綾瀬凛藍は夜に駆けていく   作:眠 いつか

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第9話 不慮の事故

一人の少女が岸部露伴の家の玄関に立った、

焼けこげたせいで仮の扉になっているのを見て、

少女から小さく息が漏れた

 

インターホンを押す、

ゆっくりと中から扉が開いた

 

露伴「誰だ、見ての通り……」

 

少女が立っていた、

腰まである長い緑銀の髪を風に靡かせて

幼くも整った顔立ちのぶどうヶ丘高校中等部の

制服を纏い、学生鞄を前に両手で持った少女が

 

露伴「なんだ君か………どうしたんだ?」

 

少女が、首を傾げながら微笑んだ

 

少女「お見舞いに来ました、露伴先生」

 

露伴が扉を更に開けた──────

 

 

 

 

〔第9話 不慮の事故〕

 

篠突く雨が綾瀬の屋敷の屋根を叩いていた

露伴邸でマキシマム・ザ・ホルモンと

激闘を繰り広げ、怪我を負った3人が

手当てのために少し休んだ3日後、屋敷の中には

綾瀬が一階のお気に入りの場所である

窓を背にするソファーに座り、窓枠にヒバナが

ソファーの手すりに名舟が座って訪れた2人と

向き合っていた

 

焔森「数日前、漫画家の露伴先生の家で

火災があったとは聞いていたけど……

まさかスタンドの攻撃だったとはね……」

 

時折間「それより俺が驚きやがったのは

翠ちゃんがスタンド使いになったとはなぁ、

『ヨルシカ』だっけか?

綺麗なスタンドだったぜ」

 

名舟が軽く会釈した、綾瀬は手に持つ白杖を

握り直して焔森に目で合図した

 

焔森「マキシマム・ザ・ホルモンのマスターを

調べさせていただきました、鳥山亮 42歳

カメユーデパートに勤務していて、

いつも要領が悪いことで叱られていたことと、

根暗な印象だったと聞いています

間違いありませんね?」

 

綾瀬「私と咲織が調べた限りでは」

 

時折間「なんか不審な点でも……

あ、なんか犯罪や問題歴ですかい!?」

 

綾瀬がぴっと指を差した

 

綾瀬「それです。確かに優秀な人物とは

言い難いですが、かといって問題を起こすような

人間ではない、

この人間は見る限り『小心者』です

人を加害する、

いえ『加害出来る』人間ではない」

 

火花「でも、実際あのおじさんはめちゃくちゃ

ヒバナ達と戦った〜!どうしてだろ〜ね〜!」

 

時折間「さっきの露伴先生から聞いたっつー

『矢』の話が本当だとすると、

この街にいるってことか?

『矢』を持っている人物がよォ」

 

名舟「えぇ……それも只者ではない、

思うにその人は綾瀬先生と同じ、

雰囲気があるんじゃないでしょうか」

 

焔森「というと?」

 

名舟「『この人のためなら戦える』という

カリスマ性です、あの鳥山氏は明らかに

自らの意思で戦っていました…….厄介なことに」

 

火花「それならちょっとわかるかも〜!

ヒバナもりらっち先生か友達の為なら

何でもできるよ〜!」

 

時折間「ただ、それじゃあヒントには

ならねぇなぁ

どっから探しゃあいんですかい?」

 

焔森「………『スノビズム』─────」

 

綾瀬「それが確実かとは思います咲織、

私が火野君に訊くように頼んだ

質問はどうなりました?」

 

焔森「いつからその力を手に入れたか?ですね

ゲロりはしませんでしたが、調べた限りでは

最初に爆弾もないのに起きた

爆発事件は森のなかで

空き缶が破裂した2ヶ月前です」

 

綾瀬「ロキ達の空き巣が増え始めたのも、

大石さん宅への強盗事件も2ヶ月前……

ともなれば」

 

名舟「事件の鍵は今や杜王町最大の不良グループ

『スノビズム』が持っていそうですね」

 

時折間「早速、ちょっくらガキどもに

『訊いて』みやすか?」

 

