「——じゃあ、ゼロさんとナインさんは、UK国の出身なのですね?」
「そ、そうなんです! JP国にはえっと……旅行で来たんです!」
「はい。 お兄ちゃんも私も成人したのでその記念に」
その後、美月は先程のトラブルで助けてくれたゼロとナインと名乗った兄妹と少し話をしていた。
「……ん。 奇遇……私の母親もUK国の出身……」
「まあ、
それにネオンとネプチューンも乗っかって来たが、何やら闇がありそうなことを呟いていた。ネオンたちが自身らの父親を心底嫌っているのは聞いていたが……。
すると、麗とウラノスが先程のゼロの活躍を賞賛する様に声をかけた。
「それにしても、ゼロ君。 さっきは凄かったな! まるでアクション映画の主人公並の活躍だったぜ!」
「ああ! こう……ギューンと言って、バーンと言って、兎に角、凄かったぜ!」
麗たちの言う通り、先程のゼロは、魔法が使えない人間とは思えない程の運動神経と並外れたパワーで、倒れかけたオブジェクトをほぼ一人で支えていた。
ゼロがいなければきっと大惨事になっていたし、美月も怪我をしていたかもしれないので、彼はある意味で恩人でもあった。
それは他の人たちからしても同じで、ゼロはちょっとしたヒーローの様な扱いを受けていた。
しかし、ゼロとしてはあまり目立ちたく無い様で、彼は謙遜する様に口を開いた。
「いやいや、俺なんて……ちょっと
「……? もしかして、ゼロさんはウィッチバトルが得意ななのですの?」
「あ、えっと……!」
ゼロの言葉に、美月が思わず尋ねると、彼は何故か焦り出した。
「だけど……君の相棒の姿は見当たらないが……」
そんなゼロに対して、サターンがふと指摘した。
確かに、ゼロとナインの側には、彼らの相棒であろうメカニカルウィッチの姿が見当たらなかった。
別に全ての人が相棒を連れている訳では無いのは分かってはいるが、珍しい……。まあ、ちょっと前の自分も似た様な状況だったので、人のことは言えないが……。
すると、益々焦り出したゼロの代わりに、ナインが応えた。
「ああ、
成程。
美月が勝手にそう解釈していると、ゼロたちは話題を変える様に口を開いた。
「そ、それにしても、JP国のメカニカルウィッチ学園の学園祭は賑やかで良いですね!」
「はい……! 私もお兄ちゃんも、こんなに盛り上がっているお祭りに来たのは久しぶりなので、楽しいです……!」
確かに、学園祭や文化祭の規模は名学校によるが、メカニカルウィッチ学園は国立なだけあって、他の学校よりもより大規模なものになっていた。
この学園のOBの麗たちとネオンたちもそれに同意する。
「確かにな! 俺らの代の時も凄かったからな!」
「だな! 今年みたいなハロウィンがテーマじゃ無かったけど、同じくらい盛り上がっていたぜ!」
「……ん。 凄く騒がしかったのは覚えている……」
「まあ、あたしとネオンちゃんは、麗たちが手を引かなければ参加する気が無かったからね〜♪」
「ええ、本当に……懐かしいですね……」
「ええ。 同時はいろいろありましたからね……」
「はい。 運命の出会いもありましたからね……」
さらに、レイの母の光と家族であるルミとエールも懐かしむ様に同意していた。どうやら、彼女もこの学園のOBらしい。確か年も麗とネオンと同じだった筈だから、同級生だったのだろう。
すると、そんな光たちの話を聞いたレイが興奮気味に声を上げた。
「ねえ、ママ! 私も大きくなったら、ママと輝お兄ちゃんと美月お姉ちゃんと同じ様に、メカニカルウィッチ学園に通ってみたい!」
「そうね、後十年したらレイも相棒と一緒に、この学園に通える様になる筈よ」
「う〜ん、待ちきれない!」
そして、そんな会話を聞いていたゼロとナインが、少し肩の力が抜けた様に微笑んだ。
「フフッ、ここは本当に
「はい。
「世界中がこんなだったら良いのにな……」
「だけど、お兄ちゃん……。 そうじゃないから、私たちの手それを創るしかないんです……」
「そうだな、ナイン。 俺たちはその為に……」
しかし、後半になるに連れ、ゼロたちの顔には影が刺していった。
そんなゼロはまるで戒める様に呟いた。
「——この平穏だって、束の間のものだ……」
「……!!」
それを聞いた美月は思わず息を呑んだ。
ゼロたちは自分たちの事情なんてつゆ知らないだろうが、その通りだ。
