夜明けの黄金城   作:桃羽玉箱

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なんか色々と酷いです
つい筆が乗ってしまいました。


13話 ルリの芽吹き

 

 + + + + + 

 

 

 (いっ)たぁ────い!!!

 左腕が痛すぎる! つか、なくなってるし! 顔面も火傷で痛い!

 なんかもう、全身が痛いのと血が失くなっているせいか気分も悪い。吐きそう。それに、最後の最後でカエデレにブッ刺された毒のせいもあるのか、妙に全身が熱っぽい。主に股間。

 体力ゲージはまだ4割ほど残ってはいるが、失血からの気絶状態への移行もあり得る……ぱっぱと終わらせないとヤバそうだな。

 

 足元で屑がポリゴンとして崩れていくのを、踏み締めて確実に確認する。

 死亡確認、よし!

 いや、考えてみればパーティ組んでるんだから、視界左上の名前欄見れば……うん、カエデレは消えている。

 

 それから、杖を拾ってルリを嬲っている男二人へと先端を向けた。

 

 今の魔力残量じゃあ中級はもちろん、下級魔法すらギリギリ一発撃てるかどうか……でも、それは相手視点ではわからない。パーティ組んでいても魔力量までは共有されないから。だから、俺の詳細な状態を知る術がない彼奴らに、これは脅しとして使える。

 

「今すぐ逃げるってんなら、殺さない。どうする?」

「あ、ああ……」

「ま、待て! 装備だけは回収させてくれ!」

「今すぐと言った。それとも、お前らも爆殺されたいか?」

 

 思い切り睨みつけると、二人は怯えた顔で足を震わせながら黒い霧の何処かへと走り去っていった。

 装備はなく、体力も少ないし、足の怪我で移動速度にデバフがある。俺から逃げても生き残れるとは思えないが……たかだかゲームの中とは言えど、脅されたことを言い訳に強姦するような狼藉者にそんなこと考える余裕はなかったのだろう。

 もっとも、抵抗されていた場合は俺が負けていたので、これが最高の結果ではあるが。

 

「大丈夫……じゃねえよな」

 

 こうして、残ったのは俺とルリの二人だけ。

 先ほどから、妙にムラムラする。原因は最後の毒なのだろうが……ただでさえ気分が悪くて意識が朦朧とするのに……これじゃあ、俺も暴漢になってしまう。

 必死にルリから目を逸らさなけれど飛びついてしまいそうだった。

 

「……い、いえ。平気です」

「片袖無いし焦げてるけど、とりあえず羽織っとけよ」

 

 そう言って俺のローブをルリに投げ渡してから、俺は地面に転がっていた【自爆の指輪】を拾って鞄に放り込んだ。

 こいつは自爆するって能力の癖に消耗品じゃない。拾い直せば何度でも使える。魔物に攻撃されたりして破壊されなければ、の話ではあるが。

 再利用できるってのは便利だが、手元で使えば自分も爆破ダメージを受けるから投げ物として使わないといけない。現に、俺の左腕はカエデレの頭と一緒に弾け飛んだし。だけど、そう何度も拾っては投げるを繰り返したいか、と言われると、そこまで威力が高くもないのでなんとも……対人ですら急所に当てないと即死を取れないのに、対魔物となるともっと難しいのだから。このリスクとリターンのチグハグさが、威力と即効性に対して、俺でもギリギリで買える程度には値段が高くなかった理由なのだろう。

 俺がこれを買ったのは、どうせ敵に接近されたら死ぬから『もう自爆するしかねぇ!』というネタ半分ガチ半分の気持ちからだったので、今回の用例はまさに想定ケースと言える。

 今回はそれに助けられた。

 腕は吹き飛んでしまったが、確かに相手は殺せたし自分は助かった。十分に買ってよかったと言える。今後もたくさん自爆したい……いや、やっぱ痛いから嫌だ。痛覚再現勘弁してください……全身が火傷でヒリヒリするの……。

 

 せっかくなので、取り残されていたカエデレ、ケンシンとブラッドの鞄を漁って、そこから色々と荷物を頂いていく。犯罪者の物資だし、遠慮はいらない。ついでに、俺に使われた注射器も回収。犯罪者がどんな毒を使ってるかは知ってみたい。そして何より、カエデレの使っていた鋸と魔道具袋も回収できたのは嬉しい。一応、魔道具らしいから高く売れるかも。

 

「お、ラッキー」

 

 こいつぁ治癒の結晶石くんじゃないか。やっぱ保険に持ってるよねー。カエデレの鞄に入っていたのでもらっておく。

 

 遠慮なくそれを使うと、全身が光に包まれて瞬く間に傷が癒えていった。完全回復、やはり結晶石の効果は素晴らしい。

 だが、残念なことに解毒効果はないし、魔力量も回復してくれない。そのせいで、怪我は全部治ったのに魔力枯渇デバフで体調は悪いままだし、毒のせいで性欲も高まったまんまだ。

 あれ、中途半端に怪我だけ治したせいで余計にムラムラが酷くなったのでは……?