綾瀬「証拠もないのにそんなことをしても

尻尾は捕まりません時折間君、

ひとまず私と咲織、時折間君は仕事の合間に、

翠と火花は日常に気に留めておく程度でいいので

気にしてみてください、特に二人はまだ学生

危険な目には合わせられませんし、

青春の邪魔はさせられませんので」

 

名舟と火花は何か言いたげだったが

見えないながら

しっかりとこちらを向いているような

綾瀬の顔を見て何も言えなくなった

 

綾瀬「ひとまず今日は……………

 

………?」

 

綾瀬が窓へと振り向いた、

両脇にいた名舟と火花も

窓を見るがそこには降り続ける雨の竹林が

見えるだけで何もなかった

 

火花「りらっち先生?」

 

綾瀬「…………いえ、なんでも

ひとまず今日はお開きです、学校と仕事前に

すみませんね、名舟と火花はお休みが続いたので

遅刻しないように、

時折間君、私がいない裁判所を

お願いしますよ、咲織も頑張って」

 

皆が口々に言葉を交わした、そんな屋敷から

遠ざかっていく小さな影がいた

雨の大地を滑走していくようなその影は、

色は『銀色』、髪型は『ツインテール』

形は『女』ッ!まるで流体金属が少女の姿を

しているかのようで、顔には目のような金の点が

二つあるだけのそれは『インスタントカメラ』を

手に、雨の中を滑っていったッ!

 

そして、雨の中に立っていた少年の足から

螺旋状に肩へと登る、特徴は金髪の巻毛ッ!

ジャケットシャツッ!その少年はッ!

だが雨の中にもかかわらず一切濡れていなかった

 

少年「どんな感じだったってワケ?」

 

流体金属の少女「きゃは〜⭐︎すっごい重要だよ

キングの言う通り、お仲間発見って感じィ〜?」

 

流体金属の少女「全部でごにーん!綾瀬判事、

名舟翠、早乙女火花、

あとは火野を捕まえた刑事と

知らないおっさーん!全殺しでおっけー?

浮楽くぅん!」

 

浮楽(うらく)と呼ばれた……

スノビズムメンバーの神宮寺 浮楽がやれやれと

首を振った

 

神宮寺「キングから依頼されたのは

綾瀬判事だけってワケ、勝手に殺したらキングが

ブチギレってワケよ」

 

流体金属の少女「それやっば〜⭐︎じゃあ、うちは

これを届ければ良いっしょ〜!?」

 

神宮寺「俺は仕事をやるから頼むぜ、

なぁ?『スリル・ショック・サスペンス』」

 

スリル・ショック・サスペンスという

スタンド名で呼ばれた流体金属の少女は

甲高い笑い声と共に雨の中にカメラを持って

滑っていった、神宮寺がニタリと笑った

 

神宮寺「んじゃこっからはスノビズムの

『始末屋』神宮寺 浮楽の仕事ってワケよッッ!」

 

神宮寺はそういうと街の方へと

向かっていった……

 

 

今日は仕事も休みということで

綾瀬は暇していた、

あんな目にあったからとて家に籠る道理はない、

雨も上がっている、久しぶりに趣味の散歩でもと

街に繰り出そうと決め、

綾瀬は手探りで立ち上がる

 

綾瀬「久しぶりに普段着に袖を通しますか……」

 

綾瀬はそう一人で呟くと衣装箪笥の扉を開けた

見えないが、そう多くはない、

お気に入りの黒いゴシックドレスを手に取ると

背後からイン・トゥ・ザ・ナイトが現れて

その服を預かるように手に取った

 

寝巻きのままだったと言うこともあり、

てきぱきと綾瀬が着替えていく、

ナイトガウンの姿は

ゴシックの貴婦人のような姿になっていく

そして頭にはイン・トゥ・ザ・ナイトがそっと

ミニハットを被せ、手には白杖を持たせた

箪笥の中から盲人用の懐中時計を左腕に巻くと

背筋を伸ばした

イン・トゥ・ザ・ナイトが恭しく自らの帽子を

取って一礼した、まるで執事が主人の身支度を

終えたことを告げるように

 

綾瀬「さて、出かけますか」

 

