メカニカル☆ウィッチ   作:星乃祈

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第100話「運命は誰の手に」

 

 

『——馬鹿なッ!? サンとムーンが負けただとッ!?』

 

 ビッグバンが驚愕する声が聞こえて来る中、ムーンとサンの安否を確認した美月とサターンは、機体ごとそちらへと振り返った。

 そしてネメシスとクリサリスとバルカン、そしてビッグバン(父)へと改めて目を向けた。

 

 こうしてムーンたちを救い出した今、このまま残りの家族たちのことも止めて見せる……!

 スタースピリットの力は相変わらず強大だし、この場にはまだワールドユニオンも残っているが、それでもこっちにだってたくさんの仲間がいるのだから……!

 

 ——その時だった。

 

 『擬似宇宙』のバトルフィールドにいくつものノイズが走った。

 しかもそれは一瞬では無く、何度も何度も発生し、さらにどんどん強くなっていった。

 

『「ーーッ!?」』

 

 その場にいる一同は、明らかに異常な現象を前に、思わず戦いの手を一度止めていた。

 中でもビッグバン(父)を始めとするスタースピリットの面々とアースは見るからに動揺していた。

 

『この力はまさか……ス(・)ー(・)パ(・)ー(・)ノ(・)ヴ(・)ァ(・)か……!?』

『不味い!? 美月! 陽太! 彼(・)女(・)が来る!』

 

 すると二人の明日斗博士がそう口にした瞬間、美月たちの乗るクロノスサターンの目の前にある空間が歪み、丁度人間が通れる大きさのゲートが現れた。

 

『——サンとムーンは陽太と美月を救うことができなかったのですわね……』

 

 そしてその中から、ロ(・)ン(・)グ(・)ヘ(・)ア(・)の(・)毛(・)先(・)の(・)明(・)る(・)い(・)紫(・)の(・)部(・)分(・)以(・)外(・)を(・)瑠(・)璃(・)色(・)に(・)侵(・)食(・)さ(・)れ(・)た(・)髪(・)に、綺(・)麗(・)な(・)紅(・)玉(・)の(・)瞳(・)に(・)瑠(・)璃(・)色(・)が(・)混(・)じ(・)っ(・)た(・)こ(・)と(・)で(・)紫(・)水(・)晶(・)に(・)な(・)っ(・)た(・)瞳(・)を(・)持(・)つ(・)女性が現れた。

 

「う……あ……!」

「あぁ……!?」

 

 その姿を目にした美月とサターン……兄は思わず言葉を失った。

 

 ついさっきまで記憶に靄がかかった様に、その容姿と声を思い出すことができなかったが、この女性こそが、ムーンたちを含めた多くの人工精霊(メカニカルウィッチ)を暴走させていた、ドス黒く禍々しい魔力の持ち主で間違いなかった。

 

 だけどそれだけじゃない。それだけじゃなかった。

 ムーンたちの記憶越しでは無く、こうして自分の目で直接見たことで、スーパーノヴァと呼ばれた女性の正体が分かった。分かってしまった。

 確かに髪の色も目の色も変わっていて、自分たちの記憶に今も尚焼き付いている最後の姿よりも若返っているが、それでもこの世界で一番大好きな最愛の人の姿を見間違える筈なんかなかった。

 

 美月も兄も涙が止まらなかったが、それでも震える声で口を開いた。

 

「「——お母……様……!」」

 

 ——スーパーノヴァの正体は、十年前の事件で美月と陽太を庇って命を落とした亡き母である黒土乃亜(くろつちのあ)だった。

 

 そしてそれを拝呈する様に、ムーンとサンが朧げな意識のまま口を開いた。

 

「「乃亜……様……」」

 

 しかし母は静かに首を振った。

 

「……いいえ、サンとムーンにも前に言ったけれど……わ(・)た(・)く(・)し(・)は(・)乃(・)亜(・)で(・)あ(・)っ(・)て(・)乃(・)亜(・)で(・)は(・)あ(・)り(・)ま(・)せ(・)ん(・)わ(・)……。 わ(・)た(・)く(・)し(・)た(・)ち(・)の(・)名(・)は(・)ス(・)ー(・)パ(・)ー(・)ノ(・)ヴ(・)ァ(・)で(・)す(・)わ(・)」

