超完璧人の片割れは一歩後ろを歩く   作:まめだいふく

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── スンっと澄した顔の下は
ㅤ⠀ㅤㅤ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀だいたい推しのことを考えてる。らしい。





オタクと推しは対面しちゃいけません

 

 

 追い出そうとしたものの、時間を見れば確かに遅刻しそうなので一旦追い出すことを諦めて準備する。

 私よりも先に学校へ行く準備を済ませた彩葉は、私が鏡を見ながら後ろ髪を三つ編みしてる後ろで元赤ちゃんのお昼ご飯を作ってる。

 

 今、彩葉が作ってるものは私たちの節約飯のひとつ、材料はなんと水と粉だけで作れるパンケーキ。

 私はあれが彩葉が上京して最初に私に作ってくれたものだから好き。

 

 三つ編みを編みながら、ジーッと私の三つ編みが気になるのか彩葉の料理してるのとキョロキョロと見てくる元赤ちゃんを見つめる。

 てか着てる服、上の黒Tシャツは彩葉のだけど、短パンは私のを使ってたんですね。

 

 

「……それで、そこにいる元赤ちゃんはいつの間にそんなデカくなったの……?」

 

「分かんないけど夜中起きたらもうこのサイズ。……いや若干でかくなったか。ちなみに出身は月、本人曰く」

 

「つまり、まじの宇宙人? エイリアン? 月出身って何……?」

 

「らんー、それ何してるのー?」

 

「……これは三つ編みです。てか、いつの間に私の名前を……?」

 

「私も夜中急に呼ばれてからびっくり。マジでこの宇宙人わけわかんないって」

 

「ひっどーい! あ! もしかして、彩葉が教えてくれたかぐや姫って物語のおじいさん、彩葉じゃなくて藍ってこと?」

 

「君の目には80年後の私の姿でも見えちゃってんの? 違うわ!! 現役の女子高生!!」

 

「わぁ! 言い返し方がそっくり! 双子だ〜!」

 

 

 つい、警戒心であまり話しかけてなかったのに言い返してしまった。

 何だか騒がしいけれど無視して進め、そろそろ時間だからと急いでスクール鞄を手に取って冷蔵庫を開けてお昼ご飯にする予定だったコンビニ袋を掴み取って玄関に急ぐ。

 彩葉もタイミングよく米と水のパンケーキが焼けたのか、キッチンに置いて玄関に来ると、元赤ちゃんは何を思ったのか彩葉と私に抱きついてくる。

 

 

「じゃ、行ってきます。お昼はそのパンケーキ」

 

「はぐはぐっ! クソマジィ……。んえ! 待って、やだやだ! 彩葉と藍と一緒にいる!」

 

「ちょ、やっぱデカくなってる! 学校は休めないの!」

 

「……昨日まで赤ちゃんだったとは思えないぐらいの力の強さ」

 

「藍も現実逃避してないで!」

 

「やだやだ! 学校ってそんなに大事なわけー!?」

 

「命より大事! あんたと関わったのは私の責任だけど、もう全部元に戻すから早く月への帰り方思い出して!」

 

「らーんー!」

 

「……こっち来るんかい。命より大事ってほどじゃないですけど、私も学校は行かなきゃいけないので。……てか月への帰り方思い出すって、うちの姉の順応性高すぎ……まだ信じられんよ、私」

 

 

 がちゃんっと扉を閉め、鍵をかけて私は彩葉の後を追う。

 階段を降りて歩く彩葉の隣を歩き、私はちらっと様子を見てから彩葉に向かってビニール袋を押し付ける。

 

 

「え?」

 

「これ、彩葉の分のお昼」

 

「いやいやっ、これ藍のでしょ? 私の予定だったのはあの宇宙人に食べさせちゃったし」

 

「私の分は他にあるから早くとって。重いんだけど」

 

「……ほんとに?」

 

「ほんとに。だから早く、意外と重いんだってカレーライス」

 

 

 グイッと彩葉に賞味期限が本日までのカレーライスが入ったビニール袋を押し付ければ、渋々と言った感じに受け取ってくれる彩葉。

 あのカレーライスは私分用だったけれど、夜中にオムライスを食べさせていたから無くなってるだろうとは思っていた。

 