全国大会の事件の後、今の所スタースピリットとワールドユニオンは大きな動きを見せてはいないが、そんな彼らを止められた訳ではない。彼らが再び動き出せば、またどんな被害が出るかも分からない。もしかしたら、美月も次は本当に命を落とすかもしれない……。
「そうね……平穏というものはある日急に壊れるものよね……」
「きららちゃん……」
そんな中、きららは動かなくなった自分の足を触りながらそう呟いた。
そんなきららをポラリスが心配そうに見る中、ムーンとサンも同意する様に呟いた。
「そうじゃな……幸せな日々をある日突然壊す奴らが、この世界には存在しているからのう……」
「だからこそ、我らはそ奴らを止めねばならんのだ……」
「ムーン……」
「サン……」
何か覚悟を決めた様なムーンたちの姿を見て、美月たちが心配していると、ゼロたちは改めて覚悟を決めた様に口を開いた。
「——俺もです! 俺も平和な世界を創る為に、平和の敵と戦います!」
「はい……! もう二度と、私たちと同じ境遇の子が出ない為にも!」
「「——全ては、恒久和平の世界の為に!」」
*****
その後、ゼロとナインと別れた美月たちは、バトルを終えた焔たちと合流していた。
ゼロたちが「全ては、恒久和平の世界の為に」と言う、ワールドユニオンのスローガンを口にしていたのは気になったが、これ自体は誰しもが願っていることなので、別に関係ないと思いたい……。
まあ、兎に角、スタースピリットもワールドユニオンも何もして来なかったし、ちょっとしたトラブル以外は何も起きなかったので、今は学園祭を最後まで楽しむべきだろう。
しかし、楽しい時間はあっという間と言うだけ合って、気づけば夕方になっていた。
夜には生徒たちだけで行う最後のパーティーがあるが、一般の人たちはここまでだ。
……と言う訳で、他の皆とはここでお別れの時間だった。
「じゃあな、秀次、レイ、元気でいろよ」
「スコーピオもね!」
「焔君、マーズちゃん、バイバイだべさ!」
「またな!」
シゼンホッカイドウ校組は、気さくに手を振りながら帰っていった。
「押忍!
「また来年の全国大会で会おう!」
サンスイミヤギ校組は、来年のリベンジを誓いながら帰っていった。
「うぅ……ぐずっ……お姉様……! まあ、会いに来るので、どうかお元気で……!」
「心姉様〜、泣きすぎですぅ〜」
「ほら、帰りますよ、心」
「全く……」
カガクアイチ校組は、美月との別れを惜しむ心を引きずりながら帰っていった。
「またな〜、冬馬、マーキュリー! 今度は冬休みに実家で会うな〜」
「あ、そうや! ばあちゃんがお正月には、小春ちゃんを実家に連れて来いって言っとたで!」
「「これって多分、そう言うことなのです〜!」」
レキシキョウト校組は、冬馬と小春と最後に何かを話しながら帰っていった。
「来年は白金先輩たちが卒業するからバトルできなくなるけど……俺たちも大学生になったら、リベンジを果たして見せるんだぜ!」
「はい、大和兄様。 ですが、その前に来年の全国大会を頑張りましょうね」
オヤシロシマネ校組は、輝たちに宣戦布告しながら帰っていった。
「今日は本当に楽しい一日だった。 それでは、またな」
「では、ワタクシたちもこれで失礼します」
カイウンフクオカ校組は、礼儀正しく帰っていった。
「それじゃあ、美月ちゃん。 また会いましょうね」
「ばいばーい!」
「美月お姉ちゃん! サターン君! 輝お兄ちゃん! ヴィーナスちゃん! またね!」
「輝も生徒会長のお仕事を最後まで頑張るのよ?」
「「それでは、失礼します」」
「みづみづ☆ 元気なったら、私のライブを見に来てね☆ サー君だけじゃなく、リンちゃんと爺やさん、それから、ムーンちゃんとサン君の分も用意しておくからさ☆」
最後に、きららたちとレイたちとステラも手を振りながら帰っていった。
ちなみに、麗たちとネオンたちはOBとして最後まで残るらしい。
そして、生徒たちと学園の関係者のみになったことで、夜のパーティーの前に、輝の生徒会の引き継げ機の前の最後の挨拶が行われることになった。
「……と言う訳で、ちょっとしたトラブルが起きた様だけど、それでも、怪我人なども出ずに無事に今年の学園祭を終えることができました。 そして、僕自身もこの学園祭を最後に生徒会長を引退します。 その後任となるのは……」
