——焔とは、
「——やっぱり、凄い! チャンピオンバディのバトルは! 煌めきカッコいいや! 俺たちもいつか絶対にあんな風に……未来のチャンピオンバディになるんだ! ね、マーズ!」
「勿論よ、焔君! お姉ちゃんに任せなさい!」
サターンと出会ったあの日、メカニカルウィッチ研究所に向かう途中で車酔いをして、休憩の為に立ち寄った大きなショッピングモールで、美月は焔たちを見つけた。
そんな焔たちは、相棒や友達と一緒に楽しそうに会話していて、美月からすればその姿がとても眩しく見えた。
それからその数日後、メカニカルウィッチ学園の入学式の日に、美月は焔たちと再会することになった。
「——ああ、ごめん! 俺は焔! 赤火焔! 今日からこの学園に通う一年生なんだ! よろしく!」
明日斗博士の娘と言う立場から来るプレッシャーによる緊張で、教室に行く勇気が持てなかった美月に、最初に声をかけてくれたのが焔だった。
あの時焔が声をかけてくれたから……手を引いてくれたから、自分は最初の一歩を踏み出すことができた。
その後、いろいろあって何故か入学式の日にウィッチバトルをする流れになり、美月は周囲の視線と声を受けて、昔のトラウマが再発することになった。
明日斗博士の娘として勝って当然だった。負けることなんて許されなかった。そしてそんな自分なんかとバトルをした子たちの中には、その才能を比べられたせいで、バトル自体を辞める子たちもいた。
そんな中、バトルに負けた焔は言ってくれた。
「——
「〜〜!!」
初めてだった。こんなことを言ってけれた人は……。
それがとても嬉しかった。だからほんの少しだけ笑顔になれた。
「ありがとう……ございますわ、焔……!」
それから焔は何度も美月の手を引いてくれた。
「——でも……良いんですの? その……三人の中にお友達でないわたくしが入っても……」
「……何言ってるの? 昨日バトルした時から……ううん、初めて会った時から俺と美月はもう友達だよ! 小春と冬馬もそうでしょ?」
初めての友達になってくれた。実習授業でもペアを組んでくれた。チームにも誘ってくれた。
「——美月は何も悪くないよ! 悪いのは全部襲って来た奴の方だよ! それに美月は俺たちの命を助けてくれた!」
実習授業の時に、自分のせいでネメシスに襲われたと言うのに、それでも友達のままでいてくれた。
本当に優しかった。本当に嬉しかった。
『——よろしくね、美月! それに、サターンも! こうしてタッグ戦のペアを組むのは実習授業の時以来だけど……今回こそは一緒に頑張ろうね!』
学園リーグ戦でも、御影とカロン、それから歌とピスケスを相手に一緒にバトルしてくれた。
そのバトルに負けた際に、自分の立場のせいで負けたのは焔のせいだと好き勝手に言われた時は本当に悔しかった。
『——美月たちを離せ!』
それがキッカケとなった次の王牙とレオとの学園リーグ戦では、ムーンとサンの手によって暴走したハイパーキングレオから、自分を助ける為にバトルに飛び込んで来てくれた。
本当にカッコよかった。
そして過去のトラウマに苦しむ自分を救い、美月に対する周囲の目を変える為に、焔は学園リーグ戦を挑んで来た。
美月は最初は病気明けで心が弱っていたこともあり、過去のトラウマに苦しんでいたが、サターンとリンの相棒たちの助け、それから焔たちが真正面から何度も向き合ってくれたこともあり、最後は久しぶりにバトルを楽しむことができた。ウィッチバトルが好きだと言う気持ちを思い出すことができた。
そのバトルが引き分けで終わった後、焔は言ってくれた。
「——うん、約束するよ! 俺はずっと美月の隣にいるって!」
焔は約束してくれた。これからはずっと友達として美月の隣にいてくれると……。そして美月のことを明日斗博士の娘として過剰に特別視する周りの人たちを変えるキッカケになってみせると……。
初めてだった。皆が自分から離れて行く中、家族以外の他人で、そう言ってくれた人は……。
本当に嬉しかった。だから心から笑うことができた。
「——ありがとう、焔……! 約束ですよ……!」
それからも焔は何度も美月の手を引いてくれた。何度も守ろうとしてくれた。
本当に優しかった。本当に嬉しかった。本当にカッコよかった。
——私は焔に何度も何度も手を引いてもらいました……。 今まではそんな焔に対する
*****
——『擬似宇宙』のバトルフィールドにて。
『——ななな何と☆ 輝君たちのノーブルヴィーナスによって撃破されたと思われていた焔君たちのブラッドマーズが、再び姿を現したー☆ だけど流石に、ヴィーナスロイヤルシャインのダメージが大きかったみたい☆ しかし機体がボロボロなのは、先程まで激闘を繰り広げていた美月ちゃんたちのアークサターンも同じ☆ 果たしてこの決勝戦の行方はどうなるのかー☆』
MCのステラの声が聞こえてくる中、アークサターンとブラッドマーズがお互いに睨み合っていた。
