一緒に帰る放課後。
何気ない会話。
静かで穏やかな時間。
花陽の優しさに触れるたび、悠真もまた、その時間を心地よく感じるようになっていく。
しかし、少しずつ――
ほんの小さな違和感が生まれ始める。
それはまだ、気のせいだと思えるほど小さなもの。
だが、その小さな違和感が、
やがて逃げられない想いへと変わっていく。
それから、花陽と一緒に帰る日が増えた。
「神崎くん…今日も一緒に帰ってもいい?」
放課後になると、花陽は少し遠慮がちに聞いてくる。
「もちろん」
そう答えると、花陽は安心したように笑う。
「よかった…」
並んで歩く帰り道。
花陽は歩くのが少し遅い。
だから自然と、歩幅を合わせるようになった。
「神崎くんって…歩くのゆっくりだね」
「花陽に合わせてるんだよ」
そう言うと、花陽は驚いたようにこちらを見た。
「……優しいね」
少し照れたように笑う花陽。
それから少し沈黙が続く。
でも、不思議と気まずくなかった。
「ねぇ…神崎くん」
「ん?」
「好きな食べ物ってある?」
「そうだな…オムライスとか」
「オムライス…いいね」
花陽は嬉しそうに頷いた。
「今度…作ってきてもいい…?」
「え?」
「お礼…まだちゃんと出来てないから…」
「いや、もう十分だよ」
「でも…花陽、作りたい…」
少しだけ強い口調だった。
でも、すぐにいつもの表情に戻る。
「……だめ?」
上目遣いで聞かれると、断れなかった。
「…じゃあ、お願いしようかな」
「うん…!」
花陽は本当に嬉しそうに笑った。
翌日。
昼休み、花陽が小さな弁当箱を持ってきた。
「神崎くん…これ…」
中には、小さなオムライスが入っていた。
「すごい…」
「ちょっと失敗しちゃったけど…」
「いや、美味しそうだよ」
一口食べる。
「…美味しい」
そう言うと、花陽の顔がぱっと明るくなった。
「ほんと…?」
「うん」
花陽は嬉しそうに微笑んだ。
その時だった。
「神崎ー、今日部活のあとゲーセン行かね?」
クラスメイトが話しかけてきた。
「お、いいな」
そう答えると、花陽の表情が少しだけ固まった。
「…神崎くん」
小さな声で呼ばれる。
「今日…一緒に帰れない?」
「ごめん、今日はちょっと…」
そう言うと、花陽は少し俯いた。
「……そっか」
小さく笑う。
でも、その笑顔は少しだけ寂しそうだった。
その日の帰り道。
ゲーセンから帰る途中だった。
ふと、視線を感じる。
振り返ると――
遠くに花陽がいた。
目が合う。
花陽は少し驚いた顔をしたあと、微笑んだ。
そして、静かに手を振った。
「…偶然?」
そう思った。
でも――
花陽の家は、こっちの方向じゃなかったはずだ。
その時は、深く考えなかった。
ただ――
少しだけ、胸の奥に違和感が残った。
次の日。
「神崎くん…昨日…」
花陽が小さく話しかける。
「ゲーセン…行ってたよね」
「…え?」
心臓が跳ねる。
「楽しかった…?」
花陽は優しく笑っていた。
でも、その目は――
どこか、逃げられないような気がした。
第2話を読んでいただきありがとうございます。
今回は、花陽と悠真の距離がさらに近づく回となりました。
しかし、その優しさの中に、少しずつ違和感が見え始めています。
花陽の「好き」は、まだ優しい形のまま。
ですが、その想いは少しずつ強くなり始めています。
次回、第3話では、花陽の行動がさらにエスカレートしていきます。
そして悠真も、違和感をはっきりと感じ始めます。
静かに進むヤンデレ展開。
物語は、ゆっくりと逃げ場のない方向へ向かっていきます。