——御霊のこれまでの人生と言うことなら、やはり彼女が生まれた時のことから話すべきでしょうね。
——プ、プルート!?
——いくら御霊は天才とは言え、流石に生まれた時の記憶らないでしょう、ここは相棒である僕が話させていただきますね。
「——ほら、
「この子が僕と
「——御霊……! 僕の相棒……!」
冥道家は代々神社の神主を務めていて、御霊の父の
それ故に、神様から授かった子として、御霊のことは生まれた時から大切に扱っていた。
そんな御霊の相棒として用意されたプルートは、御国が一から感情を学習させたこどあって、彼と似た人格を持つ様になった。
それ故に、御国の真面目さを引き継いだプルートは、御霊の相棒として振る舞いつつも、一歩引いた立ち位置で見守る様になった。
「えっと……こう……かな……?」
「おお〜、御霊ちゃん、正解だよ……! まだ幼いのに、のれが分かるなんて……!」
「あらあら、この子もしかしたら天才かもしれないわね〜」
御霊は小さな頃から、天才の片凛を持っていた。
自意識が芽生えるのが早く、幼い身でありなから、年齢に見合わない程の難しいことをこなすことができた。
両親はそんな御霊のことを「流石、神様がくれた子だ」と益々溺愛する様になっていた。
「うう……ひとがいっぱい……こわい……」
しかしそんな御霊にも弱点はあった。
彼女は頭が良い反面、極度の人見知りを患っていた。
両親とプルートの家族の前でなら問題ないのだが、それ以外の見知らぬ他人を前にすると、頭が出力した内容を上手く言葉に表せなくなってしまうのだ。
だけど両親はそんな御霊のことを責めることはせず、苦手なものは仕方がないと、無理には関わらせない様にしていた。
それは確かに優しさではあったものの、それが原因で御霊の人見知りはどんどん加速してしまった。
プルートもそんな御霊の人見知りがどうにか治らないかと試行錯誤したものの、彼女が自身の頭の中の世界に閉じこもってしまう様になった為、結局は上手く行かなかった。
それでもプルートは御霊を支え続けた。
確かに対人コミュニケーションに割と致命的な欠陥があるものの、人工精霊である自分をも凌駕する御霊の頭脳を誇らしくも思っていた。
それに御霊の引っ込み思案な面は自分がカバーすれば良い。だって自分は彼女の相棒なのだから……。
——御霊は昔から賢くて、対人面が苦手で、そして可愛い子でした……。 まあ、昔は今程テンションがぶっ壊れてはいなかったんですが、やっぱり長い間自分の世界の中に閉じこもっていたのもあって、こうなってしまったんでしょうね……。 それともう一つ……妹の御影が生まれたこともあるんでしょうね……。 御霊は大のシスコンですから……。
*****
——みーが生まれた時の話なら、姉であるこの私に任せたまえ! みーが生まれた時の愛らしさを思う存分、語ろうじゃないか!
——お、お姉ちゃん! 話の趣旨がズレてますよ!?
——うんうん、そうだね〜。 それに御影ちゃんが生まれた時のことなら、相棒のカロンちゃんにお任せあれだよ〜
——カロン!?
——カロンちゃん!?
——あれはね〜
御霊は妹が生まれて来ると知った時、それはもう狼狽えていた。元々、両親とプルート以外とはまともに話せない身として、気の休まる家の中に他人が来ると言うのは、怖いらしかった。
しかし……。
「ほら、御霊〜。 この子が貴方の妹よ〜。 名前は御影って言うのよ〜」
「わ、わあ〜〜!!」
「どうやら御霊は御影に一目惚れしてしまった様ですね」
そんな不安は、御影が生まれた日に綺麗さっぱり消え去った様だった。
「よしよし、御影……! この世界に生まれて来てくれてありがとう……!」
「カロンもこれから御影の相棒としてよろしくね?」
「うんうん〜、こんなに可愛い子なら、カロンちゃんとしても願ってもないことだよ〜」
プルートが御国が一から感情を学習させた存在なら、カロンは御子が一から感情を学習させた存在だった。
それ故に、御子と似た人格を持ったカロンは、そのマイペースさを引き継いで、御影の相棒として振る舞いつつも、後ろから優しく見守る様になった。
「おねーちゃん! おねーちゃん!」
「えへへ……! 何ない、みー?」
御影はある意味、御霊と似ている面があった。
流石に姉程の天才ではなかったものの、それでも割と天才肌で、飲み込みが良い方だった。
「うぅ……お姉ちゃん……」
「み、みー! だ、大丈夫だよ! お、お姉ちゃんがついてるから!」
「……と言いつつ、声が震えていますよ、御霊」
「しょうがないから、ここはカロンちゃんとプルート君が何とかしますか〜」
それから御霊の人見知りも受け継いだのか、御影も引っ込み思案で人の輪に入るのが苦手な面があった。
……とは言え、流石に姉程対人恐怖症な訳では無く、あくまでも人見知りと言う範疇に収まっていた。
そんな御霊と御影の姉妹のことを、両親は区別することなく、平等に愛していた。
それからプルートとカロンも、両親の人格と似ていることもあって、姉妹のことを割と溺愛していた。
そして姉妹も、人見知りではあるものの、そんな家族のことを好きでいてくれた。
これで後は二人共、家族以外の人にも関わりが持てる様になってくれれば良いのだが……。
どこかにそんなキッカケを作ってくれる人はいないだろうか……。
——……ってなことをカロンちゃんが思っていたら、御影ちゃんは後に歌ちゃんに出会ったんだよね〜。 それからピスケスにも〜。
——そうなんです! 私ちゃんは大親友のうーちゃんと出会ったんです!
