大怪獣ラッシュ外伝 スメラギとハンターズ・クロニクル   作:クォーターシェル

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第2話 パゴスハンティング2

リンプは通信機をオンにする。

 

「ト・パーズさん、こちらリンプ班。ターゲットが地下に潜行しました。援護を要請します」

《了解。軌道上補給艦から地中探査ユニットを投下する。到着まで十秒》

 

淡々とした報告の中で唯一の救いだった。ほどなくして空から金属製のプローブが落下し、地表で細かい粒子へ分解しながら地中を透過していく。

 

「追跡完了。現在、北東四十キロ地点で滞留中。休息か食事中の可能性あり」

 

「休ませてやるもんか!」グレンが銃を握り直す。「アイツの潜伏先に直接降りられるか?」

 

リンプは地形データを展開し、険しい斜面の中腹部にぽっかりと開いた自然洞窟を指差した。

 

「ココから迂回すれば接近できます。ただし──」

「リスクは承知だ」

 

スメラギはゆっくりと立ち上がる。腕に巻いた応急処置バンドが血を吸って重い。「次は躱してみせる」

 

グレンが眉をひそめる。「“次”なんてあると思う?お前みたいなガキに」

 

「……」

 

スメラギは槍を地面に突き立てた。「信じろとは言わない。だがこれ以上足手まといにはならない」

 

「ふぅん……」グレンは一瞥し、「じゃあ背中預ける価値はあるって証明してみな」と言い捨てた。

 

岩壁を蹴り上げるように進むと、奥で鈍い唸りが反響していた。天井から水滴が垂れ、湿った風が肌を舐める。

 

「あそこだ」

 

リンプの照明で浮かび上がる巨影──パゴスは坑道の最深部で半身を埋めていた。喉から漏れる不規則な呼吸音。どうやら損傷部分を修復しようとしているらしい。

 

「休憩時間なら好都合」グレンが低く笑う。

 

「作戦はシンプルだ。リンプが左側面の脆い岩盤を撃ち抜く。倒れ込む頭部めがけてアタイが凍らせ、その隙にスメラギがソウルを砕け」

「……承知した」

 

三つの影が息を合わせる。リンプのエネルギー弾が壁を穿った瞬間、轟音とともに崩落が始まった。瓦礫の雨がパゴスを襲い、バランスを崩した巨体が傾く。グレンの氷結弾がその首筋を貫き、氷柱が蔓のように絡みついた。

 

「今だ!」

 

スメラギが跳ぶ。宙を舞う体を槍が導く。標的は顎の下──剥き出しのプラズマソウル結晶!

 

「っ──!!」

 

渾身の一突き。蒼い光が炸裂し、パゴスの雄叫びが洞窟を震わせる。しかし敵は最後の抵抗とばかりに身を捩り、振動波がスメラギの足場を崩した。

 

「くっ……!」

 

滑り落ちる中で見たものは、半狂乱に暴れながら地中へ退避していくパゴスの尾だった。──二度目だ。

 

リンプの呼びかけが遥か上層から聞こえる。「無理に追うな!もう限界深度を超えている!」

 

グレンも怒鳴った。「命あっての物種だよ!」

 

「……」

 

スメラギは濡れた泥に膝をつきながらも、拳を強く握り締めた。悔しさが湧き上がり、喉の奥で煮えたぎる。それでも口から出たのは意外な言葉だった。

 

「……二人とも助かった」

 

グレンがぽかんと口を開け、リンプは微笑む。

 

「素直になると可愛いですねぇ」

「黙れ」

 

スメラギは顔を背けたが耳まで真っ赤になっていた。洞窟を出た時、空はすでに夜色に塗り替えられていた。

 

基地への帰路。スメラギは車窓から黙って外を眺めていた。

リンプが温かい飲み物を差し出す。

 

「完璧主義は時に枷になります。今日の教訓は“チームと自分を守る優先順位”」

「……そのくらいわかる」

 

「本当ですか?」リンプは悪戯っぽく笑う。

 

「だったら明日から私の助手に雇います」

「冗談じゃない」

 

苦笑する横でグレンがボソッと呟いた。「でもアイツの槍捌きは本物だった。次はもっと連携させたいな」

 

スメラギは驚いたが顔には出さず、「好きにしろ」とだけ返した。

 

ステーションT1116に戻った三人をト・パーズが出迎えた。

 

「初任務にしては成果があったほうだな。特にそこのテンペラー星人の新人はこのステーションの大半の者が今回の任務で心が折れるが死ぬと思っていたが……」

 

リンプが前に出て頭を下げる。「ご迷惑をおかけしました。ただ彼は一度自分のミスを理解しています。きっとこれから伸びるはずです」

 

「そうか……。期待している」

 

去り際にト・パーズがスメラギの肩に触れようと伸ばしかけた手を引っ込めた。

 

「……仲間を作った方が良い。それがお前の強さになる」

「仲間……か」

 