綾瀬はそういうと玄関を開けて、お気に入りの

ブーツに脚を履かせて、屋敷を出ていった………

 

 

雨上がりの昼の杜王町は、独特の匂いがした

ペトリコールが、排気ガスと市場の匂い混じりの

変わった匂い、目が見えない綾瀬は撫でる風と

漂う匂いだけでのんびりと歩いていた

白杖でかつんかつんと黄色い点字ブロックを

叩きながら、行き交う人々とすれ違う

 

綾瀬「確か、もう冷蔵庫の中身がなかったような

………スーパーにでも行きますか」

 

手探りで良さそうな野菜やら果物やらの食材を

カートに放り込んでいき、

パンパンのマイバッグを手に出てきた

 

綾瀬「新作のオムニバスジャズのアルバムの

発売は今日でしたっけ………」

 

店員に案内されてジャズバンドの新作アルバムを

少し試聴すると会計したCDをバッグに入れて

出てきた

 

綾瀬「そろそろピンクダークの少年の

点字漫画が出ていそうですね」

 

行きつけの書店の店員に声をかけると、

察した店員が最新刊の点字漫画を手渡してきた

それも会計してバッグに入れて出てきた

 

綾瀬「あとは………」

 

綾瀬がまた点字ブロックの上を歩き始めた

そして、横断歩道の前で立ち止まった

自分が先頭に後ろに市民が青信号を待ち始める

車の行き合う風音だけが聞こえていた

 

信号が青に変わる

 

かっこー、かかこー、かっこー、かかこー

 

カッコウの音、綾瀬のような見えない人のための

青信号の合図、

それを聞いて綾瀬が一歩踏み出した

 

その瞬間、後ろにいたサラリーマンが

綾瀬の襟首を掴み上げると後ろに引きずった!!

 

綾瀬「!?」

 

プアアアアァァァァァーーーーンッッッ!!!!

 

パッと通ったトラックがッ!

青の横断信号を横切る!それも猛スピードでッ!

そのまま反対側の交差点の電柱へと激突したッ!

物凄い衝撃の事故に悲鳴が上がる

 

綾瀬「あ、ありがとうございます」

 

サラリーマン「す、すみません、

強く引いてしまい……お怪我はありませんか?」

 

綾瀬「大丈夫です、助かりました」

 

と、綾瀬が白杖を支えにしようと突こうとしたが

何故かずるりと白杖の先端のゴムは

点字ブロックへ付けずに滑った、

からんからんと、杖が転がる

 

工事作業員「だ、大丈夫ですか?」

 

屈強な男は綾瀬の手を取るとゆっくりと立たせた

近くにいたOLが白杖を手渡した

 

綾瀬「皆さんありがとうございます、

トラックは……大丈夫でしょうか……」

 

綾瀬は礼を言いながらも心配に後ろ髪惹かれる

思いの中、横断歩道を渡っていった

 

日差しの中、街を歩いていく、

遠くからは救急車の音が近づいてきていた

なんとなく今日はもう帰ろうかと思っていた時

周りの市民がざわめいているのが聞こえた

 

綾瀬「何かありましたか?」

 

市民たちは皆、口を開けて指さしていた

うえ!うえ!と叫ぶ者もいる

 

綾瀬「上…………?」

 

その瞬間ッッ!!空から工事現場の鉄柱が

雨のように降り注いで来たッッ!

音だけで全てを把握するッッ!

 

綾瀬「イン・トゥ・ザ・ナイトッッ!!」

 

落ちてくる鉄柱の影をイン・トゥ・ザ・ナイトが

出来るだけ多くずらすッ!何本もの鉄柱は

綾瀬を囲むようにして地面に突き刺さったッ!!