 

 だけど例えスーパーノヴァがそう否定したとしても、美月たちにとって彼女が亡き母であるのは間違いなかった。

 

 するとそんな中、スーパーノヴァが改めて美月たちの方へと目を向けて来た。

 自分たちはクロノスサターンに乗っていると言うのに、そんなものを貫通する様に直接目が合った。

 

『——お願い……どうか二人共……生きて』

「——お願い……どうか二人共……」

 

 記憶の中の母の最後の声と、スーパーノヴァの声が重なった。やっぱり生前と同じ、優しい声のままだ。

 

「早く死(・)ん(・)で(・)、わ(・)た(・)く(・)し(・)た(・)ち(・)の(・)元(・)へ(・)と(・)帰(・)っ(・)て(・)お(・)い(・)で(・)……」

 

 だけどその後に続いた言葉は生前の母ならば、絶対に口にする筈が無いものだった。

 

「大丈夫ですわ、陽太……美月……。 わ(・)た(・)く(・)し(・)た(・)ち(・)自らの手で、わ(・)た(・)し(・)く(・)た(・)ち(・)の(・)子(・)供(・)た(・)ち(・)を死(・)な(・)せ(・)て(・)……解(・)放(・)し(・)て(・)……こ(・)ん(・)な(・)世(・)界(・)か(・)ら(・)救(・)っ(・)て(・)あ(・)げ(・)ま(・)す(・)わ(・)」

「う……あ……お母……様……!」

「なん……で……!? どう……して……!?」

 

 生みの親である最愛の母から死を望まれたことで、美月と兄の心はズタボロに引き裂かれた。

 もはやその瞳から流れる涙も、母との再会による涙から、ショックによる涙へと変わっていた。

 

『——待ってくれ、スーパーノヴァ!!』

 

 するとそんな中、ビッグバン(父)が大声で叫んで来た。

 

『私は精霊になった君と陽太と美月、それから人工精霊(メカニカルウィッチ)の為にも、必ず精(・)霊(・)だ(・)け(・)の(・)世(・)界(・)を(・)創(・)っ(・)て(・)見(・)せ(・)る(・)!! だからお願いだ!! あの子たちと生きる未来を諦めないでくれ!!』

 

 ビッグバン(父)はスーパーノヴァ(母)にそう懇願した。それは奇しくも、美月たちがムーンたちに言った未来を願う言葉ににていた。

 しかし……。

 

「ごめんなさい、ビッグバン……。 わ(・)た(・)く(・)し(・)た(・)ち(・)の邪魔をしないで……」

 

 スーパーノヴァ(母)はそれを糸も簡単に切り捨てた。

 

「——****(時間魔法)。 ****(空間魔法)」

 

 そして精霊の言葉で時間魔法を唱えて、自身と美月と兄以外の周囲の時間を止めると、続けて空間魔法で周囲の景色を塗り替え、異次元空間を……全く別の世界を創り出した。

 

「クリサリス……。 ネメシス……」

『はい、スーパーノヴァ様』

『***(グルル)……!』

「わ(・)た(・)く(・)し(・)た(・)ち(・)の(・)子(・)供(・)た(・)ち(・)を(・)救(・)い(・)た(・)い(・)の(・)……。 だから貴方たちの手を貸して……?」

『それが主の望みとあらば……』

『***(ガァッ)……!』

 

 そんな中、スーパーノヴァ(母)は手を叩いて、この異次元空間に自身の相棒たちを呼び寄せた。

 そして竜の様な異形の機体のクリサリスを外装として纏った、騎士の様な機体のネメシスの手のひらの上に乗った。

 

『——空間魔法……!』

 

 しかしこの場に来たのはネメシスたちだけでは無かった。

 

『美月……!』

『サターンもまだ無事よね!?』

「ネオンさん……!?」

「ネプチューンも……!?」

 

 なんとネオンは自身の本物の魔女の力である『空間魔法』で、ネプチューンと一緒に無理やりこの異次元空間に入って来ていた。

 そしてそのままマリンネプチューンをクロノスサターンの前へと立たせて、武器を構えた。

 

 するとスーパーノヴァ(母)は微笑みながら口を開いた。

 

「ふふっ、そう言えば貴方も美月と同じで、あ(・)の(・)子(・)の力を……ア(・)リ(・)ス(・)の力を受け継いでいるのでしたわね?」

(ア(・)リ(・)ス(・)……?)

