メカニカル☆ウィッチ   作:星乃祈

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第99話「世界で一番な相棒たちへ」

 

 

「「ーーッ!?」」

「今のはムーンと……」

「サンの記憶……!?」

 

 現実世界に戻って来た美月とサターンは思わず顔を見合わせた。

 どうやら美月の『時間魔法』の力で、ムーンとサンの記憶の世界に行っていたらしい……。

 

 するとそんな中、ドス黒く禍々しい魔力によってできたオーラを纏ったムーンたちは、自我が壊れた様な片言な言葉め叫んで来た。

 

『『——サア、美月(陽太タチ)ヨ!! 妾(我)ト一緒ニ死ンデクレ!! ソシテアノ世デズット一緒ニイヨウ!!』』

 

 ムーンたちの記憶の世界の中で、美月たちは彼女たちをこんな風にした元凶を知った。

 

 十年前の事件の裏で、祖父母の残した『擬似集合無意識システム』?なるものを掌握する為に、軍用機を意図的に暴走させたアダム議長たちワールドユニオン。そして故意にその被害を拡大させた黒穴博士。

 彼らのせいで美月とサターン……兄も一度命を落とし、母を含めた自分たちを失った明日斗博士たちは、こうしてワールドユニオン(人間)を憎悪しする様になった。

 

 そしてもう一人。ムーンたちの思考を歪め、その憎悪を増幅させている、ドス黒く禍々しい魔力の持ち主であるあの謎の女性。

 しかし最後の場面は、ムーンたちが死から蘇った?ばかりだったせいか、あの謎の女性の容姿も声も思い出すことができなかった。

 だけど今は兎に角……!

 

「お願い、ムーン! それにサンも! どうか目を覚まして……!」

「お嬢……ううん、美月も僕も形は違えど、こうして生きているんだ!」

 

 美月が必死に声を上げる中、サターンも兄である陽太として声を上げていた。

 しかし……。

 

『イイヤ、陽太!! コンナ地獄ノ様ナ世界ニ生キテイルコト自体ガ不幸ナノダ!! コンナ世界ニ生マレテ来ナイコトコソガ一番ノ幸セナノダ!!』

『サンノ言ウ通リジャ!! コンナ世界デ生キテイッテ辛イダケジャ!! 苦シイダケジャ!! 死ンダ方ガマシナノジャ!!』

 

 ムーンの言葉の中には、美月にも思い当たることがあった。

 だから美月は素の口調に戻り、ゆっくりと口を開いた。

 

「……わたくしも……私(・)も……十年前の事件でお母様とお兄様とムーンたちを失って、辛かった……苦しかった……死んでしまいたいとさえ思った……」

 

 十年前の事件の後、家族を失った美月はそれはもう酷い状態だった。

 ずっと部屋に閉じこもって、周囲の全てを酷く恐れ、殆ど何も食べず一日中泣いていた。

 ご飯だってストレスで直ぐに戻してしまって、まともに食べられなかった。ハッキリ言って死んでいてもおかしくはなかった。

 

『ソレナラ!!』

「だけど……! そんな私のことを、お父様が……アースが用意してくれた、新しい家族のリンや爺やたち皆が支えてくれたんです……! その中でもリンはどんな時でも私の側にいてくれました……!」

『クッ……!』

 

 あの時、リンと爺やたちが支えてくれなければ、間違いなく美月は死んでいた。

 だから美月も支えてくれるそんな皆の為にも、頑張って生きようと思った。

 

『ダカラ……リント言ウ奴ト新シク相棒ニナッタノカ!? 妾ト一緒ニ世界デ一番ノ相棒デアルチャンピオンバディニナロウと約束シタノニ!!』

「ーーッ!?」

 

 ムーンのその指摘は、美月も長年ずっと気に病んでいたことだった。

 

 十年前の事件の後、憧れであった兄とサン、それから相棒であるムーンを失い、もう二度と約束が叶わなくなったことで、美月はウィッチバトルをする意味自体を見失ってしまった。

 だけどきららとポラリスが美月が失くしてしまったウィッチバトルが大好きだと言う気持ちを思い出させてくれた。

 だから美月は新しい相棒のリンと一緒にウィッチバトルをしようとした。……でも結局、美月の魔女の力のせいでリンを壊しかけてしまった。バトルの方も明日斗博士の娘と言う立場のせいで、きららたちとのバトル以外は全然楽しむことができなかった。

