かと言って投稿ペースは変わらないんですけどね。(゚∀゚)
「おとうさん! おかえり!」
「おおっと! ただいま、ヒカリ!」
飛びついてきた娘を受け止めながら、私は今日あった出来事を思い返していた。
今日は、驚きの連続だった。
まさか、あのナナカマド博士と対等に──いや、もしかするとそれ以上に渡り合える若者と出会えるなんて。
しかも、あれで学者でも研究者でもないというのだから驚きだ。
『これは仮説なんですが……ヒンバスというポケモンは、自ら美しくなりたいと願うことで、ミロカロスへ進化するのではないでしょうか』
『ふむ。それは理解できる。醜い、醜いと言われ続けてきたが故に、あのような進化形態になる。自然の摂理というものだろうか』
『ただ、それでは自然に生息しているミロカロスの説明がつきません。あくまで今の話は、人に捕獲された個体の場合ですから。……自然に生きる彼らは、何をもってミロカロスへ進化するきっかけを手に入れ、生きてきたのか』
『やっぱり……自然でも、仲間から醜いと蔑まれて今に至るのでは?』
私も議論に参加し、そう意見を出した。
だが、彼はすぐに私の言葉に異を唱えた。
『ヒンバスの仲間であるなら、同じくヒンバスでしょう。同じ“醜いもの”同士、群れから弾かれることはあっても、それが進化へ繋がるかと言われれば疑問です』
ぐうの音も出なかった。
私だって、研究者の端くれだ。
だが、こんなにも冴えた視点を持つ子がいるとは思わなかった。
『人間はミロカロスを"美しい"と言います。でも、ヒンバス自身が何を美しいと感じているかは、まだ分かっていません』
『ふむ……』
『強く泳げることなのか。綺麗な水場に辿り着くことなのか。群れを守れることなのか。それとも、ただ生き延びることなのか』
ナナカマド博士は、そこで初めて黙り込んだ。
“美しい”。
それは、人間の価値観だ。
ミロカロスを見た人間は美しいと言う。
けれど、ヒンバス自身がその姿をどう感じているのかは、誰にも分からない。
少なくとも私にとっては、初めての視点だった。
彼と博士の話はとても有意義で、久しぶりに微笑む博士を見た気がする。
『うむ……名残惜しいがそろそろ立たねば……』
『こちらこそ長ったらしく話し込んでしまい申し訳ないです』
『ふはは……オーキドが手元に置いておきたいと言っていた意味がよくわかった』
「おとうさん?」
ヒカリが不思議そうに私の顔を覗き込む。
私はその小さな頭を撫でながら、ふと思った。
この子もいつか、あの若者のように、自分の目で世界を見る日が来るのだろうか。
そう思うと、少し寂しい。
けれど、それ以上に嬉しくもある。
子供が大人になるというのは、きっとそういうことなのだろう。
「ヒカリ〜……お父さん、ヒカリに大人になってほしくないよぉ〜」
「え? おとうさん気持ち悪い!」
ひどない?
──けれどこの子の未来に……彼のような人との出会いがあればいいな。
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「ここに来るのも久しぶりね……」
マサゴタウン……
懐かしいわ。
私が研究者として独り立ちするまで、お世話になった場所だから。
「忘れ物はないか?」
「はい! 大丈夫ですよ、博士」
……よかった。
まだいらしたのね、博士。
私は急いでナナカマド博士へ近づく。
「ナナカマド博士! お久しぶりです! 突然ですけど、メタモンを連れたトレーナーを見かけませんでしたか? 名前はカナタっていうらしく、風貌は──」
「ま、待て待て、シロナよ。相変わらずだな、君は……」
ナナカマド博士は苦笑いを浮かべている。
でも、しょうがないじゃない。
もしかしたら彼のおかげで、謎がまた一つ解明されるかもしれないんだから。
「君の探している男なら、つい先ほどまでここにいた」
「……え?」
「オーキドの元助手だと言って訪ねてきた。確かにメタモンを連れていたな。実に面白い男でな……年甲斐もなく興奮してしまったよ」
う、嘘でしょ?
また入れ違い?
……というか、ナナカマド博士と対等に会話ができていたってこと?