 

 その名を聞いた瞬間、美月の脳裏にぴょこんと生えたアホ毛の目立つウェービーロングヘアの金髪に、カチューシャをつけた女の子の姿が浮かび上がった。

 

『——美(・)月(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)。 サ(・)タ(・)ー(・)ン(・)君(・)。 ********……**********************』

 

 だけどその顔は真っ暗になっていてよく分からない上に、確かに自分に何かを言っているのに、その声が上手く聞き取れなかった。

 

 するとそんな中、スーパーノヴァ(母)はネメシスの魔石の中に入っていった。

 

『良いですわ。 わ(・)た(・)く(・)し(・)自(・)身(・)の(・)力(・)とこ(・)の(・)子(・)の(・)『願(・)い(・)を(・)叶(・)え(・)る(・)魔(・)法(・)』を再現したものとは違う……ア(・)リ(・)ス(・)か(・)ら(・)受(・)け(・)継(・)い(・)だ(・)本(・)来(・)の(・)『時(・)間(・)魔(・)法(・)』と(・)『空(・)間(・)魔(・)法(・)』の力を見せて貰いますわ』

 

 スーパーノヴァ(母)がそう口にするのと同時に、ネメシスは十字架の様な剣を構えた。

 

『ーーッ!? 美月はやらせない……! ネプチューン……!』

『うん、ネオンちゃん! 流石に今回ばかりは全力で行こうか!』

『『合体マジカルスキル……! 海神の檻(ネプチューンプリズン)・呪縛(ロック)……!』』

 

 マリンネプチューンはマリンT(トライデント)ロッドを振ると、反(アンチ)魔法の効果を持つ涙と内部の魔力を空にする檻を融合させた牢獄にネメシスとクリサリスを閉じ込めた。

 さらに十個どころではない数を同時に発動し、もう二度と出れない様に徹底していた。これがネオンたちの本物の魔女としての全力の力……!

 しかし……。

 

『——****(火の魔法)』

 

 牢獄の内部から溢れ出て来た業火の炎が、その拘束を一片残らずに焼き尽くした。

 あれはサンの魔法……!?ネメシスとクリサリスの使う魔法は風の魔法と雷の魔法の筈なのに……!?

 

 それだけじゃない。ネメシスとクリサリスはスーパーノヴァ(母)のドス黒く禍々しい魔力をその身に纏っていた。

 しかも中にスーパーノヴァ(母)が乗っているせいか、その量が尋常じゃない。文字通り桁が違う。

 

『スーパーノヴァ。 『ネメシスクリサリス』。 参りますわ』

 

 そしてネメシスとクリサリスもとい、ネメシスクリサリスに乗ったスーパーノヴァ(母)がこちらへと突っ込んで来た。

 

『美月は渡さない……!』

『これならどうよ!』

『『合体マジカルスキル……! 海神の武器庫(ネプチューンバレット)・武器庫(アームド)……!』』

 

 マリンネプチューンは今度はマリンT(トライデント)ロッドを振って、機体の大きさを優に超える魔法の槍を次々に生成すると、追尾性能を持つ弾丸へと変えていった。

 そしてまたしても十個どころではない数を同時に発動し、ネメシスクリサリスへと飛ばした。

 

『——****(水の魔法)』

 

 それに対し、ネメシスクリサリスは水の塊を元に、剣や槍に、銃や矢、果ては盾と言った様々な武器を創造し、ドローン武器の様に操りながら迎え撃った。

 今度はムーンの水の魔法……!?