 その後、美月は自分を責めた。ムーンを失った自分に、相棒を作る資格も、ウィッチバトルをする資格も無かったのだと……。

 

『妾ガ死ンダト言ウノニ、ドウシテバトルヲシテイルノジャ!! 何デソンナニ楽シソウナノジャ!! 何デ笑エルノジャ!!』

 

 ムーンの責苦は続く。

 

 かつて兄は言っていた、ムーンはこのことを拗ねはしても、責めたりなんかしないと……。

 自分だってそう思う。だってムーンは本当に優しかったから……。これはあくまでもあの謎の女性のドス黒く禍々しい魔力によって、歪められ増幅された感情なのだ……。

 だけどムーンの奥底にこの気持ちがあることも否定できなかった。

 

『妾ハ本当ニ失望シタヨ!!』

『我モダ!! イクラ美月ガ陽太ノ妹デアロウト、我以外ト相棒ヲ組ムナド、本当ニ失望シタ!!』

「「ーーッ!?」」

 

 さらにサンまでもが便乗して来たことで、言葉のナイフが突き刺さった自分と兄は動けなくなってしまった。

 

『美月ィィィィィィィィィィッーー!!』

『陽太ァァァァァァァァァァッーー!!』

 

 そしてその隙に、サターンクロノスワールド・土星(サターン)を打ち破ったムーンたちがこちらへと攻撃して来た。

 しかし……。

 

『『『『『『合体連携マジカルスキル! トライスターバースト!』』』』』』

『『グッ……!?』』

 

 灰色の世界に色が戻る中、火と水と木の三つの力が融合した、赤と青と緑の三色が混じり合った巨大な光が飛んで来て、ムーンたちを吹っ飛ばした。

 そしてそれを放ったトゥインクルマーズとサーガマーキュリーとドリームジュピターがクロノスサターンの元へと集った。

 

『いいえ! それはあなたたちの本(・)当(・)の(・)気(・)持(・)ち(・)ではない筈よ!』

『う、うん……! だって美月ちゃんのことが大好きなんでしょ? 今までも怖いくらいに伝わっていたもん……!』

『フッ、憎しみは愛情の裏返しとは良く言ったものだ……』

 

 マーズとジュピターとマーキュリーの人工精霊組がそう言う中、ロイヤルヴィーナスも合流して来た。

 

『皆(みな)さんの言う通りです……! ヴィーナスだって仮に同じ立場になったら、マスターと新しい相棒のことを死ぬ程妬むでしょう……! だけど、マスターの不幸を願うことだけは絶対にしません……! それは貴方たちだって同じ筈です……!』

『『……!!』』

 

 ヴィーナスの言葉にムーンたちが言い淀む中、皆の言葉を聞いた美月は心を強くして、改めて口を開いた。

 

「ムーン……本当にごめんなさい……。 だけど私にとって、いつだって守ってくれたお兄様……ううん、サターンも、どんな時も支えてくれたんリンも、そして最初の相棒のムーンも、世界で一番の相棒なんです……!」

「僕もだ! 美月……ううん、お嬢様も、最初の相棒のサンも、僕にとって世界で一番の相棒なんだ!」

 

 そして美月は周りの皆を見渡しながら言葉を続けた。

 

「確かにムーンの言う通り、生きていて辛いことも苦しいこともいっぱいありました……。 でもそれだけじゃありませんでした……。 新しい相棒のサターンと出会ったのをキッカケに、こうしてこんなにもたくさんの友達ができたんです……! だから私は……わ(・)た(・)く(・)し(・)は、もう死にたいなんて思いませんわ! これからもこの世界で生きていきますわ!」

 

 美月はハッキリと自分の意思を宣言した。

 

『『ソンナノダメダァァァァァァァァァァッーー!!』』

 

 するとムーンたちはその言葉を拒絶する様に暴れ出した。

 そんな中、美月たちは皆へと呼びかけた。

 

「ムーンたちを止めて、助ける為に、皆の力を貸して下さい!」

「僕たちと一緒にサンたちを救って欲しいんだ!」

『『『『『『『『勿論!』』』』』』』』

 