 一日ぐらい、私はゼリー飲料で済ませても問題ないし、もし今日も綾紬さんと諌山さん、彩葉とご飯食べるとしても最悪あんまりお腹すいてないとでも言えばいい。

 私にとって1番の優先事項は双子の姉と推しなのだ、彩葉が空腹の方が耐えられない。

 

 

「じゃあ、またお昼にね」

 

「今日も一緒に食べるの」

 

「当たり前でしょ。カレーライス半分こしよ」

 

「……」

 

 

 まあ、案の定バレてるんですけど。

 双子だから考えること同じなのか、彩葉に隠し事は基本的にバレてしまう。

 ひらひらと手を振られ、私と彩葉は隣同士のクラスへと分かれる。

 

 1時間目の数学を終わらせ、2時間目は体育の授業でサッカーの授業のミニゲーム中、私は外でボーッと眺めていれば音楽室が近くだからかピアノの音が聞こえる。

 ピアノの音に釣られるように音楽室に視線を向ければ、音楽の授業中もグループ活動があったのか、窓際にいた綾紬さんと目が合う。

 

 

「…………推しが今日も可愛い」

 

 

 私の言葉なんか聞こえるはずもなく、目が合って少しびっくりした綾紬さんはクスッと微笑むと手を振ってくれる。え、なに、ファンサか? 

 何もしない訳には行かないから周りの視線を確認したあと、ペコッと会釈を返せばどこか不満のご様子。

 

 綾紬さんの反応に気づいた諌山さんと彩葉も近寄ってきて、諌山さんは手を振り、彩葉は授業に集中しろってチームの方を指さしてる。

 私はわかってるって言うのを伝えるため、ほんの少しだけ右手を振れば綾紬さんはうんうんと頷いて笑ってる。

 

 

「……かわいい、まじでかわいい。なんであんな推しって可愛いん。……綾紬さんと同じ高校とか私、前世でどれだけ徳を積んだん?」

 

 

 だらしない顔を見せるわけにはいかないから口元を空いてる左手で隠しつつ、ペコッとまた会釈してから体育の先生の声掛けもあって走って移動する。

 絶対これ、彩葉に綾紬さん見てニヤけてたのバレてる気がする。

 

 推しのファンサを受け取れば、その日はオタクにとっては絶好調の日と言っても過言ではない。

 私はその日、普段なら絶対しないが体育の授業ではシュートを決め、次の時間からは彩葉のように手を挙げ、発言していくほど元気で有り余っていた。

 

 その後のお昼はもちろん、彩葉に嘘をついていたことをバレた。

 二人でカレーライスを半分こしてれば、同じく一緒にご飯食べていた綾紬さんと諌山さんにも怒られ、またおかずを食べさせられる通称おかずハラスメントを有難く受け取る。

 

 

「美味しい? 藍ちゃん」

 

「……おいひいです」

 

「もぐもぐしてるの可愛い〜」

 

「……つんつん、ひないでくらはい」

 

「彩葉みて、藍ちゃんのハムスターみたいなもぐもぐしてる頬っぺた芦花がツンツンしてる」

 

「藍よかったね」

 

 

 なんて恥ずかしい目にもあった。

 推しが楽しそうならいいですけど、推しと同じ場所でご飯、しかも推しからおかずを貰うなんて全くもって解釈不一致でもあるのでオタク心としては複雑だった。

 

 そして放課後は進路相談。

 綾紬さんと諌山さんに終わったら彩葉には内緒で靴箱のところに連れてきてとお昼に言われていたから、私はスクール鞄を持ったまま職員室に行く。

 

 

「酒寄さんは確か、お姉さんと同じ東大が目標で良かったのかな?」

 

「……はい」

 

「今の成績や状況的にも全く難しくないと思いますよ、一応他の大学も視野に入れることはできるけれどどうしますか?」

 

「いえ、こだわりないので姉と同じ場所でいいです」

 

「……そっか、まだ時間は沢山あるからゆっくり考えてほしい」

 

「はい、失礼します」

 

 

 冊子などを受けとって深くため息を吐けば、ちょうど彩葉が終わったのか彩葉も反対の扉から出てくる。

 私はスクール鞄に冊子を押し込み、駆け足で向かえば彩葉は気付いて止まってくれる。

 

 

「藍も終わったんだ」

 

「ん、早く帰ろ」

 

「小腹空いたな〜、あ、藍は大学どうするか決めた?」

 

「彩葉と同じとこ」

 

「そっか、藍が一緒なら心強いな」

 

