起動幻想記ガンダム-BuildFighters- 作:KuRoMa
そこは、豪雨に閉ざされた山中だった。
赤い髪の少年は、導かれるように神社へと足を運ぶ。
その手に愛機を握りしめて。
だが——まだ知らない。
それが運命の序章ですらないことを。
第1話 世界は違えど魂は──
西暦2041年。
性別不明、年齢不明、出身不明、名前の全てが不明のある天才科学者により新粒子が発明された。
プラスチックのみに反応するその粒子は、あらゆる分野での活躍に世界中が期待を持つことになる。
だが科学者の思惑により、技術の全ては、たった一つの目的の使用に限ることになった。
もちろん世界中から非難の声は上がる
しかし「たった一つの目的」は、その非難を歓声と熱狂へと変えてしまう。
全高約13cmの手のひらサイズ、機動戦士ガンダムから連なるプラモデル。
彼らを戦わせる新感覚ホビーアトラクション
「ガンプラバトル」その戦場としてのみ存在を許される。
フィクションからリアルへと、
幻想は瞬く間に世界中を空前のガンプラブームへと巻き込んだ。
自らの手で組み上げ、自ら戦う。
夢から生まれた無限に広がる幻想の世界。
己の最強を証明する為、幾千幾億の扉をくぐり
戦いの光に身を投じる者たち。
人はいつからか彼らを、その夢に準えて
――こう呼んだ。
「ビルドファイターズ」
――――――――――――――――――
気づいた時、俺はそこにいた。
仰向けで。
昼か夜か分からないほど暗い空。
重い粒の雨がザアザアと耳障りに降りしきる
雨粒に叩かれた土の匂いがよく分かる。
視界の端々に何本も屹立した木々も音を立て揺れている。
隠れた太陽を求めるように。
「……ガンプラ!!」
ぼやけた意識が覚醒し弾き出した、最初の思考。
それは命とも言えるガンプラの安否だった。
でも。それは杞憂だった。
右手に感触がある、見なくてもわかった。
自分が魂を込めて作ったガンプラ、俺はしっかりと握りしめていた。
―――念の為、確認しておこう。
(よし…ボロボロだな)
それもそうか。
何しろさっきまで静岡のスタジアムで、互角のバトルをしたばかりだからな。
―――最高のバトルだった
決着が着いたその直後、警報と地響きが鳴った。
逃げ惑う観客や選手達。
出口から1番遠かった俺は、逃げ遅れ―――
スタジアムに広がった光に呑まれた。
「はぁぁ……」
右腕で目元を覆う。
なんとか状況を飲み込もうと瞼を下げる。
その俺を空の音が嘲笑う。
濡れた赤い髪も顔に張り付いて鬱陶しい。
まるで不安を増長させるよう――――
いや、蘇るからだ。
俺が初めて見た光景…
この状況に覚えがある。
あの時は雪だった…真っ白な雪。
俺の記憶のように何も無い色。
ただ、違うのは―――
痛い。
体中が痛む。
なんでこんな所に居るのか分からないが。
土砂降りの中に枕も無く、無造作に寝ているんだ。
しかも地面にじかときた。
当然と言えば当然だ。
(…起きよう)
いつまで寝転んでいるわけにいかない。
そう思って軋む体へ鞭を打つ。
起き上がる事を妨げるように重いずぶ濡れの服。
それに文句をたれ、気怠げさを纏う体を起き上がらせた。
(ここ山じゃね?)
東西も分からぬ暗い森の中、でもよく見ると傾斜がある。
傾く地面をおぼつかない足で踏みしめる。
幸い怪我は無い、でも疲労感が凄まじい。
とにかく全身が重く野山を歩くにはキツイ限りだ。
「……行くか。」
――――――――――
しばらく、15分くらい歩いただろうか。
そろそろ意識が朦朧としてきた。
生まれてこの方、風邪など引いたことの無いから。
多少の無茶は効くが…休みたい。
(とにかく、休みたい。)
(だいたいここ何処だよ。)
(なんでガンプラバトルやってたらどこか知らぬ山の中なんだよ。)
(夢オチにしても立ち悪いだろ、もっとマシなオチをつけろよな。)
そんなことを考え休む場所を探しつつ進んでいると。
雨音とは別の水の音が聞こえる。
(なんだ…滝か?)