スメラギはリンプとグレンの背中をちらりと見て、微かに頷いた。

 

この敗北は決して終わりではない。

槍と誇りを研ぎ澄ませた戦士にとって──

挑戦こそが己を鍛える糧なのだと、スメラギはようやく思い始めた夜だった。

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

ステーションT1116の観戦室。そこではTV放送されているハンター達のハントの様子が見れる場所でありハンターもそうでない者でも賑わっている。スメラギはそんな観戦室に足を踏み入れ、商人であるカネゴン族の1人、『カネゴンヌ・キャッシュ』にテンペラーランサーの整備を依頼していた。

 

「言っておくけど、ガネー(通貨)の方は前払いよ!そうね……、この程度の損耗具合ならこれが相場ガネ」

 

「これで問題ないのか?」

「……良し。確かに貰ったガネ。それじゃあ改めて作業に入るけど……」

 

カネゴンヌは整備のため、テンペラーランサーを解体していく。流石の熟練工といったところだろう。

 

「さっきの話の続きを聞くガネ?あなたが戦ったパゴスは本来なら大したことないプラズマ怪獣。しかし……」

 

「知ってる。あの時は偶然だったと言いたいんだろう」

 

「……そうじゃない。確かに初任務はどんなハンターでも緊張する。だから上手くいかないことだってある。でも、そんなハンター達でも一つの共通点がある。それはどんなハンターだって最低限の準備を怠らないということ」

 

「おいおい、まだこいつにそんなこと言ってるのか?テンペラー星人なんて自分勝手な奴が多いだろ?この新人テンペラー星人も多分そうだぜ」

 

その場に居合わせたカラスを思わせる頭部のレイビーク星人のステーションスタッフが茶々を入れる。

 

「こいつには才能があるかもしれないが他のテンペラー星人と違って勘違いを起こしているタイプではないかもしれねぇが油断大敵だ」

「……テンペラー星人は気性が荒い者が多い種族だが、俺は違う」

 

「そうか?この間のパゴス戦の時は頭に血が上ってたようだが?」

「黙れ!」

 

スメラギは苛立ちを露わにしながら槍を握りしめる。

 

「おいおい、この程度で怒ってどうするんだ。まあいい。とにかくあのパゴスは確かに通常種に比べて格段に強い個体だったことは間違いない。だけど問題はそれだけじゃない」

 

「どういうことだ?」

「あのプラズマ怪獣のハントは本来は3人組でのハントが前提だった。なのにあの時はお前がチームの要であるビラ星人のリンプとグローザ星系人のグレンを置いて一人で突っ走ってしまったからだ。俺は思うんだがな……」

 

「……何だ?」

「お前は今まで仲間がいなかったんじゃないか?」

「何?」

 

「仮にお前がテンペラー星人の王子様だとか王女様だとか知らないが、たとえ親衛隊がいたとしても今回お前は1人で戦おうとして失敗した。それだけだ」

 

「……」

 

「テンペラー星人なんて戦闘民族だけどな。それでもあいつらは基本的に群れを成して生活してる。だから仲間意識は他の星人よりも高いと思うぞ。お前の両親もそうなんじゃないのか?」

 

「…………」

「まあ、それはいいや。おっ、うちの有望株のお出ましだ」

「有望株?」

 

レイビーク星人の言葉と共に観戦室にメフィラス星人の女性が入ってくる。その装備から彼女もハンターであることは間違いないだろう。

 

「彼女は?」

「ああ、メフィラス星人ヴィルヘルミナ。彼女はすげえぜ、メフィラス星人のハンターの中では最年少だがデビューしてから数ヶ月で最低ハンターランクのFからAランクに上り詰めたんだ。あのメフィラス星人ジェントの姪だって話だが、いやはやどちらにせよこのステーションに所属しているハンターの中で上から数えた方が早い実力車だ」

 

「そうなのか?」

「ああ、特に盾と片手武器の扱いが上手くて『メフィラスフェンサー』って異名も持ってる」

 

「メフィラスフェンサー……」

 

すると、ヴィルヘルミナがスメラギに声を掛けて来た。

 

「なるほど……あなたが新人テンペラー星人?」

「そうだ」

 

「……なるほどね。それで今はどのランクなの?」

「……Fだ」

「そう。最初に言っておくけどFランクから上に上がれないようじゃハンターなんてやってられないわよ。私からアドバイス、怪獣狩りは突撃競争じゃないわ。重要なのは効率よく確実に仕留めること」

 

ヴィルヘルミナはそう言うと踵を返して去っていく。

 

「……言われなくてもわかっている」

「まあまあ……」

 

「今のあなたにとっては耳が痛いお話よね。確かに最初のうちは怪獣を狩ることに集中してしまいがち。でも上を目指すのであればハンター同士の協力は不可欠。特にこのステーションには実力者は多い。あなたも是非他のハンター達に教えを乞うべきだと思うけど?」

 

「……そうすることにする」

「おっ!いいね!やっぱり若い子は伸びるのが早い!」

 