——うんうん〜、二人は波長が似ているからね〜。 ……そんな一方で、御霊ちゃんの方にも、どうやら出会いがあったらしいんだよね〜?
*****
——んんっ! ……と言う訳で、そろそろ私にも話させて貰おうか……! 聞いての通り、私は幼い頃から、周りの子たちよりも頭が良く、同時に極度の人見知りでもあった……。 そのせいで、周りの子たちとは話が合わせられずに、さらに挙動不審なのもあって、思いっきり浮いてしまっていたんだ……。 だけどそんな浮いた私に、話しかけてくれる子がいたんだ……。 そしてそれが陽太だった……。
「——ねえ、そんな所にいないでさ! 御霊ちゃんも一緒に遊ぼうよ!」
「うえっ……!? わ、私ですか……!? え、えっと……」
御霊は当時完全にクラスから孤立してしまっていた。
最初は普通に話しかけてくれていたのだが、御霊の周りの子供たちからすれば難しい話に、極度の人見知りによる挙動不審な話し方により、皆も次第に距離を取る様になっていた。
だけどそんな中、陽太だけは積極的に話しかけてくれた。
それも御霊が話しかけられたのにビックリして、逃げ出したりしたにも関わらずにだ。
そして御霊はそんな陽太に少しずつ心を開く様になっていった。
「——ねえ、御霊ちゃん! ウィッチバトルに……メカニカルウィッチに興味はない?」
そんな中、陽太はメカニカルウィッチの楽しさを教えようとして来た。
御霊とて相棒のプルートがいる身として、ウィッチバトルやメカニカルウィッチのことも勿論知っていた。しかし今まで周りの子供たちと上手く関われなかった為、世間でもメジャーなそれにあまり自分から触れることはなかった。
だけどこうして陽太に改めて教えて貰ったことで、御霊はメカニカルウィッチの楽しさに……その無限の可能性に気づくことができた。
「わ、わあ〜〜!! メカニカルウィッチって凄い……!」
今までは何と無くただ凄いものとしか認識していなかったメカニカルウィッチだが、改めてその性能を見ると驚愕するしかなかった。
手のひらサイズでありながら人間を圧倒する力を持つ彼らは、理論上どんな環境でも活動することができ、それこそ宇宙でも活動することが可能だった。
そんなメカニカルウィッチの無限の可能性に気付いた時、御霊は生まれ持った自身の天才的な頭脳を使うべきものを、見つけることができた。
それから御霊はマジカルウォッチを使って、ネットにアクセスして、いっぱいメカニカルウィッチのことを学んだ。
そしてほぼ独学にも関わらず、大人顔負けの凄い機体を作り出した。
「えへへ……! ど、どうかな……陽太君……?」
「御霊の自信作なんですよ」
御影は自分が作ったプルートの機体を、どこか自慢する様に陽太とサンに見せた。
その完成度は、陽太の作ったサンの機体を上回るもので、見方によっては嫌がらせの様に見えた。
しかし陽太はそんなことを気にすることなく、自分のことを心から誉めてくれた。
「——凄いよ、御霊ちゃん! こんな凄い機体を作れるなんて、天才だよ!」
「フフフフフ……! よ、陽太君がメカニカルウィッチの楽しさを教えてくれたおかげだよ……!」
それは御霊の紛れもない本心だった。
彼が声をかけてくれたから、メカニカルウィッチの楽しさを教えてくれたから、自分はこうして天職と出会うことができた。
すると陽太は興奮気味な様子で口を開いた。
「バトルの腕前だって悪くないし……ねえ、御霊ちゃんも一緒に全国大会を目指してみない?」
「うえっ……!? ひ、人前はちょっと……!」
確かに御霊とて興味がない訳ではなかったが、流石に極度の人見知りの身としては、気が引けた。
だけど興味があるのも紛れもない本心だった。
「で、でも……もし……勇気が出たら……」
「うん! じゃあその時は、全国大会の舞台でバトルしようね!
