鼻を付いた

思わず火花がもう片方の手で鼻を抑えた

 

火花「あとで手を洗わせてもらお〜……

ラビット・ホールッ!」

 

ラビット・ホール「ブラァッッ!」

 

ラビット・ホールが伸びて垂れ下がる

『真っ暗な液体』を発火する拳で殴ったッ!

 

ドバァァァァァンッッッ!!

 

火花「ぎゃっはぁッッ!!?」

 

その瞬間に火花の全身を、

爆発と火炎が襲いかかったッ!

 

たまらずごろごろと転がって消火するが

爆発の余波で弾けたドアの破片が火花の柔肌を

切り裂いていた、リビングのドアが開いた

 

露伴「おい、何の物音……」

 

火花「来ちゃダメです露伴先生ッッ!

綾瀬先生ッッ!!!」

 

火花が膝をついたまま肩で息をする

爆発で吹き飛んだドア、ボロボロのエントランス

傷だらけの女子高生、明らかに異常が起きていた

 

火花「また来た………ッ!」

 

何も無くなった入り口の床から、そして壁から

『真っ暗な液体』が溢れ出してきていた

 

露伴「なんだこれはッ!

『スタンド』の襲撃かッ!?」

 

綾瀬「すんすん……うッ!?

この臭いはなんです……ッ!?

翠、何が起きているか見えますか!?」

 

名舟「え、えぇ、僕にも見えます

黒い粘度の高い液体が入り口から迫っています」

 

名舟はそう言うと、2人が制止する前に

火花の側へと駆け寄ると肩に腕を回させた

 

火花「すいすい……!」

 

名舟「大丈夫か火花……何があったんだ」

 

火花「よくわからない、たぶんスタンドの攻撃を

受けてる〜ッ!すいすい気をつけて……」

 

名舟「真っ黒なドロドロした液体……

これもしかして」

 

と、その時だった。2人に影が落ちた

2人が同時に天井を見上げると『真っ暗な液体』の

巨大な雫が2人に落ちて迫っていた

 

名舟「まずい───」

 

火花「すいすいッッ!!」

 

名舟が言いかけたその瞬間、

火花の方が先に動いた、

隣で自分の肩を支えていた

名舟を思い切り雫の落ちてくる外へと

突き飛ばした!

 

名舟「火花ァッッ!!?」

 

名舟が火花の名を叫ぶ、だがその押した反動で

火花は床へと倒れ込んでしまったッ!

 

露伴「やっぱり、『悪い子』ではなかったか

この岸部露伴の目に狂いはない、

気に入ったぞッ!

早乙女火花ッ!『ヘブンズ・ドアー』ッッ!!」

 

火花の顔がページのように開く

露伴から放たれた白い帽子の少年は火花の顔に

書き込んだ

 

『5m後方に吹っ飛ぶ』

 

火花が寝そべった体制のまま、反対側に吹っ飛んだ

 

そして誰もいなくなった床に『真っ暗な液体』の

雫が投下されたッ!

 

火花「あ、ありがとうございます

露伴先生〜ッ!」

 

露伴「気にしないでくれ、

……凛藍君、どうするこの状況」

 

火花は起き上がりながらも警戒を怠らず

名舟は辺りを確認しながら、

その場に立膝をついた

 

綾瀬「………どこから、何が、どうやって

攻撃しているかわかりません、

『自立型』なのか『近距離型』なのかすら

しかし……火花、もしかして爆発の時

ラビット・ホールで殴りましたか?」

 

火花「え?あぁそうなんだよ〜りらっち先生〜!」

 

綾瀬「ならばやはり、間違いありません、

これは……『原油』です、つまりは天然の石油

翠、火花、露伴君、気をつけてください

これは超可燃性、火元に掠めただけで

発火します」

 

と、その時だった、べちゃり、と綾瀬の右足に

どこからともなく降ってきた『真っ黒な液体』

もとい『原油』が付着した

 

火花「りらっち先生!気をつけて!

それねちゃねちゃしててなかなか取れないの!」

 

綾瀬が右足を引こうとしたがニチャアと

不快な音共に足がなかなか床から離れなかった

 

綾瀬「これはまずい……ッ!」

 

それが合図だった、

天井からエントランス全体へと

原油の雫が降り注いできた!!

 

露伴は部屋の中へ、翠は近くの電話帳机の下へと

素早く隠れた、だが綾瀬は降り頻る雫が見えない

火花はそれを見ると綾瀬へと駆け出そうとしたが

途中で原油の溜まりを踏んで足を取られたッ!