輝が手をかざすと、ステージにある壇上に御影が登った。
「は、はい! 白金会長に後任として指名されました、冥道御影です!」
新しい生徒会の立ち上げは、美月が眠っているこの二ヶ月間の間に行われたらしいが、その次の生徒会長には御影が選ばれていた。
何でも最初は歌がその候補に上がっていたが、彼女自身が御影が相応しいと推薦して、自身はその補佐の副会長に立候補したらしい。
御影自身も実は以前、生徒会広報にスカウトされていたらしいので、その方向で話がまとまったそうだ。彼女自身は最初は変なところで奥手な性格により、遠慮していたそうだが、全国大会の事件に対する義憤や、自身の願いを再確認したことで、その話を受けたらしい。
「
「「「うおぉぉぉぉぉ〜〜っ!」」」
……と言う訳で、新生徒会長に御影、副会長に歌が着くことになった。
同じく二年生の秀次は、ワールドユニオンの刺客だったことから、生徒会を辞めることも考えた様だが、咲良からこれからも働くことで罪滅ぼしをしろと言われたことで、このまま庶務の役割を続けていく様だった。
そして、残った役職には、一年生が選ばれた、会計に冬馬が、書記に小春が、広報に焔が着くことになった。
何でも、学園リーグランキングのトップ十に入った一年生には、声がかかるらしい。まあ、美月の場合は立場が立場だし、この二ヶ月間の間ずっと眠っていたので、その話は流れたらしいが……。
焔たちも美月の件があって最初は辞退していたらしいが、自分がこうして無事に目覚めたことで、改めてその話を受けたらしかった。
「じゃあ、新しい生徒会への引き継ぎも終わったことだし……皆この後のパーティーも楽しんでね」
「はい! 楽しい楽しいハロウィンナイトパーティーの始まりですよ!」
学園祭の最後に行われる夜のパーティー。
今年はハロウィンがテーマと言うこともあり、仮装した生徒たちが、イルミネーションや花火の下で、パレードと共に踊る行事になっていた。
ハロウィンと言えばやっぱり夜なので、ピッタリな催しと言える。
それに、昔はこうした行事の最後にはキャンプファイアーをしなは意中の男女がフォークダンスをしていたらしいので、それも兼ねているのだろう。
「ほらほら、冬馬! 一緒に踊ろう?」
「うえっ!? そ、そうだな! 良し! リードは任せてくれ、小春!」
噂をすれば、フランケンシュタインの仮装をした小春が、
「小春ちゃん……! 冬馬君はヘタレだから、小春ちゃんがリードするんだよ……!」
「フッ、ジュピターに好き放題に言われているぞ、冬馬。 頑張って男を見せて、ここで汚名返上するんだな」
そんな二人にジュピターとマーキュリーが茶化しながらアドバイスを送っていた。
そして、周りの皆もダンスをし始める中、焔たちと輝たちが美月の元へとやって来た。
「「み、美月(ちゃん)!」」
「は、はい……!」
「美月の体じゃ踊ることは難しいけど……」
「雰囲気だけでも一緒に楽しまないかい?」
「……! はい……! よろしくお願いします……!」
美月はパッと顔を輝かせながら二人の手を取った。
美月は車椅子の為、ダンスをすることは難しいが、それでも音楽に合わせて二人と一緒にリズムを取った。
悪魔の仮装をした美月と、
「キャー! 美月様が
「美月様はどちらの殿方に想いを馳せているのかしら?」
「くっ……! 俺らじゃ、流石にあの二人には敵わないぜ!」
「それは仕方がないよ。 美月さんへの気遣いの仕方と言い、ウィッチバトルでの強さと実績と言い、僕たちじゃとても敵わないからね……」
何かいろいろと言われていて恥ずかしい……。
だけど、皆の言う通り、焔と輝は本当にカッコよくて、自分には勿体無いくらいだった。
本当にちゃんと告白の返事を返さなければいけないな……。
すると、そんな雰囲気の中、サターンが怒りの声を上げながら暴れ出した。
「ええいッ!! 美月にはまだそう言う話は早いと言っているだろうがッ!! せめて、後三年……成人するまでは待たんからッ!!」
「コラ、サターン! 私の弟君と
「サターンさん! 貴方の気持ちも理解できますが、直接暴力に訴えかけるのはいけません! ヴィーナスとしても正々堂々と勝たなければ意味がないのです!」
そんなサターンをマーズとヴィーナスの女性陣が無理やり止めていた。何だかこの光景も見慣れて来た気がする……。
(あれ……?)