 そして美月たちはムーンたちを救うべく動き出した。

 

『****(火ノ魔法)ヨ!!』

 

 そんな中、サンは片言な精霊の言葉で詠唱した火の魔法が生み出した業火の炎を放って来た。

 

『『マジカルスキル! マーズブラッドサイス!』』

『『マジカルスキル! ヴィーナスノーブルゲート!』』

 

 そんな業火の炎を、トゥインクルマーズとロイヤルヴィーナスの二機のマジカルスキルが打ち消した。

 

 ロイヤルヴィーナスはそのまま、簡易的な機体として運用できる合計四機の『ロイヤルマルチウィング』を展開すると、両手に装備した大型の銃剣の『ロイヤルソードライフル』と共に、その圧倒的なスピードを生かしながらサンを牽制していった。

 さらに胸部の『ロイヤルコアキャノン』や、両腕の『ロイヤルマルチシールド』と脚部の『ロイヤルマルチブースター』に内蔵したビーム砲を撃ち込んでいく。

 

『****(水ノ魔法)ヨ!!』

 

 そんな中、ムーンは片言な精霊の言葉で詠唱した水の魔法で、水の塊から同じ力を持つ二機の本物の機体を創造しながら突撃して来た。

 さらにその二機と一緒に、剣や槍に、銃や矢、果ては盾と言った様々な武器を創造し、ドローン武器の様に操りながら攻撃して来た。

 

『『マジカルスキル! ジュピターゴーレムサモン!』』

『『マジカルスキル! マーキュリーウルフハント!』』

 

 そんな攻撃をゴーレムジュピターがマジカルスキルで受け止め、ウルフマーキュリーがマジカルスキルで相手の攻撃を逆に撃ち落としていった。

 自分たちだけじゃない。皆も本当に強くなった。

 

 するとそんな中、焔たちが声をかけて来た。

 

『行くよ、マーズ姉ちゃん! それから美月たちも!』

「はい、焔! 頼りにしていますわ!」

『さあ、サターン! 私たちの義妹(いもうと)ちゃんの為にも、頑張るわよ!』

「マーズ! 僕はまだそれを認めていないからな!」

 

 焔は明日斗博士の娘として過剰に特別視されて孤立していた美月に声をかけてくれて、初めての友達になってくれた。そしていつだって自分の手を引いてくれた。

 そんな焔の相棒のマーズは、良き姉としていつも焔のことを支えていた。

 

『『簡易変形! 吸血鬼(ヴァンパイア)モード! そして、マジカルスキル! マーズトゥインクルブラッド!』』

「「合体マジカルスキル! サターンスラッシュ・火星(かせい)!」」

 

 トゥインクルマーズは『トゥインクルウィング』を展開し、光の翼をはためかせると、全身に煌めく炎纏い、まるで強化フォームの様な業火な見た目に変身した。

 そして両手に装備した杖の『トゥインクルツインロッド』と、合計六機の水晶型のドローン武器の『トゥインクルスフィア』をムーンに撃ち込んでいった。

 一方でクロノスサターンも、クロノスA(アーク)ランスに、背中に発生させた炎の光輪を纏わせて、紫色と赤色の混じった巨大な炎の剣を生み出し、魔法の斬撃を放った。

 

『『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッーー!!』』

「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッーー!」」

『グッ……!?』

 

 そしてバランスを崩したムーンの元へと、トゥインクルマーズが背中の『トゥインクルリング』で一気に加速しながら近づき、腰に装備した『トゥインクルリボン』を右手に巻き付かせてぶん殴ってぶっ飛ばした。

 

 するとそんな中、両腕に装備した『ドリームマルチシールド』の合計四問、両肩と脚部の『ドリームアーマーキャノン』の合計四問、着ぐるみの様に背中に装備した巨大なゴーレムの両目の『ドリームヘッドキャノン』の二問、巨大なゴーレムの両腕の『ドリームマルチキャノン』の指と手のひらの合計十二門、腰の両サイドに装備した『ドリームマルチブースター』に内蔵したビーム砲の合計八問の、全部合わせて合計三十問のビームをぶっ放していたドリームジュピターに乗っている小春たちが声をかけて来た。

 