 

きゃああああーーーーーっっ!!と

つんざく悲鳴が木霊する、

だが綾瀬はなんとか無事だった

一本も刺さっても掠めてもいない

それでも綾瀬は辺りを見渡した、

どよめきの中、耳を凝らした、

『トラック』も『これ』も確信した

 

綾瀬「始まっていますね、

『スタンド』の攻撃が」

 

 

どこかの高所から、彼は見ていた

スノビズムの始末屋、神宮寺 浮楽は見ていた

 

神宮寺「悪運の強い女ってワケか、厄介だな

ま、でもそれなら殺すまで何度でもってぇワケよ

仕方ねぇよなぁ、何があっても

 

不慮の事故、ってワケ」

 

神宮寺の背中にくるくると横回転しながら

スタンドが現れた、羽を広げたそれは

石膏像の頭部から直接羽を広げた頭だけの天使

だがそれは無数の標識に刺し貫かれており

その顔は苦痛に歪んでいた

 

神宮寺「『カゲロウ・デイズ』ッッッ!!」

 

 

綾瀬が刺さっている鉄骨を手探りで

間を抜けていく、

通行人達の心配する声を尻目に、

綾瀬は杖で地面を叩くと、

大通りから一本、路地に入った!

 

綾瀬「この攻撃は危険です、私を狙って

一般市民が巻き込まれかねない……ッ!

本体を探さなければ……!」

 

と、何かが近くの影の上を高速で通ったのを

感知した、綾瀬が方向と速度から位置を

割り出して左にずれた!

 

ドギャアァァーーーンッ!

 

滑ってきたのは恐らく路上駐車してあった

大型バイクッ!ギリギリでスロットルを掠めて

綾瀬はかわした!

 

ゴロゴロゴロ………

 

綾瀬「矢継ぎ早にきますね………ッ!

イン・トゥ・ザ・ナイトッ!」

 

葉が触れ合う音、近くの街路樹の影にスタンドを

掴まらせると綾瀬は空中に浮かび上がった!

 

足元をたくさんのリンゴがゴロゴロ転がっていく

綾瀬がため息をついた、それもつかぬまに

今度は街路樹が傾き始めたッ!

 

綾瀬「何ですって………ッ!?

手を離してくださいッッ!」

 

綾瀬がスタンドに手を離させる、1mほど上から

投げ出された綾瀬が地面に転がって

受け身を取ったノーブルブラックの

ゴシックドレスがばさばさと音を立て乱れた

 

街路樹はズズゥン……と音を立てて倒壊した

それから離れるように反対側のブロック塀に

手を添えて、位置と障害物を把握しようと試みた

だがそのブロック塀もガラガラと音を立てて

崩れ落ちて綾瀬を潰しにかかったッ!

 

もはや綾瀬は路地の真ん中に座り込んだ

白杖を地に突き、目を閉じ、耳を当てて辺り一帯

全ての音を聞き取ろうと集中した

 

綾瀬「『攻撃』の謎は解けている……ですが

解けたところでこれは如何したものでしょうか」

 

綾瀬「…………こちらから、

『本体』を探すしかない

恐らくこれは『摩擦を切る能力』

そんなの、長々と相手にしていられません」

 

綾瀬「『摩擦』ですか……

そんな万物にある概念を

どうやって対処して探せば……

全く、昴君と織姫君のスタンドが

羨ましく思います、こんな理不尽な攻撃、

無い物ねだりも出るというものですね……」

 

 

一方、近くの高所から神宮寺は『高みの見物』を

決め込んでいた

 

神宮寺「オイオイオイ、こんな女に火野の兄貴は

負けたってワケ?ま、でも3対1とも聞いたし?

1対1ならこんな程度ってワケか」

 

神宮寺「楽な仕事だぜ、これなら全ゴロも

余裕ってワケだな、あの綾瀬はオレからすりゃ

おばさんだが、火花と翠だっけか、あれは良いな

生捕りにしてキングの土産にするか

そしたらオレも……晴れてスノビズムの

幹部ってワケ!!」

 

神宮寺「夢が広がりまくりってワケだなぁッ!」

 

カゲロウ・デイズも後ろで苦痛な顔のまま

ケタケタと笑っていた、

あんな無様に座るしかない

盲人など何も怖くない、

トドメの時間が迫ってきた

ちょうど近くに石を満載のダンプカーが

通り過ぎようとしている、神宮寺が思わず大声で

笑い出した!勝利を確信したッッ!!

 

神宮寺「『カゲロウ・デイズ』ッ!