ドドドと言う多量に落ちる水音。
それを頼りに歩くと木々の間、左手の方に何かを見つける。
赤っぽい2本の柱―――鳥居のように見える。
「神社の境内か?」
おそらく本殿の後ろに出たのだろう。
神社自体は大きい訳では無さそうで手前に建物が、奥にはまぁ苔の生えた古そうな鳥居がある。
その先はよく見えない、霧でも出ているのだろうか。
(マジかよ、富士の樹海見てぇなところに神社かよ、めっちゃ不吉じゃねぇか!!)
「まぁいいか、、そろそろ限界だし、そこらで休むか」
無神論者で悪ぃが……
あってるよな仏は寺だもんな、まぁいっか。
俺は境内に入り、近くの屋根の下に入る。
腰とカバンを下ろし背中を壁に預ける、瞼を下ろして張り詰めた空気を肺から外へとゆっくりと吐き捨てる。
(休んだら山をおりて……にしてもどこだよここ。爆発でふっとばされたにしちゃ荷物とか服とか綺麗だし……そもそもなぜに山なんだ?)
(とりあえず、どうスっかなこの後、)
トス……トス……シャンシャン
閉じた瞼を見開いて周囲を警戒する、この気配と正体を探る。
冷たい雨水の打ち付ける感覚。
濡れた肌を貫かんとする風。
落ち続ける水音の中に何かがある。
この建物の先から足音と鈴?の音がする。
足音は、、何か踊っているのだろうか。
と言うよりそれすらも踊り、舞だろうか……その一部と思えるような気がする。
鈴の音もそうだ。
軽く鳴ってはいるが音色は重く芯のある響きを奏でている。
それにしても気づかなかった。
境内に入る前は全くそんな気配が無かった。
(人居んなら、声掛けとくか)
怠く重い体を起こし気配の方に向かった。
敵意とか嫌な感じがしないから進んだが。
これは今考えても普通に変な行動をしていると思う。
富士の樹海のような木々の中に佇む神社。
白く濃い霧と、土をえぐらんと降りしきる大雨。
時折鳴る、雷と稲光。
こんな悪天候そのものの中で無警戒に進むのは流石に疲労だけの仕業には出来なかった。
それともまさかこの禁足地……いや神域にでも当てられたのか。
人の気配が強くなる目の前の神楽殿のような場所で踊っているようだ。
見なくてもわかる。
鈴の音。
足音。
滑らかな音が響く。
魂にとでも言うべきか。
どこか優しく。
儚くて。
懐かしい――――そう思えるような。
けれども。
それでいて孤独を感じる。
(やばいなぁ)
近づくにつれて目が霞んでくる、そろそろ落ちそうだ。
(何故、休まず来たんだ?……分かんねぇけど、とにかく見たいんだな)
重いし怠い。
意識も身体も。
神楽殿の後ろから進んで、正体を一瞥したら寝よう。
屋根もあるし大丈夫だろう。
風邪や低体温症……俺は平気だし。
(幽霊とかだったらどうしようか……まぁそんときゃそん時で)
濡れた足を進めて神楽殿の前に、足音の正体を見た。
―――――そこには。
白と黒の神楽装束に身を包んだ女が、舞っていた。
漢服にも似たその衣は、降りしき雨るに濡れているはずなのに、それを一切、感じさせずに。
膝に届く純白の髪は旋風を意に返さず揺れている。
流麗に大袖が翻るたび、空気そのものが遅れて動くような違和感があった。
(……なんだ、これ)
足が止まる。
雨も、叩きつける風も、遠雷すらも。
その女の周囲だけ、何かに“隔てられている”。
いや、違う。
世界の方が、彼女を避けている。
この荒天の中で、その巫女だけは世界から剥離したかのようだ。
(息を飲むとは、このことかもしれない)
一瞥した刹那。
綺麗だ、と。そう思った瞬間——
鈴の音が俺を包む。
それ以外の音は聴こえない。
ただただ、鈴の音だけが聞こえた。
雷や雨音よりもはっきりと。
意識を世界からすくい取られるように身体の力が抜け。
俺は膝から崩れ落ちた。
初めまして、KuRoMaと言います。
小説投稿は初めて……いや書くこと自体初めてなので、読みにくい等などあるとおもいます。
素人がなんかやってるって思ってまてくれたら嬉しいです。