そんな中、美月はふと違和感を感じた。
そう言えば、ムーンならこう言う時にサターンに同調しそうな気がするのに、先程から何も言っていなかった。
美月はふと辺りを見回したが、ムーンはおろか、サンもいつの間にかいなくなっていた。さっきまではいたのに……。
「リン。 ムーンとサンがどこに行ったか知りませんか?」
「それが……少し用事があるので先に帰るそうです」
「そうですか……」
リンの言葉を聞いた美月は少し顔を暗くした。
昨日の御霊たちと御影たちとのバトルのおかげで、ムーンとサンは罪の意識から解放されたと思っていたのだが……。
……とは言え、ムーンたち曰く、用事があるとのことのなので、自分の考え過ぎかもしれないが……。
*****
——一方その頃。
「——美月とサターン、そして、陽太も学園祭を……日常を楽しめている様だな……」
学園の近くの海の底に停泊している『宇宙の方舟』の中から、アースは学園祭の様子を見ていた。
スタースピリットとワールドユニオンが何かを仕掛けてくることを警戒していたが、どうやら杞憂で終わりそうだ。
……とは言え、あくまでも今日のところはだ。その二つの組織を止めなければ、根本的な解決にはならない。
「美月たちの日常を守る為にも、スタースピリットとワールドユニオンを止めなければならないが……」
アースはそう呟きながら顔を暗くした。
「その為に、美月たちを巻き込んだ結果、彼女たちを危うく死なせるところだった……。 もう二度と、同じ過ちを繰り返す訳にはいかない……」
元々美月は二つの組織から狙われていた為、その自衛も兼ねて力を与えていた。
そして、美月たちの父であり自身の半身でもある
だけど、その結果がこのザマだった。だから、これからは自分の力だけで何とかするつもりだった。
「——全てはこの世界を滅ぼす為に……と願うスーパーノヴァ。 全ては精霊だけの世界の為に……と願うビッグバン。 全ては恒久和平の世界の為に……と願うアダム議長」
三者は何も私利私欲では無く、ある意味誰よりも今の世界のことを嘆いて、その願いに辿り着いていた。
死こそが全ての生命に与えられた平等な救いだと考え、世界そのものの終わりを願うスーパーノヴァ。
十年前の事件で
人類史上最悪と言われたWWⅢを経験したことで、もう二度と戦争の起きない世界を目指し、その為に
三者の目的は必ずしも止めなければならないが、スーパーノヴァとビッグバンは魔法界と言う物理的にも手が出し難い場所にいる為、アースはまずはアダム議長を止めることにした。
そんな風にアースが考えていると、誰かがこの場にやって来た。
「「アース」」
現れたのはムーンとサンだった。
「どうせ、美月たちを巻き込まぬ様に一人で行くつもりだったのであろう? それなら、妾たちも連れて行け」
「ああ。 陽太たちは怒るだろうが、我らとしても、もう二度と、あの子たちには危険な目には合って欲しくないのだ……」
どうやら自分の考えはお見通しな上に、その想いも一緒らしかった。
ムーンたちを再び美月たちの元から引き離すのは心苦しいが、一度サルベージされたとは言え、自分と同じ本来の精霊である彼女たちの力は是非借りたい。
アースは苦渋の決断の末、ムーンたちに協力を求めた。
「ムーン。 サン。 これからのスタースピリットとワールドユニオンとの戦いは厳しいものになる。 美月たちの元に戻って来れる保証もない。 それても私に力を貸してくれるか?」
すると、ムーンたちは強い意志の籠った瞳をしながら、答えた。
「当たり前じゃ。 こうしてもう一度美月と会えた以上、妾にもう悔いはない。 この命……美月の平穏を守る為に使おう……」
「我もだ……。 陽太たちがこれ以上戦わずに済むと言うのなら……喜んでこの命を差し出そう……」
「二人共、すまない……。 だが、ありがとう……」
——こうして、美月の知らぬ場所で大事な話が進んでしまっていた。