 

綾瀬の綺麗な服も顔も紙も黒く汚れていく

転んだ火花もただでは済まない

 

綾瀬「………イン・トゥ・ザ・ナイトッッ!

火花の位置はわかりました、影を掴みましたッ!

そのままこちらへ引っ張ってッッ!」

 

火花「わぁぁぁぁ今日なんか

ヒバナ引きずられがち〜〜ッ!?」

 

そのままこちらに来た火花を抱きすくめた

その瞬間、近くで隠れていた露伴は見た

玄関に誰かが立っていた

 

露伴「『ヘブンズ・ドアー』ッッ!!」

 

名舟「………え?誰かいるのですか?」

 

露伴「何ッ!?君に見えていない

ということはッ!本体ではなく……」

 

人影は膝を曲げると床の原油へと腕を叩きつけた!

 

ババババババババババババ!!!!

 

激しい火と熱!エントランスにあった

黒い雫から黒い雫へと導火線のように

火焔が広がってくるッ!

 

綾瀬「イン・トゥ・ザ・ナイトッッ!」

 

綾瀬が火花を抱えたまま天井のシャンデリアの

影に手を伸ばさせたッ!

だが、ヘブンズ・ドアーは

もうすぐ人影に手が届く

その時、人影は軽く振り払うように

ヘブンズドアーに右手を振り抜いたッ!

 

ボギャアッ!

 

露伴「ぐぅッ!?なんだこのパワーはッ!?」

 

露伴の口から出血する、地面にはたき落とされた

ヘブンズドアーを呼び戻すが、

それは大きくタイムロスとなったッ!

エントランスを這い寄ってくる火の波が迫るッ!

 

名舟「露伴先生ッッ!」

 

名舟が隠れていたところから飛び出すと

そのまま露伴を押し倒すように抱えてリビングの

扉の向こうへと飛び込んだッ!

 

ゴォォォォォオオオオオオオオッッッッ!!

 

名舟の靴先を火災がかすめて行った……

そして名舟がさっきまで隠れていた電話帳台が

火に飲まれて倒れて行った

シャンデリアの影を掴んだ

イン・トゥ・ザ・ナイトのおかげで

空中にぶら下がる、綾瀬と火花の足下は、

一階のエントランスは火の海だった

 

火花「り、りらっち先生……!」

 

綾瀬「このまま、上の階に行きます」

 

綾瀬が耳を澄ます、熱波で揺れている

隣のシャンデリアを聴き取ると、

それに掴まり直す

 

火花「2階の手摺はヒバナが掴むよ」

 

綾瀬「お願いします」

 

綾瀬が手を離して火花に掴まると

ラビット・ホールを手摺の向こうに現させ

火花と綾瀬を引き摺り込み2人は

『避難』に完了した

 

名舟「こんな時にですが、先生の家が……」

 

露伴「全くッ!僕の家は

燃える呪いでもあるのか?

まぁいいッ!仕事の部屋は2階の奥だからな

それにしてもふむ、家の火災はこう燃えるのか」

 

名舟「そんなエジソンみたいなこと言ってる

場合では……先生ッ!」

 

露伴も入り口を見た、火がだんだん弱まり始めた

恐らく着火した原油が燃え尽きかけている

露伴は迷わなかった、名舟もまたそうだった

躊躇いなくリビングを出ると、

大胆にもエントランスへと走り抜けた

 

まだ、まだ、攻撃は来ない、

立ちこめる煙、入り口に人影は立ったまま

露伴が2階への階段の手すりを掴んだ!

 

ネトォッ………

 

露伴「なッ!何ィィィィッ!」

 

名舟が気づいた、煙で見えづらかったが

階段はところどころが真っ黒だったッ!

名舟も左足がつんのめったッ!

 

火花「すいすいッ!露伴先生ッ!」

 

『仕留められなかったか、

だが君たちは終わりだ』

 

やっと、ここで人影が口を発した

煙が晴れる、そこに立っていたのは少年心を持つ

名舟が見えていたらきっと息を漏らすほど

スタイリッシュなスタンド

 

『言うならば私の戦闘力は53万といったところ

死ぬ覚悟は出来ているか?』

 

返り血を浴びたような深い赤をした中世の甲冑を

全身に纏う真紅の騎士が、両手に装着した

『パタ』と呼ばれる刃が伸びた

籠手(ガンドレット)をッ!

ガギィィィンッッ!と交差させて構えたッ!