これは嘘じゃねぇ、『嘘』みたいな陽炎が

『嘘』じゃねぇって笑ってるってワケェッッ!」

 

カゲロウ・デイズが翼を広げて飛翔していく、

そして真面目に仕事に走っているダンプカーに

紫色に目を光らせるとダンプカーは傾斜がついた

路地へと引き込まれるように滑り始めたッッ!

 

進行方向に座り込む女性、

ダンプカーのドライバーがクラクションを鳴らす

必死にブレーキを踏みながら、声も上げながら

警告を叫んでいた

 

見えないが、それでも綾瀬は感じ取っていた

明らかな命の危機を、このままでなす術もない

だが滑るダンプカーはその流れで横に回転し

ボンネットとバックを両脇のブロック塀に

擦り付け路地全体を塞ぐ様に迫ってきているッ!

 

綾瀬「街路樹はもう信頼出来ない、かと言って

今からブロック塀に昇るのは……ッ!」

 

まずい

 

これは、本当にまずい

 

イン・トゥ・ザ・ナイトのスタンドパワーでは

数トンもあるダンプカーなど止められない

逃げ場もない、人気も無い

 

綾瀬が地面に手をやる、何か活路を見出すために

手に置いた場所にはちょうど近くの3階建て住宅の

影が伸びており、波紋が影の中に広がった

 

その時……綾瀬が思い出したのは

数日前の露伴邸での戦いだった

 

あの後火花と翠に触れた時感じた、ボロボロの2人

16歳と17歳の女の子に戦いを任せて、

自分は何も出来ていなかった、炎の拳と眠りの花

戦い向きでは無いとは分かっていても

あの時の2人の笑い声は酷く自責させた

そして自分には『戦う意思』がないことに

気づいた

 

法に触れるのだから仕方ないと思いつつも

正統防衛も、防御行動も取らず、

2人を死地に追いやりかけ、

そのことが心残りだった

だから療養しながら、密かに決意した

もう、ここからは、これからは『説得』や

『脅し』で食い下がる様な被疑者達ではない

 

自分は、判事。この街の正義の象徴

『イン・トゥ・ザ・ナイト』はまさにその姿

夜の審問官、審判を下す影の執行者

そうでありたい

 

いや、そうでなければならないッ!

 

綾瀬「イン・トゥ・ザ・ナイトッ!

『影に触れて』ッッ!!」

 

イン・トゥ・ザ・ナイトが3階建ての住宅の影を

掴むのでなく触れた、波紋がアスファルトに

映る影へ広がっていく

 

綾瀬「この感覚、感じことがない……

『掴んでいる』のではなく『触れて』いる

イン・トゥ・ザ・ナイト、ちょっとアンテナに

触れてみて」

 

イン・トゥ・ザ・ナイトは握りあるのではなく

アンテナの影に指先を触れた、波紋が広がる

それは『アンテナの影』ではなく

『影そのもの』と確信した、

形すら変えて、自在に操れる様な

そんな気がしたッ!

 

綾瀬「この『影』を借りましょう、

触れた影を捲り上げてくださいッ!」

 

イン・トゥ・ザ・ナイトは住宅の影を撫であげて

魔術師の様に両腕を上げる、

漆黒のスロープのように影は捲り上がって

2人の前に現れたかと思うと滑走してきた

ダンプカーはそれに受け止められて止まった

 

綾瀬「今まで戦いということがなかったから

私は間違えていた、影を掴むと本物と連動する、

そして、その影の心が読めるのは

あくまで『副作用』だったッ!」

 

綾瀬「本当の能力は『影を支配するスタンド』

そうなのですね……ッ!?」

 

見えないのを知っている

イン・トゥ・ザ・ナイトは

自分の意思で綾瀬の手を取って一礼した

まるで、その通りと言わんばかりに

 

綾瀬「…………ありがとうございます、

私の『影(スタンド)』、これで私はこれからは

もっと堂々と─────夜を駆けていける」

 

だが逆に、形勢の逆転は

高台で見ている神宮寺を困惑させた

 

神宮寺「な、何ィーーーーッ!?

