——魔法界にあるスタースピリットの本拠地である城の最新部にて。
「——何故だッ!? スーパーノヴァッ!? 何故、陽太と美月を殺したんだッ!? 君はあんなにも子供たちのことを愛していたと言うのにッ!?」
スタースピリットの面々を引き連れて撤退したビッグバンは、人間界と繋げていた超巨大なゲートを完全に閉じた後、こうして怒りの形相でスーパーノヴァを問い詰めていた。
「ふふっ、殺したなんて心外ですわ。
その一方で、この広間を見下ろす様にただ一つポツンとおかれた玉座に座るスーパーノヴァは、優しく微笑みながらそう返答していた。
今は先の戦闘の反動で、彼女の背中に接続されたコードと繋がっている『集合無意識システム』?なるものの補助がなければ、満足に動くことすらままならないらしいのに、随分余裕そうに見えた。
そしてそんなスーパーノヴァへとビッグバンは糾弾を続けていた。
「スーパーノヴァッ!! いや、
ビッグバンは一度口籠ったが、耐え切れなくなったのか、スーパーノヴァへと詰め寄った。
「
「——そこまでです、ビッグバン様」
「——
「ーーッ!?」
しかしそんなビッグバンの首元に、ネメシスとクリサリスが剣と爪を向けた。
ビッグバンはスタースピリットを統べるあの方だと聞いていたのに……。
「ネメシス! クリサリス! 貴様ら!」
動けなくなったビッグバンの代わりに、バルカンが声をあげた。
するとそんな中、スーパーノヴァがパンパンと手を叩いた。
「ほらほら、皆。 喧嘩はダメですわ。 やっと新しく来た子とゆっくり話す時間ができたと言うのに……」
スーパーノヴァはそう言うと、微笑みながら自分のことを……オフィウカスのことを見て来た。
綺麗で儚く、優しい顔をしていると言うのに、何故かその瞳で見つめられるとゾッとしてしまう。
するとそんな中、ネメシスとクリサリスから解放されたビッグバンが咳払いをしながらオフィウカスに話しかけて来た。
「んんっ、すまない……見苦しいところを見せた。 オフィウカス、君の……いや、君たちの事情は私も把握している。 だがすまない……君の半身のサーペンスの復活には今しばらく時間がかかりそうなんだ……」
「はい……」
サーペンスは黒穴博士の『
それでも全く手段が無い訳ではないらしく。どうやらここにある『集合無意識システム』?なるものを使えば、
「だけど私は必ず君の半身であるサーペンスのことを救って見せる! そして君たちの為にも、人工精霊たちが何者にも脅かされることのない、精霊だけの世界を創って見せる! だからどうか君も、未来を信じていてくれ……」
ビッグバンは懇願する様にそう力説した。
するとスーパーノヴァが横槍を入れる様に口を挟んで来た。
「あらあら何を言っていますの、ビッグバン? せっかくサーペンスはこの世界から解放されたと言うのに、こんな地獄に呼び戻すなんて可哀想ですわ。 寧ろ、オフィウカスも早く死なせて、二人一緒に静かに眠る方がずっと幸せですわ」
「スーパーノヴァッ!!」
そんなスーパーノヴァとビッグバンは再び口論を始めた。
するとそんな中、自分の付き添いで来ていた
「……ビッグバン様は精霊だけの世界と言う未来こそが我々の幸せなのだと頑なに信じている……。 それに対し、スーパーノヴァ様は
「そんな……」
「……故に、その時どちらに着くのかを、お前も今から考えておくことだ……。
「
——『未来』と言う言葉を聞いた時、オフィウカスの頭に過ったのは、外の世界で出会ったあの子……レイの顔だった……。
*****
——一方その頃。競技場内にある一番広い部屋にて。
「——美月……お姉ちゃん……?」
レイは部屋のベット上で眠っている美月の姿を見て、呆然とした声を上げていた。
悪い方の明日斗博士率いるスタースピリットが去って行った後、深手を負わされて尚、この競技場に居座り続けるワールドユニオンを、急いで駆けつけて来た祖父である白金代表が抑えていた。
そんな中、白金代表から母である光と家族であるルミとエールと一緒に安全な所にいる様にと言われてこの場に来たのだが……。
「そんな……!? 嘘よ……!? 美月ちゃんが……!? どうして……!? こんな……!?」
「きららちゃん! きららちゃん! 落ち着いて!」
「どうして相棒たちの絆のキラキラが見れる最高の舞台で、こんな結末を迎えるんですか!? 神様はあんまりですよ!?」
「御影ちゃん……」
「みー……。 くっ……!