あの人(母さん)に重箱の隅をつつくようなこと言われたくないし」

 

「……ふふ、藍がいてよかったよ、ほんとに。……ってあれ、芦花? 真実もなんで?」

 

「さぷらーいずっ」

 

「藍ちゃん一芝居ありがとね」

 

「いえ」

 

 

 靴箱のところで待ってくれていた綾紬さん、諌山さんと合流して、私はまたいつものように3人の一歩後ろを歩いてついていく。

 そういえばどこに行くんだろ。私も何も聞いてないし、彩葉は知ってるのだろうか。

 いや、もしかしたら彩葉も知らないかもしれない。

 

 

「藍ちゃんは? 進路どうする予定?」

 

「彩葉から藍ちゃんもゲームすっごく上手って聞いたよ〜、プロ目指すのー? それともスポーツ選手とかー?」

 

「ゲーム上手なんだ〜、今度一緒にやろうね」

 

 

 そう、実は私は諌山さんとも綾紬さんともツクヨミではまだ会ったことがない。

 理由は至って単純、推しに会えるか馬鹿野郎。である。

 諌山さんに関しては、綾紬さんに会えないのに諌山さんに会うのはそれはそれでおかしくないか? という事でずっとお誘いは貰ってるけど未だに叶ってない。

 

 

「……そんな上手くないですよ、大学は彩葉と同じところに行く予定です。特にこだわりとかないので。ほら、彩葉はほっとくとすぐご飯食べないですし」

 

「それは藍ちゃんもでしょ〜? もっと休め〜、正論パンチ! シュッシュッシュッ!」

 

「休みますっ、休みますから〜!」

 

「……あ、あはは」

 

 

 綾紬さんの正論パンチを苦笑しながら受け止めれば、何やら視線を感じる。

 私はふっと後ろを向けば、私と目が合ってギョッと驚いてる少女の姿。

 ……また彩葉の服を勝手に着てる。

 しかも、あれ、綾紬さんと諌山さんが彩葉に誕生日プレゼントで送ったやつ。

 

 さて、どうしようかな。

 あの子が何故外に出てるのか分かんないけど、このままここに合流するとなると彩葉は親友たちと過ごす時間が削られる。

 とはいえ、ここで私だけ抜けてもそれはそれで違和感だろう。

 

 

「彩葉おいで〜」

 

「藍ちゃんもおいで〜」

 

「え? わっ、諌山さん……!?」

 

「え? なんだっけ?」

 

「新しいカフェ〜、行くって約束したじゃ〜ん」

 

「いやっ、今日は……」

 

「い、彩葉はともかく、私まで一緒にはちょっと申し訳ないというか……!」

 

「れっちごー!」

 

「後生ですから〜……」

 

 

 なぜ、何故こうなった。

 どうしてこうなった。推しとパンケーキなんてどういうことだ、昨日の私が知ったら発狂する。

 というか、よく今の私は発狂せずにいられるな。

 

 メニュー表にはお高いお値段のパンケーキ。

 私が好きなマンゴーが沢山のパンケーキ、ブルーベリーがたくさんのパンケーキ、抹茶がかけられたパンケーキ。

 大変これは目に毒である。

 

 

「藍ちゃん、マンゴーとかブルーベリー、フルーツが好きなんだってね。彩葉から聞いたよ〜」

 

「月に一度のマンゴープリンがご褒美だって聞いたよ〜。今度美味しいマンゴープリンのお店教えるね〜」

 

「彩葉……!!」

 

「あ、あはは、ごめんってば」

 

 

 店員さんが来て、私は一番お手ごろお値段のシンプルイズベストのパンケーキを頼もうとしたのだが、綾紬さんに読まれたのはまさかのマンゴーのパンケーキで頭を抱える。

 だってあれ、2600円って書いてあったよ。2600円って何食分だ? 