カネゴンヌの言葉にスメラギは思わず微笑んでしまう。

 

その後、ヴィルヘルミナのチームの怪獣ハンティングが放送される。ヴィルヘルミナのチームメイトはケムール人アイマンとザラブ星人ナッツォだ。ハントするプラズマ怪獣は……、岩石怪獣サドラだ。

 

スメラギもそのハンティングの様子を見物することにする。観戦室内に実況の声が鳴り響く。

 

『今回の獲物は岩石怪獣サドラ!身体から放つ霧で身を隠し、伸縮自在の腕で攻撃してくる怪獣だ!!』

 

『さてさて、チーム・ヴィルヘルミナ!サドラを圧倒しているぞ!』

 

ケムール人のアイマンがスピードを利用したヒット&ウェイを行いザラブ星人のナッツォがサポートする。そしてサドラを翻弄したところでヴィルヘルミナの必殺技である『タクティカルスラッシュ』が炸裂する。

 

『タクティカルスラッシュ!』

 

『行くわよ!』

 

ヴィルヘルミナは盾を構えながら突撃する。そしてサドラの目の前でジャンプしサドラに飛び掛かり盾と剣でサドラの頭部側部と頭部中央のプラズマソウル結晶体を同時に叩き割りサドラは倒れ伏しハント成功となった。

 

「おお……流石だな。まさに芸術的なまでの洗練された動き。彼女の場合は突撃競争じゃないと言ってたが実際は最初から狙いを決めてて一直線に向かっていた」

 

「ああ……。確かにあれならサドラの腕による攻撃を警戒する必要がない。何よりあの盾だ……、あの大きさと形の盾ならサドラの攻撃を防ぎつつ攻撃出来る」

 

「だな。なるほど、言うだけはあるってことなのか。……超えたいな、彼女を」

 

スメラギの隣のスタッフのレイビーク星人が目をぱちくりさせる。

 

「大きくでたな……。言っておくけど先ず彼女に並ぶランクに上がらなきゃ土俵にすら立てないと思うぞ」

 

「わかっている。だが俺にはやらなければいけないことがある」

「やらなければいけないこと?」

 

「ああ……、テンペラー星を出て行方知れずになっている父に俺の存在を知らしめる為に名を上げる。その為にトップクラスのハンターになってやるんだ」

「へえ……それは楽しみだな。頑張ってくれよ!」

 

レイビーク星人は笑いながら拳を差し出して来た。スメラギはその手をしっかりと握り返す。

 

「ああ」

 

その様子を見ていたカネゴンヌは微笑ましく思う。

 

「若いっていいわねぇ~♪」

 

「カネゴンヌ・キャッシュ。俺の武器の整備はどうなってる?」

 

「ああ、それならもうすぐ終わりそうだガネ。後1つくらいハンティングを観ればちょうど返せそうよ」

 

「そうか。次のハンティングは……ラッシュハンターズ?」

「おお、あのラッシュハンターズの活躍を観れるのは運がいいですよ!」

 

スメラギの所に来たのはリンプだった。

 

「知っているのか?」

「このプラズマギャラクシーで彼らを知らないのはよほどの田舎者か情報弱者ですよ!?……本当に知らないのですか?」

 

「ああ……。生憎と俺は世間知らずなんでな。で、そんなに強いチームなのか?」

「ええ、バルタンバトラー・バレル、ガッツガンナー・ガルム、マグママスター・マグナの3人で構成されたチームです。これまで多くのプラズマ怪獣を撃破し、更に超大型プラズマ怪獣、プラズマキラーザウルスを目覚めさせて他のプラズマ怪獣を活性化させて正に一時代を築き上げたと言うべき者達ですよ」

 

「ほう……そんなに凄い奴らなのか」

「ええ。彼らの評判を聞いて一時期ハンターを志した者も多いんですよ」

 

「そうなのか?」

「ええ。実際に私も彼らのハンティングを間近で見たことがありますが、あれは最早芸術作品でした」

 

「へぇ……、じゃあトップクラスのハンターって言えるのか?」

「まあ、知名度・実力共に彼らに並びうるハンターは少ないでしょう」

 

そんな話をしている内に、ラッシュハンターズのハンティングが始まる。相手のプラズマ怪獣はシビルジャッジメンターの別名を持つロボットのプラズマ怪獣、ギャラクトロンだった。

 

ギャラクトロンは目や胸部から光線を放ち、ラッシュハンターズを近づけさせまいとするが、ラッシュハンターズは危なげなくそれぞれの攻撃でギャラクトロンの各所のプラズマソウルを破壊した。バレルが最後のプラズマソウルを破壊するとギャラクトロンは機能を停止するのだった。

 

「おお!」

「やっぱラッシュハンターズはすげえな!」

 

観戦室が興奮に包まれる。スメラギも

 

「あれがトップクラスのハンター達か……!」

 

スメラギは思わず呟いていた。

 




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