何だあのスタンドはァ〜〜!?火野の兄貴が

やられたのは犬のスタンド、影のスタンドは

何もしてなかった、『攻撃手段』すらないッ!

それが『スリル・ショック・サスペンス』からの

報告ってワケじゃねぇのかァァーー!?」

 

神宮寺「こんなはずじゃないってワケーーッ!」

 

と、神宮寺がふと顔を上げた、路地を見た

挟まったダンプ、崩れたブロック塀と街路樹

だが『綾瀬凛藍』の姿がなかったッ!

 

神宮寺「しまった……ッ!カゲロウ・デイズッ!

『索敵』だ、お前の浮遊能力で探せーーッ!」

 

カゲロウ・デイズの苦悶の顔に焦りが浮かぶ

金細工の様な羽根を動かして、路地を飛んだ

そんなに隠れられる場所は少ない

入り組んだ路地と路地、さらにもう一本入る

裏路地への細い道にスカートの端が見えていた

 

神宮寺「へ、へへ……やっぱりな、この路地から

目の見えないあんたが逃げられる場所なんて

多くないってワケ、影が利用できると良いなって

思うワケよォォォォーーーーッ!」

 

カゲロウ・デイズが裏路地の入り口に顔を向けた

 

ドギュウッッ!!

 

カゲロウ・デイズの鼻っぱしが何かに突かれ

仰け反ったッ!

 

神宮寺「ぼげぇぇぇえ!!?」

 

突き出されたのは杖先のような円柱!

漆黒のそれは、イン・トゥ・ザ・ナイトが触れる

影から形をなして飛び出していたッ!

 

綾瀬「私の戦う意志に答えたのでしょう

そして『戦う意志』には『武器』が必要です

影を自在操れるとなれば、どんな夜も闇も

私の味方です」

 

カゲロウ・デイズはふらふらと下がると

神宮寺の元へと戻っていく

だが、見えない綾瀬は飛行しているために

位置がつかめない、その代わりまたしても白杖を

地面につけて耳を添えた

 

綾瀬「逃しません、逃すものですか。」

 

表通りの雑踏、車の走行音、野良犬の歩く音

『金属の上を急いで走る音』、11時の方向ッ!

 

綾瀬は杖をつきながら、ブロック塀に手を当て

急ぎ足で『表通り』へと向かったッ!

そこは、2度目の攻撃、鉄骨が降ってきた場所

鉄骨の周りではパトカーが止まり、

警察と工事関係者が話していた

 

警官「あれ、綾瀬判事?」

 

通行人「あ、この方です!

怪我はしてない様ですがこの方に降ってきて」

 

警官「判事、お話を……」

 

綾瀬はそれどころではない

工事現場をの骨組みを見上げた、

足に影が触れている、飛べると判断したッ!

 

綾瀬「イン・トゥ・ザ・ナイトッッ!!」

 

紳士が骨組みの影を掴んでいく

綾瀬もそれに連動して浮かび上がっていく

周りの者達が目を丸くするが

そんなことはお構いなしに、綾瀬は紳士と共に

垂直に骨組みへと浮遊していき、

建設途中の鉄骨の中段くらいに着地した

 

神宮寺「ほ、本当に来やがった………

だがァッ!」

 

着地した、鉄骨を固定するネジがキュルキュルと

回り始めていたッ!

 

神宮寺「『物体』の『摩擦』を消失させる

それがオレのカゲロウ・デイズだ!

ネジの固定は摩擦力!

それを消せばァァ〜〜ッ!」

 

ガゴンッッ!と鉄骨が空中を落下し始めた

綾瀬を乗せたまま、鉄骨が墜落するッ!

 

神宮寺「つまり、あんたの負けって

ワ・ケ・ェェェェェ〜〜〜ッッッ!!!!」

 

ギャアアアンッッッ!

 

鉄骨が鈍い音を響かせて工事現場の地面に

落下した、綾瀬は当然、それに乗ってたはず

神宮寺は『勝利』を確信したッ!

