夜明けの黄金城   作:桃羽玉箱

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ヒロインが出ると言ったな。
あれは嘘だ。


4話 チュートリアル

 

 狼への奇襲を終え、小さな魔石を収穫して俺は町に戻った。

 やっぱり、戦闘は難しい。

 だが、それもそのはず。俺はこのゲームの醍醐味とも言える『魔力』を使わずに戦闘をしていたのだから。

 

 

 ──このゲームにレベル制はなく、スキル制に近い性質がある──

 

 誰が言った言葉か。俺はネットで流行っているのを見ただけなので、発信元は知らない。だが、その理由(わけ)を知れば、なるほど、と納得せざる得なかった。

 

 レベル制ではなく、しかしスキル制にも在らず。

 スキル制に近い(・・)のであって、そうではないのだ。

 

 このゲームには、体力と魔力共に『100』という数値が振られているが、これは割合を表しているに過ぎず、他に関してもよくある『攻撃力、または筋力。防御力、または耐久。速度、または素早さ』と言ったステータスは存在しないのだ。

 故に、どれだけ魔物を倒したとしてもレベルが上がるどころか、ステータスが存在しないので強くなる余地もまた存在しない。

 根本からレベル制を排したシステムである。

 リアル志向なのだから、リアルにレベルなんて存在しないだろ──という納得はできるし、世界観にも合っていて俺は好きだ。でもやっぱりレベルがないとちょっと寂しい俺が居る。

 

 そして、他のゲームによくある『剣術』や『頑強』に『水泳』『料理』と言った『スキル』もまた存在せず、どれだけ繰り返し行っても、そもそも存在しないのだから上昇する数値もない。

 根本からスキル制を排したシステムである。

 

 じゃあ、何が重要なのか?

 端的に言えば、プレイヤースキル。

 プレイヤーの腕前、技術、経験、それらが直接ゲーム内での強さに直結する。

 故に、スキル制に近い(・・・・・・・)性質なのだ。

 

 リアルで剣道やフェンシングの経験がある人は、最初から剣術が上手い。

 リアルで料理経験が豊富な物は、最初から美味い物を作れる。

 センスがない奴は、どれだけ練習しても槍が上手くならない。

 鈍臭い奴は、どれだけ魔物を倒してもあっさり魔物に殺される。

 プレイヤーがスキルに依存しているのではなく、技術(スキル)がプレイヤーに依存している。フルダイブという五体五感全てを自在に扱えるシステムだからこその仕組み。

 

 

 

 それから、魔法についてだ。

 

 設定として、プレイヤー含むこの世界の一部の生き物の体には魔力が宿っており、それをより高次元に使う為の脳・魔力器官・仮想筋肉などという器官が体には備わっている、とのこと。

 なので、『種族:人間』という設定の俺のアバターも魔力を使うことが可能で、身体能力の向上や魔道具の発動などが可能だ。

 

 設定はともかくとして、それでは、プレイヤーがどのような手段で以って意図的にこの魔力を操るのか。

 ボタンやコマンド?

 そんなわけがない。雰囲気ぶち壊しだ。

 やり方は主に二つ。

 詠唱か、気合い。

 前者はともかく、後者は馬鹿みたいだけど気合いは気合いだ。

 

 詠唱はそのままだ。

 決められた道具を持った状態で、決められた言葉を口にする詠唱をおこなす。すると、システムの方で勝手に魔法を発動させてくれる。

 ちょっと魔力感覚的なコツは必要だが、比較的簡単で、誰でもすぐにできるようになるらしい。

 欠点としては、詠唱を覚えないといけないのと、詠唱を完了しなければ発動しないこと。デバフや水中ステージなどで、口や声が封じられると使えなくなる。

 

 気合い。

 こっちは、魔力なる存在を知覚して、感覚で魔力を掴んで魔道具に流し込み、気合いで放出すると魔法が発動するのだ。

 こちらは詠唱がない訳だから、当然そのデメリットも排除できる。

 欠点としては、慣れないとできないし、センスが必要。

 

 フルダイブという意識から五感全てまでをも仮想空間にぶち込んでいるからこそ、可能とした『感覚的な魔法の行使』は、やはり多くのプレイヤーを虜にしているらしい。

 パソコンやスマホ越しにボタンをポチポチするのではなく、杖を掲げて『おりゃー!』と叫ぶと魔法が発動するのだから臨場感や実感も桁違い。その楽しさやワクワクは、経験者にしかわからぬ筆舌に尽くし難い感動があるのだろう。

 俺も早くやってみたい!

