彩葉の家庭環境は彼女の父親の死去から大きく変わってしまったらしい。
らしいという表現を使っているのは、直接は確認していないからだ。
ぶっちゃけると私本体は未だスマコン開発やサイバー犯罪対策のファイアウォール形成などツクヨミプロジェクトの最終段階にて手が離せなかった。
故に先行PR企画としてヴァーチャルライバー「月見ヤチヨ」として動画配信と仮想世界「ツクヨミ」の宣伝をしつつ、チャットアプリのために造り出した分身たちで彩葉を含めた人間の需要調査を開始。
チャットサービス用の分身が彩葉を含めた多くの人々の相談を受け持っていた。
ついでにかぐやはそのログを見ながらニヨニヨしてた。
そして数多くのテストをパスし、2027年3月。
ようやく全てのテストが完了し、ついにスマコンを全国販売を開始。
それに連動してソーシャルサービスとして仮想世界「ツクヨミ」もオープンを発表。
電子決済サービス「ふじゅ~ペイ」を利用した仮想空間でみんなが自由に表現できる世界を完成し、そのオープニングセレモニーとして私こと「月見ヤチヨ」のデビューも決まった。
今までは動画配信だけの活動だったが、これからは本格的に歌って踊れて分身もさらに活用することになる。
そして、歌うつもりの曲も決まっている。かぐやがずっとずっと昔、擦り切れそうな思い出を繋ぎ合わせて作曲した彩葉への歌。「Remember」。
デビュー曲として相応しい、最高のライブにするため、あらゆるメディアを利用してこのオープニングセレモニーのライブに挑む。
準備は
かぐやも彩葉にこの歌を届けたいと願っているため、ライブの時だけ人格を交代する事を約束。
そしてついにネットの深海に眠る仮想世界「ツクヨミ」が日の目を浴びる。
月の代わりにミラーボールが天に輝き、摩天楼が街並みを照らす年中お祭り騒ぎの理想の空間が多くの人々を迎え入れる。
「仮想世界「ツクヨミ」にようこそ!管理人の月見ヤチヨで~っす!この子はFUSHI!」
「ヤチヨが僕とツクヨミを作ったんだよ!」
チュートリアル用の分身が次々とツクヨミに人々を招き入れ、そして明るく輝くこのツクヨミを見て目を輝かせてくれる。
これだけで、ここを創った事が報われた気がした。
20:58。FUSHIがライブの時間を知らせてくれた。
私は管理人権限でカウントダウンをスタートさせ、お立ち台の鳥居と共にテレポート
「神々のみんなぁ~ッ!ヤオヨロ~~~ッ!!」
掴みの挨拶で歓声を浴びながら、トークを進める
「神々の皆のおかげで、今日この日を迎えられました!感謝感激雨アラモ~ド!
そのお返しに、皆にこの歌を伝えたいと思います。どうか、最後まで聞いてください!」
そして目を閉じて心象世界へ私は視点を移した
「かぐや。楽しんでね」
「うん。ありがとうヤチヨ」
その一言で私とかぐやの人格が入れ替わり、かぐやの視点を通してライブが始まるのを見届ける
イントロが流れ、かぐやが歌い出す
「埃をかぶったノート♪ 中身なんて覚えていないけど♪
たどたどしいピアノ♪ ほの甘いパンケーキ なぜか懐かしい♪」
まるで思い出を噛みしめるように、切ない感情を押し殺しながらも彼女は8000年経っても色褪せない輝かしい思い出を歌う
「大切なメロディは流れてるよ♪
あ・な・た・のハートに♪」
一番伝えたい彩葉に、このメロディを届けるため、彼女は微笑みを浮かべて歌った。
「ラララララ...♪」
タイムパラドックスを回避するために確信に至る歌詞は省き、一番伝えたい言葉とメロディだけを編曲した初ライブは無事に大歓声と共に終えることができた
そんな思いを噛みしめていると、心象世界にかぐやが戻ってきた
「ヤチヨ、ありがとう。ちゃんと歌えたよ・・・!」
「お疲れ様かぐや」
ハイタッチのあと、瞬時に人格を入れ替えて私が表に出る。
その後、私は分身を放出して特典課金サービスである握手会を実施。
1人につき10秒ほどの短い時間だが、分身できる私なら何千人のファンが購入しようと同時並行で握手会できるのもやっちょの強みだね!
もちこの分身はちゃんとやっちょが後で記憶と経験を統合するし、実質全員が本体だから全員本人と握手できるよ!オタクのみんなやったね!
握手会の中で意外な人物も見つけた。・・・彩葉だ。ついでに隣に居るのは鬼ぃさんこと帝アキラ
どうやら兄妹でこのライブに参加してくれたらしい。握手券は流石に帝様が持ってたが・・・
「ヤチヨちゃん、俺の妹がファンみたいでな。握手は妹にしてやってくれ」
なんて良いお兄ちゃんなんだ!やっちょ感激しちゃう!
「応援ありがとうね~」
「一生推します!」
はい。彩葉のデレ顔はやっちょの脳内フォルダに永久保存しました~。後でかぐやと一緒に心象世界で鑑賞会しまーす
あ。ちょ。かぐやちゃん心象世界でポカポカ叩かないで!今はやっちょのターンだから!