 振り返ってルリの方を見ると、俺のローブを羽織ってはいるが顔色が悪く、座っては居るのが限界に見えた。立って歩くのは厳しいか。

 

 エロい! やっぱ犯さな……待て待て待て。

 落ち着け俺。深呼吸しろ俺。

 えっちだ。ちょっとお胸に失礼……じゃないじゃない。深呼吸しろって。

 うお鼠蹊部すっご……じゃないって言ってるだろ!

 

「…………解毒アイテムとかない?」

「この毒に、対応する解毒薬がないと……毒の、内容がわからないので……すいません」

「だよね。ぶち(おか)……なんでもあり……ないです」

「……?」

 

 もしかしたら仲間くらいには毒の内容を……と思ったが、PKする相手には教えないか。そりゃそうだ。

 ルリの杖と鞄を手に取ると、手早くそれらを縛って運びやすく纏める。カエデレが捥いだルリ杖の魔石は鞄にでも入れておく。直し方とか知らないし。

 ルリの鞄は幸いにも大型の肩掛け鞄だったのでそれをまず俺は自分の肩に掛けて、俺の背負い鞄を前にして抱える。

 それから、暗い顔で俺を……いや、自分の鞄を持ち去ろうとしているようにしか見えない俺を見ているルリに近づくと、身を屈めた。

 

「えっちしよ」

「……え」

「……………ごめん何でもない」

 

 死にたい。

 やばいって。さっきからもう頭の中にエロいことしかないって。もうルリのお胸とお腹とお尻にしか目がいかないって。股間がずっと大きくなってるって。

 

「だから、一緒にえっち……はぁはぁはぁ……なんだこれ」

「……あ、あの……?」

 

 違うんだよ。

 一緒に帰ろ?

 って言いたいだけなんだよ。

 なのに、さっきから言葉が股間を通って外に出ていくんだよ。不思議だね。

 ところで、おっぱいとお尻はどっちが上かな? 鼠蹊部の方がエロいから……違うって!

 

 俺は可哀想なのが嫌いだ。だから、無理やりってのは絶対にやりたくない。でも、ごめん。ちょっと我慢できないかもしれない。回復したのは間違いだった。間違いなく。

 

「…………ひ、とりで、歩いて帰れる……かなぁ?」

「あ、その……無理、です」

「だ、だよね……」

 

 こんなんもうえっちしないと失礼じゃない?

 

「ああああ──────!!!!!!」

「ひゃっ」

「かわいいね」

 

 犯すよ?

 じゃないって。

 

 あ、そうだ。

 治って余裕ができたからムラついているのなら、余裕を吹き飛ばしてやればいいんだ。

 とりあえず荷物は置いておいて。

 指輪を取り出し、軽く投げる。そして──

 

「”爆ぜろ”」

「へ──?」

 

 爆音が再び響き渡った。

 

 

 + + + + + 

 

 

 突然、目の前で人が自爆したどうすればいいのだろうか。

 呆然と、ルリ(オレ)はリンを見つめていた。

 

「…………???」

 

 え、なにこれ。

 いきなり『爆ぜろ』って言ったら……ああ。魔道具のキーワード? いやでも、何で自爆したの? 本人、気絶しちゃってるんだけど。

 

「……えぇ?」

 

 困るなぁ……こういうの。

 だって、リンは……オレの味方? 敵? よくわからない人が唐突に自爆で気絶したせいで、逃げるべきか、助けるべきか、なんのヒントも無くなってしまった。

 

 羽織っていたリンのローブの襟元をぎゅっと握り締め鼻を埋めた。血と汗、それに何より焦げ臭かった。

 リンはカエデレを殺してくれて、ケンシンとブラッドも追い払ってくれた。オレを助けてくれた……そう思っていたのだけど、その後の『えっちしよ?』が不穏過ぎるというか……結局、襲いたかったのかな。

 

「……あ」

 

 もしかして、毒?