「御霊……」
レイの側にいた車椅子の女性……初代チャンピオンバディのきららとポラリスと、確か……大学生チャンピオンバディの女性とその妹と相棒たちの慟哭が聞こえて来た。
彼女たちだけではない。叔父……母の弟の輝と美月の同校のミライトウキョウ校の面々や、この全国大会高校生の部に出場していた他校の面々、それさら公式MCを務めていたアイドルのステラなどの、この場にいる皆の慟哭が聞こえて来た。
レイはまだ五歳の幼い子供だが、それでも死と言うモノを理解していない訳ではない。
レイは周りの皆の雰囲気から、美月は眠っているのではなく死んでしまったことを悟った。
「あ……」
「ーーッ!? レイ……!」
「「気をしっかり……!」」
思わず力が抜けた自分を母とルミとエールが支えてくれた。
美月が……死んだ?四月に起きたメカニカルウィッチ研究所のテロ事件で、自分を助けてくれた恩人で憧れの人でもある彼女が……?
レイが呆然としていると、眠っている美月の周りにいる者たちのより大きな慟哭が聞こえて来た。
「美月……! 美月……!
「サターンもよ! せっかくやっと見つけた
「ネオン……。 ネプチューン……。 くっ……!」
「畜生! なんでこんなことに……!」
何かと一緒に美月たちのことを応援していたネオンとネプチューンは、美月の体を揺さぶりながら今までにないくらいに激しく取り乱していた。
それを同じ二大チャピオンバディの麗とウラノスが宥めながらも、自身も悔しそうに顔を歪ませていた。
「美月!? 美月!? こんなのってないよ!? うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ……!!」
「焔君……! 美月ちゃんもサターンもどうして……!」
「こんなの……こんなの全部悪い夢だよ! うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ……!!」
「小春ちゃん……。 うぅ……ぐずっ……サターン……」
「こんなの最悪の結末過ぎる……! うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ……!!」
「冬馬……。 くっ……! サターン……!」
「美月ちゃん……! 美月ちゃん……! ごめん……! ごめん……! 僕はまた君を助けられなかった……! うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ……!」
「マスター……! 美月さん……サターンさん……お願いですから……うぅ……」
美月と同じチームオールスターズの友達だった焔とマーズ、冬馬とマーキュリー、小春のジュピター、輝とヴィーナスの面々は激しく泣き崩れていた。
特に焔と輝はネオンに負けないくらいに荒れており、自罰する様に自身の手を床へと激しく打ち付けていた。
「お嬢様!! お嬢様!! お願いですから目を開けて下さい!! うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ……!」
「リン……! 気を確かに……! くっ……! お嬢様……! サターン……!」
美月の家族であり相棒でもあったらしいリンは、眠ている彼女の手を握りながら、壊れた様に泣き叫んでいた。
そんな自我崩壊を起こしてもおかしくないリンを、同じ家族であるグリが自身も嘆きながら必死に宥めていた。
「美月……サターン……
悪い方の明日斗博士とは別人らしい、良い方の明日斗博士は懺悔する様にそう口にしていた。
するとレイの側にいた大学生チャンピオンバディの女性がポツリと呟いた。
「
しかし直ぐにこの場にいる皆の嘆き悲しむ声に掻き消された。
そんな中、レイも震える声で美月の名を呼んだ。
「——美月……お姉ちゃん……!」
——美月とサターンの死は、多くの者たちに消えない傷跡を残していた。
第6章をお読み頂きありがとうございます。これにて第2部である全国大会高校生の部編は終わりになります。
次回からの第7章は御霊ちゃんとプルート君、御影ちゃんとカロンちゃんのお話になります。