 

 

「ふふっ、そんな顔しないで? ここは私と真実からの奢りだから」

 

「は!?」

 

「彩葉も驚いてるけどそういうこと〜」

 

「ちょ、真実! だから私のパンケーキ3段にしたの!?」

 

「そーいうこと〜!」

 

 

 私と彩葉は2人で驚いていれば、あっという間にパンケーキが届いてテーブルの上に彩られる。

 待て待て、私は彩葉のようにお2人に何かした覚えがないし、何ならお昼ご飯でココ最近は毎日迷惑をかけてることしかない。

 

 私の考えがわかったのか、綾紬さんと諌山さんは手をパチンっと合わせた後に手を開いて前に出してくる。

 主張されるのは私と彩葉のパンケーキ。

 

 

「彩葉&藍ちゃんノートで赤点回避記念〜」

 

「お礼の品でーす」

 

「「ご査収くださーいっ」」

 

「の、ノート……??」

 

「……藍、覚えてない? 私が期末前に、藍の得意な理系のノート借りたでしょ?」

 

「……あっ」

 

「ごめんね、勝手に借りちゃって。彩葉が使ってたのを見て、めっちゃ分かりやすかったから私たちも借りてたんだ」

 

「めーっちゃわかりやすかった〜。だからね、お礼の品だから受け取って欲しいなぁ」

 

 

 そこまで言われてしまえば、私も彩葉も受け取らないと失礼に当たってしまう。

 お礼を伝えてから私は大好きなフルーツが目の前にあるからか手が震え、いただきますと呟いてからフォークとナイフを手に取って切り、食べようとした瞬間。

 

 私の真後ろに人影が見える。

 後ろから伸びるその手が狙ってるものがなにか分かったと同時に、その手を取って私の方へ引き寄せ、フォークで切ったパンケーキを口に突っ込ませる。

 

 

「わあっ! はむっ!?」

 

「……人のものを勝手に取らないでください」

 

「よっ! 彩葉! うんまああああー! 藍、もう1個!」

 

「なっ……!!」

 

 

 彩葉が思わぬ登場に驚いてる間にも、私のパンケーキは後ろに立ってる人にどんどん食べられていき、頭が痛くなってくる。

 どうにかしなければと思っていたけど、すっかり彼女がここにいることを忘れていた。

 

 

「えー、かわいい。彩葉と藍ちゃんの友達?」

 

「彩葉の服着てる〜」

 

「と、友達っていうか、えっと、えーっと……藍、どうしよう……」

 

「……私も考えるから待って」

 

「パンケーキ好き? はい、これもどうぞ〜」

 

「パンケーキ? これが? 彩葉のと全然ちがーう!」

 

「ちょ、だめ、綾紬さんから取らんで!」

 

「ふふ、藍ちゃん、私は大丈夫だよ?」

 

 

 私の抵抗は虚しく、宇宙人の元赤ちゃんの子は綾紬さんのチョコレートのパンケーキも食べてご満悦な様子。

 もちろん、ここまで派手に登場してしまったら優しい二人が気になるのは当たり前で、どこから来たの? なんて在り来りな質問が飛び交う。

 

 

「月から来たの!」

 

「え?」

 

「ツキ?」

 

「築地から! 築地だよね!!」

 

「……私と彩葉の従姉妹なんです、訳あって一緒に住んでて」

 

 

 もうどうにでもなれ精神だ。

 彩葉が何とか繋いだパスを私は出来るだけ違和感がないように、紅茶を飲みながら視線を逸らしつつ、どうにか話題を紡いでいく。

 着地点が見えないこの話題、どうすんの彩葉と目で訴えるが彩葉もテンパってる。

 

 

「わー! 築地いいなぁ、美味しいお寿司屋さん教えて〜」

 

「可愛いね、お名前は?」

 

「名前? 名前は、えーっと」

 

「かぐや! そう、かぐやって名前なんだ!」

 

 

 かぐや姫から取ったな、これ。

 もう限界だと彩葉はパンケーキを一気に食べ、ご馳走様! 後で埋め合わせするから! と二人に謝罪し、かぐやを連れて2階から1階へダッシュ。

 

 私は地味に置いてかれ、ため息を吐いてから殆ど食べられたパンケーキを食べ終わらせる。

 

 

「……すいません、またちゃんと事情は話します。お詫びもちゃんと……」

 

「ううん、全然大丈夫だよ〜」

 

「じゃあじゃあ藍ちゃんもツクヨミで遊ぼ! ね?」

 

「いいね、それ!」

 

「……えっ」

 

 

 

 どうしてくれんだ、あのお転婆娘とうちの姉。

 私が死にそうなんですけど。

 

 ──オタクと推しが対面なんかしちゃいけないんですけど!! 

 

 

 

 

 

 

 







彩葉たちを追いかける途中に大量にあったスマホの通知。
それは残高が一気に減ったことを知らせる通知。


「……12万!?!?」




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