 カエデレが死ぬ直前に注射器を持っていたことを思い出した。そのすぐ後に、オレは二人に襲われたからよく見えていなかったけど、確かそうだった。オレにも二人にも使っていないのだから、当然注射されたのはリンのはず。

 意識を混濁させる……または、催淫作用のある毒。後者だな。オレも自分で自分に使ったことがあるけど、かなり理性が緩んだ覚えがある。あの時の自慰は大変気持ちよかった。

 

「まあ……こんな格好だしな」

 

 今のオレの格好はかなり酷い物だ。ほぼ全裸で、辛うじてブラ紐が引っかかってるくらい。ていうかパンツ何処行ったし。見つからないんだけど。二人のどっちかが持って逃げたのか? そんな訳だから、催淫作用の毒を盛られた状態でのオレの姿は、文字通り毒に違いない。

 

「ふーむ」

 

 つまるところ、頑張ってオレを助けたのは良いが、可愛い可愛いルリのあられもない姿を見て理性が吹っ飛んだ……でも、襲うのは不味いと、自分で自分を抑える為にやったのが──自爆。

 

「……だったら、いいなぁ」

 

 信じて、いいのかな。だって、オレだぜ?

 きっと、今回も取り返しのつかない結末になるはずだ。今までだってそうじゃないか。だから期待するだけ無駄で……でも、もうここにはオレたち二人しか居ない訳で……。

 もう、誰もオレを苦しめない。

 

「たす、かったんだ……」

 

 今になって、本当に助かったんだという感覚が湧き出てくる。

 あれ、なんか涙出てきちゃった。

 たかがゲームだ。でも、怖かった。この仮想の体を穢されると、オレの魂まで壊されるような気がした。

 嬉しい……のだろうか。それとも、怖いから泣いてるのだろうか。

 手が震える。足も震えてる。怖い。寂しい。辛い。悲しい。皆のギラ付いた目が、今も頭にこびり付いている。

 でも……言葉にするのが難しいけど、とにかくオレは今、安心しているのだと思う。

 

「あ……ログアウト、できる」

 

 毒が少しずつ抜けて来たのだろう。左手を動かしてメニューを操作するのに十分な可動が可能になった。まあ、ここで抜けてもアバターは此処に放置されるから、他の人に変なことをされるかもって考えると、怖くてできないが。

 

 つーか! おい!!

 状態異常と言ってもフルダイブで自由にログアウトできなくなるってやっぱ駄目だろ!!!

 勝手に指動かせば性行為システムが解放されるのも馬鹿だろ!!!!

 そのせいでどれだけオレの心が傷ついたと思ってやがる!!!!!

 

「ぜってぇ本社に文句言ってやる」

 

 それはさておき。

 まだ完全には毒は抜けきってないのがわかる。魔法は使えなさそうだし、ネカマの影響で元より身体操作に不安があるのに毒もある今では立って歩くこともできないだろう。

 と、なると。

 

「あいつに、助けてもらうしかないか」

 

 リン……助けてくれたコイツなら、また人を信じてみても良いかもしれない。いや、信じてみよう。

 オレの推測が正しければ、自爆してまで敵を殺して欲望を抑え、助けてくれたんだ。ちょっと胸を揉むくらいは許そう。こんな中身オッサンの汚れた体で良いならだけど。

 そうと決まれば──膝枕だな!

 

 

 + + + 

 

 

 いつか魔物に襲われやしないかとビクビク怯えること……多分、五分ほど。オレがリンの頭を自分の膝に乗せてからなら四分ほど。僥倖にもリンはもう目を様してくれたようで、火傷の目立つ眠たげな瞼がピクピクと動き出した。

 気合い入れろよ、オレ。助けて貰いたければ助けて貰えるだけの存在に──理想のルリに成らなくちゃいけない。あのネカマ修行の日々を思い出せ!

 手始めに、頭撫で撫でだ! 好感度を稼いでけ!

 

「……ぁ」

「──ふふっ。起きましたか?」

「…………大丈夫か?」

「……」

「いや……何でもない。一緒に帰ろうぜ」

 

 コクコク、と頷くことしかできなかった。

 え、あの……優しい。

 思い出したくもないことを聞かず、淡々と『一緒に』帰るって言ってくれたんだけど。不味いな。ホモになりそう。

 でも、オレは気づいてたよ。お前の股間が膨らんだままなことに。

 あれ……それはそれで、まだ催淫の毒が残ってるのに、こんな美少女に手を出さない理性があるってことか。紳士過ぎないか?