「ど、どこへ!?」
「君は本当にせっかちだな。落ち着きなさい」
落ち着いていられるわけがない。
ほんの少し前まで、ここにいた。
私が探している人物が。
……絶対に見つけなければ。
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いや〜、思ったより白熱してしまった。
以前から疑問に感じていたのだ。
テレビ中継で見た、ホウエンのコンテストに出ていたミロカロス。
あれはめちゃくちゃ綺麗だった。
だが、ごく普通のトレーナーがミロカロスを使っている姿は、ほとんど見たことがない。
そもそも、好き好んでヒンバスを使うトレーナーも少ないしな。
それにヒンバスはコイキングに似ているが、巷では「醜い」と言われるらしい。
俺はそうは思わない。
醜いということは、見方を変えれば、生き残るための形をしているということだからな。
さて……それじゃあ、博士に紹介してもらったズイの遺跡に行くとしますかね。
「あ、でもせっかくだからヨスガシティにも寄ってみるか……」
「メ!」
メタモンは「ヨスガシティ」という言葉を聞いた途端、楽しそうに笑った。
……そういや、船の中でコンテストの映像を熱心に見ていたな。
俺は少し頭を抱え、空を仰ぐ。
「どうすっかな〜……」
多分、メタモンはコンテストに出たいんだろう。
ただ、俺としては目立ちたくない。
できれば、静かに観光して、仕事して、何事もなく穏やか〜な旅を続けたい。
けれど、メタモンの意思は尊重したい。
「ま〜じで、どうしよう……」
そもそも、世間一般でメタモンをコンテストに出すトレーナーなんているのか?
仮に出したとしても、敬遠されるような気がしなくもない。
だってメタモンは、へんしんポケモンだ。
他の参加者のポケモンに変身することくらいしか、分かりやすいアピールポイントがないんだから。
……う〜ん……あっ。
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「次の方〜」
現れたのは、白を基調とした衣装に目の周りを黒く彩った仮面をつけた男性だった。
(す、すごい仮面ね……。気合いが入ってるっていうか……)
「で、では登録しますので、お名前と出場するポケモンをお願いします」
「名前はMr.Xで。ポケモンは、コイツです」
そう言ってボールから飛び出したのは、紫色のぷよぷよとした体を揺らしながら、楽しそうに笑うメタモンだった。
「え……メタモンですか?」
「ダメですか?」
男性──Mr.Xさんは、首を傾げて不思議そうにしている。
そりゃそうでしょ……。
メタモンなんて、アピールポイントがあるようには見えないポケモンだ。
確かに世の中には、コアな趣味を持つ人だっているだろう。
けれど、コンテストでメタモンを出すなんて、聞いたこともない。
「い、いえ……ダメではないんですけど……。分かりました。そのように登録しますね」
大丈夫なのだろうか──そう思っていた私は、この時の判断を後に改めることになる。
彼が残したものは、その場にいた者すべての記憶に、鮮烈に刻まれ続けた。
私たちはこの日、本当のパフォーマンスというものを目にすることになる。
「アサギ選手のミミロップ! 実に素晴らしいものでした! キュートでチャーミングでありながら、洗練された技の数々で、この会場にいるすべての人を魅了したことでしょう!」
「ええ。本当に素晴らしかったですね! さて、次は……Mr. Xさんのメタモンです!」
司会者が彼の名を呼んだ、その瞬間──
照明が一斉に落ち、会場は、完全な闇に包まれる。
ざわざわと、観客たちが騒ぎ始めた。
パフォーマンスとはいえ、会場の明かりを消す演出は……私の知る限り前例がない。
やがて、騒がしかった声が少しずつ静まっていく。
中央の舞台に、一筋の光が落とされた。
そして背後の暗闇から、メタモンがぴょこぴょこと跳ねながら現れる。
光の中央で、紫色の小さな身体が止まった。
「メッ!」
「これは……メタモン、でしょうか? シンオウでは珍しいポケモンですね……」
審査官たちも、あまりに異例な参加ポケモンに戸惑いを隠せない。
しかし、その時。
メタモンの背後に広がる暗闇から、黒いコートを羽織った仮面の人物が、ゆっくりと姿を現した。
男は深く一礼すると、そっとメタモンに目線を合わせた。
メタモンは、ニヤリと笑う。
次の瞬間、その身体が淡く光り始めた。
「な、何をしようというのでしょうか……!」
暗闇に包まれ、ただ一筋の灯りだけが残された会場で、メタモンの輝きは次第に大きくなっていく。
そして──
仮面の男がコートを脱ぎ捨てた、その瞬間。
会場の照明が一斉に灯された。
そこにいたのは、大きく金色に輝く翼を神々しく広げた鳥ポケモン。
誰もが息を呑んだ。
それは単なる“すごい”では片付けられない。
畏れに近い感情だった。
頭部と尾羽は銀色に輝き、そのほかの羽毛は、まるで陽光を閉じ込めたかのような金色を放っている。
ショオォォォォ──ーッ!!!!