 

 そして無限対無限の物量勝負に勝ったのは、桁違いの魔力を持つスーパーノヴァ(母)の方だった。

 

『くっ……!? まだ……!』

 

 ネオンはいつもの余裕が完全に崩れてしまっていた。

 

『『合体マジカルスキル……! 海神の暴風域(ネプチューンストーム)・巣穴(ネスト)……!』』

 

 マリンネプチューンは今度はマリンT(トライデント)ロッドを振って、無数の水竜たちを呼び出すと、竜巻を起こす様に異次元空間を駆け巡らせた。

 勿論今回も十個どころではないので、もはや台風の様になっていた。

 しかし……。

 

『——****(風の魔法)』

 

 クリサリスネメシスはそれ以上の暴風を巻き起こし、ネオンたちの起こした台風を消滅させた。

 以前とは威力が違い過ぎる……!?

 

『——****(雷の魔法)』

 

 そしてそのまま雷を纏うと、神速の如きスピードで突っ込んで来た。

 だがそれを認識できたのはもうクロノスサターンの目の前まで迫って来ていた時だった。

 

『『ーーッ!? 合体マジカルスキル……! 海神の転移門(ネプチューンゲート)・反撃(カウンター)……!』』

 

 するとクリサリスネメシスとクロノスサターンの間に無理矢理割って入ったマリンネプチューンが、攻撃を反射する鏡の盾と敵を取り囲む様に展開した転移門を繋げた防壁を何重にも展開させた。

 しかし以前とは比べ物にならない威力となった雷の魔法が、反射することも転移させることも許さずにその防壁を破壊した。

 

『あぐっ……!?』

『ネオンちゃん!?』

『——****(土の魔法)』

『うっ……!』

『しまっ……!』

 

 そして大ダメージを受けてボロボロになったマリンネプチューンを、クリサリスネメシスが生み出した大地の欠片が押し潰す様に拘束した。

 

「ネオンさん……!?」

「ネプチューン……!?」

『さあ、今度は美月と陽太の番よ?』

「「ーーッ!?」」

 

 それを見た美月たちが思わず声を上げる中、クリサリスネメシスは再び目の前まで迫っていた。

 クロノスサターンは咄嗟にクロノスA(アーク)ランスとクロノスA(アーク)シールドを構えた。

 しかし……。

 

「きゃあっ……!?」

「美月!?」

 

 ネメシスクリサリスの長剣に両方とも真っ二つに切り裂かれ破壊されてしまった。

 その反動で一度距離が空く中、クロノスA(アーク)キャノンやクロノスA(アーク)ウィングに、クロノスA(アーク)スタビライザーやクロノスA(アーク)ブースターの銃口や矛先を相手に向けるが……。

 

『——陽太……美月……ずっとずっと愛していますわ……』

「「ーーッ!?」」

 

 記憶の中の母の最後の声が聞こえて来てその引き金がどうしても弾けない。

 美月は思わず泣き叫んだ。

 

「ダメです……! 私……お母様と戦いたくありません……! 戦(・)え(・)ま(・)せ(・)ん(・)……!」

『それならわ(・)た(・)く(・)し(・)た(・)ち(・)がこのまま救ってあげるわ』

 

 それでもスーパーノヴァ(母)は容赦なく攻撃して来る。殺そうとして来る。

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ〜〜!?」

「美月!? くっ……!」

 

 そしてクロノスサターンを切り刻み、アークユニットを破壊してデフォルトの姿へと戻した。

 

『おやすみなさい、美月……。 それに陽太も……』

 

 さらにそのままトドメを刺そうとして来る。

 

 ——その時だった。

 

『——私(・)が(・)必(・)ず(・)美(・)月(・)を(・)守(・)る(・)の(・)……! 絶(・)対(・)に(・)誰(・)に(・)も(・)渡(・)さ(・)な(・)い(・)か(・)ら(・)……!』

『そうだよ! ネオンちゃんがこの世界でやっと見つけた本物の魔女なの! 同類なの! だから絶対に失う訳にはいかない!』

 

 無理やり拘束を破ったマリンネプチューンが、ボロボロのままこちらへと突撃して来た。

 自分たちを助けようとしてくれいてる筈なのに、まるで怨霊の様なその姿に、どこか恐怖を覚えてしまった。

 

『『マジカルスキル……! 海神の化身の領域(ネプチューンアバターフィールド)……! +(プラス)海神の支配する空間(ネプチューンマリンフィールド)……!』』

 