 

 

『マキシマム・ザ・ホルモンッッッ!!!!』

 

 

漆黒のボロボロのマントが風に翻る、

ガシン、ガシン、とゆっくりと歩いて

深紅の騎士マキシマム・ザ・ホルモンが

家の中へと『入場』した

 

露伴「おいおいおい……

『ダークソウル』かよ……

なんだあのスタンドはッ!」

 

綾瀬「どんな見た目ですか?」

 

火花「赤黒い騎士(ナイト)だよ〜、

すっごい強そう……ッ!りらっち先生はここから

援護してッ!」

 

火花が手すりを乗り越えたッ!

 

火花「(りらっち先生は真っ向勝負向きじゃない

すいすいは守護らなきゃだし、露伴先生の

ヘブンズ・ドアーは多分人体じゃないと

本を開けない……ッ!)」

 

エントランスに転がりながら

早乙女 火花が着地した

 

火花「なら、ヒバナがやるしかないよね〜ッ!」

 

と、マキシマム・ザ・ホルモンの歩みが止まった

 

綾瀬「………イン・トゥ・ザ・ナイト、

貴方の影は掴みました騎士よ、

では質問しますね」

 

綾瀬「『本体は近くにいますか?』『庭にいます

か?』『私が狙いですか?』『岸部露伴が狙いですか?』

 

………ふむ」

 

綾瀬「なるほど……本体は庭にいるようです

そして、殺す目標は、『私』と『露伴君』ッ!」

 

 

中庭、誰にも見えないその場所に

男は──鳥山亮はいた

 

鳥山「スタンド越しにおじさんの心を

読んだんだねぇ〜、厄介だなぁ、

まずはあの盲目の判事ちゃんからかな〜?」

 

 

マキシマム・ザ・ホルモンがなんと前進を始めた

ずるずるとイン・トゥ・ザ・ナイトが

引き摺られる

 

綾瀬「なッ!?なんですってッ!?

私がッ!イン・トゥ・ザ・ナイトが

掴んでいるッ!なのにッ!そのまま……ッ!?」

 

マキシマム・ザ・ホルモン『影の紳士ごときで

この深紅の騎士の歩みは止められん、

まずはお前からだ綾瀬凛藍ッッ!』

 

腕を交差させる、

だが目の前にいた火花が動いた!

 

火花「ヒバナを忘れてないかな〜!?

ラビット・ホールッッ!」

 

ラビット・ホール『ラ〜ブラブラブラァッッ!』

 

正面から火花のスタンドの短いラッシュが

マキシマム・ザ・ホルモンを襲ったッ!

深紅の騎士がたたらを踏む!

ガシャンと一歩下がる!

そして………交差していた腕を下に払うように

振った!

 

火花「ぶっ……!」

 

マキシマム・ザ・ホルモンの全身ッ!

いや、払った腕付近から

原油の雫の雨が放たれた!

たちまち火花の全身に黒いシミが付着したッ!

 

ガシャンッ!ガシャンッ!ガシャンッ!と

マキシマム・ザ・ホルモンが

『進軍』を開始する!

だが、火花へと目標を急に変えた、

仕留めようと焦った、何より音を立てすぎた

 

綾瀬「イン・トゥ・ザ・ナイト」

 

綾瀬のスタンドが右足の影を掴みあげたッ!

 

マキシマム・ザ・ホルモン『何ィッッ!!』

 

たまらずマキシマム・ザ・ホルモンの身体が

つんのめって前にうつ伏せに転倒したッ!

すかさず、火花が襲い掛かるッ!

 

火花「ラビット・ホールッッッ!」

 

ラビット・ホール『ラァァァ〜〜ブラブラブラブラブラブラブラブラ!!!!』

 

露伴「よォしッ!

翠君、君は早く引き剥がしたまえ

君の友人が仕留めてくれただろう」

 

名舟「火花が?…‥凄いですね……

さて、うぅぅぅ………ッ!」

 

綾瀬は足を掴ませたまま、

火花はラッシュを叩き込む、名舟と露伴は

くっついた部分をネバネバさせながら

取ろうとする

 

ラビット・ホール『ラブ!イズ!

オーバーッッ!』

 

それは、ラッシュ終わりの合図、

火花のスタンドの拳が………

 

兜ごと頭部を吹き飛ばしてしまった……

 

綾瀬「………ん?何の音です?」

 

露伴「火花ッッ!?」

 

火花「えッ………!?や、やばいッ!