 

神宮寺「…………………あれ?」

 

神宮寺が下を見た、骨組みの真ん中あたり

何もない空間に

 

綾瀬「イン・トゥ・ザ・ナイトは、

影を掴みました」

 

綾瀬「ここは建築途中の骨組み、

組み上がる足場と鉄骨はあちこちに

影を落としています」

 

神宮寺「なにィィィィィィィイイ!」

 

綾瀬「右手は掴んでいます、左手は……

『あなたの影』を掴んでいます」

 

神宮寺「はっ!?」

 

神宮寺が足元を見た、時刻は17時、夕方ッ!

夕日に伸びる影は、綾瀬が浮遊する近くまで

伸びていたッ!

イン・トゥ・ザ・ナイトがぐぃぃっ!と

思い切り引き寄せた!

 

神宮寺「バカやろおおおおおッッ!?」

 

神宮寺がたまらず鉄骨から足を滑らしたッ!

何もない空間へと引き摺り込まれたッ!

空中にいる綾瀬へと落下していくッ!

 

神宮寺「カ、カカカカ、カゲロ……」

 

綾瀬「イン・トゥ・ザ・ナイトッ!」

 

右手を離したッ!そして両手で

両側の鉄骨の影に触れた、影に波紋が広がる

左右の鉄骨の影から影の杖先が伸びるッッ!

落下してくる神宮寺の風切り音に耳を澄ませ

狙いを正確に定めるッ!

 

綾瀬「判決(ジャッジメント)ッッ!!」

 

そして、空中の神宮寺を左右から挟み込む様に

思い切り打ち据えたッッ!!

 

神宮寺「ぼぶェーーーーーーッッ!!」

 

 

 

意識を失った神宮寺が落下してくる

それを風切り音を頼りに抱き止めると

イン・トゥ・ザ・ナイトに支えてもらいながら

地面へと降臨した

 

綾瀬「…………はぁ…飛んだ休日になりました」

 

工事現場に警官達が入ってきた、

 

焔森「あれ、綾瀬先生!?

通報を受けてきたら……!?」

 

綾瀬「あぁ、ちょうど良いところに……

この子に襲われましてね……対処しました」

 

焔森「これは……スノビズムメンバーの

神宮寺 浮楽ですね、ありがとうございます

それは良いですが……イン・トゥ・ザ・ナイトに

戦闘能力はないはずでは……!?」

 

綾瀬「話すと長くなります、外の鉄骨についても

話せばなりませんので、乗せてください……」

 

焔森「あ、はぁ、もちろんです綾瀬先生

あなた達、この神宮寺容疑者を連行して!」

 

恐怖と衝撃で意識も絶え絶えの神宮寺を

警官達が抱えて連れていく

綾瀬も焔森に手を引かれてパトカーへ

向かっていった………

 

 

そのボロボロに大変なことになった工事現場の

鉄骨に座り、あの液体金属の少女が座っていた

 

S.S.S「あーあ、捕まっちゃった〜!

キング、どうすんの〜!?」

 

手に乗せた無線機から覇気のある声が聞こえた

 

亜門『奴がしくじるなんてな、

こうなっちまったからには仕方ねぇ

アプローチを変えるだけだ、もう始める』

 

S.S.S「斉唱四角学園生のスタンド使いの

素質がある子に矢を打ち込む、そんでもって〜

あのスタンドで差し向ける、楽しみ〜!

あの箱庭みたいな学園が混乱するんだね〜!?」

 

亜門『そう『動乱』と『混乱』

それが俺たちの望みだ、それこそ望みの社会だ

それでこそ『スノビズム』だ!!』

 

スタンド:スリル・ショック・サスペンスが

ニタリと笑う、夕陽に染まる

杜王町の街並みを見下ろしていた。

 

To be Continued……




[カゲロウ・デイズ]
【破壊力-E/スピード-D/射程距離-E/持続力-B/
精密動作性-B/成長性-C】
標識が突き刺さって苦悶の表情に歪んだ
頭部に直接羽が生えたタイプの天使
「摩擦の消失」という能力を持ち、
どう見ても事故にしか見えない上に、
音もなく攻撃が来るため、まさに『暗殺』に向く
だが物体にしか使えないため、
間接的な攻撃に限定される
元ネタはじん/大自然の敵Pの名曲から
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