「……!!」
それは御霊としてもやってみたいことだった。こうしてプルートと一緒に、陽太とサンたちとこっそりするバトルも良いけれど、いつか本気の彼らと全力でバトルしてみたいと言う気持ちもあった。
まあ、今は夢のまた夢なのだが……。
「御霊ちゃん! 御霊ちゃん!」
それから御霊が勇気が出るまでの間、先に全国大会小学生の部に出た陽太は、その結果を報告してくれた。
一年目は無半神話の記録を持ち、歴代最強にして、例外中の例外と言われる海姫ネオンとネプチューンにボコボコにされて負けたらしかった。御霊も映像でその試合を見たが、機体スペックでは説明がつかない強さをしていて、その異名の意味を理解した。
陽太はそれでも来年こそはリベンジするんだと誓っていた、
次の二年目はネオンたちへのリベンジの手前で、彼女たちの同世代の天王寺麗とウラノスに負けたらしかった。しかもそのまま決勝戦でネオンたちにも勝っていたので、とんでもない逸材だと思った。
陽太は自分が負けた二組は今年で小学生の部が終わりになるが、それでもいつかプロの場か何かでリベンジするんだと誓っていた。
「みー、どうだい? メカニカルウィッチの楽しさが分かったかい?」
「はい、お姉ちゃん! 私ちゃん、人間とメカニカルウィッチの絆のキラキラの虜になりました! だからそれをもっともっと見てみたいんです! そして叶うのなら、私ちゃんもカロンちゃんといつか……」
「うんうん、そうだね〜。 御影ちゃんの引っ込み思案なところもこれがキッカケで治ると良いね〜」
そんな中、御霊が陽太から教えて貰ったメカニカルウィッチの楽しさを妹にも教えると、御影もすっかりそれにハマったらしかった。
特に相棒たちの絆のキラキラの虜になったらしく、教えてくれてありがとうと何度も言ってくれた。全部全部陽太のおかげとは言え、最愛の妹からそう言って貰えるのは嬉しかった。
それから三年目。陽太は遂にサンと一緒に小学生チャンピオンバディになっていた。
御霊は人混みが無理過ぎて、現地には応援には行けなかったが、自分の部屋で配信で見ながら、その勝利を飛び上がりながら喜んだ。
そんな陽太たちと大きな舞台でバトルしてみたいと思ったが、まだ勇気は出なかった。
それなら四年目。陽太たちは二年連続で小学生チャンピオンバディになっていた。
最初の約束から四年が経ち、彼らもこうして小学生チャンピオンバディになっていたが、それでもあの時交わした約束のことは忘れていないらしかった。
「ねえ、御霊ちゃん! そろそろ勇気は出ないかな? 僕、御霊ちゃんとプルートと全国大会の舞台で本気のバトルをしてみたいんだ!」
「わ、私も……よ、陽太君とサンと全国大会の舞台で本気のバトルをしたい……! だ、だけど……やっぱりまだ勇気が出なくて……! 何かのキッカケさえあれば……!」
「それに今度、JP国にメカニカルウィッチ研究所ができて、メカニカルウィッチがさらなる進化を遂げるって言われているんだ!」
「え!? さらなる進化を……!?」
「うん! だからきっとそれが御霊ちゃんのキッカケになると思うよ!」
そして五年目。陽太たちは小学生チャンピオンバディになれなかった……全国大会に出れなかった……。
『——続いてのニュースです。 本日発生したメカニカルウィッチ研究所の事故の死傷者は百名に登るとされ、その中にはメカニカルウィッチの開発者である明日斗博士の妻の黒土乃亜さんと息子の黒土陽太さんが含まれているそうです。 その一方で娘の黒土美月さんの方は……』
「え……?」
「そんな……!? 一体何が……」
自分の部屋で見ていたニュースを見た御霊が思わず固まる中、プルートが驚愕の声を上げていた。
しかしそんな相棒の声すら、御霊の耳には碌に聞こえなくなっていた。
陽太が……彼が死んだ……?つい先日までは元気だったのに……?メカニカルウィッチ研究所で久しぶりに父と会えると言ってたのに……?それなのにどうして……?