アークサターンは先程の輝たちとの激闘により、左半身を中心に大ダメージを負っていて、全身がボロボロの状態になっていた。
一方でブラッドマーズもブラッドウィングを中心に大ダメージを負っていて、同じく全身がボロボロの状態になっていた。
するとそんなアークサターンに乗っている美月の耳に、観客席にいる冬馬とマーキュリー、それから小春とジュピターの声が聞こえて来た。
『——やっぱりな! 僕たちの一番のライバルがあのまま負ける訳がないんだ!』
『フッ、そうだな、冬馬……! 焔たちは七転び八起きの精神の持ち主だもんな……!』
『焔ー! マーズー! 信じてたよー! さあ、焔たちも美月ちゃんたちも、最後の勝負だよ!』
『う、うん……! どっちも最後まで頑張って……!』
どうやら冬馬たちと小春たちは、美月たちと同じく、この展開になることが分かっていた様だった。流石は幼馴染同士だ。
『さあ、焔! マーズ! 今こそ美月ちゃんたちに勝って、高校生チャンピオンバディになる時だ!』
『オラオラ! 最後まで気を抜くんじゃねぇぞ!』
『……ん。 美月……最後まで頑張って……』
『美月もサターンもこれが本当の最後だよ♪ ファイトだよ♪』
そして二大チャンピオンバディの麗とウラノス、それからネオンとネプチューンの応援が聞こえて来る中、アークサターンとブラッドマーズがぶつかり合った。
「焔! それにマーズも! わたくしも焔たちがあのまま終わる訳がないと思っていましたわ!」
『うん! マーズクラフトと爆炎の盾……それからこの
どうやらそれで輝たちのヴィーナスロイヤルシャインを耐えた様だった。
『さあ、美月! サターン! 決着を着ける! 行くよ、マーズ姉ちゃん!』
『ええ、焔君! 全力で行くわよ!』
『『簡易変形!
ブラッドマーズはブラッドウィングを展開し、近距離戦闘を想定したスピード特化の姿に簡易変形した。
そして展開したブラッドウィングから、先の戦闘で吸収した魔力で作り出した蝙蝠の形をした赤いビームを無数に放って来た。
不味い。自分たちと輝たちの魔法の魔力を一部とは言え吸収したからか、その威力も数も凄まじいことになっていた。
「くっ……!?」
それに対し、アークサターンはアーク
しかし元々左半身のダメージが大きかったせいで、アークガンを撃っている左腕が途中で自壊してしまった。
さらに右のアーク
「ーーッ!? 機体のダメージが……!? サターン!」
「分かっています、お嬢様!」
「「マジカルスキル! プラネットツリー!」」
アークサターンは咄嗟に近くの小惑星に身を隠すと、そこから木の根を伸ばして自然の盾を作り出した。
そして攻撃を防ぎ切った後、身を隠していた小惑星から一気に飛び出した。
「「マジカルスキル! プラネットウォーター!」」
アークサターンは周囲に展開した水を次々にいろんな武器へと変化させた。
そしてそれを飛ばす形で、今度はこっちから攻撃した。
『不味い!? マーズ姉ちゃん!』
『任せて、焔君! さっきの方法ね!』
『『マジカルスキル! マーズクラフト! そして、マジカルスキル! 爆炎の盾!』』
それに対し、ブラッドマーズはマーズクラフトで簡易的な盾を何枚も作って周囲に展開させながら、本体も炎の盾を構えて、ガッチリと防御した。
成程。多分これでヴィーナスロイヤルシャインを耐えたのだろう……。
「それなら……! サターン!」
「はい、お嬢様! 突っ込みますよ!」
「「マジカルスキル! サターンアークストライク!」」
アークサターンは今度はアークランスと機体本体に暴力的なまでの紫色の魔力を纏わせると、ブラッドマーズの元へと一直線に突っ込んだ。
『マーズ姉ちゃん! こっちも!』
『ええ、焔君! 突っ込むわよ!』
『『マジカルスキル! 炎の剣! そして、マジカルスキル! 炎の翼!』』
それに対し、ブラッドマーズもブラッドロッドの先端に炎の剣を発生させ、さらに背中に二対の炎の翼を生やしながら突っ込んで来た。
『『「「行っけえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッーー!!」」』』
そしてアークサターンとブラッドマーズがお互いの機体が入れ違うように交差した。
するとアークランスとブラッドウィングがそれぞれ砕け散った。
「「マジカルスキル! サターンバースト!」」
『『マジカルスキル! マーズバースト!』』
しかしアークサターンとブラッドマーズはそのまま直ぐに振り向くと、それぞれ闇の力を持った巨大なビームと、火の魔力が込められたビームを放った。
そして両者の魔法がぶつかり合って爆発を起こす中、二機は一度大きく距離を取った。
「焔! 貴方が手を引いてくれたから、わたくしはここまで来ることができたのですわ! だからそんな貴方とマーズに、今のわたくしとサターンの全てをぶつけて見せますわ! 行きますわよ、サターン!」
「はい、お嬢様! この一撃に全てを込めますよ!」
「「マジカルスキル! プラネットダーク!