『美月ちゃんたち! 今度はあたしたちと!』

「はい、小春! 女の子の力を見せますわよ!」

『さ、サターンは男の子だけど頑張ろうね……!』

「ああ! ジュピターのガッツも頼りにしているぞ!」

 

 小春は生まれながらに病気でありながらも、それに負けずに夢を叶えようとしている明るく元気な子だった。そんな小春の姿を見て、美月もまた夢を見つけることができた。

 そんな小春の相棒のジュピターは、臆病に見えてガッツのある凄い子だった。

 

『『簡易変形! 要塞(フォートレス)モード! そして、マジカルスキル! ジュピタードリームゴーレム!』』

「「合体マジカルスキル! サターンアークブレイク・木星(もくせい)!」」

 

 ドリームジュピターは固定砲台の姿になると、自身を核として周囲にある小惑星の欠片を身に纏い、巨神へと変身した。

 その一方でクロノスサターンは、クロノスA(アーク)ランスを構えて、小惑星から木の根を伸ばして巨大な斧を持った巨人を作り出すと、同時に紫色と緑色の暴力的なまでの魔力を放った。

 

『『「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッーー!!」」』』

 

 そしてムーンが創造した機体の片方を撃破した。

 

 するとそんな中、サーガマーキュリーが手持ち式の弓の『サーガマルチボウ』と背中に装備した武器腕の『サーガマルチアームボウ』の合計三つの弓で狙撃しながら、残ったもう片方を相手取っていた。

 そして腰の『サーガマント』に内蔵された四本のアンカーを利用して近づき、獅子の『サーガクロー』と剣の『サーガソード』で攻撃しながら、冬馬たちが声をかけて来た。

 

『美月さんたち! 一緒に決めよう!』

「はい、冬馬! ライバルの頼みとあらば!」

『フッ、俺たちも頑張るぞ、サターン……!』

「ああ! 行くぞ、マーキュリー!」

 

 冬馬は昔美月から離れて行った人たちと同じ様に、自分もの実力差に悩んでいた様だが、それでも立ち上がって、これからもライバルでいたいと言ってくれた。本当に嬉しかった。

 そんな冬馬の相棒のマーキュリーは、クールに見えて熱い心を持っていた。

 

『『簡易変形! 大神(おおかみ)モード! そして、マジカルスキル! マーキュリーサーガウルフ!』』

「「合体マジカルスキル! サターンアークストライク・水星(すいせい)!」」

 

 サーガマーキュリーは四足歩行の姿になると、膨大な青いオーラを全身に纏って、巨大な狼へと変身し、さらにその余剰のオーラで狼の群れを生み出した。

 その一方でクロノスサターンは、周囲に展開した水を、クロノスA(アーク)ランスに纏わせ、機体本体を超巨大な槍へと変化させ、暴力的なまでの紫色と青色の魔力を纏いながら突撃した。

 

『『「「行っけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッーー!!」」』』

 

 そしてムーンが創造した機体の残った方を撃破した。

 

 するとそんな中、サンを相手取っていたロイヤルヴィーナスが吹っ飛ばされて来た。

 

『くっ……! 美(・)月(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)、すまない! 手を貸してくれ!』

「はい、輝ちゃ……ううん、輝(・)君(・)!」

『サターン……! 救援要請を出します……!』

「ああ! 任せてくれ!」

 

 輝は幼い頃交わした約束を守る為に、いつだって自分のことを守ってくれた。焔に負けないくらいにカッコよかった。

 そんな輝の相棒のヴィーナスは一度闇に呑まれながらも、相棒との絆で光を取り戻していた。

 だからムーンたちだって……!

 

『『マジカルスキル! ヴィーナスロイヤルシャイン!』』

「「合体マジカルスキル! サターンバースト・金星(きんせい)!」」

 

 ロイヤルヴィーナスは背景に無限の星を思わせる、数え切れないくらいの魔法陣を発生させると、その全てから光のビームを一斉に放った。

 その一方でクロノスサターンは、クロノスX(クロス)ステッキの先端と、巨大化させた天使の翼に、大量の魔法陣を発生させて、そこから闇の力と光の力を持ったビームを一斉に放った。

 

『『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッーー!!』』

「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッーー!!」」

『グッ……!?』

 

 そしてサンがムーンの近くへと吹っ飛ばされて、二機が激突した。

 今がチャンスだ……!

