適性運命論者の「アイドルのすゝめ」   作:物見遊本

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毎日5000とか10000文字も書けてる人ってマジでどうやってるんだろう


賀陽燐羽

極月学園が犬猿の中である初星から、わざわざ助っ人を引き抜いた。

あの黒井社長が招き入れるほどの人材がどのようなものかについては、優希自身興味を持っていたこともあり、入学してしばらく経った頃会いに行ったことがある。

 

「やぁ、出戻りの超新星」

 

「は?あんた、誰?……ていうのは流石に冗談だけど、私になにか用?」

 

流石に、というべきか。目前の少女は優希の存在を歓迎してはいないらしい。

 

「用ってほどのものでもないんだけど。極月での生活はどうなのかなぁって聞いてみたくなって。アイドルだったんでしょ?賀陽燐羽さん」

 

紫髪のツインテールに鋭い目つきの、人によっては近寄りがたいとさえ思える印象を前面に押し出した少女、賀陽燐羽は優希の問いに怪訝そうに答える。

 

「……今は違う、って言いたいわけ?」

 

「君がそう思っている限りはね」

 

自分だろうと相手だろうと会話を端折りたがる。コミュニケーションを取る上で大きなマイナスとなる優希の悪癖は健在だった。

 

「ああ、なるほどね。話に聞いていた通りだけど、あなたとは仲良くも仲悪くもできなさそうね」

 

「うーん、仲悪くないのは良いことだと思うけど……それ燐羽の中だと最低評価って意味だよね?」

 

しれっと距離を詰めてきた優希に燐羽は顔を顰める。

 

「いきなり馴れ馴れしくしないで。……でも、間違ってないわ。私の中では今のあなた、嫌いより下かも」

 

燐羽にとっては精一杯の悪口のつもりだったのだろうが、相手が悪すぎた。今までに罵詈雑言の類と二人三脚をしてきた優希には"嫌い"というワードは挨拶でしかない。

 

「そっか。……話変わるけど、「N.I.A」出るんだって?」

 

なんのリアクションもせず、話を急カーブさせる優希に燐羽は少し引いた表情をする。

 

「いきなりね……。ええ、そうだけど」

 

話の展開が読めない燐羽に、優希は少しの逡巡の後口を開く。

 

「怒らせるつもりで言うけど、……りんちゃんはもっと素直になって良いと思うよ。君たちの解散って、君たちが思ってるほどシリアスじゃないから」

 

一瞬の沈黙。帰ってきた言葉は素っ気なかった。

 

「……あっそ。それはどうも」

 

「あれ?結構本気で怒られるつもりだったんだケド」

 

優希の疑問に嗜虐的な笑みでもって燐羽は返答する。

 

「怒ってるわよ。そうね、さっきの言葉は撤回するわ。私、今のあなたすっごーく、嫌い」

 

優希は基本的に相手の言葉の裏にある意図を読み取る。相手の吐く言葉よりも内心に抱えている心理を先に咀嚼してしまう。

故に、微笑み返すという一般的には不可解極まりない反応で返してしまう。それを見た燐羽がまたもやドン引きした表情を浮かべる。

 

「良いね。もしも私たちの道が交わることがあれば、君の運命を見せて欲しいな」

 

「四音と撫子だけにしてくれる?電波発言(そういうの)

 

言葉はこれ以上ないほどに、正しく届いただろう。そう理解したからこそ、優希は燐羽に背を向ける。ここから先に自分が介入できる要素はない、と言わんばかりの態度だった。

 

ーーー

 

『うあぁぁん!ヤダヤダヤダヤダ〜!アイドルやめないでぇ〜〜〜!!』

 

「………………えぇ?」

 

月村手毬号泣事件。ネットでそう題された動画を見ながら、優希はドン引きしていた。

大食い選手権で達成不可能、前人未踏などと散々ハードルを上げられた挙句、想定を上回る量の大盛り飯を出されたくらいの衝撃だった。

 

それでも、燐羽の中で何かの歯車がカチリと変わったことを実感し不敵に笑う。

 

「どう?燐羽。人間案外下らない理由でいがみ合うし、あっけないほどシンプルな方法で繋がり直すもんだよ」

 

優希の審美眼は、月花(ほんしょく)に劣る。入念なデータ収集の下、一定の評価をつけることはできるが一目でスペックやポテンシャルを把握することはまずできない。

故に、アイドル活動に消極的な燐羽がアイドルとしてどれほど優れているかを知らない。

 

それでも、こと人材の管理という立場にいたものとして、ハイパフォーマンスを常に発揮できるプロフェッショナルの目利きには自信があった。

その観点から見れば、賀陽燐羽というアイドルほど理解に苦しむ人材はいない。

マインド、適正、才能。様々なアイドルを見てきた中でも上澄み中の上澄みであることが明らかなのに、本人は現状まるでやる気を見せない。プロデュースをしてみたいという欲求もあったが、意欲を持たない人材はどう働きかけようと好転しない。所詮、人は人を変えられないのである。

 

今回のN.I.Aは燐羽の今後を決める上での転機だったのだが、どうやら心配はいらないようだった。……いや、初星に戻る可能性も踏まえればこちら側に都合が良いかは判断に迷うところだが、ひとまずは良しとすべきだろう。

 

見るべきものを見届けた優希は、傍に置いてあるタブレットに目を向ける。そこには、今回N.I.Aに出場した全アイドルの記録が納められている。四音と撫子は今回惜しい結果に終わってしまったが局所的な敗北など何も憂慮するには値しない。

 

「……しかし、月村手毬か。マニュアルも読まずに始めちゃうタイプかな。私と真逆だね。彼女だけじゃない、面白い才能が揃ってるんじゃん、初星学園」

 

四音と撫子は誘うべきではないだろう。今の彼女達に必要以上の刺激は害悪でしかない。そういった損得勘定も踏まえた上で、優希は決断した。

 

「今後のためにも、イッチョやりますか。敵情視察」    




学年 1年3組
氏名 賀陽 燐羽(かや りんは)

 ランク-「?」
 
 歌唱力-?
 表現力-?
 ダンス力-?
 ???-?
 ???-?
 
 『SyngUp!』の元リーダー。
初星学園の特待生として1年3組に所属していた。
 ……いや、良く知らないし今のところ必要のないデータだから特には。
ただ、もしも今後アイドルに戻る選択をするのなら、彼女の夢は聞いてみたいかもしれない。

次回:白線
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