 マリンネプチューンは両手のマリンT(トライデント)ロッドと八機のマリンスフィアを展開し、巨大な魔法陣を作り出すと、巨大な海神と海底神殿を召喚した。

 さらに歪ませた空間から大量の海水を流れ込ませ、無限を体現した物量で異次元空間を海の中へと沈めた。

 それだけではない。そのまま最強のマジカルスキルであるフィールド魔法同士を合体させた。

 

『『合体マジカルスキル……! 海神の支配する空間(ネプチューンマリンフィールド)・海王星(かいおうせい)……!』』

 

 それによりスーパノヴァ(母)が創った異次元空間が海の世界へと上書きされた。

 世界を書き換えるなんて……これが『空間魔法』の力……!

 

『あ(・)い(・)つ(・)ら(・)を(・)消(・)し(・)て(・)……!』

 

 そしてネオンは魔力に宿る精霊たちに指示を出しながら攻撃した。

 しかし……。

 

『止(・)ま(・)り(・)な(・)さ(・)い(・)……』

 

 スーパーノヴァ(母)がそう口にすると、魔力に宿る精霊たちはピタリと動きを止めた。

 

『ーーッ!? 何故……!?』

『ふふっ、精霊とお友達である貴方には悪いけれど……子(・)供(・)た(・)ち(・)が(・)母(・)親(・)の(・)言(・)う(・)こ(・)と(・)を(・)聞(・)く(・)の(・)は(・)当(・)然(・)ですわ。 さあ、皆、わたくしたちに力を貸して……』

 

 すると魔力に宿る精霊たちがスーパーノヴァ(母)の元へと集い始めた。

 

『——****(水の魔法)。 ****(金の魔法)。 ****(光の魔法)。 ****(地の魔法)。 ****(火の魔法)。 ****(木の魔法)。 ****(土の魔法)。 ****(闇の魔法)。 ****(天の魔法)。 ****(風の魔法)。 ****(雷の魔法)。 ****(海の魔法)』

 

 そして魔力に宿る精霊たちは水、金、光、地、火、木、土、闇、天、風、雷、海などのありとあらゆる属性となって攻撃して来た。

 美月もネオンも魔女としての力を使って、必死に抗おうとするが……。

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ〜〜!?」

「美月!?」

『あぐっ……!?』

『ネオンちゃん!?』

 

 スーパーノヴァ(母)との圧倒的なまでの力の差の前にはなす術がなく、そのまま一方的に蹂躙されてしまった。

 

 クロノスサターンは両手に装備したクロノスX(クロス)ステッキを両腕のクロノスX(クロス)ガントレットごと破壊され、それから胸部のクロノスX(クロス)キャノンを潰され、さらに腰部のクロノスX(クロス)テールも引き千切られた。

 一方でマリンネプチューンも全ての武装と四肢を破壊されてだるま状態にされていた。

 

 そして二機共マジカルバリアを破壊されて戦闘不能になるが、クロノスサターンはそれでも魔王システムの無尽蔵の魔力で動こうとした。

 しかしそんなクロノスサターンの魔石をネメシスクリサリスが長剣で切り裂いた。

 

「**(グワ)**********(ァァァァァァァァァァ)*(ッ)ーー!?」

「お兄様!?」

「陽太!?」

 

 それにより魔石の中からもう一人の兄の悲鳴声が聞こえて来た。

 そして美月たちがそれに気を取られていると……。

 

「——美月……。 陽太……」

「「ーーッ!? お母様……!?」」

 

 気づいた時にはスーパーノヴァ(母)がクロノスサターンのコックピットの中に……美月の目の前まで来ていた。

 

「う……あ……お母……様……!」

「ふふっ、本当に大きくなりましたわね、美月……」

 

 スーパーノヴァ(母)は目と鼻の先に亡き母がいることで涙を流したまま何もできなくなった美月の顔に優しく触れて来た。

 やっぱりその声も、自分に対する触れ方も、生前の優しい母のままだった。

 しかし……。

 

「だけど……これ以上こんな地獄の様な世界で生きていたって、不幸になるだけですわ……。 だからわ(・)た(・)く(・)し(・)た(・)ち(・)が美月をこんな世界から救ってあげますわ」

 

