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所変わって、ここはアメリカ合衆国。カジノで
有名なラスベガス近郊の街中。ジョージはカフェ…
ではなく、バーの静かな雰囲気が懐かしく感じる
ほどの雑踏にうんざりしていた。
ジョージと先程のバーのマスター、そしてもう1人…
ヨレたスーツを纏い、安物の帽子を被った男は3人で
困った顔をしつつ近場のカフェで佇んでいた。
そしてマスターは隙あらば逃げようとする男の胴体を
腕ごとロープで縛っており、その絵面は端から見れば
完全に補導されているように見える。
「…珍しく3人鉢合わせたと思ったらまさかこうなる
とは…だがまあ、コイツを監視できるのは嬉しい
誤算だったな!」
と、先程のバーのマスターである、
『ギルバート・
名前が長ったらしいので大体の人は彼を『ギル』
『
格別で、何故かバーなのにそちらの売れ行きの方が
良いらしく彼の悩みの種となっている。
「ギル、今回ばかりは助かった。分かってはいたが
俺には少し…厄介な依頼だったのでな。」
と、ジョージがそんなギルバートに話す。
彼の実績や自信があっても尚、厄介とは何事であろうか。
「なに、いつも
依頼料からちゃんと場所代とかもくれるし、
(売り上げ扱いじゃないけどな!)
お前さんの手伝いするのも
オマケにお前さん、さっきウチのネオン看板も直して
くれたんだろ?」
「
と、ギルバートはジョージに協力的な姿勢を示す。
その一方でロープに巻かれた男は悪態をついた。
「なーんでオレ様までコイツの任務の手伝いを
しなきゃあならねーんだァ…?おかしいだろ普通…」
「うるせぇ!いい加減…払うまで逃がさねーからなッ!」
このタレ目で人相の悪い男は『ワルター・ヴィットマン』。
何を隠そう元看守のこの男、酒癖と遊び癖がとにかく
悪く、オマケに『
運が無かったようで、偶然ジョージと鉢合わせたが為に
マスターに捕獲されたのだった。
つまりは今回のジョージの依頼に同行しつつケタが
マズいツケを払うまでマスターに監視されているという
状態である。なんなら発信機まで付けられたようで
流石の彼もお手上げ状態。
ちなみに本来はジョージ独りで行う予定だった
依頼であるが、依頼人曰く「元々複数人を想定して
いたのでなんら問題はない」とのこと。
「他の2件は大方片付いてる、あとは
とにかくこればかりは協力して貰えると助かる。」
「…チッ。仕方ねーな…こっちも手伝いして貰う
こともあったし…特別だ。ただし言うまでもないが
オレ様、金は高けーぞ?」
「ああ。依頼元が金持ちらしいから金額はかなりの
物らしい。報酬は期待して良いだろう。」
「おおマジかッ!なら喜んで協力といこうじゃないの。」
「…コイツ金が関った瞬間態度変えるな…」
「やれやれ、だな…」
サイコロのように目の色を変えて喜ぶワルター。
それをまるで養豚場の豚を見るような目で見下す
ギルバート。そして呆れるジョージ。このような
やり取りも慣れたもので、ギルバートはワルターを
縛っていた縄をスルスルと下ろす。
「さて、始めるか…」
グラサンをクイッと指で上げ、ジョージが話す。
ギルバートとワルターも頷き、ギルバートは頭に
着けたゴーグルを整え、ワルターはその安作りな
帽子の唾を指で弾く。
「「「猫探し…」」」
直前の動作も虚しく見えるような声色で3人が声を揃えた。