だけどいくら頭の中で自問自答したところで、現実は変わらなかった。
『——ねえ、御霊ちゃん! そろそろ勇気は出ないかな? 僕、御霊ちゃんとプルートと全国大会で本気のバトルをしてみたいんだ!』
「あぁ……!?」
その約束を守るチャンスは
だけど勇気が出てからと後回しにし続けた結果……もう二度と果たせなくなってしまった。
「うぅ……ぐすっ……! 陽太君……! 陽太君……!」
「御霊……」
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ……!?」
御霊は部屋に篭って泣き続けた。
大好きな父と母、それから妹の御影とカロンが心配してくれたが、その声すらも耳に入らなかった。
このままメカニカルウィッチのことも辞めようとすら思った。
だけど……。
「ーーッ!? ダメッ!!
陽太から貰ったものは、御霊にとって大切な宝物だった。自分の人生を変えてくれた。自分の道を示してくれた。彼と出会えたから今の自分がいた。それを失くしたくはなかった。
「プルート! 頼む! 私と一緒にバトルしてくれ……!」
「しかし……」
「ここで変わらなくちゃ、私は本当に全てを失くしてしまいそうなんだ……!」
「……そうですね。 分かりました。 僕も御霊の相棒として、貴方が変わる手助けをしましょう」
「恩に切るよ、プルート……!」
だから御霊は意を決して、プルートと一緒に全国大会を目指すことにした。
……皮肉にも、陽太の言った通り、御霊が変わるキッカケができていた。
そして御霊とプルートは、陽太とサンの影を追う様に、メカニカルウィッチに……ウィッチバトルにのめり込んでいった。
……とは言え、最初は戦績が振るわなかった。
五年生から参加したジュニアリーグ小学生の部では、同年代の
それでも御霊たちは折れなかった。バトルの度に相手の技術を吸収して、機体を改造することでどんどん強くなっていった。
するとジュニアリーグ中学生の部では徐々に結果が出始めていた。
しかし、その頃には優一たちとしあくたちを始めとする、同世代の子たちの殆どは、亡き王者の陽太とサンと比べられ、妹の美月とリンにボロ負けしたことで、バトル自体を辞める様になっていた。
それでも御霊たちはめげることなく、強くなり続けた。
そして、スーパーメカニカルウィッチが解禁されるシニアリーグに入ってからは、御霊たちのメカニックに対する才覚だけでは無く、バトルに対する才覚も完全に覚醒する様になった。
それにより、高校生になってからは、公式戦もほぼ負けなしの無敗に近い状態になった。それこそ唯一の負けと言えば、シニアリーグの高校生の部と大学生の部の優勝者同士によるバトルでネオンとネプチューン、それから麗とウラノスに負けたくらいだろう。
その結果、御霊たちの世代は自分たちの完全な一強状態と言われる様になった。
それから、自らの手でほぼ一から自分の相棒のプルートと、妹の相棒のカロンの機体を作り上げたことで、それを知ったワールドユニオンから、個人相手に企業と同じ許可を特例で貰った上に、未来の明日斗博士になりうる自在として直接スカウトされる様になった。
まあ、向こうが来る度に、緊張のあまり気絶して、その話を何度も何度も先延ばしにしているが……。
そして、それだけ強くなることができたが、それでも自分に勇気がなかったせいで、陽太との約束を果たせなかったことが、ずっと胸の奥に残り続けた。
きっとこの後悔は一生消えることはないだろう……。だから御影には、自分の様に後悔しない様に、今を大事にする様に何度も何度も言い聞かせる様になった。
——私は陽太との約束を、もう二度と果たせなくなったことを受け入れたつもりだった……。 だけどそんな陽太の妹で、まるで彼の生き写しの様なバトルをする美月さんを見て、彼女と相棒のサターンに注目する様になったんだ……。 彼女たちの学園リーグ戦の中継は、全部見たし、その後全国大会の舞台にも乗り込んだんだ。 そしてこうして美月さんとサターンが命を落とした後に……彼が陽太だったことを知ったんだ。 またしても手遅れだったけど……それでも今回はまだチャンスがあるんだ! だから私はこの最後のチャンスを絶対に掴んでみせる! 美月さんと陽太たちを助けて見せるんだ!