 スーパーノヴァ(母)はそう言うと、今も尚、紫水晶(アメジスト)の瞳からボロボロと涙を流している美月の額に、そっと口付けをした。

 

「あ……」

 

 するとその瞬間、美月の意識が朧げになって来た。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感の感覚が消えていく……。

 

「——おやすみなさい、美月……」

 

 ——そして最後に母のその言葉を聞きながら、美月の意識は何もない真っ暗な世界へと落ちていった。

 

 

*****

 

 

「——美月……!? 美月……!?」

「サターンもどうしたの!? 返事をしてよ!?」

 

 ネオンは魔力反応が途絶えた美月へと必死に呼びかけていた。

 サターンの方も「美月!?」と叫んだのを最後に反応がなくなったことで、ネプチューンも焦った声を上げていた。

 

 するとそんな中、完全に機能を停止したクロノスサターンの魔石の中からスーパーノヴァが出て来た。

 そしてクリサリスネメシスの手のひらの上に乗ると、ネオンたちへと声をかけて来た。

 

「さあ、次は貴方たちの番ですわ。 ネ(・)オ(・)ン(・)も(・)ネ(・)プ(・)チ(・)ュ(・)ー(・)ン(・)も(・)わ(・)た(・)く(・)し(・)た(・)ち(・)の(・)子(・)供(・)た(・)ち(・)なのですから……わ(・)た(・)く(・)し(・)た(・)ち(・)自らの手で救って……」

 

 ——その時だった。

 

「うっ……」

『スーパーノヴァ様!?』

『***(ガアッ)……!?』

 

 スーパーノヴァがふらりと倒れると、ネメシスクリサリスがそんな彼女を慌てて支えた。

 

「……い(・)く(・)ら(・)稀(・)代(・)の(・)魔(・)女(・)で(・)あ(・)る(・)こ(・)の(・)子(・)の体とは言え……流石にわ(・)た(・)く(・)し(・)自(・)身(・)の(・)力(・)には耐えきれなかった様ですわね……」

 

 スーパーノヴァが独り言の様にそう呟くと、そんな彼女の状態と連動する様に、異次元空間が解除され、元の『擬似宇宙』のバトルフィールドに戻って来た。

 

 するとスーパーノヴァの姿を見たビッグバンが焦った声を上げた。

 

『スーパーノヴァ!? くっ……!? 不味い状態だ……! スタースピリットの総員に告ぐ! 今回はここで撤退だ! だがワールドユニオンがこれ以上好きにできない様に、最後に奴らに深手を負わせておけ! バルカンとネメシスとクリサリスはスーパーノヴァの護衛だ! 絶対に守れ!』

『心得た』

『勿論です』

『***(ガアッ)……!』

『『『了解』』』』

 

 ビッグバンはそう指示を出すと、美月たちのいるクロノスサターンへと目を向けた。

 するとそんな美月たちを守る様にアースの飛行艇が立ち塞がった。

 ネオンたちも空間魔法を使って、マリンネプチューンを美月たちの元へと転移させた。本物の魔女であることがバレようがもはやどうでも良い。

 

『チッ! 仕方があるまい! アース! 陽太と美月、それからネオンとネプチューンはお前に預けたぞ!』

『明日斗……』

 

 二人の明日斗博士がやり取りをする中、ネオンたちはクロノスサターンの魔石の中に転移した。

 

「美月……!」

「サターン!」

「「……」」

「美……月……?」

「サターン……?」

 

 するとその中では美月がまるで眠った様に動かなくなっていた。

 それからサターンも全く反応がなかった。

 

「美月……? ねえ、返事を……」

 

 そんな中、ネオンは恐る恐る美月に触れた。

 するとネオンは美月の心臓が完全に止まってしまっていることに気づいた。

 

「あぁ……!?」

 

 ネオンは美月の状態を理解すると、泣き叫びながら彼女に抱きついた。

 

「——美……月……やだ……よ……! 私(・)を(・)置(・)い(・)て(・)行(・)か(・)な(・)い(・)で(・)よ(・)……! 私(・)を(・)一(・)人(・)に(・)し(・)な(・)い(・)で(・)よ(・)……!」

 

 ——美月は死んでしまっていた。

 

 

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