アークサターンは再び全身に黒い炎を纏わせ、魔王システムを擬似的に発動させながら、周囲の景色から色を奪って灰色の世界にすると、まるで時を止める様にその動きを極限にまでスローにした。
だけど今回は別々に発動させた前回とは違う。アークサターンは最強のマジカルスキルであるフィールド魔法の力を取り込み、全身を纏っている黒い炎を超巨大な龍へと変身させることで、二つのマジカルスキルを合体させた。
「「合体マジカルスキル! サターンクロノスワールド・
そして灰色の世界の中で、黒い炎の巨龍がブラッドマーズの元へと突撃した。
『何のこれしき! 行けるよね、マーズ姉ちゃん?』
『勿論よ、焔君! この灰色の世界で動けない様では、美月ちゃんたちには追いつけないものね!』
『『マジカルスキル! マーズトゥインクルブラッド!』』
焔たちはシンクロゾーンを発動しているおかげで、極限にまで加速した美月たちの世界の中でも動けていた。
そしてブラッドマーズは全身に煌めく炎を纏い、まるで強化フォームのような豪華な見た目へと変化すると、灰色の世界の中でも自由に動き出した。
『『合体マジカルスキル! マーズブラッドサイス・
ブラッドマーズはそのまま、ブラッドロッドとブラッドステッキを合体させてブラッド
そしてさらに、マーズブラッドサイズを足し、マーズブラッドムーン・
そして両者の魔法が真正面から激突した。
「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッーー!!」」
『『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッーー!!』』
両者の魂の叫び声が響き渡る中、黒い炎の巨龍と太陽の鎌がぶつかり合い、飛び散った火花の光が灰色の世界で煌めいた。
お互いに一歩引くことなく、意地と意地をぶつけ合う。
「「焔たちには!」」
『『美月たちには!』」
『『「「絶対に負けないッーー!!」」』』
そしてお互いの最強の魔法同士によるぶつかり合いはやがて限界を迎えて、まるで星の終わりの様な超巨大な大爆発を巻き起こした。
「きゃあっ……!?」
「お嬢様!?」
『うわあっ……!?』
『焔君!?』
その衝撃によってサターンクロノスワールドが解除されて、灰色の世界に色が戻る中、アークサターンとブラッドマーズも、プラネットダークとマーズトゥインクルブラッドが解けたことで元の姿に戻った。
さらにアークステッキが破損する中、マーズ
しかし……。
『『「「まだだ……!」」』』
例え全てを込めた切り札が相打ちに終わろうと、機体が限界を迎えて悲鳴を上げようと、二機は止まることはなかった。
「焔ー!」
「マーズー!」
アークサターンは残った右腕のアークガントレットをかぎ爪の様に展開して殴りかかった。
『美月ー!』
『サターンー!』
それに対し、ブラッドマーズも腰に装備したブラッドリボンを右手に巻きつかせ、左手で残ったブラッドステッキを握り締めた。
そしていつかの自分たちの学園リーグ戦の時と同様に、最後は殴り合いになった。
『『「「高校生チャンピオンバディになるのは自分たちだッーー!!」」』』
両者の渾身のパンチがぶつかり合い、その衝撃でそれぞれアークガントレットとブラッドリボンが破損する中、ブラッドマーズが構えたブラッドステッキを、アークサターンのアークテールが貫いた。
しかしそのまま尻尾を掴まれ、無理やり引き千切られてしまう。
それによって両者はは全ての武装を失ったが、それでも止まらない。この手足が……頭が……使える物が残っている限り……!