ヒバナやりすぎたかなッ!?殺しちゃった!!」

 

綾瀬「なんですって」

 

火花がマキシマム・ザ・ホルモンを見た、

欠損した首からはドクドクと原油が流れ出ており

それ以外にも甲冑の関節からは出血のように

原油が漏れてきていた

 

辺りになんとも言えない空気が漂う

火花は顔を真っ青にしていた

 

その時だった

 

鳥山「優しいねェ〜、本当に君は優しいよォ」

 

玄関先に現れたボサボサな髪に

ゆるい眼鏡をかけた冴えない男、

その場にいるものは理解した

 

名舟「まさかッ!貴方がこの攻撃をッ!」

 

露伴「いや……そうなのか……ッ!?」

 

名舟「……というと?」

 

露伴「スタンドとスタンド使いはダメージが

共有される、火花が顔を真っ青にしているのは

スタンドの頭を吹き飛ばしたからだ

本来ならスタンド使いの頭も卵みたいに潰れる」

 

鳥山「そうだね、普通ならそうだねェ

だけどおじさんの『スタンド』は

ちょっとだけ、特別なんだよォ

言うならば、『まだ変身を残している』

 

そうだろォ?

 

立て、『マキシマム・ザ・ホルモン』ッッ!!」

 

ガシャン、とうつ伏せになっていた騎士は、

手を使わずにぐらぁりと立ち上がった

 

火花「え…………」

 

首のない騎士が、立ちすくむ

そしてグジュルグシュルと甲冑の中から

不快極まりない音も強烈な刺激臭がし始めた

甲冑の中で何かが蠢いているように

 

殴られて外れかけていた

各間接部が連結されていく

 

鳥山「スタンドとは、精神の発露だ……

我がマキシマム・ザ・ホルモンは、無敵の騎士だ

何故ならこのスタンドの真の姿は

騎士の姿ではないからだ……」

 

綾瀬「まさか……この蠢く音、異様なまでの臭い

…‥火花!逃げてくださいッ!

マキシマム・ザ・ホルモンは『騎士姿』の

スタンドではありませんッッ!!」

 

火花「えっ……な、何が……?りらっち先生」

 

首から垂れていた真っ暗な液体は転がっていた

深紅の兜を捕えると、

そのまま自らの首に『乗せた』

 

鳥山「まずは、君から仕留めちゃうよ」

 

綾瀬「マキシマム・ザ・ホルモンの本体はッ!

『甲冑の中』の『原油』の方ですッッ!!」

 

マキシマム・ザ・ホルモンが

両手のパタを地面に叩きつけた!!!!

 

火花「防御してラビット・ホールッッ!!」

 

名舟「火花ァッッ!!」

 

鳥山「もう遅いよォ〜、君がさっき殴ったから

そのスタンドには『原油』が

たっぷりついている」

 

火花の全身が爆炎と共に炎に包まれたッッ!

 

火花「わぁああああああっっっ!!!」

 

露伴「火花!!!」

 

だが綾瀬がそれより先に手探りで手すりを

確認すると、一切の躊躇いもなく乗り越えて

燃えている早乙女火花の音を頼りに飛び降りた!

 

鳥山「君は迷いないねぇ、

でも目が見えないのに何をすると……」

 

綾瀬「イン・トゥ・ザ・ナイト!

火花の影は掴みましたね……

では!露伴君に投げてください!」

 

燃えたまま火花が階段にいる露伴に投げられた

 

露伴「ヘブンズ・ドアーッッ!」

 

火花の顔が開く、そして高速で書き込んだ!

 

[身体が燃えなくなる]

 

火花の身体が鎮火した………

その身体を名舟が受け止めた

 

名舟「大丈夫……!?」

 

火花「あは…‥王子様かな?」

 

制服と髪は燃えてしまったが

大きな火傷まではしていないようだった

だが、もう満身創痍すぎて火花は完全に名舟に

身体を預けることしかできない状態だった

 

綾瀬「ぐっ……ぅ……」

 

スタンドで落下は抑えたとはいえ杖もないまま

2階から飛び降りた綾瀬がうめく

マキシマム・ザ・ホルモンがシャキシャキと

パタを尖らせながら迫ってくる

 

綾瀬「露伴君………ッ!」

 

露伴「ダメだ、僕のヘブンズ・ドアーでは

ここからだと玄関まで届かない……ッ!」

 

鳥山が気だるげにあくびをする

まるで、思ったより早く片がついたとでも

言うかのように

 

鳥山「仕留めろ、マキシマム・ザ・ホルモン」

 

綾瀬「イン・トゥ・ザ・ナイト……ッ!」

 

綾瀬を護るようにしてスタンドが立った

だが影を掴むスタンドでは

原油を司るスタンドには

パワー的にも能力的にも勝てない

 

露伴も本体に届けば一撃で再起不能に出来うるが

本体は遠距離、

しかもスタンドがほぼ自立している

相手に対しては難しい

 

唯一の対抗だった火花は再起不能寸前

無傷の名舟はスタンド使いではない

 

綾瀬「まさか……たった1人に

ここまで追い詰められるなんて……ッ!