 

 トゥインクルマーズとサーガマーキュリーとドリームジュピターとロイヤルヴィーナスとクロノスサターンの五機は星の陣形を作り出した。

 

『『火(ファイア)!』』

『『水(ウォーター)!』』

『『木(ツリー)!』』

『『光(ライト)!』』

「「闇(ダーク)!」」

『『「「五つの魔力よ一つとなれ!」」』』

『『『『『『『『「「合体連携マジカルスキル! オールスターバースト!」」』』』』』』』』

 

 それぞれの機体の固有魔力である火と水と木と光と闇の五つの力が融合し、赤と青と緑と黄と紫の五色が混じり合った巨大な光となって、ムーンたちへと降り注いだ。

 

 

*****

 

 

「****(水ノ魔法)ヨ!」

『****(火ノ魔法)ヨ!』

 

 ムーンとサンは片言な精霊の言葉で詠唱した魔法に、さらにドス黒く禍々しい魔力を込めることで、美月たちの魔法に抗っていた。

 絶対に負けるわけにはいかない。美月をこんな世界から死なせて、解放して、救わなければ……。そう考てるムーンの耳に、美月とサターン、そして陽太の叫び声が聞こえて来た。

 

『ムーン! わたくしは……私(・)これからもずっとムーンと一緒にいたいの!』

『ああ! サンと同じ時間を生きていたいんだ!』

『**(ウオ)**********(ォォォォォォォォォォ)ッーー!!』

『「ーーッ!?」』

 

 その言葉に自分だけではなくサンの手も一瞬止まった。

 

『——だからお願い! 私(・)を(・)信(・)じ(・)て(・)! 未(・)来(・)を(・)信(・)じ(・)て(・)!』

 

 未来を……信じる?そんなの無理だ……。あんなことを経験して、そんなもの信じることなどできなかった。

 この世界は地獄だ。生きていたって辛いだけだ。苦しいだけだ。それならいっそ、生まれて来なければ……。

 

『ムーン。 私ね……この世界に生まれて来て良かったよ……。 だって大好きなムーンと出会えたんだから……』

『ああ……! サンと……世界で一番の相棒と出会えたんだから……!』

『「……!!」』

 

 ムーンの脳裏に美月が生まれて来た時の光景が過った。

 生まれたばかりの美月を見た時の感動が……喜びが……幸福が蘇って来る。

 

 この世界は確かに地獄だ。それは変わらない。

 だけど一度……いや、前の****の時も合わせて、何度も死んだ身として、あんな何も無い真っ暗な場所で美月が幸せになれるとはどうしても思えなかった。

 それに気づいた時、スーパーノヴァによって、奥底に封じ込められていたムーンの気持ちが溢れ出て来た。

 そしてそれはサンも同じだった。

 

『「——妾(我)モ……美月(陽太タチ)ト……一(・)緒(・)の(・)未(・)来(・)を(・)生(・)き(・)た(・)い(・)……!」

 

 ——それがムーンとサンの本当の願いだった。

 

 それを思い出した二人は、スーパーノヴァのドス黒く禍々しい魔力を打ち払い、オールスターバーストの光を静かに受け入れた。

 

 

*****

 

 ムーンとサンの機体が大きな音と元に爆発し、体を構成していた機械のパーツが擬似宇宙へと飛び散ると、まるで宇宙(そら)に帰る様に魔力となって消えていった。

 そんな中、ボロボロの人間の姿となって投げ出されたムーンたちを、アースが飛行艇のコンテナの中に回収する形で受け止めた。

 

「ムーン!」

「サン!」

 

 美月たちは急いでクロノスサターンを向かわせた。

 

「美月……」

「陽太……」

「「本当にすまなかった……。 そして……止めてくれてありがとう……」」

 

 するとムーンたちは意識を失いかけていたものの、それでもちゃんと生きていた。

 それからあの謎の女性のドス黒く禍々しい魔力もすっかり消えていた。美月の魔力が見える目で確認したから間違いない。

 

 美月たちはそれに安堵すると、目に涙を浮かべながら口を開いた。

 

「ムーン……!」

「サン……!」

「「——おかえりなさい……!」」

 

 

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