その鳴き声と共に、会場はキラキラとした火の粉のような光に包まれた。
けれど、それは熱を持たない。
観客が恐る恐る手を伸ばし、その光を掌に乗せても──次の瞬間には、まるで一時の夢だったかのように、静かに消えてしまう。
そして、鳥ポケモンの傍らに立つ仮面の男へ、観客たちの視線が集まった。
よくよく見れば、その仮面もまた何らかのポケモンを模している。
白地に黒の意匠。
鋭く細い目元。
流れるような輪郭は、どこかキュウコンを思わせた。
シンオウではまず見かけない、和の装い。
黒と朱を基調とした流し衣を見事に着こなし、仮面の男は金色の鳥ポケモンの隣でただ静かに佇んでいた。
「メタモン──かえんほうしゃ…!」
仮面の男が低く、しかし会場の隅々まで届く声で告げる。
次の瞬間、金色の鳥ポケモンは大きく翼を広げ、会場の天井へ向けて炎を吐き出した。
炎の中心は、深い紫色。
それは宙へ昇るにつれて弾け、美しい青い火花へと変わっていく。
紫と青の光が夜空の星々のように広がり、会場全体を淡く照らした。
「……はっ! す、素晴らしいです! ビックさんも何か言ってください!」
「すみません……もう、何と言っていいのやら……。私の貧困なボキャブラリーでは、彼とメタモンをどう表現すればいいのか……」
それがポケモンの技だとは、にわかに信じがたい。
あまりにも美しいその光景に、審査員ですら言葉を失っていた。
Mr.X……仮面の男は改めて会場全体に深く一礼すると、
それに合わせるように、会場の照明がゆっくりと落ちていく。
金色の鳥ポケモンもまた、静かに光を放ち始めた。
その大きな輪郭は次第に縮み、金色の羽は淡い光の粒となってほどけていく。
やがてそこに残ったのは、最初と同じ紫色の、小さなメタモンだった。
「メッ」
メタモンは仮面の男の隣に並ぶ。
一筋の光だけが二人を照らす中、男とメタモンは観客へ向けて静かに手を振った。
そして……会場は完全な暗闇に包まれる。
次の瞬間、再び照明が灯った時には──
仮面の男とメタモンの姿は、すでにどこにもなかった。
「今日のMVPは、決まったも同然でしょう! Mr. Xとメタモンです!」
司会者がそう叫び、舞台へ向けて照明を当てる。
だが──そこに彼らの姿はなかった。
「ど、どこへ行ったのでしょうか!? トイレ、とか……?」
会場には困惑とざわめきが広がる。
……後になって分かったことだが…彼は、このコンテストを棄権していた。
すでにメタモンと共に会場を後にしていたらしい。
名誉にも、リボンにも、興味がないのだろう。
しかし、彼とメタモンが見せた技術と光景は、その場にいた誰もが忘れることのできないものだった。
ある者にとっては、コンテストの常識を覆す舞台だった。
ある者にとっては、ポケモンの可能性を見せつけられた瞬間だった。
そしてある者にとっては──人生観すら変えてしまう、忘れられない夜となった。
それから数年後。
ある少女がコンテストを参加し、“Mr. Xの再来”と呼ばれるようになるのは…また別の話である──。