翠!火花を連れて逃げてくださいッ!

彼の目標は私と露伴君です!子供達じゃない!」

 

名舟「綾瀬先生……ッ!」

 

露伴「メガネの君、素人だろう?

殺すのはあまり慣れてないと見える

学生2人だけでも見逃してはくれないか」

 

火花「露伴……先生………」

 

鳥山「………いいよぉ〜おじさんは」

 

露伴「ありがとう、さぁ行きたまえ」

 

名舟は早かった、火花をお姫様抱っこしたまま

立ち上がると階段を降りてエントランスに降りた

鳥山が玄関先から脇にずれて道を開けた

 

名舟は名残惜しそうに2人を見ると

玄関へと走っていく

 

だが、その目の前に

マキシマム・ザ・ホルモンが

立ちはだかったッ!?

 

鳥山「………いや、ここで甘くするから……

覚悟が揺らぐから……

おじさんはいつまで経っても負け組だぁ〜ッ!

あの子のように俺は変わってやる

やってやるぞ、気が変わったッ!学生2人だろうが

この『鳥山 亮』は逃さないッッ!」

 

火花「すいすい!目の前にスタンドが来た!」

 

名舟「えっ……!?」

 

綾瀬「火花!翠!」

 

その時だった

 

 

名舟翠が『膝をついた』

 

火花が名舟の顔を見ると、目がとろんとしていた

 

火花「すいすい!?待って今はダメ!」

 

病院にも通っていた、

いつもぐっすりするようにしていた、

でもインヴィジブル・マンのマスターに

法廷で捕まった時も

病院の待合室でもこの体質は唐突に来るこの

『過眠症』は何故か治らなかった

 

いつも決まって『極度に緊張した時』

名舟 翠は眠たくてたまらなかった

でも10歳のある夜から始まったこれは

精神科医のカリメッラすらも首を傾げた

 

だって何も身体に異常はなかったから

脳波にも体質にも精神にも異常はなかったから

ドクター・カリメッラの結論は

『何らかの精神の原因が、眠ることで

心を防御しているよう』という曖昧なものだった

 

でも、でも!

 

今はその時ではない!名舟は心に叫んでいた

火花が頰をぺちぺち叩いたりして叫んでいる

なのに、眠たくてたまらない

寝たくないのに眠たくてたまらない!

 

 

やめてくれ

 

 

今は眠たくない

 

 

火花を守らなきゃいけない

助けを呼ばなくてはならない

 

これは今は名舟 翠にしか、僕にしかできない!

 

……マキシマム・ザ・ホルモンが腕を交差させる

そして、火花を抱える名舟に原油の雨を放った

名舟が眠そうな顔で顔を上げる

虚空から飛んできた原油の雨が迫ってくる───

 

名舟「起きてくれ名舟 翠………

僕は火花を守らなくては行けないんだッッ!!」

 

飛んできた原油の雨は

 

 

 

 

途中で失速して名舟まで飛ばずに床に落ちた。

 

 

名舟「…………え?」

 

火花「え……何………?」

 

露伴と綾瀬もそれを見ていた

異変は、外にいた鳥山にも感じられた

 

鳥山の足元にボドリと落ちたのは

電線にいたカラス、ふと見上げると

止まっていた20羽のカラスの群れが

草木にいた虫達が、地面に落ちていく

 

鳥山「なんだこれはァァ〜〜……!?」

 

水滴も垂れていく、

花は頭を垂れていく

シャンデリアの火も、

原油の残り火も揺らぎ消える

 

火花「ん………なにぃ……?」

 

火花も目が閉じかけた、

なんだか凄く…‥凄く……

 

名舟だけが、鳥山をしっかり見ていた

その名舟の後ろに白い人影が、

ゆっくりと現れ始めていた

 

To be continued………




[マキシマム・ザ・ホルモン]
【破壊力-A/スピード-C/射程距離-B/持続力-B/
精密動作性-A/成長性-B】
返り血を浴びたように深紅の騎士甲冑という
見るからにかっこいいスタンド
その両手の先は赤熱したパタ(拳に嵌め込む
一本槍がついた中世の籠手型武器)を
装備しており、発現時には両腕を交差させて
それを見せつけるかのような構えを取る、
実は鎧の中身、そして本体は甲冑の騎士ではなく
原油の塊であり、強力な粘着性を持つため、
触れた瞬間にベタベタと
くっついてしまう上に可燃性でもあるという
とんでもない性質を持つ、
これを床や壁をドロドロに汚しながら
引っ付いた人もろとも引火させる戦略が得意
元ネタは日本のデスメタルバンド
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