 

 

 そうそう。ステータスは伸びない、と言ったが例外もあるらしい。

 迷宮などの宝箱から、稀にステータスを上昇させるアイテムが手に入るとか。例えば、『魔力最大量上昇』『魔力最大出力上昇』『魔力生成量上昇』が今の所確認されている。

 全部魔力じゃねーか、というツッコミもあるが、このゲームにおいて大事なのは魔力らしい。

 一に魔力、二に魔力、三に魔力で、四にやっと剣術などが入るか。

 

 魔力による身体強化は魔法とは別枠のシステムらしく、魔道具無しに使うことが可能。そして、それによって、身体能力のおよそ全てを強化することができるらしい。なので、実質魔力の強化=全ステータスの上昇を意味する。

 そうは言っても、この魔力もまたプレイヤーの操作技術が洗練されれば効率が上がるらしく、とことん中身が重要になるゲームだ。

 

 

 色々と語ったが、俺はまだ魔力の使い方がわからない。なので、俺の能力は極々平凡な一般男性レベルの物でしかない。

 そりゃ、始まりの町の近くで湧く雑魚モブに一撃で殺されかける訳だ。だって魔力前提の難易度なんだから。

 

 そう言うわけで、俺は町にある『冒険者道場』へと向かった。

 初期アイテム『初心者用ガイドブック』によると『最初はここに向かおう!』とのことだ。注意書きには『※最初にここで魔力操作を学んでください。それがこの世界での第一歩です。知らずに町を出ると何もできず魔物に殺される恐れがあります』とのこと。

 

「……うん。実質チュートリアルを飛ばした俺が悪いな」

 

 一瞬で腕を飛ばされた苦い思い出を振り返りながら、俺は道場へと足を踏み入れた。

 

 道場──その名に違わぬ木造を基調としてた古い外観であり、内装もまたそのまま。

 入ってすぐのところには横長の受付机にローブを着た魔法使いらしい格好のお姉さん、戦士っぽい人、斥候らしき身軽で短剣を持った人など、様々な技術を持った専門家らしきNPCたちが何人も横並びに座っており、それぞれ看板には『魔法講習』『魔力講習』『剣術講習』『探索講習』などと立て掛けられている。

 この部屋からは廊下を挟んで幾つか大部屋に分かれているようで、目的ごとに部屋が異なるのだろう。屋内だけでなく、中庭として屋外部分もあるようだった。

 屋外では他のプレイヤーと思わしき人々が魔法を使っていて、受付にも何人かが並んでいた。おそらく、ここに並んでいるのは全員がプレイヤーであろう。

 

 幸いなことに、魔力講習は空いていたのでそこへと向かう。

 

 魔力、ワクワクする響きだぜ!

 

 

 ※ ※ ※ 

 

 

 『黄金城』を始めてから、早くも三日の時が流れた。

 語るまでもなくどハマりした俺は、空いた時間があれば常にログインしており、この三日間は現実よりも『黄金城』の滞在時間の方が遥かに長かった。もはや、どちらが現実かわかったものではない。

 

 この間に、とりあえずチュートリアルとも言える講習は終えてきた。

 

 

 まず、魔法関係の講習。

 魔力操作という基礎中の基礎を俺は問題なく習得できた。

 そのお陰で、魔力での身体強化は最低限の出力ならば無意識下でも常時発動ができるようになり、高出力への切り替えは深呼吸でもすれば可能になった。

 ちなみに、最低限の出力は魔力の自己補完に収まるので、常時発動していても魔力の消費と同時に回復が追い越すので常に発動しておいた方がお得だ。ある程度慣れたプレイヤーはみんなやってるらしい。