 

「っとと」

「だ、大丈夫でっ──ぁと」

 

 立ち上がった瞬間にリンが体勢を崩して膝をついた。慌ててオレは支えようとしたけど、そもそもこっちは立つことすらできなかった。

 想像以上に毒が残ってるというか……このデバフいつまで効果残るつもりだ? 残存時間くらい表示してくれよ、不便だな。

 オレと比べて、比較的体の自由が効くらしいリンは何とかと言った様子だが立ち上がることができていた。

 自分の分と、オレの荷物を抱えると、唐突にオレの傍に手を差し込んできた。あ、ちょっと横乳触ってる。

 

「……立てるよな?」

「は、はい……すいません。助かります」

「……いい」

 

 とは言え、リンも余裕はないのだろう。声が小さいし低い。余裕の無さが簡潔な言葉と態度に表れていた。だけど、ボロボロの格好と相まって歴戦の戦士みたいでクール──じゃないだろ!

 やばい。

 女アバター使ってるせいか? 『ルリ』として活動した時間が半年以上も現実より長かったからか? オレの中に『雌』が居る気がするんだけど?! これはこれで取り返しつかない気がするんだが?!

 

 慌ててブンブン(毒のせいでプルプルに近い)と首を振っておかしな考えを吹き飛ばす。考え直せ。オレは男だぞ。

 そう思っていると、リンはオレに背を向けてしゃがんで、何処となく安心を感じさせる背を向けた。

 

「……乗っかれ」

「……いいん、ですか? 私なんて、もう……足手纏いにしかなりませんよ?」

 

 魔法が使えず、一人じゃ歩けもしない。そんなオレは現状ゴミ同然だ。黒霧という危険地帯を抜けるに当たって、オレは足手纏いに──いや、いざって時の囮くらいにはなれるか。

 それならそれで、恩返しになる。なら……いいかもしれない。

 

「……どうせ俺も生還できるかわかんねえ。一人より二人の方がいいだろ」

「魔物が出てきたら、遠慮なく囮にしてくださいね?」

「はぁ? ……なわけ。一人じゃあ薄暗い霧の森って怖いだろ。一緒に居てくれよ」

「っわ、わかりまひた」

 

 お、オレ……笑えてる? 聖女っぽい微笑みできてる?

 格好良いことばっかりして来た癖に、いきなりか弱い部分を見せるってなんだ。ギャップ萌え狙ってるのかこいつ?

 いやいや、うん。わかってる。オレを置いていかないよって安心させる為の嘘だろうけどさ、嘘が下手過ぎる。微笑ましいよ。キュンとなんて──来てないからな?!

 

「あ、コンパスと地図は回収しといた。お前を担ぐのに手が埋まるから、代わりに持っててくれ」

「あ、はい。わかりました」

 

 それを受け取ってから、恐る恐るリンの背に体を預けた。

 わっ、思ったより広いし、暖かい。

 ほんのり香る汗と血の匂い。焦げ臭さも目立つ。色々と混ざっているけど、何だか癖になる匂いだった。

 ぷるぷる、と少し震えながらオレの視界が持ち上がる。

 リンが立ち上がったのだが、どうやら足が震えているらしい。そりゃあ、そうだろう。鞄二つに小柄とは言え(オレ)を抱えているんだから。リンの体力状況とかは知らないけど、毒のこととかを考えれば余裕はないはず。デバフも相当嵩んでいるだろう。

 

「お、降りましょう? ゆっくりなら、歩けますよ」

「……いい。このまま行くぞ」

 

 か、かっこいい……。

 

 

 + + + + + 

 

 

 リン()は今、鞄二つに女の子を抱えている。

 顔面は余裕を取り繕っているが、辛い。

 

 くっそ重いです。

 魔力枯渇状態のせいで吐き気と眩暈と寒気がします。全身に力があまり入りません。なのに、股間のブツだけはギンギンで元気いっぱいです。

 これ、割とマジで見つかったら魔物に殺されるな……逃げるとか無理だろ……。

 ルリには悪いが、万が一にはお前には俺と一緒に死んでもらうつもりだ。初デスも皆で死ねば怖くない。

 

 不安を抱えながらも、背中に感じる柔らかい感触と甘いに匂いでやる気を奮い立たせ、俺は町を目指して歩き始めた。

 




なんか思ったよりオッサンの雌落ちが激しい……もっと悪友みたいになるはずだったのに……
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