そして二機はその頭を思いっきりぶつけ合った。
『『「「くっ……!」」』』
その衝撃でお互いに一度後ろに後退してしまった。
するとゴツンと言う音と共に、機体に何がぶつかった。
『『「「……!! これは……!」」』』
その正体に気づいた二機はそれを思わず手に取った。アークサターンはブラッドロッドを……。ブラッドマーズはアークソードとアークシールドを……。
奇しくも、お互いの元に流れ着いたのは相手の武器だった。
「これも運命なのですわね……! それなら……!」
『このマジカルスキルで決着を着ける!』
そして両者は決着を着ける為に、機体の残った魔力を振り絞った。
だけど発動させるのは自分の十八番の魔法では無い。この武器にあった魔法だった。
「「マジカルスキル! マーズブラッドサイス!」」
『『マジカルスキル! サターンスラッシュ!』』
アークサターンはマーズブラッドサイスを、ブラッドマーズはサターンスラッシュをそれぞれ発動させた。
本来ならばその機体固有の魔力を利用した、機体の名前が入っている魔法は、他の機体では扱うことができなかった。
しかし美月たちも焔たちも、お互いに友達として、同じチームメイト同士の仲間兼ライバルとして、相手の魔法を何度も見て来た。
だからこうして発動させることができた。
『『「「これで決める……!」」』』
そしてブラッドロッドの先端から血の様な赤い鎌を作り出したアークサターンと、アークソードを依代に紫の光の剣を作り出したブラッドマーズが激突した。
アークサターンがアークシールドを真っ二つに切り裂く中、ブラッドマーズはその隙を突いて魔法の斬撃を放った。
それを血の様な赤い鎌を盾にすることで防ぐが、相手はもう既に紫の光の剣を構えて突撃して来ていた。
しかし……。
(——焔……私の手を引いてくれてありがとう……!)
そんな中、アークサターンはブラッドロッドの先端を、ブラッドマーズへと向けた。
(——
そして焔たちの代名詞である魔法を放った。
「「マジカルスキル! マーズファイア!」」
アークサターンが至近距離から放った追尾性能を持つ蝙蝠の形をした赤い炎がブラッドマーズに直撃し、大爆発が巻き起こった。
そしてまるで永遠にも一瞬にも思える時間の後、爆発の煙が徐々に晴れて来た。
その結果は……。
「美月……! サターン……! 煌めき強かったよ……!」
「おめでとう、
アークソードを真っ二つに破壊されて、全身がボロボロになっていたブラッドマーズはマジカルバリアを破壊されて、戦闘不能になり、その場で動かなくなった。
それを見たMCのステラがバトルの決着を宣言した。
『——き、決まったー☆ 勝者はミライトウキョウ校の六位で一年生の美月ちゃんとサターン君のアークサターンだー☆ 今度こそこれで決着☆ 勝利の女神はみづみづとサー……んんっ☆ み、美月ちゃんとサターン君に微笑んだー☆ いや〜、同じ学校同じチームメイト同士と言う、正に仲間でありライバルである三者による前代未聞の三つ巴の決勝戦は、皆本当に凄くて、最後の瞬間まで一秒たりとも目が離せなかったよー☆ このバトルも私のマイベストバウンドの一つに登録だね☆』
「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ〜〜!!」」」
ステラの声と共に、観客席から大観声が巻き起こった。
その声はまるで会場全体が揺れるくらいに凄かった。
『皆ー☆ 注目ー☆ 美月ちゃんとサターン君こそが、今年の全国大会高校生の部の優勝者にして、現役高校生最強の高校生チャンピオンバディだよ☆』
するとステラの声に導かれた観客たちは一旦静まり返った。
皆待っているのだ。全国大会高校生の部の優勝者である高校生チャンピオンバディにのみ許された宣言が行われるのを……。
そんな中、美月たちはその期待に応えるべく、ボロボロのアークサターンを動かして、擬似宇宙の外にある本物の
そして相棒として二人で一緒に宣言した。
「「——わたくし(僕)たちが現役高校生の中で一番の相棒! 高校生チャンピオンバディですわ(だ)!」」