 

 魔法発動の方も詠唱は必要ながら素早く撃てるし、ぼや〜となら無詠唱でも使える。この調子だと、あと一週間……いや二週間かな。それくらいで無詠唱もできる……かも。

 

 ちなみに、『黄金城』において魔法を使う場合は『魔道具』など触媒(アイテム)が必要だ。魔物は魔法器官という内蔵があるから不要だが、人間族はそれが無いとかで、一応理由付けの設定は存在している。

 魔道具と言っても色々と種類があるのだけど、一番簡易的なのは中位以上の魔物がドロップする『属性魔石』を特殊素材を軸として取り付け作成された『魔法の杖』だ。

 そのまんまな名前である。

 俺の触媒は魔法講習の過程で『下級光魔法の杖』を師範NPCから貰い受けたので、有り難く装備させてもらっている。

 光魔法なんてカッコイイ名前だけど、実際のところはただ魔力を固めて撃ちつけるだけの魔法で、他のゲームで言うところの無属性やノーマルタイプに近い。弱点は突けないけど、無効や耐性持ちの魔物が少なく通りが良い。初心者向けとも言える。

 高位の光魔法はレーザーとか撃てるらしく、それは非常に楽しみだ。

 

 

 

 次に、武術関係の講習。

 剣術や体術、他にも槍やパルクールとかも練習ができたのだが……あまり芳しく無い。

 というか、俺にセンスがなかった。

 気迫、勢い、足捌き、手の器用さ、相手の弱点や癖を見抜く観察眼……そう言った武道における必要な素養が、俺には悲しいほどに存在していなかったのだ。

 木刀での打ち合いにて、俺より後に入って来た新人プレイヤーに一日で敗北したあの屈辱は中々忘れられそうにない。

 まあ、うん、しょうがない。近接戦闘は諦めるとしよう。俺には魔法がある。せっかくの仮想世界なんだ。近接戦闘なんてやろうと思えば現実でもできることではなく、魔法を使おうぜって。

 

 悔しくなんて……悔しくなんて……ある……けど……うん。

 無理なもんは無理だ。

 剣で、槍で、斧で、弓で、格闘で、俺は後輩の新人たちとの模擬試合において敗北して来たからだ。俺より後に講習入りして、俺より先に卒業して行ったプレイヤーたちを十人以上俺は見送った。ステータスが存在しない以上身体能力はほぼ同じなはずなのに、どうして?

 現実での就寝時に、涙を零したのはしょうがないと思う。結構ガチで悲しかった。ていうか武術がトラウマになった。暫くは空手とか相撲も見たくない気分だ。

 

 他にも、採集講習、迷宮講習、魔物講習などなど。

 実践というより座学中心の物も多数終えた。こう言った座学系の物は一度でも受けておくと、メニューの『情報』コマンドに記録されていつでも閲覧できる。色々とリアル指向の運営もこの辺は優しさを見せてくれたらしい。フルダイブ中はネット検索ができないから、これがないと暗記ゲーになってしまう。

 とは言え、一目では見間違えるややこしい魔物や鉱物でありながらも対処法が全く異なる物も存在しており、一瞬で判断が求められる場面では一々情報を見ている余裕もないだろうから、全部それ任せってのはよくないけど。

 

 

 そう言うわけで、チュートリアルが終わったのだ。最低限の講習だけなら一日もあれば十分に終わるのだが、俺は余分に座学や魔力訓練の派生を受けていたので少し伸びてしまった。でも、楽しかったので後悔はしていない。

 

 ついでに。

 講習終了の報酬として、鞄をもらえた。最初から鞄はくれ。

 




今回は驚きのほぼ全部モノローグという。書き終わってからびっくりしたよね
次こそ、本当にヒロインが……。
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